大阪市交通局10系電車
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大阪市交通局10系電車 | |
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車体未更新車 (2004年2月16日撮影) | |
両数 | 10両 |
起動加速度 | 3.0km/h/s |
営業最高速度 | 70km/h |
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大)
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車両定員 | 130(39)人(1100形) 140(45)人(中間車) 130(45)人(1800形) |
編成定員 | 1390(438)人 |
全長 | 187,400mm |
全幅 | 2,890mm |
全高 | 3,745mm |
車両重量 | 33.0t(1100形) 36.0t(1000・1200・1400形) 24.0t(1600・1700・1900形) 34.0t(1500形)・28.0t(1800形) |
編成重量 | 310t |
軌間 | 1,435mm |
電気方式 | 直流750V(第三軌条方式) |
モーター出力 | 130kW |
編成出力 | 130kW×4台×6両=3,120kW |
歯車比 | 99:16 |
駆動装置 | WN平行カルダン駆動方式 |
制御装置 | 風冷式/フロン沸騰冷却式電機子チョッパ制御 更新車はVVVFインバータ制御 |
ブレーキ方式 | 回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキ OEC-2 |
保安装置 | ATC・CTC |
メーカ | 川崎重工業・日本車輌製造・日立製作所 東急車輛製造・近畿車輛・アルナ工機 |
備考 | 定員の括弧内は着席定員 |
10系電車(10けいでんしゃ)は、大阪市交通局の高速電気軌道(地下鉄)用通勤形電車である。
大阪市営地下鉄御堂筋線と乗り入れ先の北大阪急行電鉄南北線で使用されている。
目次 |
[編集] 概要
1973年(昭和48年)10月に谷町線での急行運転を想定した初代20系として2001-2301-2401-2501の試作車4両が新造され、同線および中央線において各種試験が実施され、当初想定通りの好成績を収めたが、従来を上回る高速運転を主内容とする急行運転計画は、局内でも発言力の大きな土木・保線部門[1]の反対で葬り去られ、当初計画されていた最高速度100km/hでの高速運転試験を実施することもなく、当初の使途を失って宙に浮いた形となった。
しかしながら、当時最新の回生制動機能付き電機子サイリスタ・チョッパ制御器を搭載する同系列は、速度の加減速制御を抵抗器による放熱に依存する在来の抵抗制御車と比較して走行時の放熱量が格段に少なく、当時増結に次ぐ増結と高密度運転の実施、そして過剰な地下水汲み上げに起因するトンネル内の温度上昇が深刻な問題となりつつあった御堂筋線における、トンネル内温度上昇の抑止手段として注目を集め、中間車両4両を新造して8両編成への再編[2]と10系への改番[3]、それに試験結果を反映した小改良を実施の上で御堂筋線への転用が決定され、1974年6月7日付で移籍手続きがとられた[4]。
もっとも、高調波ノイズによる軌道回路への干渉などチョッパ車特有の問題があり、実用化までにはその後もしばらく走行試験を繰り返して安全を確認する必要があった。このため、営業運転開始は1976年2月までずれ込み、10系01編成として就役したそれら8両は暫定的に大阪市交管内限定で、つまり北大阪急行への直通乗り入れを含まない運用限定(主に、中津~天王寺間の小運転で使用)で営業運転が開始された。
その後、御堂筋線の輸送力増強および新線開業に伴う車両捻出を名目として1979年より冷房装置を搭載した量産車の製造が開始され、1989年までに9両編成26本、合計234両が出揃い、在来の30系の大半を他線区へ追いやって御堂筋線の主力車となった。
[編集] 編成・車種
1979年の量産開始時点での8両編成は下記の構成であった。
- 1100(M2ec)-1000(M1)-1300(M2p)-1200(M1')+1600(T')-1400(M1)-1500(M2)-1800(Tec)
- ※ec表記は蓄電池と空気圧縮機を、'表記は簡易運転台を、そしてp表記は空気圧縮機を、それぞれ無印の車両に対し追加した仕様の車両であることを示す。
電動車は主制御器を搭載されるM1と電動発電機や空気圧縮機といった補機を搭載されるM2でペアを組むが、集電靴はそれぞれM1は2セットずつ、M2は1セットずつ搭載しており、分岐器などの非通電区間を通過する際の集電や、回生制動時の離線による回生失効抑止を行えるように設計してあることがうかがえる。
次に、1987年の我孫子~中百舌鳥間の開業と輸送力増強工事の進展により、1900形が挿入され、下記の9両編成となった。
- 1100(M2ec)-1000(M1)-1900(T)-1300(M2p)-1200(M1')+1600(T')-1400(M1)-1500(M2)-1800(Tec)
その後、1995年末の輸送力増強工事の完了に伴い、以下の10両編成への組み替えと余剰車4両の廃車が実施され、現在に至っている。
- 1100(M2ec)-1000(M1)-1900(T)-1300(M2p)-1200(M1')+1600(T')-1700(T)-1400(M1)-1500(M2)-1800(Tec)
[編集] 車体
30系のレイアウトを踏襲する、アルミ合金製18m級両開き4扉車体[5]を備える。
側窓配置も30系に準じ、運転台付きの1100・1800形がdD2D2D2D1(d:乗務員扉、D:客用扉)、それ以外が1D2D2D2D1である。
但し、工作の簡易化による生産性の向上を重視して、両肩が垂直に断ち切られる単一Rの屋根断面を採用した30系と異なり、アルミ材の押し出し技術の進歩によって大型押し出し型材の使用が可能となったため、屋根の両肩の部分でRを段階的に変更する、すっきりした屋根形状が実現した。
前面については貫通の必要がないことと運転台の居住性改善の必要性から前面の扉位置を左の車掌台側に寄せる左右非対称配置とされたが、その斬新さから好評を得ていた堺筋線用60系のデザインラインが取り入れられ、周縁にFRP製の縁飾りを設けた、いわゆる額縁スタイルのデザインとなった。
このデザインは、旧20系およびその後身である01編成では窓下部に縞模様の加工を施したアルミ板を貼付[6]し、前照灯2基を中央上部に並べて埋め込み、さらに中央に垂直にパイプ状の装飾を取り付けるなど、今ひとつ洗練度に欠けるものであったが、量産車では前照灯を左右両端に振り分けて標識灯と並べ、左右の前面窓を上方に大型化して縁飾りぎりぎりまで拡大し、前照灯および標識灯を方向幕の上部のブラックパネル化した部分に埋め込む、という同時期の国鉄201系に呼応する洗練されたデザインに改良されている。
なお、大がかりな冷却機構を備えるチョッパ制御器を搭載する関係で、本系列の台車中心間隔は分岐器の許容する最大値である12,400mmと30系よりも900mm拡大されており、このため客用扉の開口部をボルスタ位置と重ならない様に逃がして設計することで強度維持と軽量化のバランスをとっていた30系に比べ、強度保持のためにやや車体重量が増大している[7]ことが見て取れる。
また、車内については、旧20系は30系のFRP製座席を踏襲したが、これはあまりにも不評であったため、量産車では自動車用に開発された軽量座席詰物を使用する、一般型の座席に変更され、旧20系も01編成への組み替え時に変更されている。
[編集] 冷房化
本系列は低発熱のチョッパ制御車であるため、従来の抵抗制御車では発熱による温度上昇の観点から局内で長らくタブーとされてきた車両冷房を実施しても特に問題とはならない、と見なされていた。
それゆえ旧20系の設計段階より、将来の冷房化を念頭に置いて屋根上両端のシロッコファンと車内天井に設けられたラインフローファンを組み合わせた強制通風方式を採用していたが、冷房化が社会的に強く要請され始めた1977年に、来るべき量産車用のデータ収集を目的として1501に電機メーカー2社の手による試作冷房装置を搭載[8]して評価試験を実施したところ、良好な成績が得られため、以後本系列の量産に当たってはその成果を反映して三菱電機製CU-74CおよびCU-74C、あるいは日立製作所製RPU6001AおよびRPU4410[9]が標準搭載されるように変更され、非冷房の01編成についても1979年の量産車就役開始にあわせて冷房搭載工事が施工された。
[編集] 主要機器
[編集] 主電動機
端子電圧375V時定格出力130kWの東芝SE-617Aが主電動機として採用された。歯数比は高速運転を念頭に置いて6.19に設定され、駆動システムは従来通りのWNドライブである。
この電動機はチョッパ制御車で使用することから特に脈流対策を施し、長期間のメンテナンスフリーを目的として中間無給油式の新型軸受が採用されたものであるが、旧20系の段階で既に完成段階にあり、量産途上でごくわずかな改良が施されてSE-617Bに変更されている。
[編集] 主制御器
本系列の最も重要な新機軸であった電機子チョッパ制御器は、日立製作所と三菱電機の競作となった。
まず、旧20系では日立がCH-MR121、三菱がCFM-138-7.5RHを各1セット納入し、それぞれ2301・2401に搭載された。これらは基準周波数を175Hzとする2相1重構成とし、定電圧・定電流制御の組み合わせで力行・回生制御をスムーズに行うシステムであり、冷却にはヒートシンクによる風冷式が採用された。これらのシステムは当初ATCや軌道回路への高調波対策で幾つかの問題が発生したが、おおむね順調に稼働し、旧20系の御堂筋線転用時にもほぼそのまま踏襲されたが、その際に回生制動失効時の挙動に問題があったことから一部設計変更が実施されている。
続く量産車では、日立がCH-MR121、三菱がTHB-2L-5となった。いずれも誘導ノイズ漏洩による軌道回路の障害対策として、干渉を避けるべく基準周波数が200Hzに引き上げられ、更に04編成用以降は冷却システムがコンパクトかつ高効率でメンテナンス面でも有利なフロン沸騰冷却方式に変更されており、日立は試作分と同一型番であったが、その内実は双方共にオリジナルとは異なったものとなっている。
[編集] 台車
台車は全て住友金属工業製である。
30系のEO-30/DO-30系台車を基本としつつ、2本のコイルバネを並列に並べてあった左右の枕バネをダイアフラム形空気バネに置き換えた、インダイレクトマウント方式によるノースイングハンガー軸バネ式台車であるDS-10[10]が採用され、座席の改良もあって、30系と比較して大幅な乗り心地の改善が実現した。
また、試作段階で異種金属製リング圧入式の防音波打車輪を一部台車に装着したところ、きしり音の低減に効果があったことから、量産車ではこれが正式採用となっている。
[編集] ブレーキ
チョッパ制御器による電力回生ブレーキが付加されたため、30系のOEC-1全電気指令式ブレーキシステムを基本としつつ、これに回生制動との同期機能を付加したOEC-2[11]が採用されている。これはOEC-1の使用実績を受けてメンテナンスフリー化の徹底が図られ、フェイルセーフ性の向上が図られるなど、第2世代の全電気指令式ブレーキとして完成されたものであり、誘導電動機の特性に合わせて改良を施した20系用のOEC-3、電空演算を行い、極力付随車の空気ブレーキを使用しないように制御するように変更されたOEC-4と続く一連の大阪市交通局所属車両のブレーキシステムの基本を確立した、重要なシステムである。
[編集] 運用・増備
量産車はまず8両編成で1979年より02~16編成まで15編成120両が製造された。
更に1986年(昭和61年)からは御堂筋線の9両編成化に伴い1900形付随車 (T) を16両新造し、既存の01~16編成に組み込んだ[12]。
その後17編成[13]から最終増備となった26編成までは9両編成で製造され、1989年(平成元年)までに9両編成26本(234両)が製造された。
1995年(平成7年)から1996年(平成8年)にかけて、輸送力増強による10両化のため、編成替えが実施されたが、既に新20系の御堂筋線バージョンである21系の新造がスタートしていたことから新車の増結は実施されず、21系10両編成を3本新造投入の上で車齢の古い01~03編成を分割し、これらの27両について以下のような再編が実施されることとなった。
- 15両(1000形1001~1003・1200形1201~1203・1300形1301~1303・1400形1401~1403・1500形1501~1503)・・・電装解除の上で1700形1704・1710・1711・1705・1712・1713・1706・1718・1719・1707・1714・1715・1708・1720・1721へ改造
- 3両(1600形1601~1603)・・・簡易運転台撤去の上で1700形1709・1722・1723へ改造
- 3両(1900形1901~1903)・・・改番の上1700形1724~1726へ編入
- 2両(1800形1802・1803)・・・運転台撤去・空気圧縮機および蓄電池撤去の上で1700形1716・1717へ改造
- 4両(1100形1101~1103・1800形1801)・・・廃車
なお、先頭車から中間車へ改造された1716(旧1802)、1717(旧1803)については、旧運転台部分の切断・撤去と新造客室部分の溶接を実施し、一見他車と変わらない外観とされたが、この2両は冷房機の位置が先頭車時代のままであるため、判別は容易である。
[編集] 更新工事
1998年(平成10年)から05編成以降を対象に更新工事が行われている。この更新工事に該当していない04編成は他の編成の更新工事終了後に廃車される予定である。 更新工事の主な内容は次の通りである。
[編集] 外装
- 先頭車前面の黒塗り化
- 車体外板のブラスト洗浄
- 側面帯のライン化
- 側面方向幕の設置
- 正面運転席窓上側に「ACCC[14] 10 SERIES CAR」のシンボルマークを貼り付け。
- 正面運転席窓上側に「VVVF 10 SERIES CAR」のシンボルマークを貼り付けと正面帯のライン化(制御装置がVVVFインバータ制御装置に変更された、2006年施工の第23編成以降)。
[編集] 内装
- モケットの変更(茶系色→赤色)
- 化粧板の変更(白色→グレー)
- 床クロスの変更(茶色→グレー)
- 車内案内装置取り付け
- 扉開閉チャイムの設置
- 車椅子スペースの設置
- カーテンの変更
- 座席中央部の握り棒の設置(詳しくは後述)
- 吊り革の増設
[編集] 各種機器
- 冷房装置の能力向上
- 車内スピーカーの更新
- 警笛の変更(電気笛→空気笛)
- 制御装置の更新(サイリスタ素子などの劣化対策としてこれらの素子を新品に交換)(~2006年)
- 制御装置のVVVF制御器への変更と、主電動機の誘導電動機への交換(2006年~)[15]
2002年(平成14年)、14編成に座席間にセンターポールが試験的に設置され、2003年(平成15年)以降の更新車からは本格的に設置された。17編成から、扉付近に吊り革を新たに設置している。
なお、10系車体更新時は御堂筋線の編成が1編成不足することから、その補充の名目で21系1本 (21618F) が1998年(平成10年)に新造された。10系の車体更新終了後には1本が余剰となることから、最後まで未更新で残る04編成は車体更新工事を実施せずに廃車となる予定である。
[編集] 脚注
- ^ 他の鉄道会社と同様、大阪市交通局でも伝統的に土木科出身者が優遇される傾向が強く、歴代局長も大半が土木科出身である。
- ^ 編成は1101(旧2001)-1001-1301-1201(旧2301)+1601-1401(旧2401)-1501-1801(旧2501)となり、旧2501を電装解除してその機器で1301を電装した他、主要機器の改良が実施された。
- ^ 、車両番号が御堂筋線の乗り入れ先である北大阪急行電鉄が保有する2000形と同番号になるため、干渉を避ける目的で営業運転への投入の目処が立った1975年6月9日付で改番された。
- ^ 大阪市交通局 (1980).大阪市交通局七十五年史. 大阪市交通局.
- ^ 本系列については30系にあったセミステンレス車は設計製作されていない。
- ^ これは10系への改造時にラインカラーの塗り潰しに変更された。
- ^ 本系列と同様の車体構造に変更された30系後期アルミ車の付随車が冷房改造後でも21.5tに対し、本系列の付随車は24tと2.5t自重が増えている。
- ^ 言い換えれば、この時期まで第三軌条方式の地下鉄で使用可能な薄型冷房装置の開発が困難であったということでもある。なお、大阪市交の場合、戦前の計画段階で郊外区間でのパンタグラフ集電を予定していたため、その折りたたみ高さの分、車両限界がわずかながら大きく設定されており、それが冷房装置搭載においては大きな助けとなった。
- ^ 冷凍能力はいずれも1基あたり20,000kcal/h。
- ^ メーカー形式はFS386あるいはFS386A。
- ^ 大阪市交と共同開発を行っていた製造元の三菱電機側呼称はMBS-Rとなる。
- ^ 編成中の組み込み位置は、電動車ユニットと編成分割の制約から、1000形と1300形の間となった。01編成の段階で既に9両編成化を見越して1700形を欠番としていたにもかかわらず1900形と付番されたのは、この段階で10両編成化が計画されていたためであった。
- ^ なお、この17編成からは車体の設計が変更され、従来よりも大型の押し出し形材が採用されることで外観の見栄えの改善が図られている。
- ^ Armature Chopper Control Car(電機子チョッパ制御車)の頭文字
- ^ 一般に半導体素子、特にサイリスタなどの大電圧・大電流を取り扱うスイッチング素子には経年劣化による寿命があり、いずれは高価なこれらの素子を新品で交換せねばならず、本系列の更新工事についても素子交換がメニューに含まれていた。しかしながら、本形式の主制御器は規制フロンを冷媒として使用することでそのコンパクト化を実現していたため保守上の問題が少なからずあり、またサイリスタ素子の新規調達コストと大量の摩耗部品を抱える直流電動機のメンテナンスコストなどを含めて勘案すると、量産効果でコストの引き下げが進んだVVVFインバータ方式の機器を新造して全交換した方が低コストになる、と結論された。このため、2006年(平成18年)施工の23編成以降については、更新時に、主幹制御器、主制御器、それに主電動機などについて新20系に準じた機器を新製して交換し、VVVF制御へ変更する工事がメニューに追加されている。
大阪市営地下鉄・ニュートラムの車両 |
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現役形式 |
10系・20系・新20系・30系・66系・70系・80系・100A系 |
旧在籍車両 |
100形(初代)・200形(初代)・300形・400形・500形・600形・1000形・1100形・1200形・800形・900形・50系・60系・100系 |
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