トラック野郎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「トラック野郎」(とらっくやろう)は、1975年~1979年に東映で(全10作)製作・公開した、日本映画のメインタイトル。
目次 |
[編集] 概要
出演はプライベートでも大親友であったという菅原文太、愛川欽也。五色のイルミネーションと極彩画に飾られた長距離トラックの運転手、弥次喜多コンビが巻き起こす、笑い・義理・人情・猥雑・下ネタさを盛り込んだ、喜活劇。東映のドル箱シリーズとして盆と正月の年2回公開されていた。第1作目は、1975年8月に公開されたが、当初はシリーズ化の予定もなく、単発の穴埋め作品としての公開だった。そのため、第1作目のみで使用された一番星号とジョナサン号は廃車両を譲り受けたものだった。しかし、同年公開の大作「新幹線大爆破」の配給収入の2倍以上の約8億円を上げシリーズ化が決まった。これを期に、一番星号とジョナサン号は共に新車に代替され、最終作の「故郷特急便」まで使用された。
毎回マドンナが現われて、惚れ・失恋するところは、松竹「男はつらいよ」に似ているが、寅さんが「静・雅」なら桃さんは「動・俗」と対極をなしていて、似て非なるもの。監督は奇才でヒットメーカーの鈴木則文。物語は1978年8月公開の7作目「突撃一番星」まではコメディ路線であったが、同年12月公開の8作目「一番星北へ帰る」からシリアス路線へ。しかし、翌年12月公開の10作目「故郷特急便」は2人のマドンナを迎えたもののこれまでのヒットには遠く及ばず、同時にトラックの違法改造などの問題もあり警察と対立していたことから、1980年の春頃に東映がシリーズの打ち切りを発表、トラックも売却された(一番星号は現在、一般の人が購入しレストアが行われ現存しているが、ジョナサン号は所在を転々とした後、解体されて現存しない)。なお当時、11作目も予定されていた経緯もあり(舞台は沖縄だったと言われている)、打ち切りは誰も予想していなかった急なものであったといえる。しかしながら、年1回の公開であれば十分な配給収入は見込めたとの話もある。
「トラック野郎」という言葉は、東映が作った造語であるが、映画のヒットで一般的に使用されるようになった。また本作は満艦飾のデコレーショントラック(デコトラ)が巷に溢れるきっかけの一つとなった。玩具メーカーのバンダイが版権を獲得し、発売した模型 (1/48) も月に10万台も売れる大ヒットとなった。その後、全長約55センチという (1/20) スケールの超大型モデルも登場し、映画が終了して25年以上経つ現在でも販売されているロングセラー商品となっている。その後は「デコトラ」の商標を持つアオシマがコンスタントにトラックの模型を発売している。今はチョロQや光るRCカー (1/32) が新たに発売されており、今なお根強い人気を保っている。
渋いヤクザ役の多かった菅原文太の新たな一面を開拓した作品と言える。またせんだみつおや笑福亭鶴光・湯原昌幸・桂歌丸・松鶴家千とせ・ばってん荒川・ラビット関根など、当時旬のお笑い芸人が数多く出演していることも特徴で、それぞれ一世を風靡した持ちギャグを披露していた。
[編集] 内容
日本全国津々浦々に走るトラック稼業(白ナンバー)の主人公、一番星・星桃次郎(菅原文太)と、子沢山の相棒、やもめのジョナサン・松下金造(愛川欽也)が、各地で起こす珍道中。
桃次郎が目の前に現われたマドンナ(たいてい便所関係がきっかけで出会う)に一目惚れをし、相手の趣味や嗜好に合わせて(見当違いの)付け焼刃の知識で積極的にアタックしていく。ライバル運転手が現われ、ハンドルでの勝負・腕っ節で殴り合いの大乱闘をする。母ちゃん・松下君江(春川ますみ)を始めとするジョナサン一家、マドンナ、ライバル、女運転手、多くのトラック野郎達が、喧嘩があれば友情もあり、家族(仲間)愛もあれば祭りあり、誕生もあれば死もありと人間の生き様が語られるように話が怒涛の如く展開する。結局、恋は成就せず物語はクライマックスへ。天下御免のトラック野郎に戻った桃次郎は、時間が足りない悪条件の事柄を引き受け、一番星に荷(人)を載せてアクセルを踏み込み大爆走させる。そのアクセルを踏み込んだ時の加速力(メーターの上がり方)は圧巻!追っ手の警察を蹴散らし、強化された検問を突破し、トラック野郎達の応援・協力を得て、道無き道を走り一番星をボロボロにしながら、時間までに無事送り届け「完」を迎える。
[編集] 制作
- 監督…鈴木則文
- 企画…天尾完次、高村賢治
- 脚本…鈴木則文、澤井信一郎、野上龍雄、中島信昭、掛札昌裕、中島丈博、松島利昭
- 音楽…木下忠司、菊池俊輔、津島利章
- 撮影…仲沢半次郎、飯村雅彦、中島芳男、出先哲也
[編集] (主な)協力
[編集] 出演
- 菅原文太・・・星桃次郎{一番星} 主人公、独身。性格は短気でケンカっぱやいが情に厚く真っ直ぐで、卑怯な真似を嫌う純情タイプ。トラック仲間からの人望が厚い。ジョナサンと大喧嘩しても、実際は親友と思っている。着る服や腹巻には必ず「☆」マークが入っている。マドンナに自己紹介する時は「学者」「運輸省関係」など職業を偽るクセがある。お腹が弱く、運転中によく便意を催し、野グソをする。住所不定のため手紙はいきつけの川崎のトルコ(ソープランド)宛に届けられる。自ら「心の故郷」と言うほどのトルコ好きである。
- 愛川欽也・・・松下金造{やもめのジョナサン} 桃次郎の相棒、妻帯者。元警察官で、かつては鬼代官ならぬ「花巻の鬼台貫(だいかん)」(台貫とは車の重量を測る機械のこと)と恐れられた。これは警察官(=代官)と重量測定器(=台貫)による容赦の無い過積載取締りを暗示した掛詞である。パトカーの酔っ払い運転で懲戒免職になり、トラック野郎になる。性格は温厚で明るく人情家。男女の仲を取り持つのが得意だが、桃次郎とマドンナの仲は取り持てていない。
- 春川ますみ・・松下君江{母ちゃん}(1.2.3.4.6.8.9.10) ジョナサンの女房。子沢山で、実子は7人(1作目)~9人に増加(3作目)。父は元警察署長。旦那(ジョナサン)が病気や怪我のときは代わってジョナサン号に乗る。
- せんだみつお・桶川玉三郎{三番星}(7.8.9)元トラック野郎だったが、7作目の登場時にはインチキセールスマン。その後「三番星」としてトラック野郎に復帰。10作目も出演予定であったがせんだの急病により取りやめとなった。
- 由利徹 (1.2.3.4.5.7.10)
- 笑福亭鶴光 (2.3.4.6.9)
- 南利明 (3.5.6.9.10)
- 誠直也(1.4.6)
- 谷村昌彦 (1.7.8)
- 湯原昌幸 (1.6)
- 小松方正 (1.7)
- 小林稔侍 (2.3)
- 織本順吉 (2.7)
- 田中邦衛 (2.8)
- 山城新伍 (2.10)
- 川谷拓三 (3.7)
- 金子信雄 (4.7)
- 沢竜二 (4.8)
- 亜湖 (7.9)
- 東映グループ一番星(1~10)
- 夏純子 (1)
- 安岡力也 (1)
- 鈴木ヒロミツ (1)
- ダウン・タウン・ブギウギ・バンド (1)
[編集] 歌
[編集] 主題歌
- 一番星ブルース
- 唄、菅原文太・愛川欽也
- 作詞、阿木燿子
- 作曲、宇崎竜童
- 編曲、ダウン・タウン・ブギウギ・バンド
[編集] 挿入歌
- トラック ドライビング ブギ(ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)
- トラック音頭(菅原文太・愛川欽也)
- トラック野郎の三度笠(須賀良)
- 残り火の恋(西来路ひろみ)
- 夜のひとりごと(由美かおる)
- 恋歌(八代亜紀)
- 北の流浪(野村勝夫)
- 仮面舞踏会(黒沢年男)
- ごめんよ(新沼謙治)
- 信濃路ひとり旅(高倉三郎)
- ラブ・スクランブラー(エルシャトル)
- 傷だらけの恋(石川さゆり)
[編集] 関連グッズ
- DVD(全10作)…東映
- ビデオ(全10作)…東映
- サウンドトラック(全3枚)…AMJ
- 1/48スケールプラモデル(8種類、2・3・4・5・7・9・10作目の一番星号及び2作目のジョナサン号)…バンダイ
- 1/20スケールプラモデル(5種類、4・5・7・9・10作目の一番星号)…バンダイ
- 1/32光るRC(7種類)…青島文化教材社
- チョロQ(10種・12台)…タカラ
- モーター駆動で走って光る(4種類)…スカイネット
[編集] 外部リンク
[編集] 全10作サブタイトル・概要
No | サブタイトル | マドンナ役 | ライバル役
(ニックネーム) |
主なロケ地(イベント等) | 公開年(時期) |
---|---|---|---|---|---|
第1作 | 御意見無用 | 中島ゆたか | 佐藤允
(関門のドラゴン) |
盛岡・青森・川崎 | 1975年(夏) |
第2作 | 爆走一番星 | あべ静江 | 田中邦衛
(ボルサリーノ2) |
姫路・長崎・川崎
(長崎くんち) |
1975年(末) |
第3作 | 望郷一番星 | 島田陽子 | 梅宮辰夫
(カムチャッカ丸) |
広島・釧路・静内(新ひだか)・札幌
(ハイセイコー) |
1976年(夏) |
第4作 | 天下御免 | 由美かおる | 杉浦直樹
(コリーダ丸) |
倉敷・宇和島・松山
(闘牛) |
1976年(末) |
第5作 | 度胸一番星 | 片平なぎさ | 千葉真一
(ジョーズ) |
新潟・佐渡・金沢
(白根大凧合戦・新潟まつり) |
1977年(夏) |
第6作 | 男一匹桃次郎 | 夏目雅子 | 若山富三郎
(子連れ狼) |
唐津・鹿児島・東京
(唐津くんち)餅すすり大会 |
1977年(末) |
第7作 | 突撃一番星 | 原田美枝子 | 川谷拓三
(特にニックネームが無し |
鳥羽・下呂温泉・東京
(高山祭り) |
1978年(夏) |
第8作 | 一番星北へ帰る | 大谷直子 | 黒沢年男
(Big99)桃次郎は「マフィア」と呼ぶ |
花巻・会津若松
(輓馬大会)常磐ハワイアンセンター |
1978年(末) |
第9作 | 熱風5000キロ | 小野みゆき | 地井武男
(ノサップ) |
木曽上松・安曇野 | 1979年(夏) |
第10作 | 故郷特急便 | 石川さゆり | 原田大二郎
(龍馬號)桃次郎は「土佐犬(いぬ)」と呼ぶ |
高知・大阪 | 1979年(末) |