仙台の気候
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仙台の気候(せんだいのきこう)は、宮城県仙台市、および、その周辺部における気候についての記事である。
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[編集] 概要
仙台市都心部は、太平洋に開けた仙台平野(仙南平野)の西部に位置するため、海洋性気候(太平洋側気候)の傾向を持つ。そのため、冬は東北地方としては温暖で、冬日は比較的多いが、真冬日は少ない。降雪量は少なく、積雪が一週間以上残存することは少ない。
夏は太平洋からの海風の影響で気温はあまり上昇せず、夏日にはなるが真夏日・熱帯夜が少ない。ただし、梅雨から夏の時期や秋分前後に北東から冷たい海風が入り込み、曇りがちになって大きく冷え込むことがある。このため、北海道札幌市よりも気温が低いことがしばしばある。
平年値は、年間平均気温:12.1度C、降水量:1241.8mm、日照時間:1842.6時間。真夏日と真冬日の合計は約20日で、都道府県庁所在地の中で最も少ない。2番目に少ない水戸市で約30日、東京都(千代田区)で約45日、大阪市で約66日と、仙台市は極端に暑くも寒くもない気候である。
[編集] 地形との関係
- 仙台の地形参照
宮城県南部の地形は、西から順に、奥羽山脈、盆地群、陸前丘陵(仙台市内は青葉山丘陵)、太平洋に開けた仙台平野(仙南平野)と、大まかに分かれる。また、仙台の北側には、太平洋から奥羽山脈まで東西に松島丘陵がのびる。仙台市西部の奥羽山脈は、船形山から蔵王連峰までの間、あまり高い峰々がないため西からの雪雲が入り易く、市西部の旧宮城町と旧秋保町が豪雪地帯に指定されている。
[編集] 天気予報区分
2003年、宮城県における天気予報および注意報・警報の細分区域が変更された。一次細分区域については、これまでの「山沿い」「平野」から「西部」「東部」に名称変更された。また、二次細分区域については、仙台市を含む区域においてはかつての宮城県南部を一括りにした「山沿い南部」「平野南部」からさらに細分化され、「西部仙台」「東部仙台」という区分になった。
- 西部仙台
- 仙台市西部の山沿い地域。奥羽山脈側。泉区(全域)、青葉区西部の旧宮城町、太白区西部の旧秋保町がこれにあたる。旧宮城町と旧秋保町は豪雪地帯に指定されている。
- 東部仙台
- 仙台市東部の仙台平野地域。太平洋側(仙台湾側)。宮城野区(全域)、若林区(全域)、青葉区東部(旧宮城町以外)、太白区東部(旧秋保町以外)がこれにあたる。仙台市都心部は、こちらに含まれる。
[編集] 冬
仙台は、一般的には東日本として区分されるが、気象予報上では北日本として区分されている。しかし、降雪量は少なく、気温もさほど低くはならない。東北地方の太平洋側南部に位置する仙台平野(旧仙台市)、並びに福島県中通りと浜通りは、国土交通省からも「豪雪地帯」の指定を受けていない(→ 豪雪地帯特別措置法による「豪雪地帯」、及び、「特別豪雪地帯」の指定地域)。
- 主な都市の降雪量・積雪量(平年値)
都市 | 降雪量累計 | 最深積雪 | 1月気温 |
札幌 | 630 cm | 101 cm | -4.1℃ |
青森 | 774 cm | 114 cm | -1.4℃ |
秋田 | 409 cm | 41 cm | -0.1℃ |
山形 | 491 cm | 50 cm | -0.5℃ |
盛岡 | 351 cm | 36 cm | -2.1℃ |
仙台 | 90 cm | 17 cm | 1.5℃ |
石巻 | 56 cm | 17 cm | 0.5℃ |
福島 | 235 cm | 26 cm | 1.4℃ |
いわき | 14 cm | 6 cm | 3.6℃ |
NYC | 57 cm | - | -0.6℃ |
都市 | 降雪量累計 | 最深積雪 | 1月気温 |
軽井沢 | 136 cm | 32 cm | -3.6℃ |
新潟 | 255 cm | 39 cm | 2.6℃ |
富山 | 433 cm | 69 cm | 2.5℃ |
金沢 | 360 cm | 53 cm | 3.7℃ |
彦根 | 131 cm | 29 cm | 3.6℃ |
岐阜 | 52 cm | 16 cm | 4.3℃ |
鳥取 | 263 cm | 49 cm | 3.9℃ |
松江 | 111 cm | 24 cm | 4.2℃ |
東京 | 13 cm | 7 cm | 5.8℃ |
シカゴ | 97 cm | - | -5.6℃ |
- ※降雪量累計:気象庁の統計データでいう「降雪の深さ合計」のこと。日ごとの降雪量を、シーズン全体で合計した量(平年値)
- ※最深積雪:一度に降る最も多い積雪量(平年値)
- ※1月気温:1月の平均気温(平年値)
- (参考):参考としてニューヨーク市(=NYC)とシカゴ市の値も付加。アメリカ合衆国の統計値はNational Weather Serviceによる。
以上、平年値の表からも判るように、仙台は、降雪量・積雪量が少ない。これは、奥羽山脈が「壁」の役割を果たし、太平洋側にある仙台には基本的には雪が降らず、晴れてからっ風が吹くためである。
また、仙台平野が太平洋に開けており、海洋性気候になっていることも影響している。仙台も東京などと同様の夏に降水量が多い「夏雨冬晴れ型」である(札幌や金沢など日本海側は、冬に降水量が多い「夏晴れ冬雪型」)。このため、冬季は晴天が多くなって、昼間は気温が上がり、夜間は放射冷却により気温が急激に下がる。昼間の最高気温が0℃を下回る真冬日の平均日数は約2日と少なく、一方、夜間の最低気温が0℃を下回る冬日の平均日数は約80日と多い。
初雪は11下旬~12月上旬頃に観測されることが多く、積雪を伴う降雪は12月下旬以降となる。「ホワイトクリスマス」 になる確率(雪が降る確率。積雪のあるなしは問わない)は、過去30年で42%。
冬季の降雪には2つのパターンがある。1つは「西高東低」の気圧配置による降雪パターン(冬の降雪パターン)である。奥羽山脈の標高が、仙台付近では2000m以下と低いため、その「壁」としての役割は、関東地方における「壁」の役割をしている2000m以上の越後山脈などと比べて弱く、寒気団の南下や西風(ナライ)が強いなどの諸要因が重なると、その「壁」を越えて仙台に雪を降らせる。この場合、雪を降らせる諸要因の強弱により、「山側の泉区・青葉区・太白区は雪、海側の宮城野区・若林区は晴れ」という天気になることもしばしばで、雪雲の端では、晴れている空から雪が降る「お天気雪」が発生する。日の出の時間帯に「お天気雪」になると、降ってくる雪が朝日を反射して、赤や金色の雪が舞っているように見える。
もう一つは「南岸低気圧型」の降雪パターン(早春の降雪パターン)である。2月下旬頃になると、西高東低の気圧配置の出現回数が減り、それに代わって日本南岸付近を低気圧(いわゆる台湾坊主)が通過するようになる。関東の南岸を低気圧が通過するときにそこに向かって寒気が吹き込んだ場合、東京から仙台の東日本太平洋側に雪が降ることがある。
暖冬でもない限り、市西部の奥羽山脈には十分な積雪が見込め、仙台市街地から1時間程度で行けるスキー場には多くのスキーヤーやスノーボーダーが訪れる。
冬季の道路の路面状況は、積雪無しのドライ状態が最も多い。降雪があった場合でもすぐ融けるかシャーベット状になるかで、圧雪状態になることはほとんどない。積雪があった場合でも、市が除雪を行うことにより、自動車交通への影響は少なくなっている。但し、1月中旬から2月中旬にかけての厳冬期には、道路脇に除雪された雪が昼間に融け、その融水が夜間の放射冷却によって凍り、道路がまだらにアイスバーンとなるという現象がしばしば発生するため注意が必要である。このような路面状況のため、かつてはスパイクタイヤによる粉塵公害がひどく、「仙台砂漠」との悪名をつけられていた。故に仙台市は、スパイクタイヤの使用禁止運動に際して最も早く着手した。 降雪時に仙台市南部から北上すると、名取川~広瀬川~七北田川と川を越えるたびに降雪状態や積雪量の変化が如実に見られる。
[編集] 春
3月下旬頃まで降雪がみられることもあるが、4月に降る事はまれである。桜が咲くのは例年4月初~中旬頃であり、入学式や始業式、新歓コンパの時期とほぼ重なる。仙台の桜の名所は西公園や榴ヶ岡公園、三神峯公園などである。三神峯公園は桜の種類が異なるため、ソメイヨシノが散っていくころが桜の見ごろである。また、定禅寺通りや青葉通りのケヤキ並木の新緑は5月中旬頃から見られる。
3月から梅雨の始まる6月上旬までの時期は、降水量が少なく、夏至に近いこともあり、1年で最も日照時間が長い。そのため、すがすがしく、最も過ごし易い時期である。
- 151.3時間
180.5時間 - 151.9時間
161.1時間 - 182.3時間
159.2時間 - 190.9時間
164.9時間 - 198.7時間
180.9時間 - 127.9時間
120.1時間 - 127.7時間
147.5時間 - 155.4時間
177.5時間 - 119.8時間
112.9時間 - 151.8時間
129.9時間 - 140.2時間
141.4時間 - 144.7時間
171.1時間
[編集] 梅雨
仙台の梅雨は6月下旬から7月下旬にかけてである。オホーツク海気団の影響によって冷涼となることが多いため、蒸し暑くならず、不快ではない。ただし、全国的にみれば「毎日が梅雨寒」といえるような気候であるため、「仙台には1年に冬が2度来る」ともいわれている。
- 梅雨の時期に、仙台市近郊の利府町にて2002 FIFAワールドカップ日韓大会が行われたが、その内、決勝トーナメント1回戦の日本対トルコの試合(を含め3試合)が、宮城スタジアムで行われた。サッカー解説者の多くが「気温も湿度も高い蒸れた日本の梅雨の気候は、蒸し暑さに慣れている日本代表にとって有利だ」と語っていたが、宮城県沿岸部の梅雨は例年通り涼しかったために、この地域における梅雨が日本代表に利することはなかった。
- 5~7月頃、湿った暖かい南東風(イナサ)が冷たい親潮の上を通過する際に海霧を発生し、それが太平洋に開けた仙台平野の内陸まで入り込み、街全体が霧に包まれることがしばしばある。フルキャストスタジアム宮城でのナイターの試合では、この霧に照明の光が乱反射し、フライになったボールがよく見えないという問題が起きている。
[編集] 夏
平年値(30年平均 )は、夏日が64.6日、真夏日が16.7日となっているが、過去30年のデータでは、夏日が40~86日、真夏日が1~40日と、年によるばらつきが非常に大きい。これは、冷夏になった年が何度かあるためである。最近10年は冷夏が少なかったので、平年値(10年平均 )は、夏日が70.4日、真夏日が19.7日となっている。また、熱帯夜の平年値(10年平均)は0.4日であり、ここ10年間で8年間は熱帯夜が観測されておらず、熱帯夜が観測された年でも2日ほどであった。
冷夏の年には、寒流である親潮の上を渡って来る冷たい北東風「やませ」(コチ)の影響で気温が上昇しない日が続き、農作物に大打撃を与え、海のレジャーがほとんど出来なくなる。冷夏に周期性はなく、また冷夏の程度にもばらつきがあるが、分かり易さのため、海のレジャーの面から「真夏日の日数が年10日を切った年」で判断すると、1970年代、80年代は10年に3度と多かったが、それよりも前、あるいは90年代以降には、10年に1度程度となっている。近年で最もひどかった冷夏は1993年で、「1993年米騒動」が起こった。
仙台が日本の他の地域と違うのは、前述した通り「梅雨が涼しい」ということである。関東や西日本の梅雨の時期は、雨が降っていても気温が上昇して夏日や真夏日と判定されることが多いが、仙台では梅雨の晴れ間であっても真夏日となることはまれであり、また、梅雨前の5~6月に夏日になることもあまりなく、上記の夏日の大半と真夏日のほぼ全ては梅雨明け後に観測される。このように、仙台の夏は、梅雨明け後に急に始まり、「固め打ち」になるという特色がある。
いずれにせよ、仙台の夏(真夏日)は梅雨明け後からお盆過ぎまでの約1ヶ月に集中していて期間が短く、海のレジャーが好きな人にとっては物足りない気候である。しかし、不快な蒸し暑さや寝苦しさ等がなく、熱中症リスクも低いことから、その点では過ごし易い。
- 仙台の海でのレジャーには注意が必要である。仙台は、太平洋に面しているため波が高く、とても危険である。そのため、消波ブロックが設置してある海岸以外では遊泳禁止になっている。しかし、「波が高い」 ことは、一方で仙台の海をサーフィンのメッカにしており、プロ・サーフィン・ツアーの開催地にも選ばれている(→仙台港)。市内にはサーフショップがいくつもあり、スポーツ用品店ではボディボードが当たり前のように売られている。仙台の海は、冬は親潮の影響から水温が低いが、夏~10月くらいまでは黒潮の影響で水温が高い。サーファーたちは、季節によってウェットスーツを使い分け、水温・気温の高低に関わらず、一年中サーフィンを楽しんでいる。
- 紀伊半島沖あたりまで台風が来ると、うねりが仙台湾にまで達するようになる。そのため、仙台では台風を微塵も感じさせない快晴の天気であっても、海では波が高くなって危険である。一方、このうねりは、規則正しく整った大きな波として仙台の海に到達するので、ビッグウェーブを乗りこなせる上級サーファーたちが大勢海に繰り出す。もちろん、台風が仙台を直撃しているときは、強風で波が崩れてしまうので、全くサーフィンに適さない波となり、仙台のサーファーたちが海に出ることはない。湘南のような元々波の小さい海では、映画「稲村ジェーン」 のごとく台風直撃時の波に乗る人たちもいるようだが、もともと波の大きい仙台ではあり得ない。
[編集] 秋
仙台では、秋季の降雨量の方が梅雨の降雨量より多い。仙台周辺に接近する台風は、ほとんどが「雨台風」であり、「風台風」はまれである。また、芋煮会の開かれる季節である。市内のコンビニエンスストアの前に芋煮会用の薪が高く積まれている様子は、市民にとっては風物詩だが、他の地方の観光客には不思議な光景に見える。
紅葉前線の到来は、例年11月の中旬頃。仙台周辺の紅葉は、針葉樹の緑をバックにして、黄色と赤が入り混じる。