綏靖天皇
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綏靖天皇(すいぜいてんのう、神武天皇29年(紀元前632年)- 綏靖天皇33年5月10日(紀元前549年6月28日))は、『古事記』『日本書紀』に記される第2代の天皇(在位:綏靖天皇元年(紀元前581年)1月8日 - 同33年(紀元前549年)5月10日)。神渟名川耳尊(かむぬなかわみみのみこと)・神沼河耳命(古事記)。いわゆる欠史八代の1人で、実在しない天皇と捉える見方が一般的である(実在説もある)。
- 神沼河耳(かむぬなかはみみ)命、葛城(かずらき)の高岡宮に坐しまして、天の下(あめのした)知(し)らしめしき。この天皇、師木県主(しきのあがたぬし)の祖(おや)、河俣毘賣(かはまたびめ)を娶して生みませる御子、師木津日子玉手見(しきつひこたまでみ)命。(分注、一柱)天皇の御年、四十五歳(よそぢまりいつとせ)。御陵は衝田(つきだ)岡にあり。
(「神沼河耳命者 綏靖天皇也 其坐於葛城高岡宮 治天下也 此天皇娶師木縣主之祖河岐姬 生御子一柱 名喚師木津日子玉手見命 天皇御年肆拾伍歲 御陵在衝田岡也」『古事記』)
目次 |
[編集] 系譜
神武天皇の第3子で、母は事代主神の女・媛蹈鞴五十鈴媛命(ひめたたらいすずひめのみこと)である。
[編集] 皇居
都は葛城高丘宮(かずらきのたかおかのみや。現在の奈良県御所市森脇か)。
[編集] 御陵(所在地)
桃花鳥田丘上陵(つきたのおかのうえのみささぎ):現在の奈良県橿原市四条町井ノ坪
[編集] 事績
神武天皇42年(紀元前619年)に立太子、同76年(紀元前585年)3月に神武天皇が崩御。
詳細はタギシミミの反逆を参照
父の神武天皇が崩じた後、朝政の経験に長けていた庶兄の手研耳命(たぎしみみのみこと)は弟たちを害そうとした。神渟名川耳尊は母の歌からこのことを察知し、同母兄の神八井耳命(かむやいみみのみこと)と共に片丘(現在の奈良県北葛城郡王寺町)の大窖にいる手研耳を襲い、これを討った。この際、神八井耳は恐怖で手足が震えおののいて矢を放てず、代わりに神渟名川耳が矢を射て殺したという。この失態を恥じた神八井耳は弟を助けて天神地祇を掌り、神渟名川耳が天皇として即位することになった。
欠史八代とは系譜のみが記され事績が記されていない8人の天皇のことをいい綏靖天皇はその最初の人物とされているが、実際はこのように即位の際の兄弟間の争いのことが記されており、まったく事績が欠けているわけではない。
なお、南北朝時代に安居院澄憲の子孫によって編まれたとされる『神道集』には、綏靖天皇には食人の趣味があり、朝夕に7人もの人々を食べ、周囲を恐怖に陥れたため、人々は「近く火の雨が降る」との虚言を弄し、天皇を岩屋に幽閉して難を逃れたという逸話があるが、実在が定かでないだけに造作された可能性が高い。ペルシャの叙事詩『シャー・ナーメ』に登場する暴君ザッハークとの共通性を指摘する説もある。
『古事記』では、45歳で没したといい、『日本書紀』では、33年間の在位の後、西暦紀元前549年の84歳で没したとされる。
[編集] 在位年と西暦との対照表
綏靖天皇 | 元年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 7年 | 8年 | 9年 | 10年 |
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西暦 | BC581年 | BC580年 | BC579年 | BC578年 | BC577年 | BC576年 | BC575年 | BC574年 | BC573年 | BC572年 |
皇紀 | 80年 | 81年 | 82年 | 83年 | 84年 | 85年 | 86年 | 87年 | 88年 | 89年 |
干支 | 庚辰 | 辛巳 | 壬午 | 癸未 | 甲申 | 乙酉 | 丙戌 | 丁亥 | 戊子 | 己丑 |
綏靖天皇 | 11年 | 12年 | 13年 | 14年 | 15年 | 16年 | 17年 | 18年 | 19年 | 20年 |
西暦 | BC571年 | BC570年 | BC569年 | BC568年 | BC567年 | BC566年 | BC565年 | BC564年 | BC563年 | BC562年 |
皇紀 | 90年 | 91年 | 92年 | 93年 | 94年 | 95年 | 96年 | 97年 | 98年 | 99年 |
干支 | 庚寅 | 辛卯 | 壬辰 | 癸巳 | 甲午 | 乙未 | 丙申 | 丁酉 | 戊戌 | 己亥 |
綏靖天皇 | 21年 | 22年 | 23年 | 24年 | 25年 | 26年 | 27年 | 28年 | 29年 | 30年 |
西暦 | BC561年 | BC560年 | BC559年 | BC558年 | BC557年 | BC556年 | BC555年 | BC554年 | BC553年 | BC552年 |
皇紀 | 100年 | 101年 | 102年 | 103年 | 104年 | 105年 | 106年 | 107年 | 108年 | 109年 |
干支 | 庚子 | 辛丑 | 壬寅 | 癸卯 | 甲辰 | 乙巳 | 丙午 | 丁未 | 戊申 | 己酉 |
綏靖天皇 | 31年 | 32年 | 33年 | |||||||
西暦 | BC551年 | BC550年 | BC549年 | |||||||
皇紀 | 110年 | 111年 | 112年 | |||||||
干支 | 庚戌 | 辛亥 | 壬子 |
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歴代天皇一覧 | |||||||||
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1 神武 | 2 綏靖 | 3 安寧 | 4 懿徳 | 5 孝昭 | 6 孝安 | 7 孝霊 | 8 孝元 | 9 開化 | 10 崇神 |
11 垂仁 | 12 景行 | 13 成務 | 14 仲哀 | 15 応神 | 16 仁徳 | 17 履中 | 18 反正 | 19 允恭 | 20 安康 |
21 雄略 | 22 清寧 | 23 顕宗 | 24 仁賢 | 25 武烈 | 26 継体 | 27 安閑 | 28 宣化 | 29 欽明 | 30 敏達 |
31 用明 | 32 崇峻 | 33 推古 | 34 舒明 | 35 皇極 | 36 孝徳 | 37 斉明 | 38 天智 | 39 弘文 | 40 天武 |
41 持統 | 42 文武 | 43 元明 | 44 元正 | 45 聖武 | 46 孝謙 | 47 淳仁 | 48 称徳 | 49 光仁 | 50 桓武 |
51 平城 | 52 嵯峨 | 53 淳和 | 54 仁明 | 55 文徳 | 56 清和 | 57 陽成 | 58 光孝 | 59 宇多 | 60 醍醐 |
61 朱雀 | 62 村上 | 63 冷泉 | 64 円融 | 65 花山 | 66 一条 | 67 三条 | 68 後一条 | 69 後朱雀 | 70 後冷泉 |
71 後三条 | 72 白河 | 73 堀河 | 74 鳥羽 | 75 崇徳 | 76 近衛 | 77 後白河 | 78 二条 | 79 六条 | 80 高倉 |
81 安徳 | 82 後鳥羽 | 83 土御門 | 84 順徳 | 85 仲恭 | 86 後堀河 | 87 四条 | 88 後嵯峨 | 89 後深草 | 90 亀山 |
91 後宇多 | 92 伏見 | 93 後伏見 | 94 後二条 | 95 花園 | 96 後醍醐 | 97 後村上 | 98 長慶 | 99 後亀山 | 100 後小松 |
北朝 | 1 光厳 | 2 光明 | 3 崇光 | 4 後光厳 | 5 後円融 | 6 後小松 | |||
101 称光 | 102 後花園 | 103 後土御門 | 104 後柏原 | 105 後奈良 | 106 正親町 | 107 後陽成 | 108 後水尾 | 109 明正 | 110 後光明 |
111 後西 | 112 霊元 | 113 東山 | 114 中御門 | 115 桜町 | 116 桃園 | 117 後桜町 | 118 後桃園 | 119 光格 | 120 仁孝 |
121 孝明 | 122 明治 | 123 大正 | 124 昭和 | 125 今上 | ※赤字は女性天皇 |