自閉症
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自閉症(じへいしょう、Autism)は社会性や他者とのコミュニケーション能力の発達が遅滞する発達障害の一種である。
自閉症のデータ | |
ICD-10 | F84.0 |
統計 | 出典:日本自閉症協会 |
世界の患者数 | |
日本の患者数 | 360,000~1,200,000人 |
学会 | |
日本 | 日本自閉症スペクトラム学会 |
世界 | |
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目次 |
[編集] 定義(概念)
3歳位までに症状があらわれ、
- 社会的な相互交渉の質的な障害
- コミュニケーション機能の質的な障害
- 活動と興味の範囲の著しい限局性
の3つを主な特徴とする行動的症候群
[編集] 分類
自閉症は症例が多彩であり、健常者から重度自閉症者までの間にははっきりとした壁はなく、虹のように境界が曖昧であるため、その多様性・連続性を表した概念図を自閉症スペクトラムや自閉症連続体などと呼ぶ。
知的障害を伴う場合多いが、知的能力(一般的にIQで判断される)に問題がない自閉症のことを高機能自閉症と呼ぶ。 また、知的能力の優劣に関わらず、一部の分野で驚異的な能力を有する場合もあり、サヴァン症候群と呼ぶ。
なお、「高機能自閉症」と「アスペルガー症候群」、「低機能自閉症」と「カナー症候群」は基本的には同じものであり、臨床的には区別しなくてもよいとされている(言語障害がないものをアスペルガー症候群、言語障害があるものをカナー症候群と分類する場合もある)。本記事では同一のものとして扱う。
[編集] 分類図
(注)この図は一般的な自閉症スペクトラムを表しきっているわけではなく、知能指数と自閉傾向の強弱のみによる分類図にすぎない。
[編集] 高機能自閉症
自閉症スペクトラムのうち、知的障害がないもの(一般的にはIQ70以上)を高機能自閉症(知的遅れのないカナータイプ)やアスペルガー症候群(言語障害は無いが、視覚認知・空間認知力に、問題を生じる)と呼ぶ。「高機能」というのは知能指数が高いという意味であるが、平均的な健常者より高いとは限らず、知的障害との境界域の場合もあれば、平均的な健常者をはるかに上回る場合もある。1980年代以降、急速に認知されてきた。 詳しくはアスペルガー症候群の記事を参照。
[編集] サヴァン症候群
一部の自閉症児者では、カレンダーも見ずに特定の日の曜日を答えたり、驚異的な記憶力を有していたりする、いわゆるサヴァン症候群と呼ばれる能力がある場合もある。しかしサヴァンでなくても大なり小なり特異な才能を示す事が多いため(例えば、線描、裁縫)どこからをサヴァンというかが非常に難しい。
[編集] 原因
現在では先天性の脳機能障害によるとされており、多くの遺伝的因子が関与すると考えられている。
保護者の教育や生まれ育った環境が原因で自閉症になるということはあり得ない。
- フランス・パスツール研究所の研究チームが、フランス国立医学研究機構およびスウェーデン・イエーテボリ大学と行った共同研究では、自閉症者の脳内で遺伝子「シャンク3(SHANK3)」に異常があることが指摘されている。ただし、研究チームからはシャンク3で自閉症の全ての症状を説明できるわけではないと警告が発せられており、主要な社会的障害についてある程度説明ができるかもしれないと述べるにとどまっている。
- 父親が中高年のときに授かった子供である場合、新生児が自閉症になりやすいとする近年の米国の研究がある。同研究によると、父親が40歳以上の新生児は、自閉症や関連の症例が30歳未満の父親の場合の約6倍で、30~39歳の父親と比較すると1.5倍以上であったとされている。一方、母親については、高齢者で多少の影響を及ぼす可能性は排除できないものの、子供の自閉症に与える影響はほとんど認められなかったとされている[1]。
[編集] 統計
国際的な統計は少なく、現段階では増加傾向にあることだけがはっきりしている。
日本では1000人に1~2人の割合で生じているが、どこまでを自閉症の範囲とするかによって発生率は大きく違う。男性と女性の比率は4:1程度と言われている。
日本自閉症協会によると現在日本国内に推定36万人、知的障害や言語障害を伴わない高機能自閉症(アスペルガー障害とも言う)など含めると120万人いるといわれている。
[編集] 疫学
原因が完全に究明されていない現在、疫学・予防策は確立されていない。
[編集] 症状
言語の発達の遅れ、対人面での感情的な交流の困難さ、反復的な行動を繰り返す、行動様式や興味の対象が極端に狭いなどの様々な特徴がある。
「自閉」という言葉から、他者とのかかわりを一切持たない、寡黙というイメージを連想することもあるが、実際の自閉症の場合は、一般的に恥ずかしいと思って秘密にするような事でも正直に話してしまうなど、むしろイメージ的には自閉とは逆の「自開」であるという人もいる。
[編集] DSMの診断基準
DSMの診断基準によると、自閉症の主な症状は3つに分けられる。
- 限定された興味やこだわり、関心。(同一性保持への欲求、常同行動)
- 対人関係でのコミュニケーション能力の質的障害。
- 言葉の発達の遅れ。
一般的な低機能自閉症児の特徴の例として、以下があげられる。
- おもちゃ・本物の自動車の車輪や床屋の回転塔などの回転するものへの強い興味。
- 自動車・電車・バス・飛行機・船などの乗り物に関心が向き、うん蓄も豊富な場合が多い。
- 数字や風景など、特定のものに対する高い記憶能力。
- ある特定の音に対する強い不快感、物を規則正しく並べる行動。
- 何かして欲しい事があった場合に、そのことを直接言葉では伝えず(伝えられず)、近くの人の手を引っ張って対象物の所まで連れていく「クレーン現象」という行動。
- 客観性を持たない文章。
- または、事実だけを羅列し、新聞記事のような文章を書くこと。
- 特定の物、行動などに対する強い執着心。(対象は人によって全くといっていいほど異なる)
[編集] 視覚の優位性
自閉症児者は、耳で聞くよりも眼で見るほうが認識しやすいという視覚優位の特性がある(アスペルガーにはない)。このため、自閉症児に注意を与える時は紙などに書いて見せると効果があるとされる。[2]ただし、高機能自閉症及びアスペルガー症候群の中には、目で見た情報がかえって伝わりにくい場合がある。
[編集] 心の理論
- 「心の理論」とは自己と他者の識別、自分や他者の心の動きを推測するちからのことであり、自閉症者はこの「心の理論」において障害があるため、相互の人間関係に疎い、会話の雰囲気を理解出来ない、冗談を冗談と受け止めず真に受けてしまう、言外の意味を捉えられないなど、対人関係に問題を生じやすい。
- また、他人のする事を自分の立場に置き換えられずにそのまま真似するため、手のひらを自分側に向けてバイバイする。言語においても同様に相手の言葉を自分に置き換えて返答することが苦手で自分の事を「あなた」などの二人称で、相手の事を「わたし」などの一人称で呼んだりすることや、自分に対して「~してあげない」と言われると「~してあげたいの」等と返答したり、オウム返しなどの現象が見られる。
- 心の理論を推測する能力を問う試験として「サリーとアン課題」と呼ばれる試験がある。この試験では以下のような場面を想定している。
- 「あなたは友達と同じ部屋でおもちゃで遊んでいました。すると途中で友達がおもちゃをおもちゃ箱に入れてから部屋を出ていきました。友達がいない間に、あなたが友達のおもちゃをおもちゃ箱から取り出して、タンスの中に隠しました。さて、友達が戻ってきて、おもちゃで遊ぼうとするのですが、友達が最初におもちゃを出そうとして探す場所は、おもちゃ箱でしょうか、それともタンスの中でしょうか?」という質問をする。
- おもちゃを隠された友達は、隠された事をまだ知っていないので、最初に探す場所はおもちゃ箱の方のはずである。健常児や自閉傾向のない知的障害児であれば3~5歳くらいで正解出来るようになるが、自閉症児の場合は他人の心の動きを推し量る「心の理論」が障害されているため、かなり高年齢にならないと正解出来ない。
- これは知的障害がない高機能自閉症においてもあてはまり、やはり対人関係に問題を生じるケースがある。
[編集] 時間の概念形成の未発達
他の例として時間の「概念」が希薄な場合もある。時計で時間が分かるような自閉症児者のなかには、時間に強迫的になり全ての事柄がまさにその定められていた瞬間に起こる事を要求する例がみられる事がある。
例えば、「5分待っていて」と約束したくせに6分14秒も待たせたと被害感を持つ、などである。逆に4分30秒で戻れば、まだ5分経っていないので待ち続けるといった場合もある。このような症状がある場合でも、施設を利用出来るようにとウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートでは、提示する事により待ち時間を0にするホワイトカードと呼ばれるサービスを行う等、比較的認知された症例である。
[編集] 日常生活における困難
当事者が普段の生活で気になる・困る事項は下記のようなものがあげられる。
- 同一性が保持されない
- (例)本棚の本が巻数ごとにちゃんと並べてない(一見乱雑だが、本人のこだわりとして寸分違わず物を配置していることもある)
- 同じ時間にくる電車(バス)なのだが、形式等が違う(細部であっても許容できない場合もある)
- 未経験、予想外の状況、急な予定変更(特に本人にとって不都合な事態が生じた場合)
- (例)学校などで行事のため普段と日課が変わってしまった
- 楽しみにしていた行事が突然中止になった
- 気に入っていたおもちゃなどが紛失・破損してしまった
- 本人のこだわりが内的要因、外的要因問わずできなくなってしまう
- (例)周囲の人が本人のこだわりと理解していないため、その行為をやめさせてしまう
同一性の無さや、先の見通しが立たないこと、自分のやりたいこと(特にこだわり)が実現できないことに非常に不安、ストレスを感じる場合が多く、そういったことに対するストレス耐性は強くない人が多い。
ストレスが過度に高まった状態で、さらにストレスを増加させる事態(普段は本人も気にしないような日常の些細な出来事でも)に遭遇すると、それをきっかけに突然「パニック発作」を起こしたり「自傷・他害行為」を行うこともある。ストレスの原因が取り除かれる、あるいはパニック行為が終わった後は普段の状態に戻るが、情緒の不安定さはしばらく続くこともある。
しかし、事前に連絡を受けていたり、詳しい内容を把握できていれば、大抵のことは納得して受け入れられる当事者は多い。
[編集] 症状の多様性
なお、自閉症の症状は人によってかなり異なり、上記の特徴が当てはまらない場合もある。また、すべての事物に対して執着が強いということはなく、逆に一般的に気にするような事物に対し、無頓着であったりする。
[編集] 検査
脳波や、行動などで、判断する。
- 判定の際に参考とされる主な検査法
- 言語検査
- イリノイ式言語進路能力検査(ITPA)
- 絵画語い発達検査(PVT)
- 行動検査
- ブラゼルトン新生児行動評価法(Brazelton neonatal behavioral acales ; BNBAS)
- 発達検査
- 乳幼児発達スケール
- 遠城寺式乳幼児分析的発達検査
- 津守式乳幼児精神発達診断法
- TK式幼児発達検査
- 改訂新版幼児総合発達診断検査
- 改訂日本版デンバー式発達スクリーニング検査
- 早期発達診断検査
- 新訂版自閉児・発達障害児教育診断検査
- 新版K式発達検査
- 日本版ミラー幼児スクリーニング検査
- 国リハ式<S-S法>言語発達遅滞検査
- 絵画検査
- DAP(人物画)
- 言語検査
[編集] 自閉度を測る(自閉症スペクトラム指数(AQ))
自閉度(自閉症傾向)を測る指標のひとつに、「自閉症スペクトラム指数(AQ)[3]」がある。
これは、正常知能の成人であれば、誰でも、自己回答方式で、自分の「自閉症傾向」を測れるツールである。 [4] [5] [6]
★注意★
- AQは「診断ツール」ではなく、自閉症傾向のスクリーニング用ツール、つまり、自閉かどうか診断する前の、おおまかなふるい分け用のツールなので、AQだけで自閉症であるかどうかの診断はできない。
- AQの対象となるのは、正常知能の成人である。
[編集] AQ測定による調査でわかったこと
- 社会人や大学生の中にも、少数だがAQ上でAS/HFA群と同じ程度の高得点を示す人がいる
- 自閉症の診断を受けていない人にも、自閉症的な傾向を持つ人がいる
- AQで測定される自閉症スペクトラム傾向にはかなりの個人差がある
- 今後自閉症症状のメカニズムを解明する上で、アナログ研究的アプローチが可能である
[編集] 自閉症スペクトラム指数のカット・オフ点
自閉症スペクトラム指数で高得点(33点以上)をとった学生12名を診断したところ、12名中7名が自閉性障害またはアスペルガー障害の診断基準にあてはまった(ただし、生育史が不明であることと、現在不適応を起こしていないため、自閉性障害とは診断されていない)。
自閉症スペクトラム指数33点以上には成人のアスペルガー症候群・高機能自閉症者群の9割近く(87.8%)が含まれるのに対し、健常群で33点以上をとるのはわずかに3%弱であることから、自閉症スペクトラム指数のカット・オフ点(健常者と自閉症の識別点)は33点と決定された。 [7]
[編集] 自閉症の極端男性脳理論
Baron-Cohenは、自閉症スペクトラム指数の調査結果から、「自閉症の極端男性脳理論」を提唱した。[8] [9]
[編集] 合併症
自閉症は、ADHDや学習障害などを併発する場合がある。低機能自閉症は知的障害も合併している。まれにダウン症と合併する例もある。
なお、興味深いことに、自閉症者は健常者と比べて統合失調症に罹患する確率が極めて低いという報告がある。例えば一般人の統合失調症罹患率は0.8%だが、自閉症者の罹患率はこれよりもずっと低く、報告は世界で10例に満たない。[10]ただし、文献によっては一般人と同率、あるいはより高率で発生すると書かれているものもある。
[編集] 診断
医学的にはDSM-ⅣかICD-10の診断基準により診断される。なお、知的障害の有無は診断に関係ない。
- 診断名について
一般に「自閉症」と呼ばれる場合には、DSM-Ⅳでは「自閉性障害」「アスペルガー障害」「他に分類されない 広汎性発達障害、PDDNOS」、ICD-10では「小児自閉症」「アスペルガー障害」「非定型自閉症」と診断される。いずれのカテゴリーも、「広汎性発達障害」の下位カテゴリーである。なお、「高機能自閉症」というカテゴリーはDSM-Ⅳ、ICD-10では無い。
「自閉症」という言葉には様々なイメージがあり、中には誤っているイメージも多い。このため、医師が親に話すときに「自閉症」という言葉を使うと、親が誤ったイメージを持ってしまう危険がある。このため、より広い概念の「広汎性発達障害」という言葉を使う場合もある。
[編集] 治療
現代医学では根本的な原因を治療する事は不可能とされている。 「TEACCH」「ソーシャルスキルトレーニング」などの各種プログラムなどによって、健常者に近い社会生活が送れるようになる場合もあるが、これらのプログラムは本人の社会生活における困難を軽減するものであって、根本的な原因が治癒したわけではないとされる。
[編集] 予後
高度の障害を除き、自閉症の特徴が高齢になるまで続くことは少ないとされている。歳をとるにつれ、その特徴的な行動が減っていく例も多く報告されている。
[編集] 診療科
- 小児科
- 小児神経内科
- 遺伝科
- 神経科
- 神経精神科
- 精神科
- 精神神経科
- 児童精神科
[編集] 歴史
- 病気の発見(認知)の歴史的変遷
- アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の児童精神科医であるレオ・カナーが「早期幼児自閉症」として1943年に報告した。[11]カナーは、「聡明な容貌・常同行動・高い記憶力・機械操作の愛好」などを特徴とする一群の幼児に対し、統合失調症(精神分裂病)の一症状を表す用語である「自閉」という言葉を用い、「自閉症」(オーティズム)と名づけたのである。カナーの報告した子供たちは、現在の低機能自閉症に当たるとされる。なお、カナーは自閉症の研究で自説に反する新事実が発見されると、自説の誤りを認識し訂正していった。
- 翌年の1944年、オーストリアのウィーン大学の小児科医ハンス・アスペルガーが、カナーの報告よりも一見軽度ではあるが、共通点がある一群の子供たちのことを報告した(両者に交流はない)。[12]当時ヨーロッパは大戦中であり、オーストリアは敗戦国側であったため、この報告は戦勝国側では1980年代まで脚光を浴びることはなかった。アスペルガーの報告した子供たちは、現在の高機能自閉症に当たるとされる。
- 原因の発見の歴史的変遷
- 症状の歴史的変遷
- カナーは自閉症児について、「先天的な知的障害があるわけではなく、心を閉ざしているだけであり、本来は聡明なのだろう」と考えた。
- 分類の歴史的変遷
- アスペルガーの死去の翌年の1981年に、自身にも自閉症の娘がいるモズレー病院の医師ローナ・ウィングが、英語圏ではほとんど忘れられていたアスペルガーの論文を英訳して再発表し、高機能自閉症の存在を広く知らせた。それまでのイギリスでは知的障害のある自閉症児にしか福祉の手が差し伸べられていなかったのであるが、自閉症の本質は知的障害や言語障害ではなく対人関係の障害であるため、高機能自閉症も支援の対象にするべきだとの考えである。
- 日本において、1990年代以前は、知的能力によって重い自閉症、軽度の自閉症とわけるのが主流だった。現在では自閉症は、症状が重い軽いはなく連続している状態(スペクトラム)としてとらえる理論が紹介され、支持する人が多い。
- 自閉症には様々な行動障害があり、人によって軽かったり重かったりする。そのため、研究者によって分類が違う。現在でも症状の重度、軽度に注目して低機能自閉症、高機能自閉症と分類する人もいるが、本、論文、あるいは文部科学省、厚生労働省などの報告書では、自閉症と単に表記するか、自閉症の分類として自閉症と高機能自閉症とわけたり、広汎性発達障害とわけるのが多い。
- 診断の歴史的変遷
- カナーは自閉症を統合失調症の幼児版であると考え、「小児分裂病」とも呼んだ。
- ラターによる脳障害説以降、自閉症と統合失調症はまったく違う障害である事が分かってくる。
- 治療の歴史的変遷
- カナー、ベッテルハイムにより唱えられた後天的原因説によって、各地の治療施設では、虐待によって発症したのならばその逆をやればよいとの考えのもと、「絶対受容」という治療方針が取られたが、あまり治療効果はなく、むしろ成年以降の社会適応が困難になったといわれる。ベッテルハイム自身も障害児の入所施設の所長であったが、入所児童への虐待やデータ捏造などがあったという疑惑がある。なお、ベッテルハイムはのちに自殺した。
- アメリカの精神分析のメッカであるカール・メニンガー病院では、一時期自閉症も精神分析治療の対象としたが、精神分析が自閉症に効果がないと判明すると、潔く自閉症部門を閉鎖した。このように精神分析や受容療法などの試みが一時期脚光を浴びたが、あまり効果がないと次第に分かってきた。
[編集] 社会的影響
[編集] 日本
- 病気概念
- 「弟がストレスで自閉症になってしまった」[13]
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- 自閉症は先天性の障害であり、生まれ育った環境が要因として生じる障害ではない。
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- 「節電のため(脳を)自閉症モードに」[14]
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- 「自閉モード」ならともかく「自閉症モード」なので、既存の自閉症を意識して書かれた表現だと思われる。
- しかし、自閉症という障害の特徴が、「自ら、または自己を閉じている」ことだという、80~90年代(漫画が描かれた当時)における一般的な認識は誤りである。例えば、一般の人の(脳は)特定の音だけ選別して聞くことができるのに対して、自閉症の場合はあらゆる雑音を収拾してしまい立ち往生してしまう。
- このまるで「自閉」というより「自開」とでも表現するほうが適当であるような状態を考えれば、この漫画の「『自閉症』モード」という表現は正確には不適当で、自閉症に対する誤った認識の例と言える。
- ただし、国語辞典[15]などによれば、これらの使用例も完全な誤りとは言い切れない。統合失調症などにおける、自己の殻に閉じこもり、外界に関心示さない症状もまた「自閉」あるいは「自閉症」と呼ばれるためである。
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- 「自閉症」[16]
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- 「自閉症」という言葉の意味を「autism-自閉症-」の歌詞内で取り違えていたことにより、自閉症協会に抗議を受け、曲自体が絶版となる。
- (しかしこの曲は自閉症患者のことを歌ったものではなく、当時のレコード会社を批判する歌である)
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- 「(赤ちゃんに)話しかけなさいと産んだ先生にも本にも書いてあるが続かない。」「(中略)こんなことを続けていたらいつかうちの子は『自閉症』とかそういう心身に障害のある子に育つのではないか」「(~という生活をしていたわけですが私のアカンボは)自閉症にはなりませんでした」[17]
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- 自閉症は、ここで言われるような発育過程における外的要因で生じる障害ではない。生得的(先天的)な器質障害である。
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- その他、多くのマンガや小説(特にパロディやギャグを扱ったもの)では不適切な意味で「自閉症」の誤用が目立ち、日本における自閉症認知が明らかに低いことが露呈されているといえる。
- 原因
- 遺伝子の異常が原因だとの説、水銀などの重金属の蓄積が原因だとの説[18]などがある。一時期、七田眞や岩佐京子らによって「テレビの見せすぎが自閉症の原因」などの環境原因説が流行し、自閉症の子を持つ親は周囲から責められてつらい立場であったが、現在ではごく一部の学者以外は、自閉症は先天性の障害であり、育て方が原因ではないとしている(岩佐はのちに自説を一部撤回)。
- 日本ではベッテルハイムの著書「虚ろな砦」が広く読まれたため、未だに自閉症は虐待や過保護が原因である「母原病」であるとの認識が一部に根強い。
- 日本大学文理学部体育学科の教授である森昭雄が2004年~2005年前後にかけ、講演や自著の中で「テレビやテレビゲーム等が原因で後天的自閉症になる」と持論を展開していたように、近年でも大学教授でさえ誤った認識を持っていた例がある。
[編集] 福祉制度
現在、発達障害者支援法の制定など高機能自閉症患者に対する福祉の整備が進められている。また、公式には対象外だが、実務上は療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の取得や障害年金の受給が可能である場合もある。事実、全国でいくつかの自治体は療育手帳等を交付している。
[編集] 自閉症を扱った作品
- コミック
- 曽根富美子『この星のぬくもり―自閉症児のみつめる世界』ベネッセコーポレーション、1997年12月。
- 戸部けいこ『光とともに… 自閉症児を抱えて』第1巻、秋田書店、2001年7月。(連載中、第10巻(2006年8月)まで刊行されている)
- 小林まこと『格闘探偵団』(4)、(5)、走れ!タッ君、講談社、2006年1月(4、5巻両方とも)。
- さがわれん『はだしの天使』第1巻、ぶんか社、2004年8月。原案:脇坂友美(第3巻(2005年10月)まで刊行)
- 小説
- 山下久仁明『ぼくはうみがみたくなりました』2002年10月、ぶどう社。
- 成沢達哉『Myフェアリー・ハート―わたし、アスペルガー症候群。』文芸社、2004年3月。(自閉症者自身による小説)
- 藤家寛子『あの扉のむこうへ―自閉の少女と家族、成長の物語』花風社、2005年4月。(自閉症者自身による小説)
- 自伝
- テンプル・グランディン、マーガレット・M・スカリアーノ共著『我、自閉症に生まれて』カニングハム久子訳、学習研究社、 1994年3月。(原著:Temple Grandin with Margaret M Scariano, Emergence: Labeled Autistic 1986.)
- ドナ・ウィリアムズ『自閉症だったわたしへ』河野万里子訳、新潮社、1993年。(原著:Donna Williams, Nobody Nowhere, 1992.)
- 森口奈緒美『変光星―自閉の少女に見えていた世界』花風社、2004年1月。(『変光星―ある自閉症者の少女期の回想』飛鳥新社、1996年、の改題復刊)
- グニラ・ガーランド『ずっと「普通」になりたかった。』ニキ・リンコ訳、花風社、2000年4月。(原著:Gunilla Gerland, A Real Person, 1998.)
- ニキ・リンコ『俺ルール!―自閉は急に止まれない』花風社、2005年7月。
- 映画
- テレビドラマ
[編集] 関連項目
[編集] 関連人物
- バーナード・リムランド(アメリカ自閉症協会創立者)
- 生天目仁美(実弟の闘病記が新聞に掲載。本人も家族写真に登場)
[編集] 外部リンク
- 社団法人 日本自閉症協会
- 日本発達障害ネットワーク
- 自立をめざして!
- 2ch育児板自閉症スレまとめサイト 2ちゃんねるの自閉症スレッドに投稿された親同士の発言のまとめ
- アメリカ自閉症協会
- イギリス自閉症協会
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[編集] 脚注・引用文献等
- ^ Reichenberg A, Gross R et al. (2006). "Advancing paternal age and autism.". Arch Gen Psychiatry. 63 (9): 1026-1032. PMID 16953005.
- ^ 門 眞一郎「自閉症の人の理解(認知)の特徴(視覚的構造化の理論的根拠)」『自閉症は自閉症』2002年、4-5ページ
- ^ Baron-Cohen他、Autism-Spectrum Quotient、2001
- ^ 自閉症スペクトラム指数(英語版)
- ^ 自閉症スペクトラム指数(日本語版)
- ^ 自閉症スペクトラム指数(日本語版)のWWW版(採点機能付き)
- ^ 若林明雄「自閉症スペクトラム指数AQ 日本語版について」『自閉症とADHDの子どもたちへの教育支援とアセスメント』国立特殊教育総合研究所科学研究費報告書、2003年、47-56ページ
- ^ Baron-Cohen S. The extreme male brain theory of autism. Trends in Cognitive Sciences 6: 248-254, 2002.和訳
- ^ 同上 解説新聞記事(英文)
- ^ 川崎葉子「自閉症研究の歴史…病因論の変遷」『自閉症概念の移り変わり…研究の動向を通して』
- ^ Kanner,L:Autistic disturbances of affective contact.Nervous Child,2:217 250,1943.
- ^ Asperger,H.:Die“Autistischen Psychopathen”im Kindesalter.Archiv.fur Psychiatrie und Nervenkrankheiten,117:76-136,1944.
- ^ テレビドラマ「裸の大将」 関西テレビ 1980~1997
- ^ 士郎正宗「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」講談社、1991 脳以外を義体化している主要人物のセリフ
- ^ 『広辞苑 第三版』新村出編、岩波書店
- ^ 黒夢「autism-自閉症-」 『LIVE OR DIE-Corkscrew A Go Go』(VHS:1999、DVD:2000)『pictures vol.1』(DVD:2000)
- ^ 伊藤比呂美「良いおっぱい 悪いおっぱい」集英社、1992
- ^ Michael Lesserなど