養護学校
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養護学校(ようごがっこう)とは、特別支援教育(特殊教育)を行う学校のことであり、視覚障害者教育を行う盲学校と聴覚障害者教育を行う聾学校の対象とならない障害を持った人々などを対象する学校である。
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[編集] 概要
養護学校には、幼稚部、小学部、中学部、高等部(高等養護学校)、「高等部の専攻科」があり、入学資格(学齢など)はそれぞれ幼稚園、小学校、中学校、高等学校、「高等学校の専攻科」に準じている。
養護学校は多様な人々を対象としており、法的には「知的障害者を教育する養護学校」「肢体不自由者を教育する養護学校」「病弱者を教育する養護学校」の3つの類型が設けられている。さらに、各養護学校の学級には、1つの障害を有する在学生で構成される一般学級と、複数の障害を有する在学生で構成される重複障害学級がある。(京都市は除く)
養護学校の高等部の入学にあたっては、一般の高校受験と同様、簡単な入学試験がなされることが多いが、出願資格を「中学校特殊学級に在籍する者」「養護学校の中学部に在籍する者」「療育手帳所持者」に限定している場合もあり、普通学級で教育を受けてきた人の入学が困難になる場合もある。
養護学校は普通学校と違う学習指導要領になっており、特に知的障害者を教育する養護学校では高等部でも通常の小学校並みの学習内容が多い。
養護学校は、小学校や中学校をはじめとする普通学校と比べて、幼児・児童・生徒1人当たりに投入される税金の費用が高い(普通学級の10倍程度)。地方公共団体が財政難であることから、養護学校を廃校とすることも増えてきている。しかし養護学校を支持する障害児の保護者からは不安の声が上がっている。
養護学校という名前では就職や結婚の際に不利になる場合もあるため、高等養護学校の通称校名を「○○高等学園」にするなど、一見して養護学校だと分からないように配慮している県もある。
「将来的には、養護学校に大学部も作って欲しい」や「将来的には、養護学校に青年学部も作って欲しい」、「将来的には、年齢を延長して一般特別学部も作って欲しい」、「将来的には大学に知的障害者用の特殊学級を設置して欲しい」というような要望も聞かれることがあるが、大学部の新設は計画されていない。ただし、法制度に基づいて設けられている「高等部の専攻科」や、各学校が独自に設ける「研修科」(専攻科の修了者を対象とする課程)などの高等教育に相当する課程は存在している。
2007年度から導入される特別支援教育により、盲・聾・養護学校の区別がなくなるため、自治体にもよるが、「○○養護学校」から「○○特別支援学校」へと校名が変更される地域がある。
[編集] 歴史
1979年以前において養護学校は、義務教育が行われる学校ではなく、軽度障害の人しか入学できず、重度障害、重複障害の人は就学猶予や就学免除という名の就学拒否を言い渡され、自宅や入所施設に待機していた。養護学校の義務教育化に対しては、賛成派と反対派が存在し、論争が行なわれた。特に脳性麻痺者グループの「青い芝の会」などは、「養護学校の義務化は障害児を地域の学校から排除することに繋がる」として反対運動を展開した。しかし結果的には1979年に義務化され、重度・重複の人も養護学校に入学できるようになった。その反面地域の普通学校からの障害児の排除もみられた。分離教育であるとの批判は継続してみられる。(統合教育参照)
そのあと、義務化により在籍生徒に重度・重複の人が多くなったため、軽度の在学生に対して十分な教育ができなくなるという事態が生じた。このため一部の都道府県では、既存の養護学校高等部から高等養護学校(こうとうようごがっこう)という高等部のみの養護学校を作って、軽度の生徒に対する職業教育の場と位置づけた。但し、障害者でない人は見つからない限り入学や編入学、転入学ができない。
[編集] 養護学校の種類
養護学校には、3つの異なった種類がある。
- 知的障害者を教育する養護学校
- 肢体不自由者を教育する養護学校
- 病弱者を教育する養護学校
- 病弱児のためのものである。慢性の呼吸器疾患、腎臓疾患及び神経疾患、悪性新生物などの疾患で、継続して医療下生活規制の必要な子供を「病弱児」といい、これは大抵の場合それぞれの地方の国公立病院に併設または隣接し、そこに入院している子供達を中心としている。各都道府県に1~2校くらい設置されている。近年、長期不登校児童の受け入れをしているのも病弱者を教育する養護学校である。
- 病弱児のための養護学校が近くにないか、設置されていない場合、院内学級や訪問学級という名前で、地方の基幹病院の小児科病棟の中に、病弱児のためのクラスが設けられているが、最寄の小中学校の特殊学級として設置されているものと、知的障害・肢体不自由・病弱養護学校の分校・分教室として設置されているものがある。
養護学校という名前で一般によく知られているのは、「知的障害者を教育する養護学校」であり、各都道府県で最も多く、2桁程度の数の学校が設置されている。「肢体不自由者を教育する養護学校」は、1桁かそれよりやや多い程度の設置数である。都道府県によっては「知的障害者を教育する養護学校」と「肢体不自由者を教育する養護学校」が併設されている学校もある。
[編集] 養護学校の教員
公立の養護学校には、都道府県立と市町村立があるが、公立の小学校・中学校の教員は市町村立の養護学校に容易に転勤できるが、都道府県立の養護学校に転勤するには試験を受けなければならないという地域もある。このため、転勤に試験を要する地域では、都道府県立の養護学校は、教員の交替が少なく、ベテランの教員が多いという見方もある。
養護学校の教員は、必ずしも養護学校教諭の免許状を持っているわけではない。教育学部の教員養成課程においては、大学在学中より特別支援教育(特殊教育)を志していない限り、積極的に特殊学校の教員免許状を取得する教育課程は編成されていない。なお近年は、都道府県の教育委員会の主導によって、養護学校教諭の免許状の授与を受けるための免許法認定講習が実施されており、養護学校教諭の免許状を保有している教員の率も上昇している。
[編集] 関連項目
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