KAMAKURA
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
KAMAKURA | ||
---|---|---|
サザンオールスターズ の アルバム | ||
リリース | 1985年9月14日 1985年10月21日 (KAMAKURA-BOX) 1989年6月25日(再発) 1998年5月22日(再発) |
|
録音 | 1985年3月~8月 VICTOR AOYAMA STUDIO FREEDOM STUDIO in Tokyo |
|
ジャンル | ロック | |
時間 | Disc1 44分23秒 Disc2 42分50秒 Total 87分13秒 |
|
レーベル | ビクタータイシタ | |
プロデュース | サザンオールスターズ 高垣健 藤井丈司 |
|
チャート順位 | ||
|
||
ゴールド等認定 | ||
|
||
売上枚数 | ||
サザンオールスターズ 年表 | ||
人気者で行こう (1984年) |
KAMAKURA (1985年) |
バラッド2 '83~'86 (1987年) |
『KAMAKURA』(カマクラ)は、サザンオールスターズの8枚目のオリジナルアルバム。1985年9月14日発売。発売元はビクターTAISHITAレーベル。ジャケット表記など公式にも『kamakura』として表記されることがある。
目次 |
[編集] 解説
バンドとしては非常に珍しい2枚組のオリジナルアルバム。サザンのアルバムにおける人気投票では、常に最高位を争うアルバムである。「国民待望の2枚組」という触れ込みで発売され、明石家さんまが出演したCMも大変話題になる。さんまがCMに起用された背景には桑田佳祐が「アミダばばあの唄」を提供したことが理由である。このCMのギャラがウォークマン一個だけだった、という逸話は有名であり、さんまの持ちネタの1つでもある。また、さんまはこの後サザン活動休止中の企画盤『バラッド2 '83~'86』のCMにも出演した。本作のCMは2004年にDVD『ベストヒットUSAS (Ultra Southern All Stars)』に収録されている。
発売された当時はその完成度の高さから「これがラストアルバムになるのではないか」と解散説まで浮上したが、それだけ当時のサザンが高い注目を浴びていたという事を証明する現象でもある。その完成度の宛ら、総レコーディング時間は1800時間を費やしたとも言われ、メンバーも「セミが鳴いているときにレコーディングしていると思って外に出たら雪が降っていた」という逸話も残っているほどで、ファンのみならず一般リスナーまでもを巻き込む人気となった。オリジナルアルバムの2枚組で有名なものは、ビートルズの『ホワイト・アルバム』がある。その他この後ヒットしたものにはB'zの『The 7th Blues』や、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの『ステイディアム・アーケイディアム』があり、サザン自身2005年に発売した『キラーストリート』もミリオンセラーを達成している。
この後2005年に再び2枚組オリジナルアルバム『キラーストリート』を発表し話題になったが、その際も同様に解散説などが囁かれている。2枚組オリジナルアルバムを通算で2枚発表する例は、アイドルなどを除けばJ-POPバンドとしては極めて珍しく、どちらも大ヒットとなった例は後にも先にもサザンだけである。ソロでは原由子が1991年に2枚組アルバム『MOTHER』を発表している。こちらはサザンのソロメンバーとしては、唯一の2枚組オリジナルアルバムとなっている。
このアルバムは「非常に珍しい2枚組のオリジナルアルバム」などと言われるが、当初は1枚だけで7月頃の発売を予定していた。だが製作が間に合わず、8月リリース予定に延期されると同時に「2枚組のアルバムとして発売」という形になったが、その予定にも間に合わず9月リリースへと延期されたという話がある。その為かアルバムとしての完成度に比して、一部の曲には明らかに手の入りが悪いものもあり、その部分を批判されることもある。それでも本作に影響されたことを公言するミュージシャンは小室哲哉や小林武史など数多くいる。
音楽的には、当時出始めたサンプラーやデジタル・シンセサイザー、ドンカマチックなどが多く使用され、サウンド的に『かなり実験的であった』と後のインタビューで語られている。また桑田によると、実際に灰皿を叩いた音なども使われているとのこと。
収録曲の多さ、そして高い売上が示すような完成度の高いアルバムになっているが、実際はアルバムレコーディングの前後に関口と桑田の確執が起こっている。このため一時は本当に解散の危機に見舞われたため、もてる楽曲をすべて投入したのがこのアルバムでもあった。空中分解をしそうなバンドを辛うじて繋ぎ止めたのは、後に脱退する大森であった。皮肉にもサウンド的にもサザンの音楽的にも適度な緊張感を含んだ完成度の高い作品になった。
また、本作からは「メロディ (Melody)」や「Bye Bye My Love (U are the one)」など特に人気や知名度が高い曲が多い。オリコンでの売上は累計約98.9万組を記録し、当時のサザン最大のセールスにもなった(再発、同発のCDなども含む)。ビクター発表によると150万組。この作品を最後にサザンはグループでの活動が休止となりソロ活動に移行する。ソロ活動については各メンバー、桑田佳祐、KUWATA BANDを参照。
オリコンCDチャートで初の週間売上1万枚(組)を記録した作品でもある。
ちなみに発売後ステッカーや1986年度のカレンダーなどとセットになった『KAMAKURA-BOX』なる物も発売されている。
[編集] 収録曲
シングル収録曲は各シングルで説明しているため、ここでは説明を省略する。
[編集] Disc 1
- Computer Children
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司)
歌詞カードには「“Computer Children”は、スクラッチ、不規則なリズムなどの各種のEffect、処理が行われています。未体験のサザン・サウンドをお楽しみください。」との説明書きがある。サザンとしてだけでなく邦楽としてこれほど画期的なリズムやサウンドの作品は衝撃的であり、あまりに不協和音なことも説明に至った理由である。ディスクの音飛びと誤解されないようにとの考慮でもあった。歌詞は当時テレビゲームやコンピュータばかりを弄り外で遊ぶことが少なくなった子供たちへの揶揄になっている。富士通テレフォンCMソング。 - 真昼の情景 (このせまい野原いっぱい)
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司 & 大谷幸)
サブタイトルの由来は、森山良子の「この広い野原いっぱい」から。歌詞は共産主義国家を痛烈に批判している。 - 古戦場で濡れん坊は昭和のHero
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ)
古戦場とは鎌倉時代末期に新田義貞が鎌倉を攻撃した際の伝承が有名な稲村ケ崎のことである。他には極楽寺坂などの歌詞も登場。 - 愛する女性(ひと)とのすれ違い
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司)
実験的な楽曲の多い本作の中で、数少ない正統派の切ないラブバラード。発売当初はライブなどでも頻繁に披露されていた。 - 死体置場でロマンスを
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ & 大谷幸)
歌詞がドラマティックなストーリー仕立てになっており、サスペンスシリーズ第3弾と評される。ちなみに第2弾は『人気者で行こう』収録の「メリケン情緒は涙のカラー」、第4弾は31stシングル「涙のキッス」c/wの「ホリデイ ~スリラー『魔の休日』より」と言われる。
歌詞は主人公の既婚の男が、最近口説いた彼女との香港でのデート中に、突然謎の中国人・韓国人に拉致され、車で連れ去られたのち何処かの檻に閉じ込められる。男は「人違いじゃないのか?」と恐怖に慄く。途中で妻から突然の電話があり、事前に浮気に感づいていた妻が仕組んだ罠である事が分かる、という凝った内容である。
“T-Bone”とは白骨死体、或いはその一部の意。“T”はメロディーに添ったアクセントの役割なので意味は無い。
全体の歌詞から、主人公とその妻は西洋人で、相当な財力・権力を持った実業家かマフィアではないか、また、白骨死体は実は偽物だった、等とも解釈できる。
1番の後の間奏で桑田の「cachito!(カチート)』の掛け声と共に野沢秀行によるティンバレスのソロ演奏が入る。「cachito」とは息子、分身、欠片などを意味するスペイン語だが、ティンバレス演奏の名手ティト・プエンテの演奏中の掛け声でもある。一部のカラオケ機器では掛け声が「カプチーノ」となっているが誤りである。2番後の間奏では夫役の小林克也と妻役のLINDAの英語による電話での掛け合いが入る。そのため、クレジットには2人の名前がTelephoneとして記載されている。 - 欲しくて欲しくてたまらない
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司)
現時点では「KAMAKURA」のみに収録となっているナンバー。ポップながら暗めの曲調が特徴。 - Happy Birthday
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司)
タイトル通り誕生日をテーマにした桑田作では珍しいタイプの楽曲であるが、若干過激な歌詞も見られる。 - メロディ (Melody)
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ)
23rdシングル。本作のCMにも使われ、明石家さんまが口パクでこの歌を口ずさむCMが話題となった。サザンのシングルの中で比較的一般的にも知名度、人気が高いものの、桑田自身はあまり好んでいない曲として知られるが、女性ファンに人気が高い曲。 - 吉田拓郎の唄
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司 管編曲:新田一郎)
当時引退宣言をしたフォークソング界の大御所、吉田拓郎を名指してのメッセージソング。少々過激な内容で、吉田拓郎のファンなどから批判も相次いだ。しかし、サザンが『勝手にシンドバッド』でデビューをした時「何を言っているか聞き取れない、あれは歌か」などのバッシングを受ける中で、吉田は「素晴らしい。僕はテレビがダメだったが彼はテレビを壊している」と絶賛するなど、吉田本人も桑田のことを認めており、桑田も吉田を尊敬しているからこそ大っぴらに歌ったのではないかとされる。内容は桑田が影響を受けた事を示唆し、そして決別する内容になっている。歌詞には吉田拓郎の黄金期の曲に出てくるフレーズがいくつか出てくる。2003年のツアーでは当時病気療養中だった吉田に向け、彼への激励として大幅に歌詞が変更された同曲が歌われた。歌詞中の「フォークソングのカス」の「カス」とは、他人を侮蔑・揶揄する意味での“残りカス”ではなく、音楽業界用語でいう“おいしいところ”という意味で用いているが、歌詞の内容からすると誤解を招き易い表現である。 - 鎌倉物語
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ 弦編曲:大谷幸)
キーボードの原由子メインボーカル曲。鎌倉付近の情景が情緒豊かに歌われている人気の高い曲。
この曲は桑田と原の長男がお腹にいる状態で、当時の自宅マンションにレコーディング機材を運び込んで原はベッドに座りながらの状態で歌入れがされた。当初からこのような状況でのレコーディングを想定して作曲がされた為、それまで原の唄う曲はソロ作品も含めて、コブシを効かせた歌謡曲的な歌唱を多く求められていたが、本作はそれまで少なかったポップ調の優しい歌唱が特徴的である。
ちなみに次男がお腹にいるときに歌入れした曲は原由子ソロ復活曲の『あじさいのうた』である。
イントロも印象が強く、TV番組のBGMなどで使われることも少なくない。
タイトル通り鎌倉の地名や名所が歌詞に登場。江ノ島電鉄も登場することから、2002年10月15日から同年12月29日までこの曲と原のソロ曲「あじさいのうた」の歌碑が、江ノ電100周年記念キャンペーンとして計6つの駅で設置された。設置されたのは藤沢駅、江ノ島駅、鎌倉高校前駅、極楽寺駅、長谷駅、鎌倉駅の6駅。ちなみにこの間、藤沢駅と鎌倉駅では発車ベルに代わって「鎌倉物語」のメロディが使用された。
[編集] Disc 2
- 顔
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司)
「この顔でモテたら面白い」という強烈な自虐が印象的な、男のコンプレックスを唄った曲。歌詞中の「女人瓜売僕助平」(にょにんうりうりぼくすけべい)は桑田の造語。コード進行も大変特徴的である。 - Bye Bye My Love (U are the one)
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ & リアル・フィッシュ)
22ndシングル。「メロディ (Melody)」同様に人気、知名度とも非常に高い。 - Brown Cherry
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司 管編曲:新田一郎)
日本語と英語とのダブル・ミーイングが効果的に使われている曲で、歌詞は非常にエロティックな表現を用いている。 - Please!
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ & 原田末秋)
曲の最後では桑田の敬愛するエリック・クラプトンが在籍したバンド、クリームの「Sunshine on your love」のイントロがそのまま使われている。 - 星空のビリー・ホリデイ
(作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐・八木正生 編曲:サザンオールスターズ & 八木正生)
休日を意味する“Holiday”ではなく、ジャズ・ボーカルの巨匠・ビリー・ホリデイの悲劇を唄った曲。桑田ソロ曲の「黄昏のサマー・ホリデイ」とタイトルが似ているが、双曲に繋がりはない。作詞は桑田佳祐、作曲は「Dear John」に続き桑田佳祐・八木正生の共作。イントロやアウトロで挿入される「カノン」などのバロック調を思わせるコード進行が印象的であり、美しく彩りを与えている。 - 最後の日射病
(作詞・作曲:関口和之 編曲:サザンオールスターズ & 大谷幸)
ベースの関口和之がメインボーカルを取った曲であり、作詞・曲も関口が担当で、桑田の作品には無い独特の世界感である。 - 夕陽に別れを告げて ~ メリーゴーランド
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ & 大谷幸)
桑田が青春時代を過ごした鎌倉学園高等学校での思い出を唄ったノスタルジックな曲。後にライブなどで演奏され評価を高めた。
『タイニイ・バブルス』収録の「ふたりだけのパーティ ~ Tiny Bubbles (type-A)」と同様のメドレー形式の曲だが、「メリーゴーランド」は本アルバムのラスト曲「悲しみはメリーゴーランド」のインストが少し使われているのみである。『~』はサブタイトルでは無くメドレー曲と言う意味である。 - 怪物君の空
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ & 藤井丈司)
全体的にサウンドの重低音やエフェクトが強い、サザンとしては数少ないハードロック系の楽曲。大塚製薬「オロナミンC」のCMソングにも使用されたが、CMでは二重広告を防ぐ規制の為に曲名は表示されず、「アルバム『KAMAKURA』より」と表示されていた。
タイトルにある「怪物君」は歌詞中には登場していないが、藤子不二雄Ⓐの漫画作品『怪物くん』が由来である。 - Long-haired Lady
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ 弦管編曲:八木正生)
テンポは速めであるものの、全体的に落ち着いた曲調であり、桑田のボーカルもサザンの曲の中では非常に低いキーが使われている。 - 悲しみはメリーゴーランド
(作詞・作曲:桑田佳祐 編曲:サザンオールスターズ & 大谷幸)
「流れる雲を追いかけて」や、「かしの樹の下で」の流れを汲むテーマ。歌詞中の“隣の人”とは日本の隣国に当たる中国を指している。
「夕陽に別れを告げて」とのメドレーで挿入されているインスト部分が形になった楽曲。また、インストとして三菱鉛筆のボールペン『EXCEED』のCMソングとなった。CM中には「鎌倉物語」というタイトルの小説も登場。在日韓国人の女性歌手や女優を特集した番組のエンディングで流れたことがあり、歌詞の一部が画面で紹介された。サザンオールスターズ名義の楽曲であるが、桑田のソロツアーで披露されたこともある。
[編集] 参加ミュージシャン
- 桑田佳祐:Vocal, Guitar, Chorus
- 大森隆志:Guitar, Chorus
- 原由子:Keyboards, Piano, Organ, Accordion, Chorus, Vocal
- 関口和之:Bass, Chorus, Vocal
- 松田弘:Drums, Chorus
- 野沢秀行:Percussion, Chorus
- 藤井丈司:Synthsizer & Computer Programming
- 門島雅樹:Programming Assist.
- 大谷幸:Keyboards, Chorus
- EPO:Chorus, Chorus Arrange
- イリア:Chorus, Piano
- 矢口博康:Sax, Clarinet
- 包国充:Sax
- 淵野繁男:Sax
- 片山鉱二:Sax
- 金城寛文:Sax, Flute
- Jake・H・Conception:Sax
- 福原まり:Accordion, Chorus Arrange
- 美尾洋乃:Accordion, Violin
- 小滝満:Accordion
- 渡辺等:Cello, Buzúki
- 新田一郎:Trumpet
- 兼崎順一:Trumpet, Flugel Horn
- 吉田憲司:Trumpet
- 早川隆章:Trombone
- 岩瀬富美夫:Trombone
- 向井滋春:Trombone
- 西山健治:Trombone
- 八木正生:Piano
- 鈴木重雄:Clarinet
- 石橋雅一:Oboe
- 大畠條亮:Fagot
- 山口弘治:Horn
- 玉野嘉久グループ:Strings
- 広瀬裕美子グループ:Strings
- 八木のぶお:Harmonica
- 小林克也 & LINDA:Telephone
前作 | サザンオールスターズのオリジナルアルバム | 次作 |
---|---|---|
人気者で行こう | Southern All Stars |
オリコン週間LPチャート第1位 1985年9月23日付~1985年11月4日付 (7週連続) |
||
前作: チェッカーズ 『毎日!!チェッカーズ』 |
サザンオールスターズ 『KAMAKURA』 |
次作: レベッカ 『REBECCA IV』 |