ボーイング747-400
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ボーイング747-400(Boeing 747-400)は、アメリカのボーイング社が開発した大型旅客機、ボーイング747のモデルの一つ。いわゆる「ハイテクジャンボ」である。このモデル登場以降、これより前のモデルは「クラシック747」と呼ばれるようになった。
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[編集] 開発の経緯
1970年代初頭に就航したボーイング747は、そのキャパシティは他に追随するものがなく、旅客航空の新しい時代を切り開いた。1980年代中ごろを過ぎてもなおそのキャパシティの大きさは揺らぐことは無かったが、-100から-300へと細かなモデルチェンジがなされているとは言えコックピットやエンジン、客室内装などはあまり進歩せず、1980年代末から1990年代初頭に就航すると見込まれるライバル企業のワイドボディ旅客機、エアバスA340やマクドネルダグラスMD-11、あるいは自社の767と比較しても経済性などで旧式化した点が見られるようになった。
そこで、今までの「クラシックな」747(-100型、-200型、-300型)に最新の技術を投入し、新世代のワイドボディ旅客機として甦らそうと開発されたのがボーイング747-400である。-400型とクラシック747は、しばらくの間、どちらも発注できたが、現在ではクラシック747は生産中止となっている。
[編集] 機体の特徴
基本的な外形は747-300と変わらないが、アビオニクスや主翼、エンジンに変更が加えられている。主翼端の延長とウィングレットの追加、主翼根元のフェアリングの改良により空気抵抗を減らしたうえ、水平尾翼への燃料タンクの追加設置と最大離陸重量の増加によって、搭載できる燃料も増やされた。また、エンジンもより新しい高バイパス比ターボファンであるゼネラル・エレクトリック (GE) 社製のCF6-80やプラット・アンド・ホイットニー (P&W) 社製のPW PW4000、ロールスロイス社製のRR RB211-524Hへ換装され、燃費・推力とも向上した。これらの改良により、航続距離で -200型に優る性能を備えた。コクピットは大幅に電子化され、大型機でありながら航空機関士を廃し、機長、副操縦士の2名による運航を可能とした。
[編集] 派生型
747-400には、いくつかの派生型がある。
[編集] 747-400型機
日本航空、全日空ではGE製CF6-80C2B1Fを装備している。日本航空では長らくP&W製のJT9D-7シリーズを貫き通してきた(その徹底ぶりは本来CF6エンジンが標準のDC-10もJT9Dに替えるほどだった)が、-400以降はGE製に切り替えた。日本航空のGE製エンジンの導入は1970年のコンベア880退役時以来20年ぶりであった。
アジアではガルーダ・インドネシア航空でも-400のエンジンはGE製に切り替わっている。一方のマレーシア航空、シンガポール航空、大韓航空、エル・アル・イスラエル航空ではP&W製のPW4056を装備している。ただ、マレーシア航空に関しては初期に導入した-400コンビのみGE製である。
キャセイ・パシフィック航空、カンタス航空、ニュージーランド航空、英国航空ではロールス・ロイス社製RB211-524を装備する。ただし、ニュージーランド航空の-400の場合は初期導入はRB211-524Gを装備するが、後期導入機に関してはリース会社経由の導入という理由からGE製CF6-80C2B1Fへ変更になった。
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アメリカではユナイテッド航空とノースウエスト航空の2社が導入しているが、ユナイテッド航空では現在サンフランシスコ線を中心に777-222ERへ変更されているので成田国際空港では2種類の機材を目に出来る。エンジンはPW4056である。
日本政府は、1991年に2機を政府専用機として調達した。公用機として-400型を使っているのは現在日本のみである。この機体は導入当初は総理府に所属し、JA8091と8092の番号で登録されていたが、翌年航空自衛隊に移管された (ただし軍用機扱いとして登録は抹消されている)。運用と管理は総理府所属のころから航空自衛隊でおこなわれており、英語の正式名は Japanese Air Force One。装備するエンジンは日本航空、全日空と同じCF6-80C2B1Fである。
なお、世界で通算1000機目の747となったのは、シンガポール航空の-400型である。
[編集] 747-400D型機
DはDomestic(国内)の略で、747SRと同様、短距離路線向けの改良が施されている。-400からの改造点は主翼端のウィングレットの撤去(短距離の国内線では燃費低減の効果が少ないためと、全幅の増加による駐機場、誘導路の使用制限を避けるため)、胴体や床面の構造強化などが挙げられる。-400型と-400D型の間には100型とSR型ほどの差はないため、-400型と-400D型の間での相互改造が、回数制限こそある(一度取り付けたウイングレットを取り外すと、もう二度と取り付けることはできない)ものの可能となっており、実際に全日本空輸では数機の改修実績もある。
-400D型を運航しているのは日本の日本航空と全日本空輸のみ。全日空の運航している747-400Dの座席数はスーパーシートプレミアム27席、エコノミークラス542席の合計569席であるが(日本航空仕様はクラスJ80席、エコノミークラス466席の合計546席)、2002年夏には機内の全席をエコノミークラスとして594席仕様で運航した実績を持っており、旅客機の座席数の記録としては2007年現在も破られていない。
[編集] 747-400F型機
747-400型の貨物型。貨物型においては、アッパーデッキの延長による機体重量の増加、貨物室容積の減少などの弊害のほうが大きいため、-400型でありながら、-200型と同じくショートアッパーデッキとなっている。ウィングレット追加、アビオニクス変更など、他の部分は-400型に準じる。日本の貨物航空会社においては今まで747-200型を貨物機に改造した-200Fを使っていたが、老朽化や長距離路線の拡大などの理由で順次、-400F型を導入していく方針である。
アジアではマレーシア航空、シンガポール航空、キャセイ・パシフィック航空の貨物部門、日本では最初に日本貨物航空が発注していた-400Fの初号機(JA01KZ)がロールアウトした。続いて日本航空の貨物部門も初号機(JA401J)を受領している。
一方アメリカでは、ポーラーエアカーゴがGE系リース会社を通じて新規導入を図っており、老朽のクラシックジャンボを放出させるという。またアトラスエアについても、-200BSFの取替で順次導入する見込み。そしてユナイテッド・パーセル・サービス (UPS) も耐空時間切れ寸前のクラシックジャンボとの置換えとして、GE系のリース会社を通じて導入する。このクラシックジャンボの中には元日本航空のSRも含まれている。
ヨーロッパ勢ではルクセンブルグのカーゴルックス航空が最も多く、10機もの-400Fを世界規模の路線で運航している。初期はCF6-80C2B1Fを、後期は意外にもロールスロイス製RB211-524H/Tを装備している。このRB211-524H/T装備をしている-400Fは他にはキャセイ・パシフィック航空が運航している。
アメリカ空軍は弾道ミサイル防衛(BMD)計画があり、ブースト段階の弾道ミサイルを破壊するため、本機を改修して機首に大出力レーザーを搭載したAL-1Aの試験を続けている。
[編集] 747-400ER型機
747-400型の航続距離延長型であり、このシリーズの最新鋭機種。外観上は従来の-400型と余り変わりはないが、最大離陸重量が従来型に比べ35,000ポンド(約15,870Kg)引き上げられて910,000ポンド(約412,770Kg)となり、操縦席のコンソールには新型のLCDパネルが採用されている。また、胴体や主翼部分も構造強化され、エンジンの出力も強化されたほか、タイヤも従来よりも大径のものに変更された。これにより、今まで以上の大量輸送が可能になったほか、従来と変わらないペイロードであればその分搭載燃料を増やして航続距離を500マイル(約805Km)伸ばすことが可能となった。
2000年にオーストラリアのカンタス航空の発注を受け開発され、2002年より量産が開始、同年10月、第1号機が同社に納入された。また、他の航空会社も長距離路線に順次導入していく予定である。開発された時期もあり受注状況が芳しくない。
[編集] 747-400ERF型
747-400ER型を元にして、2001年にエールフランスによって発注され開発された貨物機。-400ER型が受注に苦戦しているのに対し、本型式は好調な国際航空貨物の需要の伸びに支えられて世界各地の航空貨物会社から受注しており、-8貨物型の開発への後押しとなった。
[編集] 改修型
[編集] 747-400BCF型機
老朽化に伴い引退が進むクラシックジャンボ貨物型の代替や増加する国際航空貨物の需要に対応するものとして、747-400旅客型より燃費効率に優れるボーイング777やエアバスA330などの2発機の長距離路線投入に伴い余剰化した747-400の旅客型の中古機に、サイドカーゴドアを装着し貨物型に改修したものである。
ボーイング社との正式な委託契約の元、中華人民共和国の廈門にあるTaikoo Aircraft Engineeringで改修作業が行われる。サイドカーゴドアおよび扉口パネルは日本の三菱重工業で製作されており、現在、日本航空やキャセイパシフィック航空などが導入している。なお、「BCF」とは、(Boeing Converted Freighter、ボーイング・コンバーティッド・フレイター)の略である。
[編集] 747-400LCF型機
ボーイング787の部品を各製造国から輸送するために、中古の747-400型を改修、改造した大型特殊貨物機である。LCFは Large Cargo Freighter:ラージ・カーゴ・フレイターの略で、名称はドリームリフター(Dreamlifters)[1]。ボーイング社が所有し、運行はエバーグリーン国際航空 (w:Evergreen_International_Airlines) (エバー航空とは無関係)がおこなう[2]。
中華民国のエバーグリーンアビエイションテクノロジーズ社により台湾桃園国際空港内のハンガーで改造され[3][4]、初号機は2006年9月9日に初飛行した[5]。シアトルのボーイング・フィールドで250時間の飛行試験を経て形式証明を目指す。3機の改造が予定され、初号機は2005年6月より、2号機は同年10月より改造が開始されているが、787の受注次第で4~5機体制とすることも考えられている。
胴体が72mまで延長されており、これほどの機体の大幅な延長は、747ファミリーでは初めてである。空間確保のために胴体幅・高さ共に拡大されたが、機首・主翼・尾部に大きな変化はなく、胴体だけがむくれ上がった奇妙な形態をしている。この姿は、ボーイング自身が「醜い」と称するほどである。垂直尾翼のみ、左右の安定性を高める為に延長し、機体全高は21.6mとなった。機内はコックピットを除いて与圧は無い。貨物搭載部分の容積は、通常の747-400F貨物機の約3倍である。後部の向かって右側にヒンジを持ち、機体が折れ曲がって口を開く。貨物を機内へ積み込む為の特殊車両も用意される。こうして名古屋、イタリアグロッタリエ、カンザス州ウィチタ、サウスカロライナ州チャールストンで製造したボーイング787の主翼や胴体、エンジンなどの大型部品を、分解せずに機内に搭載し、最終組立工場であるワシントン州エバレット工場へ輸送する。787を1機製造するのに、12回の飛行が必要とされる。当初、ウイングレットは取り付けたままであったが、試験飛行中に振動が生じたため、急遽取り外される事となり、B747-400ファミリーの中ではB747-400Dに継ぎ、ウイングレットを装備しない機体となった。
日本へは2007年1月10日中部国際空港に飛来し、第一便が1月12日16時30分シアトルに向けて離陸した[6][7]。国内企業の製造したボーイング787の主翼と胴体を積み込み、シアトルの組み立て工場へ輸送している。
運航機 | 改造後初飛行 | 製造番号 | 型式 | エンジン | 機体記号 | 登録年月日 | 旧機体記号(旧所有者) |
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1号機 | 2006年9月9日 | 25879/904 | -4J6 | PW4056 | N747BC | 2001年8月22日 | B-2464(中国国際航空) |
2号機 | 2007年1月26日(予定) | 24310/778 | -409 | PW4056 | N780BA | 2004年12月17日 | B-18272(チャイナエアライン) |
3号機 | 24309/766 | -409 | PW4056 | N249BA | 2005年5月27日 | B-18271(チャイナエアライン) |
[編集] 脚注
- ^ ボーイング、2006年における787プログラム総括ボーイング社ニュースリリース(2006年12月6日)
- ^ ボーイング747ラージ・カーゴ・フレイター運航会社に米エバーグリーン国際航空 ボーイング社ニュースリリース(2005年12月15日)
- ^ 台湾のエバーグリーン・アビエーション・テクノロジー・コーポレーションを747ラージ・カーゴ・フレイターの改造担当サプライヤーに選定ボーイング社ニュースリリース(2005年2月18日)
- ^ ボーイング社とエバーグリーンアビエイションテクノロジーズ社が747ラージ・カーゴ・フレイターの改造担当サプライヤーとして調印エバーグリーンアビエイションテクノロジーズ社ニュース(2005年3月29日)
- ^ ボーイング 747ラージ・カーゴ・フレイターボーイング社ニュースリリース(2006年9月9日)
- ^ 中部国際空港写真ブログ先日飛来したB747LCFが本日離陸
- ^ 中部国際空港 セントレアボーイング787型航空機の部品輸送が始まりました
[編集] 外部リンク
- Boeing Commercial Airplanes 747 family(英語)
- JAl TV Aircraft Gallery Vol.1 (JALによるボーイング747-400の映像)
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レシプロ旅客機:40A | 80 | 221 | 247 | 307 | 314 | 377 |
ジェット旅客機:367-80 | 707/720 | 717 | 727 | 737 | 747 | 747-400 | 747-8 | 757 | 767 | 777 | 787 |
構想・開発中止:2707 | 7J7 | NLA | ソニック・クルーザー | Y1 | Y3 |