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サッカーの世界大会である第8回FIFAワールドカップは1966年にサッカーの母国と呼ばれるイングランドで開催された。イングランドは決勝で西ドイツを4対2で破り、史上5カ国目の初優勝をとげた。
前回と同じ大会方式で行われた。地域予選を突破した16チームを4カ国ずつ4つのグループに分け、各グループの1位と2位チームが決勝ラウンドに進出する。
ピクルスという名前の1匹の犬が大会を救ったヒーローとして有名になった。大会を盛り上げるために展示されていたジュールリメ杯が何者かによって盗まれ、最終的にロンドンのとある藪の中に新聞紙にくるまれているのをピクルスが発見したのである。
観客数は歴代の大会の中で最大であったが、ディフェンス戦術の進化により、前回大会のようなゴールラッシュは少なくなり、最小限の得点を守りきる戦いが主流となった。アルフ・ラムジィ監督に率いられたイングランド代表は、グループAを1位で通過したが、得点はわずか4点であり、失点は0点であった。ウルグアイが2位で通過し、メキシコとフランスがそれぞれ3位と4位で大会を去った。
グループBは、西ドイツとアルゼンチンがそれぞれ2勝1引き分けの勝ち点5でグループを通過した。スペインはスイスに勝利した勝ち点2にのみであり、スイスは3連敗を喫している。
グループCでは前回優勝国のブラジルが、ポルトガルとハンガリーの後塵を拝す3位となり、ブルガリアと共に予選ラウンドで姿を消し、大会3連覇はならなかった。
グループDでは北朝鮮がイタリアを1対0で下して(この試合はW杯史上最大の番狂わせと言われる)、2位となり、アジア勢初のW杯初勝利と予選リーグ突破を果たし、ソ連と共に決勝ラウンドに進出した。チリは1引き分けでグループ最下位であった(なおイタリアは帰国した際、ローマの空港でファンから腐ったトマトを投げつけられるという“屈辱”を味わっている)。
準々決勝で西ドイツはウルグアイを4対0の大差で下した。北朝鮮はポルトガルを前半22分で3対0でリードしており、準決勝進出は確実と思われた。しかし、今大会の得点王となるエウゼビオが4得点を決め、同じくポルトガル代表のアウグストが後半33分に5点目を決め、逆転で準決勝に進出した。ソ連はレフ・ヤシンの鉄壁の守備でハンガリーを終了間際の1点に押さえ、2対1で下した。イングランドはアルゼンチンを実に4試合連続の1対0で下した。
準決勝はいずれも2対1であった。フランツ・ベッケンバウアーが決勝点を挙げた西ドイツがソ連を下し、ボビー・チャールトンが2得点を決めたイングランドがポルトガルを下した。
決勝はサッカーの総本山、ロンドンのウェンブレー・スタジアムで行われ、観客数は97,000人に達した。試合は2対2で延長戦に突入した。延長8分にジェフ・ハーストがシュートを放ち、ゴールポストに当たりほぼ真下に跳ね返った後、ドイツの選手によってクリアされた。ゴールを確認できなかった主審は線審に確認を求め、線審は得点が決まったと伝えたため、イングランドが3対2とリードした。サッカーで得点が認められるためには、ボールがゴールラインを完全に越える必要があり、当時から実際にゴールが決まったかどうか、激しい議論の的になった。スローモーションも多元中継も無かった当時の技術では、一般の視聴者だけでなく専門家であっても得点を判断するのは不可能であった。1995年にオックスフォード大学の研究者が、当時最新のコンピュータを用いた解析を行い、ボールは線上にあり、得点は認められるべきではなかったと発表した。いずれにしろ主審が得点を認めた判断が尊重され、記録に残ることになる。ハーストは120分に史上唯一となる決勝でのハットトリックとなるゴールを決めて、試合を4対2と決定的にした。ゴールの笛を試合終了の笛と勘違いした観客がピッチになだれ込み、その後まもなく試合終了の笛も吹かれた。
イングランド代表は、優勝式典で女王エリザベス2世から、ジュールリメ杯を受け取った。
- 優勝 : イングランド
- 準優勝 : 西ドイツ
- 3位 : ポルトガル
- 4位 : ソ連
[編集] 出場国
ヨーロッパ
南米
北中米カリブ海
アジア
[編集] 第1ラウンド
[編集] グループ A
チーム |
勝ち点 |
試合数 |
勝 |
引 |
負 |
得点 |
失点 |
イングランド |
5 |
3 |
2 |
1 |
0 |
4 |
0 |
ウルグアイ |
4 |
3 |
1 |
2 |
0 |
2 |
1 |
メキシコ |
2 |
3 |
0 |
2 |
1 |
1 |
3 |
フランス |
1 |
3 |
0 |
1 |
2 |
2 |
5 |
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[編集] グループ B
チーム |
勝ち点 |
試合数 |
勝 |
引 |
負 |
得点 |
失点 |
西ドイツ |
5 |
3 |
2 |
1 |
0 |
7 |
1 |
アルゼンチン |
5 |
3 |
2 |
1 |
0 |
4 |
1 |
スペイン |
2 |
3 |
1 |
0 |
2 |
4 |
5 |
スイス |
0 |
3 |
0 |
0 |
3 |
1 |
9 |
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[編集] グループ C
チーム |
勝ち点 |
試合数 |
勝 |
引 |
負 |
得点 |
失点 |
ポルトガル |
6 |
3 |
3 |
0 |
0 |
9 |
2 |
ハンガリー |
4 |
3 |
2 |
0 |
1 |
7 |
5 |
ブラジル |
2 |
3 |
1 |
0 |
2 |
4 |
6 |
ブルガリア |
0 |
3 |
0 |
0 |
3 |
1 |
8 |
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[編集] グループ D
チーム |
勝ち点 |
試合数 |
勝 |
引 |
負 |
得点 |
失点 |
ソビエト連邦 |
6 |
3 |
3 |
0 |
0 |
6 |
1 |
北朝鮮 |
3 |
3 |
1 |
1 |
1 |
2 |
4 |
イタリア |
2 |
3 |
1 |
0 |
2 |
2 |
2 |
チリ |
1 |
3 |
0 |
1 |
2 |
2 |
5 |
|
|
[編集] 決勝トーナメント
[編集] 準々決勝
[編集] 準決勝
[編集] 3位決定戦
[編集] 決勝
[編集] 会場一覧