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サッカーの世界大会である第13回FIFAワールドカップは1986年にメキシコで開催された。優勝国はアルゼンチンで決勝で西ドイツを3対2で破った。
大会はコロンビアで行われる予定であったが、1983年にコロンビアの大会組織委員会がワールドカップを開くことができないと宣言したため、メキシコが代わりに主催することになった。これにより、メキシコは初めてワールドカップを2度開催した国になった。1970年にワールドカップを開いて以来、わずか16年後であった。
大会の方式は1982年大会から変更された。前回と同じく24チームが大会に招待され、4チームごと6つのグループに分けられた。しかし、決勝ラウンドはトーナメント方式に変更された。各グループの1位と2位チーム、それに3位のチームが勝ち点の多い順に4つ、合計16チームが選ばれることとなった。
この大会は当時選手として絶頂期にあり、アルゼンチン代表の一員としてチームを優勝に導いたディエゴ・マラドーナの大会と呼ばれることが多い。もっとも有名な試合は、準々決勝の対イングランド戦であり、マラドーナは2点を決め、チームも2対1で勝利した。最初のゴールは、マラドーナが後日インタビューに「神の手」と語るとおり、ヘディングを狙いにいったマラドーナの手に当たってゴールに入った点である。審判はマラドーナのハンドを確認することができず、イングランド代表の抗議も実らず、得点は認められた。イングランドでは、この得点は逆に「悪魔の手」と呼んでいる。2点目は、マラドーナはセンターライン付近からドリブルを始め、ゴールキーパーのシルトンを含めて5人のイングランド選手をドリブルで抜いて決めた得点である。サッカーファンはこれを「5人抜き」と呼んでいる。イングランドも、一次リーグ初戦のポルトガル戦で負けるなど不甲斐ないチーム状態であったが、若きエースストライカーのゲーリー・リネカーが一次リーグ最終戦のポーランド戦で前半だけでハットトリックを達成するなど盛り返し、健闘を見せた。
また、準々決勝のフランス-ブラジル戦は、事実上の決勝戦ともいわれた黄金カードだった。ブラジルが若きエースストライカーカレカのゴールで先制すると、フランスはミシェル・プラティニの同点ゴールで追いつく。後半も終わりに近づいた頃、会場の大歓声に迎えられてジーコが出場、ファーストタッチである絶妙のスルーパスがPKを誘う。しかし、信じられないことにこのPKをジーコが外し、試合は延長でも決着がつかず、そのままPK戦に突入、フランスが勝利を収めた。フランスはこの勝利で全ての精力を使い果たしてしまい、準決勝の西ドイツ戦では精彩を欠き完敗するのである。フランスは三位決定戦ではプラティニ、アラン・ジレスらを外して若手中心のメンバーを組み、「プラティニの後継者」と目されたジャン=ピエール・パパンのゴールや次代のキャプテンとなるマニュエル・アモロスの活躍もあり、3位の座を確保した。
西ドイツはフランスを準決勝で破り、2大会連続で決勝に進出するが、2大会連続で決勝で敗戦に終わっている。決勝戦ではアルゼンチンに2点をリードされるが、ここでもまたお家芸の「ゲルマン魂」を発揮し、一時は同点に追いつく。前評判の低かった西ドイツであったが、準優勝という結果は大健闘といえるものであった。大会の得点王はイングランドのリネカーで6得点を決めている。 大会のMVPに送られるアディダスゴールデンボール賞にはマラドーナが選ばれている。
高地という環境に加え、全試合デーゲーム開催となった為、体力面の消耗が激しい大会でもあった。陰の優勝候補として強豪から恐れられていたソ連、デンマークはグループリーグから持ち前の攻撃力を存分に発揮してフランス、西ドイツの強豪を抑えてグループリーグを1位突破し、順当に勝ち上がれば準々決勝での対戦が見込まれていた。しかし両国とも決勝トーナメント1回戦で敗退。ソ連は2度のリードを守りきれずに延長戦に持ち込まれてベルギーに粘り負け、デンマークは先制しながらもその後ブトラゲーニョに4得点を挙げられるなどスペインに5失点の惨敗で、グループリーグからフル回転で戦ってきた体力面の消耗が致命傷となったのは明らかだった。勝ったベルギー、スペインが共にグループリーグ初戦は黒星発進だったのに加え、フランスと西ドイツが準決勝に進出していたのは両国にとっては何とも皮肉な結果である。
大会の汚点としては、ポルトガル代表がストライキを起こしたことがあげられる。第1試合の対イングランド戦と第2試合の対ポーランド戦の間に練習をすることを拒み、結果モロッコに敗れ、大会を去ることになる。カナダとイラクがワールドカップ初出場を遂げるが、両代表チームとも3連敗で大会から姿を消した。
- 優勝 : アルゼンチン
- 準優勝 : 西ドイツ
- 3位 : フランス
- 4位 : ベルギー
[編集] 出場国
北中米カリブ海
ヨーロッパ
南米
アフリカ
アジア
[編集] 第1ラウンド
[編集] グループ A
チーム |
勝ち点 |
試合数 |
勝 |
引 |
負 |
得点 |
失点 |
アルゼンチン |
5 |
3 |
2 |
1 |
0 |
6 |
2 |
イタリア |
4 |
3 |
1 |
2 |
0 |
5 |
4 |
ブルガリア |
2 |
3 |
0 |
2 |
1 |
2 |
4 |
韓国 |
1 |
3 |
0 |
1 |
2 |
4 |
7 |
|
ブルガリア |
1 - 1 |
イタリア |
アルゼンチン |
3 - 1 |
韓国 |
イタリア |
1 - 1 |
アルゼンチン |
韓国 |
1 - 1 |
ブルガリア |
韓国 |
2 - 3 |
イタリア |
アルゼンチン |
2 - 0 |
ブルガリア |
|
[編集] グループ B
チーム |
勝ち点 |
試合数 |
勝 |
引 |
負 |
得点 |
失点 |
メキシコ |
5 |
3 |
2 |
1 |
0 |
4 |
2 |
パラグアイ |
4 |
3 |
1 |
2 |
0 |
4 |
3 |
ベルギー |
3 |
3 |
1 |
1 |
1 |
5 |
5 |
イラク |
0 |
3 |
0 |
0 |
3 |
1 |
4 |
|
ベルギー |
1 - 2 |
メキシコ |
パラグアイ |
1 - 0 |
イラク |
メキシコ |
1 - 1 |
パラグアイ |
イラク |
1 - 2 |
ベルギー |
イラク |
0 - 1 |
メキシコ |
パラグアイ |
2 - 2 |
ベルギー |
|
[編集] グループ C
チーム |
勝ち点 |
試合数 |
勝 |
引 |
負 |
得点 |
失点 |
ソビエト連邦 |
5 |
3 |
2 |
1 |
0 |
9 |
1 |
フランス |
5 |
3 |
2 |
1 |
0 |
5 |
1 |
ハンガリー |
2 |
3 |
1 |
0 |
2 |
2 |
9 |
カナダ |
0 |
3 |
0 |
0 |
3 |
0 |
5 |
|
カナダ |
0 - 1 |
フランス |
ソ連 |
6 - 0 |
ハンガリー |
フランス |
1 - 1 |
ソ連 |
ハンガリー |
2 - 0 |
カナダ |
ハンガリー |
0 - 3 |
フランス |
ソ連 |
2 - 0 |
カナダ |
|
[編集] グループ D
|
スペイン |
0 - 1 |
ブラジル |
アルジェリア |
1 - 1 |
北アイルランド |
ブラジル |
1 - 0 |
アルジェリア |
北アイルランド |
1 - 2 |
スペイン |
北アイルランド |
0 - 3 |
ブラジル |
アルジェリア |
0 - 3 |
スペイン |
|
[編集] グループ E
|
ウルグアイ |
1 - 1 |
西ドイツ |
スコットランド |
0 - 1 |
デンマーク |
西ドイツ |
2 - 1 |
スコットランド |
デンマーク |
6 - 1 |
ウルグアイ |
デンマーク |
2 - 0 |
西ドイツ |
スコットランド |
0 - 0 |
ウルグアイ |
|
[編集] グループ F
チーム |
勝ち点 |
試合数 |
勝 |
引 |
負 |
得点 |
失点 |
モロッコ |
4 |
3 |
1 |
2 |
0 |
3 |
1 |
イングランド |
3 |
3 |
1 |
1 |
1 |
3 |
1 |
ポーランド |
3 |
3 |
1 |
1 |
1 |
1 |
3 |
ポルトガル |
2 |
3 |
1 |
0 |
2 |
2 |
4 |
|
モロッコ |
0 - 0 |
ポーランド |
ポルトガル |
1 - 0 |
イングランド |
ポーランド |
1 - 0 |
ポルトガル |
イングランド |
0 - 0 |
モロッコ |
イングランド |
3 - 0 |
ポーランド |
ポルトガル |
1 - 3 |
モロッコ |
|
[編集] 決勝トーナメント
[編集] 1回戦
[編集] 準々決勝
[編集] 準決勝
[編集] 3位決定戦
[編集] 決勝