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大網駅に入線するわかしお(撮影:2006年11月、大網駅)
わかしおとは、東日本旅客鉄道が東京駅~上総一ノ宮駅・勝浦駅・安房鴨川駅間を京葉線・外房線経由で運行する特別急行列車。
- なお、ここでは、同列車より派生した以下の列車についても記載する。
[編集] 運行概要
- 基本的には、昼間時・夜間時となる9時以降からは1時間毎に運行されるが、下り始発列車となる1号及び上り始発列車である2号・4号は若干異なる。また、下り列車の東京駅出発は00分発となる。
- 東京と主な駅の大体の所要時間は蘇我:33分、土気:43分、大網:47分、茂原:56分、上総一ノ宮:62分、大原:74分、御宿:82分、勝浦:87分、安房小湊:105分、安房鴨川:115分である。
[編集] 運行区間
- 「わかしお」
- 「新宿わかしお」
[編集] 使用車両
- 「わかしお」
- E257系
- 普通車のみの編成。5両編成が基本であるが、一部列車は10両編成で運行される。
5両編成での事例1・・・7~17号・12~20号
東京⇔安房鴨川・上総一ノ宮 |
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5両編成での事例2・・・8・19号
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10両編成での事例1・・・5・23・22・24・30号
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安房鴨川・上総一ノ宮→ |
東京⇔上総一ノ宮 |
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10両編成での事例2・・・4・21~29号
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10両編成での事例3・・・3・6・26・28号
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- 255系
- 1・2・10号で使用。但し、2号は※の座席指定席は自由席に変更。
←東京 |
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- 凡例
[編集] 停車駅
- 「わかしお」
- 東京駅 - 海浜幕張駅※ - 蘇我駅 - (土気駅) - 大網駅 - 茂原駅 - 上総一ノ宮駅 - 大原駅 - <御宿駅> - 勝浦駅 - <上総興津駅> - 安房小湊駅 - 安房鴨川駅
- 途中停車駅の蘇我、大網、茂原、上総一ノ宮、大原、勝浦、安房小湊にはすべての列車が停車する。
- ※印の海浜幕張駅は一部列車が停車。下りは9時~10時まで、上りは15時以降全列車が停車。また幕張メッセなどでのイベント開催時には停車列車を拡大する。なお、2007年3月18日以降、下り列車の停車時間を拡大する。
- ()内の土気駅は下りは東京18時00分発のわかしお21号以降の全列車、上りは4号を除く8号(土気9時53分発)までの列車が停車。
- <>内の各駅は一部列車が通過。
- なお、1・7・19~23、8・10・18・30号は勝浦駅~安房鴨川駅間普通列車として運行。
- 新宿わかしお号
- 土曜・休日運転。グリーン車指定席、普通車指定席・自由席で構成。車両によってはグリーン車がない場合もあり。
- 新宿駅 - 秋葉原駅 - 錦糸町駅 - 船橋駅 - 津田沼駅 - 千葉駅 - 蘇我駅 - <鎌取駅 - 土気駅> - 大網駅 - 茂原駅 - 上総一ノ宮駅 - 大原駅 - 御宿駅 - 勝浦駅 - 鵜原駅 - 上総興津駅 - 安房小湊駅 - 安房天津駅 - 安房鴨川駅 - 太海駅 - 江見駅 - 和田浦駅 - 千倉駅
- <>内の各駅はゴルフトーナメント開催に伴う停車。適用は上記の定期「わかしお」に準ずる。
- 太海駅は初日の出・初詣運転時(太海・江見・千倉発着)と5月下旬に行われる「海風駅からハイキング」開催時に上りのみ停車。
- 江見駅・千倉駅は初日の出・初詣運転に際して停車。
- 和田浦駅は2月上旬に行われる「花嫁街道駅からハイキング」開催時のみ停車。
[編集] 外房線優等列車沿革
外房線(旧・房総東線)に有料の優等列車が設定されたのは戦後の1958年(昭和33年)であるが、戦前から海水浴客などの利用を見込んで、臨時の快速列車(旧称:準急列車)には「潮」(うしお)などの列車愛称が付けられていた事があった。
- 1896年(明治29年)1月20日 現在の外房線にあたる中での初開業区間である蘇我駅~大網駅間が開業。
- 1929年(昭和4年)4月15日 上総興津駅~安房鴨川駅間を最後に現在の外房線区間に当たる千葉駅~安房鴨川駅間全通。
- 1955年(昭和30年)11月15日 気動車を使った同線区初の快速列車を設定。休日には新宿駅始発で、朝に新宿駅~千葉駅~木更津駅~館山駅~安房鴨川駅~大網駅~千葉駅と走った後、午後に千葉駅から逆経路でまわる循環列車で、「房総の休日」と名付けられた。
- 1958年(昭和33年)11月10日 この年7月10日から総武本線の両国駅~銚子駅間に設定されていた準急列車「犬吠」に、房総東線(現・外房線)経由安房鴨川駅行、房総西線(現・内房線)経由館山駅行の車両を併結し、多層建て列車になる。同時に愛称を「房総」と改める。しかし、誤乗を防ぐ観点から銚子駅行の車両には「房総(犬吠)」、安房鴨川駅行の車両には「房総(外房)」、館山駅行の車両には「房総(内房)」と、列車名の後に各列車の系統を表す括弧書きがなされた。
- 1959年(昭和34年)7月1日 総武本線・房総東線・房総西線の準急列車を各3往復に増発し、それまでの「房総」を「京葉」に改称(括弧付けは継続)。「房総」は、新設された2往復の新宿駅~銚子駅・(房総東線・房総西線経由)新宿駅・(房総西線・房総東線経由)新宿駅間準急列車(3層建て列車且つ循環列車)の愛称となる。
- その運転系統は、2往復共新宿駅を9両編成で発車し、千葉駅で3方向へ向かう列車に分割し、房総東線~房総西線経由の「房総(外房)」・房総東線~房総西線経由「房総(内房)」それぞれが房総半島を一周(途中ですれ違う)した後、千葉駅で再び銚子駅から来た上りの「房総(犬吠)」ともに3列車を併結して新宿駅へ戻るものであった。
- 1960年(昭和35年)11月 「京葉」を1往復増発するが、増発分は括弧付けをせずに3方面いずれも下りが「京葉1号」、上りが「京葉2号」とされた。
- 1961年(昭和36年)10月1日 「京葉」の括弧付け愛称を廃止し、上り・下り共に発車順に「京葉1号」「京葉2号」とする。
- 1962年(昭和37年)10月1日 「房総」「京葉」の愛称を、房総東線系統列車は「外房」(がいぼう)、房総西線系統列車は「内房」(ないぼう)と改める。「外房」は4往復運転に。
- 「房総」の流れを引き継ぐ循環列車系統に関しては、両線の境となる安房鴨川駅で「外房」と「内房」の愛称を切り替えていた。
- 1963年(昭和38年)10月1日 両国駅~安房鴨川駅間にキハ58系を使用して全車座席指定席の準急列車を新設。よって自由席のみの編成であった「外房」と愛称の区別をする必要があった事から「くろしお」と名付けられる。
- 両国駅~千葉駅間では、同じ内容で房総西線に新設された両国駅~館山駅間運転の「さざなみ」と併結運転した。
- 「くろしお」の愛称自体は、漢字書きの「黒潮」として1959年(昭和34年)夏の海水浴シーズンから臨時準急列車の愛称として登場していたが、この時定期列車に昇格した。しかし既に紀勢本線や土讃本線に「くろしお」・「黒潮」の愛称を持った優等列車が登場しており、3地区で同じ愛称が同時使用されるという事態になった。
- 1965年(昭和40年)10月1日 「くろしお」に自由席を連結し、「外房」に統合。この時「外房」の読みを『そとぼう』に改める。
- 1966年(昭和41年)3月5日 運転距離が100kmを越す準急列車をすべて急行列車に格上げする事になり、「外房」は急行列車となる。
- 1967年(昭和42年)10月1日 「外房」の内循環運転を行うものを「そとうみ」と改称。
- 1968年(昭和43年)7月1日 「そとうみ」「外房」の愛称を「そと房」に統合。
- 1969年(昭和44年)7月11日 房総西線蘇我駅~千倉駅間が電化されたのに伴い、「うち房」は電車化され、「そと房」と組んでの循環運転は廃止される。
- 1972年(昭和47年)7月15日 総武本線東京駅開業と共に「わかしお」の運行を開始(10月の改正でエル特急に指定)。同時に線名を房総東線から外房線に改める。また蘇我駅~安房鴨川駅間が電化された事により、存続した急行列車4往復による循環運転を再開。先に内房線を走って外房線に入るもの(左回り)を「なぎさ」、先に外房線を走って内房線に入るもの(右回り)を「みさき」とする。これにより「そと房」の愛称消滅。なお、これに先立つ5月27日に大網駅のスイッチバックが解消されていたため、電化前とは違い循環運転後は前後が入れ替わる事になった。
- 運行当初の「わかしお」は、新宿駅・東京駅~安房鴨川駅間を中央本線・総武本線・外房線経由で運行。新製された183系を使用した。当時としては短距離を運行する特急で、単なる料金値上げだという非難を浴びた事もあった。
- 1975年(昭和50年)3月10日 循環運転を再び廃止し、外房線を走る急行列車3往復は「外房」と改称。
- 1982年(昭和57年)11月15日 「外房」など房総地区の急行列車を全廃。代替として、「わかしお」に両国駅発着便を設定。
- 1985年(昭和60年)3月14日 「わかしお」、定期としての新宿駅及び両国駅発着列車を全廃。
- 1991年(平成3年)3月16日 京葉線開業及び「成田エクスプレス」運行開始により、東京駅~蘇我駅間を京葉線経由に変更。蘇我にすべての特急が停車。東京発上総一ノ宮行普通車全車自由席の「ホームタウンわかしお」を運行開始(途中停車駅は蘇我、誉田、大網、茂原)。
- 1992年(平成4年)251系(本来は「スーパービュー踊り子」用)による臨時列車「スーパービューわかしお」を新宿駅~安房鴨川駅間で運行。
- 1993年(平成5年)7月2日 255系による「ビューわかしお」の運行開始(2往復)。
- 同時に「わかしお」の一部列車を、勝浦駅~安房鴨川駅間で普通列車扱いとする。
- 1994年(平成6年)12月3日 「ビューわかしお」を2往復から5往復に増便。すべての特急列車が大網駅停車となる。上総一ノ宮発東京行普通車全車自由席の「おはようわかしお」を運行開始(途中停車駅は茂原、大網、誉田、蘇我)。
- 1996年(平成8年)12月1日 東浪見駅~長者町駅間複線化に伴い、蘇我駅~勝浦駅間の最高速度を95km/hから120km/hに引き上げ。
- 1999年(平成11年)12月4日 一部の「おはようわかしお」が誉田駅通過に。
- 2000年(平成12年)12月2日 「おはようわかしお」が土休日も運行されるようになり、毎日運転となる。
- 2001年(平成13年)9月1日 行川アイランド閉園に伴い、行川アイランド駅通過となる。
- 2002年(平成14年)9月30日 土気駅に一部の特急が停車。
- 2002年(平成14年)12月1日 上総一ノ宮駅と大原駅にすべての特急が停車する様になる。土気駅に停車する特急が増え、一部の「ホームタウンわかしお」が誉田駅通過となる。またJR東日本がこの改正でエル特急の呼称をすべて廃止、「わかしお」「ビューわかしお」も対象に。
- 2004年(平成16年)10月16日 E257系を「わかしお」に投入。また、「おはようわかしお」「ホームタウンわかしお」の名称を廃止し、255系による列車を「ビューわかしお」、E257系による列車を「わかしお」と統一する。これにより183系での運転は基本的になくなったが、車両運用の都合で同車両による代走運行も残る。すべての上り特急が誉田駅通過になる。
- 2005年(平成17年)12月10日 ダイヤ改正に伴い以下の様に変更。
- 列車名を「わかしお」に統一して「ビューわかしお」の愛称廃止。
- すべての特急が誉田駅通過となる。
- 土気駅停車列車の本数が増加し、東京駅18時発以降のすべての特急列車が土気停車に。
- すべての特急が安房小湊駅停車となる。
- データイム時に上総一ノ宮発着、夜間に東京発勝浦行、安房鴨川発東京行の列車を1本ずつ増発。
- 10両編成列車(E257系)を大幅増加。反面255系は大幅に減便。
- すべての房総方面の特急列車を全車禁煙化。
- 2006年(平成18年)12月15日 通常255系で運用されている下りの「わかしお1号」と上りの「わかしお2・10号」が183系C2編成で運用した。これは255系の車両故障によるものである。「わかしお」の183系運用は1年ぶりである。
[編集] 列車名の由来
- 房総各線を走る列車名には元々の地域性や、海水浴客に対する宣伝の意味も込めたのか海に関するものが多い。(五十音順)
- 「潮」(うしお) 潮汐、或いは海水を表す言葉の「潮」から。
- 「おはようわかしお」 朝の通勤時間帯を走る「わかしお」であるから。
- 「スーパービューわかしお」 251系を使用する「踊り子」の愛称が「スーパービュー踊り子」であり、それに合わせたから。
- 「そとうみ」 房総半島の太平洋側、即ち「外海」を走る事から。また、内房線(旧、房総西線)を走る「うちうみ」と対にするため。
- 「外房」・「そと房」(がいぼう・そとぼう) 房総半島の太平洋側を「安房の外側」で「外房」という事から。また、内房線を走る「内房」「うち房」と対にするため。
- 「くろしお」 房総半島東側を通る海流の「黒潮」から。
- 「京葉」(けいよう) 東京都と千葉県各地を結ぶ事から。
- 「なぎさ」 波打ち際を表す言葉の「渚」から。
- 「ビューわかしお」 使用する255系の愛称が「Boso View Express」(房総ビューエクスプレス)であるから。
- 「房総」(ぼうそう) 房総半島各地へ向かう列車であるから。
- 「房総の休日」(ぼうそうのきゅうじつ) 休日に房総半島へ向かう列車であるから。
- 「ホームタウンわかしお」 夕方の帰宅時間帯を走る「わかしお」であるから。
- 「みさき」 房総半島に多くの「岬」があり、ペアを組む「なぎさ」と見合う事から。
- 「わかしお」 小潮の時期から大潮の時期に掛けて干満の差が大きくなる潮の事で、黒潮の別名とも言われる「若潮」から。
[編集] 関連事項