国鉄183系電車
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国鉄183系電車(こくてつ183けいでんしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)が設計・製造した直流特急形車両。
2006年現在では、東日本旅客鉄道(JR東日本)と西日本旅客鉄道(JR西日本)が保有している。
また本稿では、183系1000番台の車両設計の基となった、現在JR東日本が保有している国鉄189系電車(こくてつ189けいでんしゃ)についても記述する。
目次 |
[編集] 183系
[編集] 0番台
1972年の総武本線の錦糸町駅~東京駅間開業及び房総東線蘇我駅~安房鴨川駅間の電化にともない、従来の総武本線・房総東線(→外房線)・房総西線(→内房線)で運転されていた急行列車の一部を特急列車に格上げし、東京地下駅に乗入れるために設計・製造された系列である。
それまでの特急形電車とは異なり末端区間での普通列車としての使用が考慮され、元は準急形であった157系を例外と考えると初めて片側2扉構造(サロを除く)を採用し、かつ使用する列車が短距離主体であったため、食堂車は最初から計画されていない。代わりに、グリーン車のサロ183形に車販準備室と車販コーナーを設けて対応している。また、当初内房特急・外房特急が総武快速線において分割・併合運転をする計画があったことから制御車は貫通扉を有している。この貫通扉を実際に活用したのは1985年から1995年頃までで、多客時には6両編成に3両を増結して9両編成で運用していた(ただし制御車同士が向合せに貫通扉を介して連結されたことは無い)。
車体形状は485系を基本としている。但し、屋根高さを485系と同じ3,475mmに揃えた他は、床面高さを1,235mmから1,200mに、床面からの窓框高さを855mmから800mmへと下げた。そのため485系に比べて窓の位置が低く、屋根が厚くなっている。
旅客サービス面では普通車に簡易リクライニングシートが初めて採用された。また中央東線や上越線などでも使用されるため、勾配抑速発電ブレーキ付きで横軽対策・山用対策・耐寒耐雪化が図られるなど、今日の特急大衆化の先駆となった多目的車となっていることも大きな特徴の一つである。
9両編成車(のちにサロを外して8両編成化される)のクハ183形0番台については、1996年~1997年に前面愛称表示器を幕式からLED式へ改造した。しかし、6両編成車のクハ183形0番台は幕式のままとなっていたが、これらの車両は全廃となった。
パンタグラフはモハ183形に2台搭載していたが、国鉄時代末期から偶数寄の第2パンタグラフは使用しなくなり、1993年以降には撤去されている。
- モハ183/182-1~57、クハ183-1~39、サロ183-1~19(クハ183-17は1974年に事故廃車)
[編集] 1000番台
上越線のエル特急「とき」に使用していた181系および東海道本線東京口の特急「あまぎ」に使用していた157系の老朽化に伴う置換えのため、1974年から、当時設計中であった189系電車を元に協調運転用の装備を省いて製造された車両である。ただし形式は183系とし番台区分は1000番台とされた。0番台より一層の耐寒・耐雪構造の強化が図られている。また、寒冷時における運転台へのすきま風防止の観点から、制御車の貫通路と貫通扉を廃止した。
サロ183形には、クハ183形のMG(電動発電機)やCP(電動空気圧縮機)が故障した場合に備えて、予備のMGとCPを装備する1100番台(当初はサロ182形と仮称されていた)とそれを持たない1000番台、それにサロ481形から改造編入した1050番台(後述)があった。
なお、この1000番台からパンタグラフの搭載車がモハ183形からモハ182形に変更された。これは、485系などと一部の部品の共通化が目的であったが、当時設計中であった189系にならったものである。
- モハ183/182-1001~1057、クハ183-1001~1032、サロ183-1001~1010・1101~1117
[編集] クハ183形1500番台
1982年11月の房総各線の急行格上げに伴う特急列車増発のために用意された東京地下駅乗入対応形のクハ183形で、非貫通形の1000番台車をベースにATC(ATC-5形)を装備して新製されたものと、1000番台車から同様の仕様に改造されたもの(車番は原番号+500)の2種類がある。 房総特急で使用されていたが、のちに1525と1528の2両が中央本線に移動し、いわゆる「あずさ色」になった。さらにこの2両は1998年に長野総合車両所へ移動し、旧「あさま色」をまとい、N101編成の両端先頭車となっている。ATC装備を京浜東北線・根岸線対応のATC-6形に変更のうえで特急「はまかいじ」にも使用された。2007年現在で受持つ定期列車としては普通/快速「妙高」号が挙げられる。
また、客席の1脚分のスペースをATC機器室に充当したため、他のクハ183形よりも定員は2名少ない54名となっている。錦糸町駅~品川駅間のATS-P形化および「はまかいじ」運用の終了に伴い現在ATCは取外されているが、機器室はそのまま存置されており、改番はなされていない。
- クハ183-1501~1506(新製車)、クハ183-1025~1032→クハ183-1525~1532(改造車)
[編集] 形式間改造車
[編集] 他系列からの改造車
[編集] 700・800番台
JR西日本が保有している交直流電車485系から交流電気機器を取外した車両について付与した番台区分である。
福知山運転所に配置され、1986年11月から特急「北近畿」などで使用されていた車両を1990年から1991年にかけて改造したグループ(B編成)と、1996年3月から運転を開始した特急「きのさき」「はしだて」「たんば」「文殊」用に所要となる車両を1996年および2004年(モハ182-713のみ)に同様の工事を施工したグループ(A編成)とに分れる。
車体は基本的に種車と同じなので、JR東日本が保有する0番台や1000番台などとは外観が異なり、全車片側1ドア構造で485系とほとんど変わらない外観を有する。モハ183形・モハ182形・クハ183形のほか、クロ183形・クロハ183形が存在する。オリジナル車とは異なりサロ183形は存在しない。ドアステップもそのまま存置しており、走行する路線・駅によっては出口がホームより低くなることが起きる。1990年・1991年施工車から取外した機器類は福知山線(JR宝塚線)などで使用されていた113系の交直流化に転用され、415系800番台として七尾線に投入した。
なお種車によって番台区分は分れている。詳細は下記参照。モハ183・182形850番台は1997年に廃車となって区分消滅している。
- モハ484形200番台→モハ182形700番台、モハ484形600番台→モハ182形800番台、モハ484形0番台→モハ182形850番台、モハ484形1000番台→モハ182形1800番台
- モハ485形(AU13E形冷房装置搭載車)→モハ183形800番台、モハ485形(AU12形冷房装置搭載車)→モハ183形850番台、モハ485形1000番台→モハ183形1800番台
- クハ481形300番台→クロ183形2700番台、クハ489形700番台→クロ481形2750番台
- クロハ481形300番台→クロハ183形700番台、クロハ481形200番台→クロハ183形800番台
- クハ489形600番台→クハ183形600番台
- クハ481形300番台→クハ183形700番台、クハ481形750番台→クハ183形750番台、クハ481形800番台→クハ183形800番台、クハ481形850番台→クハ183形850番台
[編集] 200番台
前述の700・800番台と同じく485系から改造した番台区分であるが、これは2003年「しらさぎ」に683系を投入した事によって余剰となった車両および2001年の「スーパー雷鳥」683系化で休車となっていた、元「スーパー雷鳥」付属編成車のクモハ485形・モハ484形・クハ481形200番台を2003年と2004年に改造したものである。クモハ183形・モハ182形・クハ183形が存在する。
この車両の投入を機に、福知山運転所A編成との間で組成変更が行われて、現在は
福知山←(A編成)クロ183-2700・モハ182-700・モハ183-800・クハ183-200+クモハ183-200・モハ182-200・クハ183-700(C編成)
となっている。700・800番台と異なり、交流電気機器は使用停止のみで、撤去は行われていない。クモハ183形はクモハ485形200番台からの改造のため、貫通形・切妻形・低運転台先頭車となっている他、他の先頭車より全長が長い。クモハ183形とクハ183形には、485系時代から引続いて電気連結器を装備しており、綾部駅などでの分割併合の際に活用されている。各形式ともドアステップも存置している。
- クモハ183-201~206、モハ182-201~206、クハ183-201~206
なお、700・800番台を含めたJR西日本の183系の制御回路は485系と共通しており、直流区間内であれば無改造の485系との併結運転も可能であるが、本来の183系であるJR東日本車とは制御回路が違うことから併結はできない。また、JR東日本車のような第2パンタグラフの撤去は行われていないが、使用停止となっている。
[編集] クハ182形
中央本線の急行格上げに伴う特急列車増発のため、不足する先頭車を経費節減のために当時短編成化で余剰になっていた485系の付随車であるサハ481形100番台にクハ183形1000番台に準じた運転台を取付けて登場した形式で、偶数向(新宿方)制御車である。485系からの改造のため、運転台直後に新設されたドアにはステップがないなどの特徴がある。
また種車がサハ481形100番台であったため、1985年改造の0番台は後位出入台側の車販準備室を残しているが、1986年改造の100番台では座席定員確保のためその車販準備室を撤去している。側面行先表示器は183系と485系ではシステムが異なるため、種車のものは撤去して、1985年改造車を除いて前位側出入台横に新設している。
E351系やE257系の投入に伴い、0番台車は1999年までに全車廃車になり、100番台車は波動用として2両(101・102)が大宮総合車両センターに在籍している。
- サハ481-110・111→クハ182-1・2、サハ481-107・103・112・104・102→クハ182-101~105
[編集] クハ183形100番台
前述のクハ182形と同じ理由で、1985年と翌年にサハ489形およびサハ481形100番台を183系の奇数向(松本方)先頭車に改造して登場した番台区分である。サハ489形からの改造車(101・102)には元々車販準備室が存在していないため、後位側は特徴的なドアステップも含めて特に手を加えていないが、サハ481形100番台からの改造車(103~105)は、旅客定員の確保のため改造時に種車の車販準備室を撤去している。また、行先表示器を前位側ドア横窓上に新設している。最後は高崎車両センターに2両在籍していたが、幕張車両センターからの転入車に置換えられて2005年に廃車となった。
- サハ489-7・9、サハ481-107・105・114→クハ183-101~105
[編集] クハ183形150番台
前述のクハ183形100番台と同じく1986年にサハ489形から改造した番台区分であるが、取付けた運転台ブロックが183系1000番台仕様ではなくクハ481形1000番台仕様であり、全長も21250mmと他車より250mm長いという異端車であった。これについては、当初クハ481形に改造する予定が計画変更によりクハ183形として落成したとする説も存在する。またCPについては他の先頭車改造車が1000番台と同じく運転台ブロック内に搭載(改造時に床下から移設)されていたのに対し、0番台と同様に追設したMGとともに床下へ搭載していたなど他にはない特徴があった。MGの容量も他の183系が210kVAであったのに対し、160kVAであるなどの違いも見られる。
151と152の2両のみの存在で、上記の先頭車改造車と同じく中央東線で運用し、デラックス化改造も施工されたが、「あずさ」と「かいじ」全列車のE257系への置換えにより、転用されることなく2003年に2両とも廃車されている。
- サハ489-8・6→クハ183-151・152
サハ481・489形改造先頭車は、トイレ・洗面所の配置が新造車とは逆になっている。これはクハ188形(後述)も同様である。
[編集] サロ183形1050番台
1978年10月ダイヤ改正での特急「とき」増発による車両不足のため、485系のグリーン車サロ481形基本番台から改造・編入された番台区分である。
主に制御系統のみが変更されたため、種車との外観上の違いは485系の特徴であるドアステップも含め全く変わっていない。
のちの短編成化や新型車両投入により余剰となり、1052・1053はサロ481形に復元した。その後サハ481形300番台に格下げした車両も存在したが(1051・1054)、現在では先述の復元車も含めて2001年までに全車が廃車されている。
- サロ481-90・98・112・133→サロ183-1051~1054
また、これら485系からの編入改造車は、485系が183系より床面が高く、客室窓が高い位置に設置されていたことにより、改造車のみで編成を組む200・700・800番台を除き、国鉄特急形電車の特徴である窓周りの赤色の塗装(赤2号)が編成を組む183系新製車と合わないなど、アンバランスな形態をしていた。ただし、後に塗色変更や一部の車両はグレードアップ改造により客室窓の拡大が図られたため、上記のアンバランス感はあまり目立たなくなった。
[編集] 他系列への改造車
[編集] 189系1500番台
189系で詳述。
[編集] サロ110形300・1300番台
国鉄末期の設備投資が抑制されていた折、老朽化したサロ110(0・1000番台)・111形の置換え用に新幹線開業や編成短縮によって余剰となった特急形グリーン車が転用された。これらは客用扉を増設し、非常時の換気のため一部の窓を中折れ式に開閉可能にした程度で車体はそのまま利用された。
サロ183形からの改造車グループは、1987年に登場。0番台からの改造車が304~311、1000番台からの改造車が1301~1305をそれぞれ名乗る。定員48名。種車のトイレ及び洗面所部分に客用扉を増設したため、トイレおよび行先表示器は設置されていない。またサロ183形時代の車内販売準備室および車販コーナーが撤去されずに残っていたのがこのグループの最大の特徴である。1300番台のうち1305のみは、1988年の落成当初は湘南色に塗装して、田町電車区→国府津電車区に配属されて東海道本線で使用されたが、1991年に大船電車区に転属して横須賀線系統に使用されている。 また305~307は、サロ124・125形と連結されるために方向転換されたが、309のように方向転換されずに組込まれた車両も存在する。
登場後しばらくの間は、特急形からの改造車2両で組込まれたこともあり、サロ180-1001からの改造車と連結されたケースでは、屋根高さが3段になっていることが話題になった。定員が少ないため特に常連客からは大不評であり、外観が特異なために、定員が少ないことが一般利用者にも分りやすいことから、利用者の中にはこの車両が来ると乗車を控えて次の列車を待つ光景も見られた程である。
このグループの1302が1998年7月に廃車され、ユニークな特急形改造グリーン車は消滅した。
[編集] 189系
それまで信越本線のエル特急「あさま」に使用していた181系を置換えるとともに、181系の8両編成から12両編成(投入当初から1978年10月までは地上設備の関係で10両編成)にして輸送力を増強させるために製造した系列である。横川駅~軽井沢駅間を走行するため、489系と同様に協調運転装置を装備している。
[編集] 0番台(新製車)
1975年に登場した。
183系をベースに耐寒耐雪構造を強化し、EF63形電気機関車との協調運転用装備を搭載した形式である。183系1000番台は、当形式をベースに設計されたため、両者の外観上の違いは運転室下部の機器室の空気取入口の形状や機関車連結のためのジャンパ栓の数など、ごくわずかである。
クハ189形、モハ189・188形、サロ189形の4形式が存在し、クハ189形は直江津方が0番台、EF63形と連結する上野方は500番台に区分されている。サロ189形は横川駅~軽井沢駅間でEF63形との協調運転時にパンクさせる空気バネ台車への空気の再供給を短時間で行う必要があったことから、MGとCP双方を装備する100番台の他、0番台についてもCPを装備する。客室では、冷房故障対策として、各車両とも車端部から2番目の窓を開閉可能な上昇式にしていたのが特徴である。
後年、短編成化のため余剰になったサロ189形0番台は、全10両中7両(2~8)がジョイフルトレインの改造種車に転用された。
- モハ189/188-1~52、クハ189-1~14・501~514、サロ189-1~10・101~113
[編集] 形式間改造車
189系にも183系と同じく他系列からの改造車が存在する。ほとんどが東北・上越新幹線開通の前後に他線の183系や485系を改造したものであり、国鉄改革が叫ばれていた時期に登場したため、車両新製に代わって他系列車両の改造編入が行われている。
[編集] 他形式からの改造車
[編集] 1500番台
1982年から1985年にかけて、上越新幹線開通で廃止になった「とき」に使用していた183系1000番台に前述の協調運転に関わる装備を改造により追設した番台区分である。元々183系1000番台は189系の設計をベースに製造された車両であるため、新製車との外観上の違いはほとんどないが、側窓の開閉機構は備えられていない。車番は原番号+500(但し直江津方先頭車およびサロ189-1107・1117は183系原番号と同じ)で、クハ189形、モハ189・188形、サロ189形の4形式すべてに存在する。サロ189形1500番台は、1505にはCPを設置、1516はMGを撤去して0番台と同一仕様としている。現在、クハ189形1500番台1両が幕張車両センターに在籍する以外はすべて廃車されている。最後に残る1両はデラックス車に改造されており、「中央ライナー」用のC編成の1号車に組まれている。
- モハ183・182-1016・1021・1048・1058→モハ189・188-1516・1521・1548・1558、クハ183-1015・1016→クハ189-1016・1516、サロ183-1107・1117・1005・1116→サロ189-1107・1117・1505・1516
[編集] サロ189形50番台
サロ183形1050番台と同じく1978年から翌年にかけて、485系のグリーン車サロ481形より改造した番台区分で、CPの設置と横軽対策の施工以外は改造前と大きな変更はない。1989年に全車がサハ481形300番台に格下げ改造のうえ勝田電車区へ転出した。その後、E653系の投入に伴い2000年までに全車が廃車されている。
- サロ481-110・111・113→サロ189-51~53
[編集] モハ189・188形500番台
1982年と翌年にかけて登場した、こちらも485系からの改造車であるが、構体を0番台に準じて新規に製作して載換えたため、他の485系編入改造車とは異なり外観上では0番台車とほとんど区別が付かない。このほか交流関連機器の撤去も行われている。登場当初は種車の備品を流用したことから座席が、0番台の簡易リクライニングシート(R51形)とは異なり、旧型のリクライニングができない回転クロスシート(T17形)を装備していたなどの特徴があったが、後のリニューアルによる座席の変更で差異もほとんどなくなった。またこのうちモハ189・188-501はデラックス車に改造された。
1997年10月1日の長野新幹線開業に伴う運用減により3ユニットが廃車され、最後まで残ったモハ189・188-501もE257系に置換えられて2002年に廃車となり、区分消滅している。
- モハ485-199・203~205/モハ484-301・305~307→モハ189・188-501~504
[編集] クハ188形
183系の項で触れたクハ182形と同じく、1986年にサハ481形100番台にクハ189形に準じた運転台を取付けて先頭車化改造したことにより登場した形式である。クハ189形とは異なり、直江津方が100番台、上野方が600番台を名乗る。そのためか0番台は存在しない。クハ182形100番台と同じく、先頭車改造と同時に種車にあった車内準備室を撤去したため、定員もクハ189形と同じ56名である。2006年現在、長野総合車両センターにN103編成の両端先頭車として102と602の2両が在籍する。
- サハ481-113・116→クハ188-101・102、サハ481-101・115→クハ188-601・602
[編集] グレードアップ改造
JR移行直後より、特急「あずさ」「あさま」は並行する中央自動車道や関越自動車道、上信越自動車道の高速バスと激しい競争になり、JR東日本では対抗策として一部車両の差別化を計り、指定席車両のデラックス改造を行った。
1987年から「あずさ」用9両編成8本、1990年から「あさま」用11両編成7本が作られた。基本的には両列車とも同じ内容であったが、「あさま」用編成は「あずさ」編成での反省を生かし、一部が変更されている。
- 座席部分の床を嵩上げセミハイデッキ化し、同時に窓上方を拡大
- 普通車は背面テーブル付リクライニングシートへ取替えて座席間隔を拡大(これにより座席と窓の間隔は不一致となる)、グリーン車は3列式(C席が独立した1+2配置)とした 定員は普通車は各車両4名減、グリーン車は36名に変更
- 荷棚を読書灯付に改造
- 仕切ドアを自動ドアに改造し上部に案内表示器を設置
- グリーン車に公衆電話を新設
- グリーン車のトイレ・洗面所をリニューアル
- 車内チャイムを「鉄道唱歌」から「信濃の国」「雪山賛歌」「武田節」「ちょっとだけストレンジャー」の4曲に変更
これらは全て指定席車両が対象であったため、自由席車はシートモケットの変更以外一切手が付けられなかった。しかし、閑散期には指定席車の減車で指定席車を自由席として使用されることもあったため、該当車両は指定席車両と同様の改造を行った上、座席取付部にレールを設置し、シートピッチを変更可能にしている。
後発であった「あさま」編成は以下が変更された。
- 座席のハイデッキ部分をやや低くし頭上の圧迫感を低減
- 「あずさ」編成の照明に付けられたルーバーを廃止し、フラットタイプに変更
- 冷房ダクトも含めて平天井に近い形態に変更
- グリーン車の仕切ドアを通路に合わせて移設(「あずさ」編成では改造前と同じ位置だった)
- グリーン車に男子トイレを追加
- グリーン車公衆電話にに電話室を新設して静粛性を確保
- 男子トイレと電話室新設のために客室面積を縮小したため、グリーン車の定員は「あずさ」編成より一列減の33名となる
- 車内チャイムのうち「武田節」を「故郷」に変更
- サロ189-1については増結グリーン車専用(禁煙車)となり、電話室には電話を設置せず、業務用室として使用
閑散期には指定席車が自由席として使用されることもあったため、該当車両は指定席車両と同様の改造を行ったが、「あずさ」編成と異なりシートピッチ可変機構は省略された。
両列車共に運用は限定され、時刻表にも「デラックス車両で運転」と案内されていたが、長野新幹線開業で「あさま」編成が「あずさ」に転用されて以降、次第に一般車と運用が区別されなくなり、「あずさ」のE257系置換まで続いた。
その後は中間車のみ房総特急に転用され、先頭車は一般車と組んで団体臨時用になったが、その際、ドア上部の車内表示器が撤去(鉄板で塞いでいる)されている。ただし、「妙高」用に転用されたクハ189-501のみ廃車時まで使用されていなかったものの撤去されずに残っていた。
これとは別に「あさま」用の一般編成も普通指定席車の座席のみをデラックス車と同形に交換されたが、「あずさ」用一般車は最後まで改造されなかった。また、一般編成の車内チャイムも「あさま」編成の1本を除いてデラックス車仕様に取替えられたが、「あずさ」編成1本が「あさま」仕様(「故郷」)を使用していた。現在このチャイムは臨時「あずさ」でのみまれに使用されることがある。ただしこのチャイムはグリーン車の乗務員室にのみ搭載されているため、現在の臨時「あずさ」ではグリーン車から車内放送をしないのでほとんど使用されることはなく、同じ編成を使用しても「中央ライナー」や「ムーンライト信州」では放送時にチャイムを使用しないため流れない。
[編集] ジョイフルトレインへの改造
JR化後、JR東日本では、余剰車両を活用して、ジョイフルトレインへの改造がされる事となった。
[編集] 「シルフィード」への改造
1990年に新潟支社が新津車両所(現・新津車両製作所)で余剰グリーン車(サロ189)3両を485系に改造の上、「シルフィード」(風の妖精)という欧風電車へ改造を行った。 165系改造車である「パノラマエクスプレスアルプス」(現・富士急行2000形電車と同じように運転席を2階にし前面展望を備え、狭小トンネル区間を考慮したパンタグラフ部の低屋根化、ATS-P型装備、さらには制御車(クロ484-1⇒クハ484-701)にサービス用電源を自力で供給するための発電用ディーゼルエンジンまで搭載。専用牽引機であるDE10 1701まで用意された。(後にJR貨物へ譲渡)JR東日本管内のほとんどの路線での営業運転が可能ということで非電化区間での機関車牽引の都合上、先頭車の連結器は、自動連結器を装着している。2001年1月に経年変化のために全車グリーン車扱いから、普通車扱いとなり、さらに同年6月24日の運転を最後に座席を全て撤去、カーペット敷きのお座敷電車に再改造し、それまでの「シルフィード」から「NO.DO.KA/のどか」となった。現在も新潟車両センターに所属している。
- 改造・車番号変更の経緯
- サロ189-2→クモロ485-1→クモハ485-701
- サロ189-3→モロ484-1→モハ484-701
- サロ189-4→クロ484-1→クハ484-701
[編集] 「リゾートエクスプレスゆう」への改造
1991年に水戸支社が余剰グリーン車6両を大井工場(現・東京総合車両センター)、大船工場(現・鎌倉車両センター)で485系に改造の上、投入したジョイフルトレイン。デビュー当初の内装は欧風仕様だったが、首都圏のお座敷列車の需要が高まり1998年10月に先頭車のラウンジおよびイベントカーを除き畳敷に改装された。専用電源車(マニ50形・水郡線営業所所属)を連結のうえで、ディーゼル機関車牽引による非電化区間への入線も可能となっている。が、最近は、その形態での運転は激減している。現在も、水戸支社が保有、勝田車両センターに所属。全車グリーン車で運転している。編成番号は「K30」。
- 編成
- (仙台・いわき)クモロ485-2+モロ484-2+サロ485-1+モロ485-1+モロ484-3+クロ484-2(上野)
- 改造・車番号変更の経緯
- サロ189-5→クモロ485-2
- サロ189-7→モロ484-1
- サロ481-1002→サロ485-1
- サロ189-6→モロ485-1
- サロ189-8→モロ484-3
- サロ183-1008→クロ484-2
[編集] 「彩野」への改造
2003年「あずさ・かいじ」のE257系化のため余剰となった189系電車6両を国際的な観光都市である日光や、京葉線沿線など臨海副都心へのアクセス用の専用ジョイフルトレイン、また団体輸送用に大宮工場(現・大宮総合車両センター)で改造し、公募により「彩野」と命名された。 ちなみに「彩野」の由来は、埼玉県を表す「彩」と栃木県の旧国名「下野」からとのこと。 改造箇所は、日光をイメージした専用塗装。車内の化粧板、座席モケットの張替えなどのリニューアルが主でグレードアップをするような改造は行われていない。 改造後は、小山電車区(現・小山車両センター)に配属。当時の編成番号は「Z45」。 快速「やすらぎの日光号」などをメインに使用されたが、2006年3月18日のダイヤ改正から運転を開始した東武鉄道との直通運転に伴い特急「日光」「きぬがわ」用485系編成の異常時用の予備車とするために大宮総合車両センターで東武鉄道のATSや列車無線などを装備の上485系直通車両(小山車両センター所属6両編成1本)と同じ塗装に変更。同時に大宮車両総合センター車両検査科東大宮センターに転属となった(編成番号は「OM-201」)。
塗装などが変更され、特に側面に書いてあった「彩野 AYANO」の文字(マーク)が消えた事から、鉄道ファンなどは『元彩野』などと呼んでいる。但し、JR東日本公式には今でも「彩野」の愛称を用いている。
- 編成
- (黒磯・東武日光・鬼怒川温泉)クハ189-2+モハ189・188-45+モハ189・188-43+クハ189-511(新宿)
[編集] 現状
485系改造車両である200・700・800番台を除き、おおむね経年劣化などにより徐々に運行する車両数が減ってきている。
[編集] 国鉄~JR東日本
中央ライナーに運用される183系
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上越新幹線の開業により、「とき」に使用していた183系1000番台については「あずさ」や総武本線を中心とする特急網に使用され、「あまぎ」→「踊り子」で使用されていた車両についても、東北・上越新幹線の上野延伸開業に伴い、「新幹線リレー号」に使用されていた185系を同列車に転用したことに伴い、中央本線に転用され、同地区に残っていた165系急行形電車を置換えている。
また、長野新幹線の開業により、189系については一部を普通・快速「妙高」号に転用している。
その後、長年使用されていた「あずさ」と「かいじ」でも新型車両であるE351系やE257系の新製により2002年12月までにすべて置換えられた。この中でデラックス車は千葉地区に移動し主に総武本線を中心とする特急網でのみ定期列車として使用されていたが、この地区も2004年10月16日のダイヤ改正から「さざなみ」と「わかしお」がE257系500番台にすべて置換わり、「しおさい」と「あやめ」も翌2005年12月10日のダイヤ改正でE257系500番台や255系にすべて置換えられ、JR東日本管内では定期特急列車としての運用が消滅した。
2006年現在、定期列車としては中央本線東京~高尾間の「中央ライナー」や、信越本線長野~直江津間の快速/普通「妙高」号で運用されている。
「あずさ」「かいじ」での運用終了後は首都圏に移り、田町車両センター・幕張車両センター・豊田電車区・大宮総合車両センター車両検査科東大宮センターで臨時列車や団体列車として使用されている。ただし、臨時列車として使用する場合でも特急列車としてではなく、「ムーンライトながら91・92号」や、「ホリデー快速河口湖号」のように快速列車として使用されるケースが多くなっているため、普通車のみが残っている。さらに房総特急用にデラックス普通車の中間車を供出した関係で、残ったデラックス車が先頭車片方だけに連結されているアンバランスな状態になった編成が多い。そのため、2007年現在でグリーン車を連結しているのは幕張に所属しているC編成4本のみである。これは、「中央ライナー」に運用するにはE257系と編成を合わせるためグリーン車が必要であることや、臨時「あずさ」への運用が見込まれていたため、廃車予定のデラックスグリーン車の中でも状態の良い車両が残された。
また、新製当時の技術上から車体の断熱材に石綿(アスベスト)を使用していたなどの問題もあり、アスベスト使用車については廃車が2007年3月までに実施される。かつて長野地区に在籍していた車両にはアスベストを既に除去している車両も存在している。これは平成時代の初期に長野でアスベストが原因の労災が発生し、この対策としてリニューアル時に除去作業を並行したためである。
幕張からは2005年12月10日のダイヤ改正直後にマリ9・24編成が廃車となり、2007年現在は「中央ライナー」用C編成と団体専用のマリ31・32編成の計48両を除きすべて廃車若しくは他区へ転出となっている。そのうちマリ22編成は新潟地区の大雪で上越線が不通となり、越後湯沢に閉じ込められた高崎車両センターの183系編成や、関東地区での団体列車の応援運用が不可能となった新潟車両センター所属の485系編成の代役として、正月の臨時列車などで使用された。
このうち、マリ7編成は中間車2両を抜取り6両編成になった上で幕張車両センターに留置(方向幕は抜き取られていない)していたが、2006年5月10日に長野総合車両センターへ廃車回送された。また、マリ23編成も2月までに廃車回送が予定され「回送」の貼紙を貼付の上留置されていたが、同センターへの回送実施は5月1日であった。この編成に組成されていたクハ183-21の前頭部は個人に引取られて保存された。前頭部のみとはいえ、0番台の保存事例としてはこれが唯一である。
置換対象車の中にはデラックス車も含まれているため、「中央ライナー」用C編成中間車が全車デラックス車に置換えられ、この結果C編成のオリジナル車は9号車のみとなり「中央ライナー」などでのサービス向上を実現した。残る車両からは高崎車両センターに一部車両が転出して一般車と交換されている。同センターの新編成は先頭車以外がデラックス車である。また、田町車両センターの車両の中にも1000番台初期車があるため、幕張の(元)マリ21~23編成の中間車(後期車)とトレードされ、わずかながら車齢が若くなっている。
大宮総合車両センター車両検査科東大宮センターに所属する189系「彩野」編成については、2006年3月18日のダイヤ改正から運転を開始した特急「日光」「きぬがわ」用485系編成の異常時用の予備車とされた。これは以前「彩野」色(愛称にちなむ)だったのを、東武鉄道との直通運転開始直前に東武ATSを装備の上485系直通車両と同じ塗装に変更したが、JR東日本公式では引き続き『「彩野」編成』としている。しかし、実際には189系は東武100系「スペーシア」や485系と比較すると座席の質など旅客サービス水準に大きな格差が生じるため、JR東日本と東武の間での協定では、「日光」「きぬがわ」の代走運用は可能な限り東武車を使用することになっている。東武車のJR直通は通常1運用なのに対して直通対応車は3編成用意した。結果的に189系の出番は非常にまれで、東武車の準備も間に合わない緊急時と増発時程度しか運用しない。(今まで確認されたのは、2006年5月29日、8月9日、12月9日)。なお、2007年4月28日~30日・5月3日~6日に、横浜駅~東武日光駅を直通する「日光83号・84号」には、189系が使用されることになった[1]。 東武直通運転開始に伴い快速「やすらぎの日光」が廃止された後は、通常団体列車やホリデー快速での運用が中心となっている。本来の直通対応編成である485系と異なり、「彩野」編成は列車愛称表示器を前面に装備しており、「日光」「きぬがわ」に運用する際には仮名漢字とローマ字の文字表記により列車愛称を表示する。なお、「彩野」編成に対し、一部の鉄道ファンは、デザインが変わってしまったためか「もと『彩野』」などと呼称している。
[編集] JR西日本
1986年11月1日に行われた国鉄最後のダイヤ改正では福知山線宝塚駅~山陰本線城崎駅間電化に伴い、同区間を運行する新設エル特急「北近畿」に「くろしお」で使われていた485系電車を転用することとなった。その後、分割民営化が行われ七尾線が直流電化されることになり、113系電車を交直流両用の415系電車800番台に改造する必要性が生じた。そこで、全線直流区間を走行する「北近畿」用485系電車から交流機器を撤去し、113系電車に移植することになり、1990年~1991年にかけて183系700・800番台に改造された。
さらに2003年「しらさぎ」に683系を投入した事によって余剰となった車両および2001年の「スーパー雷鳥」683系化で休車となっていた、元「スーパー雷鳥」付属編成車のクモハ485形・モハ484形・クハ481形200番台を2003年と2004年に改造した200番台も生まれた。 700・800番台と異なり、交流電気機器は使用停止のみで、撤去は行われていない。
現在では、700・800番台の一部車両に廃車がでたもののJR西日本の183系は福知山運転所に配置され、北近畿ビッグXネットワークを形成する特急列車に使用されている。
[編集] その他・エピソードなど
[編集] 187系計画
189系の登場後に、一時この系列のさらなる派生系列として187系が計画されていた。これは全電動車方式(その他グリーン車1両のみ付随車とする案もあった)で補機を連結せずに碓氷峠を通過しようというものであったが、消費電力が非常に多くなり、変電所の能力がこれに追い付かないことや、高崎線内での高速運転が難しく、他の列車に影響が出ることが判明したため、実現には至らなかった。
当初はステンレス車体を持つ新製車として計画されたが、当時は国鉄改革論が声高に叫ばれていた時期であり、余剰の183系グリーン車を改造することに変更された。しかし、前述のように計画自体が中止されたため、改造種車用に用意されたグリーン車(サロ183-1008・サロ189-2~8)はジョイフルトレイン「シルフィード」→「NO DO KA」・「リゾートエクスプレスゆう」の改造種車として転用された。
[編集] 「やくも」転用計画
1982年、伯備線・山陰本線西出雲電化の完成で特急「やくも」を電車化する際には、費用対効果の面から振子車381系の導入を見送り、上越新幹線の開業によって余剰となる183系1000番台の転用が検討された。しかし、伯備線は曲線区間が多く、183系を投入した場合、電化によるスピードアップの恩恵が受け難いためにこの計画は取り止めになった。
[編集] 使用列車
運転終了―廃止・他系列車両への置換列車を含む
[編集] 特急列車
[編集] 国鉄→JR東日本
- 「さざなみ」
- 「わかしお」
- 「しおさい」
- 「あやめ」
- 「すいごう」
- 「ホームタウン成田」
- 「とき」
- 「あまぎ」
- 「踊り子」
- 「あずさ」
- 「かいじ」
- 「あさま」
- 「日光」(485系の予備車として使用)
- 「きぬがわ」(同上)
(以下はすべて臨時列車)
- 「ウイング踊り子」
- 「ウイングエクスプレス」
- 「ウイング」
- 「ウイングあずさ」
- 「ビーチインBOSOさざなみ」
- 「ビーチインBOSOわかしお」
- 「きよさとかいじ」
- 「新雪」
- 「なつかしの特急あさま」
- 「そよかぜ」
- 「水上」(臨時)
- 「白根」
- 「四万草津」(不定期)
- 「嬬恋草津スキー号」(冬季限定)
- 「あずさ」(臨時列車の一部、時刻表に「一般型特急車両で運転」の表記がある列車)
[編集] JR西日本
[編集] 普通・快速列車(すべてJR東日本)
(以下はすべて臨時列車)
- 快速「やすらぎの日光」号
- 「ムーンライトながら」91・92号
- 「ムーンライト信州」
- 「一村一山号」
- 「碓氷号」
- 「ホリデー快速河口湖号」
- 「シーハイル上越」
- 「マリンブルーくじらなみ」
[編集] 関連項目
[編集] 脚注
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