JR東日本E257系電車
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E257系電車(E257けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の直流特急形車両。
JR東日本の直流区間で用いられる国鉄型特急車両を置き換えるために投入された新世代車両であり、今後も各地で投入されていくものと思われる。JRが自社設計・製造した特急用車両では最多の製造数である。(次点は西日本旅客鉄道(JR西日本)683系)。
車両デザインはGKインダストリアルデザインが担当している。 第45回(2002年)鉄道友の会ブルーリボン賞受賞。
JR東日本E257系電車 | |
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E257系電車(豊田-八王子間/2005年7月撮影) | |
営業最高速度 | 130km/h |
設計最高速度 | 130km/h |
編成定員 | 0番台 11両 678人(普通車650人・グリーン車28人) 9両 558名(普通車530人・グリーン席28人) 500番台 5両 306人(全車普通車) 10両 608人(全車普通車) |
全長 | 20,500(20,000)mm |
全幅 | 2,946mm |
全高 | 3,980mm |
編成重量 | 0番台 11両 377.0t、9両 306.1t 500番台 5両 180.6t、10両 361.2t |
軌間 | 1067mm |
電気方式 | 直流1500V |
編成出力 | 0番台 11両 145kW×24=3,480kW 9両 145kW×20=2,900kW 500番台 5両 145kW×12=1,740kW 10両 145kW×24=3,480kW |
駆動装置 | 三相誘導電動機 |
制御装置 | VVVFインバータ制御(IGBT) |
ブレーキ方式 | 電気指令式ブレーキ 回生ブレーキ 抑速ブレーキ 耐雪ブレーキ |
保安装置 | ATS-SN・ATS-P |
備考 |
目次 |
[編集] 0番台
中央本線で使われていた183系・189系の老朽化による置き換えを目的として日立製作所・近畿車輛・東急車輛製造の3社で製造された。車体色は白を基調としており、車体側面に武田菱を模した大きなシールが貼られている。この側面のデザインは、号車ごとに異なる。
編成は基本編成が5M4Tの9両編成、増結用の付属編成が1M1Tの2両編成である。松本駅における増結・解結作業の関係上、付属編成が新宿・東京方に連結されており、号車番号は付属編成が1・2号車、基本編成が3~11号車となっている。基本編成のみの運転の場合も号車番号表示は変更されず、3~11号車の9両による運転と案内・表示される。これは、編成の長さにかかわらず自由席車両・グリーン車の号車番号を統一するための措置である。 グリーン車は基本編成の8号車にあり、普通車との半室構造となっている。
2001年(平成13年)12月1日のダイヤ改正より中央本線の特急「あずさ」3往復で運用を開始し、2002年(平成14年)3月23日には特急「あずさ」3往復のほか新たに特急「かいじ」にも5往復投入。同年7月1日には特急「かいじ」の残る4往復の183系・189系を置き換えた。同年12月1日のダイヤ改正で183・189系で残った特急「あずさ」を全て置き換えた。
また2002年7月1日より中央ライナー・青梅ライナーで、2003年(平成15年)より東海道本線の湘南ライナー・おはようライナー新宿・ホームライナー小田原にも運用されている。さらに1日1往復、篠ノ井線松本駅~信越本線長野駅間を結ぶ快速列車にも使用されている。現在、松本車両センターに9両編成16本(144両)・2両編成5本(10両)の計154両が在籍している。
この他、E351系が検査入場して予備車が無い時、一部の「スーパーあずさ」をE257系11両編成で代走する。
[編集] 500番台
房総地区で老朽化した183系・189系を置き換えるために2004年10月16日のダイヤ改正から営業運転を開始した。製造は0番台と同じく、日立製作所・近畿車輛・東急車輛製造の3社が行った。 普通車のみ3M2Tの5両編成であり、分割・併合運転を考慮して、東京方・千葉方の先頭車とも前面貫通構造を採用している。
現在、幕張車両センターに5両編成19本(95両)が配置されている。2004年10月16日ダイヤ改正より内房線特急「さざなみ」と外房線特急「わかしお」に投入され、2005年12月10日のダイヤ改正からは総武本線特急「しおさい」と成田・鹿島線特急「あやめ」にも投入され、房総地区の183系・189系を全て置き換えた。また横須賀線の「おはようライナー逗子」・「ホームライナー逗子」にも使用されている。
[編集] メカニズム
- 制御システムにE231系で採用されたTIMSを搭載している。
- 走行装置:0番台は日立製作所製IGBT素子VVVFインバータ装置、500番台のM-1500には三菱電機製IPMが、M-500には日立製作所製-IGBT素子VVVFインバータ装置をそれぞれ搭載して低騒音化が図られている。主電動機はMT72B形の145kwの交流誘導電動機。
- ブレーキ:回生・発電ブレンディングブレーキを基本としながら低速域用に空気ブレーキを装備する。T車はディスクブレーキを装備。TIMSによって適切なブレーキ力を与える。なお発電ブレーキはブレーキチョッパを搭載しており、環境への配慮が図られている。
- 台車:ボルスタレスのヨーダンパ・軸バネオイルダンパ付き台車で、車輪径は860mm。E653系・E751系と基本的には同じものである。
- パンタグラフ:低断面トンネル対応のシングルアーム式を採用。
- 警笛:電気笛とミュージックホーンの2種類の他、AW2空気笛を併用。気笛ペダルを強く踏み込むと空気笛が鳴る。電気笛とミュージックホーンは、運転台のスイッチで切替ができる。助士側の気笛ペダルは、空気笛のみ。
[編集] 外観・車体
- 車体:E653系、E751系を基本としたアルミ合金製ダブルスキン構造を採用している。
- 前面形状は、E653系・E751系とは異なり切妻形となり、0番台には前面貫通と非貫通の2種類がある。500番台は分割・併合運転を行うため全車前面貫通構造であり、ワンタッチ幌装置が備えられている。
- ヘッドライト:プロジェクター式キセノンディスチャージ(HID)ライトを併用している。また上部に補助灯も装備している。
- 前面に横長LED式の種別・愛称表示器を備えている(貫通先頭車ではほぼ正方形)。後尾灯および側面行先表示器もLED式。
- 乗降用のドアは片側1ヶ所。ただし半室構造の車両(半室グリーン車)のみドアは中央にある。2席にまたがる大型の窓はE653系・E751系と共通である。
- 低重心化のため空調装置はすべて床下に搭載し、屋根上にはパンタグラフ以外の重量物は載せていないため平坦である。
- 0番台貫通型と500番台はその独特な前面形状から「虫」「クワガタ」の愛称がつけられた。
[編集] 車内
- 座席
- 普通車:960mmのシートピッチの座面スライド機構付きリクライニングシートである。座席の回転は手動式。座席背面にテーブル、カップホルダー、網ポケットのマガジンラックを装備する。
- グリーン車:1160mmのシートピッチのリクライニングシートで、半室構造・横4列配置である。フットレスト、座席背面にテーブルを装備。E351系で設置されたシートヒーターは装備されていない。
- 車内はFRPやカラーパネルシートを多用している。デッキ・客室間の仕切り扉は、無駄な開閉を防止するため光学センサー式となっている。
- LED案内表示器を客室前後に備える。床はゴム製のシートを挟むことで振動を軽減。なおグリーン車の床は絨毯張り。照明はグリーン車・普通車共に間接照明である。
- トイレは洋式、男性用小便器共に真空式で臭気を軽減しており、一部車両は車椅子での利用が可能。洗面設備、自動販売機、公衆電話も設置されている。
- E351系にあった大型の荷物置場は本形式では設置されていない。
- 0番台の9号車の車端には喫煙用フリースペースを設けている。但し、2007年3月18日からは完全禁煙となる。
- 空調装置のエアダクトは荷物棚と一体化しており、荷物棚の先端と荷物棚下から吹き出す仕組み。
- 乗降用ドアは、徐々に強く閉まる方式を初めて採用し、手を挟んだ場合の安全性を向上している。また、バリアフリー対応として、開閉時に女性の声で「ドアが開きます」・「ドアが閉まります」とアナウンスするシステムを搭載している。
- 窓ガラスはUVカット機能付きの複層ガラス。
- 運転台はワンハンドルマスコンを採用し、通常のTIMS用のモニタのほか、時刻表のみを表示する小型モニタも併設されている。運転席とデッキはガラスで仕切られているため、デッキから前方の景色を楽しむことができる。それを考慮して、助手席の高さが運転席よりも若干低くしてある。運転室仕切カーテンは、電動式。助士側の小窓には、カーテンがないので、夜間・トンネル内でも客室から前方が見通せる。
[編集] 関連項目
- JR東日本の在来線電車 (■国鉄引継車を含む全一覧 / ■カテゴリ) ■Template ■ノート
[編集] 外部リンク
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