名鉄3500系電車 (2代)
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3500系電車(3500けいでんしゃ)は、名古屋鉄道の通勤形車両。
なお本項では、車体、性能、システムが類似し、同じグループとして運用されている3700系電車・3100系電車についても記述する。
目次 |
[編集] 概要
[編集] 3500系
名鉄3500系電車 | |
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名鉄3500系電車 | |
起動加速度 | 2.0(2.5km/h/s準備、設計上は2.8km/h/s可能)km/h/s |
営業最高速度 | 120km/h |
設計最高速度 | 130km/h |
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大)
|
全長 | 18,900mm |
全幅 | 2,740mm |
全高 | 3,880mm |
編成重量 | 122.2t |
軌間 | 1067mm |
電気方式 | 直流1,500V |
編成出力 | 主電動機 170KW×8=1360kW |
制御装置 | VVVFインバータ制御 |
ブレーキ方式 | 回生制動併用全電気指令式電磁直通空気制動(常用段数:7段) |
1993年から1996年まで製造された、片側3扉で全車両の座席がロングシートの4両固定編成の車両である。
主電動機の出力を170kWに強化し、GTO素子を用いたVVVFインバータ制御(1C8M)を導入した。変調音は同じメーカーの制御装置を使用する相模鉄道9000系や京王1000系の第1~第9編成のうちの奇数編成のものなどに類似している。ブレーキを三菱電機MBS-A方式電気指令式として、運転士がハンドル1つで加速・減速を操作できるワンハンドルマスコンを初採用した(電気指令式ブレーキの名鉄での初の採用はキハ8500系である)。このため、電磁直通式空気ブレーキである6500系などと連結しての運行はできない。
客室内の設備として、名鉄においては特急車以外で初となる号車番号表示器とLED式案内表示器を車端部に設置した。号車番号表示は途中駅から行き先が分かれる列車に便利な機能で、案内表示器には次駅の案内などのほか、その時々の速度を数字と電車をかたどったグラフで示す機能もある。ラッシュ対策のため、特に利用客が固まる乗降扉の両脇1人分ずつには座席を設けず、立席スペースとし、扉間が6人掛け、中間車の車端部が4人掛けとしてある(公称座席定員は各々更に1人分ずつ多いが、その場合1人当りの幅は最低基準の400mmとなる)。6500系・6800系の最終増備車と同じ座席配置である。しかし、実質座席定員が少ないとの指摘を受け、1996年配備の4次車からは1両につき8ヵ所に1人用の補助席を追加した(初期製造車の一部にも設置されている)。34編成136両が在籍する。
デビュー当時、赤い車体に乗降口扉の上半分が灰色に塗られていたが、2000年以後、他の部分と同じ赤色に塗り直された。これは3700・3100系も同じである。また座席のモケットは2種類ある(オリジナルの名残りである紫系と、6000系列で先に採用されていた茶系)。
車体は6500系の6518編成以降をベースとするが、先頭車には電気指令式ブレーキを意味する「ECB」(Electric Command Brake)のプレートが取りつけられ、また正面下部にはスカート(排障器)を設置した。また、正面上部への車両番号表示が本形式により久方ぶりに復活した。正面の車両番号表示は、名鉄における完全新製車では1954年以来、車体更新車でも1964年以来行われていなかった。
主電動機、主制御器ともに最初は東洋電機製のみであったが、増備車では主電動機に三菱電機製、主制御器に東芝製と三菱電機製が加わった。交流モーターの170kWは換算すると直流モーターの250kW以上に匹敵するため、通勤車ながらも高速性能が大幅に向上し、就役当初から本線の優等列車で120km/h運転を実施した。最新の特急車2000系でさえ、搭載モーターや基本的な走行性能はこの3500系をベースとしている。
ちなみに3500系という形式は名鉄では2代目となる。初代は戦中戦後の混乱期に活躍した同じく3扉ロングシート車で、2代目も1990年代中盤当時の事情を考えると、初代とイメージがだぶる所がある。総数136両は名鉄では6000系に次ぐ2位だが、それを僅か4年間で投入しており、新造ペースに関しては現有車両の中で断然1位である。スピードアップと混雑緩和の両方を急ピッチで推進していた当時の名鉄の様子を象徴した形式であると言える。
- 製造年次による相違点
1次車 3501F~3504F
1991年より犬山線などに暫定的に投入されていた100系200番台が、本来の使用目的である地下鉄鶴舞線への直通運用に充当されることになったため、その代替用として1993年6月~7月に4編成16両が製造された。このグループのみ6000系などと同じ従来型の列車無線アンテナを装備する。なお、3500系の全体定員は、座席を切り詰めたことにより100系(4両編成時代)よりも僅かに多くなっている。
2次車 3505F~3511F
1994年3月~4月に7編成28両が製造された。1次車と基本的に同じ仕様であるが、このグループより列車無線アンテナの形状が変わり、以後の新造車両ではこのタイプのものが採用されている。このうち、3509Fの岐阜方先頭車のク3609号は1995年9月より試験的に折り畳み式補助椅子を設置し、翌年の増備車で採用された他、1997年には3509Fの他の3両と3508Fにも設置された。また、3509Fは2000年に当系列としては最初に英字併記方向幕に交換された。
3次車 3512F~3521F
1995年4月に3512F~3517F、6月に3518F~3521Fの計10編成40両が製造された。このうち3517Fまでは2次車までと同様、制御装置、主電動機ともに東洋電機製のものを装備するが、3518Fと3519Fは制御装置に東芝製、主電動機に三菱製のものを、3520Fと3521Fは制御装置、主電動機ともに三菱製のものが新たに採用され、変調音が少々変化している。この増備で、御嵩、森上など支線にも顔を出すようになった。因みに1995年の新製車両は本系列のみで、クロスシート車の新製が皆無という、名鉄にしては珍しい年となった。
4次車 3522F~3526F
1996年2月に6編成24両が製造された。ク3609号でテストされていた折り畳み式補助椅子が本格採用され、各車両に8名分ずつ設置された。またドアチャイムが設置され、以後の新造車で標準装備となった他、6000系などの一部の車両にも改造で取り付けられた。更には冷房装置を低騒音型のものに、SIVをGTO方式からIGBT方式のものに変更した。室内では、天井中央部の高さが僅か1cmだが高くなった。なお、全編成とも制御装置、主電動機ともに東洋製である。
5次車 3527F~3534F
1996年4月に8編成32両が製造された。1997年からの新製は下記の3700系となるため、これが最終型である。 基本的に4次車と同じ仕様であるが、このうちの3529F~3532Fでは制御装置に東芝製、主電動機に三菱製のものを、3533Fと3534Fでは制御装置、主電動機ともに三菱製のものを装備する。3534Fの豊橋方2両は落成時から1ヶ月ほどの間、モノリンク式ボルスタレス台車が試用されていた。上記4次車とこの5次車の増備により、6000系の5~8次車の中間車のみ12両の瀬戸線転属、HL車全廃、旧800形引退、7300系の一部廃車、といった動きがあり、名鉄の1500V線区での冷房化率は100%となった。(但し、各務原線の田神駅~新岐阜駅(現・名鉄岐阜駅)間に当時乗り入れていた美濃町線電車は除く。) さらに、6000系の豊橋駅への定期乗り入れ運用が消滅した。(後の1998年4月11日~1999年5月9日の土休日の夕方の1往復に限り定期乗り入れが復活したことはある。)
この増備をもって3500系の製造は終了し、1997年からの新製は下記の3700系となった。
[編集] 3700系
名鉄3700系電車 | |
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名鉄3700系電車 | |
起動加速度 | 2.0(2.5km/h/s準備)km/h/s |
営業最高速度 | 120km/h |
設計最高速度 | 130km/h |
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大)
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全長 | 18,900mm |
全幅 | 2,740mm |
全高 | 4,010mm |
編成重量 | 121.4t |
軌間 | 1067mm |
電気方式 | 直流1,500V |
編成出力 | 主電動機 170KW×8=1360kW |
制御装置 | VVVFインバータ制御 |
ブレーキ方式 | 回生制動併用全電気指令式電磁直通空気制動(常用段数:7段) |
1次車 3701F・3702F
1997年に2編成8両が製造された、片側3扉で車内全座席がロングシートの4両固定編成の車両である。動力系や室内などは3500系に準ずるが、パンタグラフには従来タイプの菱形ではなくシングルアーム式のものが採用されたほか、車体断面の形状もそれまでの卵形の形状から側板が垂直の角張った形状に変更して屋根が10cm高くなった。また本形式から車体のみの長さを18,230mmに、連結部の隙間を600mmとした。床面高さは1cm下げられ、丁度1,100mmとなった。
室内の構成は3500系と同様であるが、車体断面の形が変わったことによる変化のほか天井では冷房吹出口が異なり、座席が扉脇まで延長されたので折りたたみ式の補助席はない。車体を延長した分だけ、妻面の壁が3500系と比べて厚くなっている。
扉間の座席は9人掛けである(1人当り幅440mm)。3500系と同じく電気指令式ブレーキを装備するため、先頭車に「ECB」のプレートが取りつけられているがそのデザインは変化している。
また車内のLED表示機の文字のフォントが変化している。方向幕は当初漢字表記のみであったが、2005年のダイヤ改正を前にローマ字を併記したものに取り替えられた。
ちなみに3700系という形式は、名鉄では3代目となる。
この2編成と下記の3100系1次車の製造によって7300系は全廃された。
また3701Fは下記の3100系3106Fとともに、2003年春より1年間愛知県警による防犯PRのラッピング(通称:パトトレイン)が施された他、2005年と2006年の受験シーズンには3702Fに対して菓子製品のラッピングが施された。
2次車 3703~3705F
1998年3月に3編成12両が製造された。前面窓を8cm上げ、種別・行先表示器にローマ字を併記した字幕を採用し前面・側面ともに1次車よりも表示窓が拡大されている。
この3編成と3100系2次車の製造によって7000系が編成単位で廃車されるようになった。
また、2005年と2006年の受験シーズンには3703Fに対し3702F同様菓子製品のラッピングが施された。現在は同じ3703Fに、日本モンキーパークの催事に合わせて『ポケットモンスター』のラッピングが施され、「ポケモンどきどきぼうけんランド号」として活躍している。
3700系は5編成のみで製造を終了し、以後本線系の4両編成通勤型車両の製造は2004年登場の3300系に移行した。
[編集] 3100系
名鉄3100系電車 | |
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名鉄3100系電車 | |
起動加速度 | 2.0(2.5km/h/s準備)km/h/s |
営業最高速度 | 120km/h |
設計最高速度 | 130km/h |
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大)
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全長 | 18,900mm |
全幅 | 2,740mm |
全高 | 4,010mm |
編成重量 | 63.5t |
軌間 | 1067mm |
電気方式 | 直流1,500V |
編成出力 | 主電動機 170KW×4=680kW |
制御装置 | VVVFインバータ制御(IGBT素子) |
ブレーキ方式 | 回生制動併用全電気指令式電磁直通空気制動 |
1次車 3101F~3110F
1997年3月~4月に10編成20両が製造された、片側3扉で車内全座席がロングシートの2両固定編成である。車体や客室設備は上記の3700系とほぼ同様で、名鉄の公式ホームページ等では同系の2両バージョンと位置づけている。
しかし、制御システムは異なり、インバータを3500・3700系のGTO素子からIGBT素子(1C1M×4群)に変更し、故障時に対処しやすくなるなど、きめ細かい制御を可能にした。このシステムは、後の新造車にも一部改良の上で採用されている。
また、制御装置は三菱製と東芝製のものが採用され、変調音が異なる。音はいずれもJR西日本207系2000番台などに類似している。
制御装置は3101F~3106Fまでが東芝製で、3107F~3110Fまでが三菱製である。
3500系、3700系と同じく電気指令式ブレーキを装備するため、先頭車に「ECB」のプレートが取りつけられている(この車両までの取り付けであり、それ以降の新造車両はこれが付いていない)。
名古屋本線の特急列車のピンチヒッターや、試運転では2000系電車と併結運転を行ったり、早朝の中部国際空港への利用客などで混雑の激しい2200系の増結編成に用いられた事があった。
ちなみにモ3200形という形式称号は、名鉄では2代目となる。
また、3106Fは上記の3700系3701Fとともに、2003年春より1年間、愛知県警による防犯PRのラッピングが施された。
2次車 3111F~3119F
1998年3月~4月に9編成18両が製造された。3700系2次車と同様の改良がなされている。 制御装置は3115Fまでが三菱製、3116F~3119Fが東芝製である。
3次車 3120F~3123F
2000年4月に4編成8両が製造された。前年に登場した1600系に準じた変更がなされ、運転台モニタの設置やマスコンの右手操作型への変更、100系でも採用されている発車予告ブザーの設置、車外スピーカーの設置がされている他、新製時より転落防止外幌を装備する。 前照灯は当初はシールドビームであったが、後にこの3次車の全車両ともHIDに交換され、以後の新造車両では標準装備となった。 制御装置は3120Fのみ東芝製で、他の3編成は三菱製である。 なお3121Fは新羽島駅構内で、3123Fは新岐阜駅(現・名鉄岐阜駅)構内で車止めに衝突する事故があった。 3100系の製造はこれをもって終了し、以降の本線系通勤型2両編成の製造は2004年登場の3150系に移行した。また、2002年度登場の300系以降、通勤型車両はステンレス製の車体を採用するようになったため、長年の名鉄の象徴であった赤い電車が造られたのは現時点ではこれが最後となった。
3500系、3700系系列併せて4両39編成156両、3100系2両23編成46両の合計62編成202両が在籍する。また、別項の3300系・3150系も含めた3000番台形式を運用サイトでは「3R」と呼称している。現在のところ「3R」は西尾線・蒲郡線での運用はない。
就役後の変化として、1993年~1997年製造の車両は、登場時は種別・行き先表示が6000系以来の種別=漢字1文字(「快急」を除く)、行き先表示=漢字のみの方式であったが、2005年までに種別を2文字表記とし、種別・行き先共に英文字を併記した方式へ変更された。また、折りたたみ式の転落防止用外幌も順次取り付けられている。
[編集] 主要諸元
- 起動加速度:2.0km/h/s(2.5km/h/s準備)
- 減速度:3.5km/h/s(常用)4.2km/h/s(非常)
- 最高速度:120km/h(130km/h準備)
- 減速比:5.65
[編集] 編成
←名鉄岐阜 | 豊橋→ | |||||
3500系 | ||||||
ク3600(Tc2) | - | モ3650(M1) | - | モ3550(M2) | - | ク3500(Tc1) |
3700系 | ||||||
ク3800(Tc2) | - | モ3850(M1) | - | モ3750(M2) | - | ク3700(Tc1) |
3100系 | ||||||
モ3200(Mc) | - | ク3100(Tc) |
[編集] 外部リンク
[編集] 関連項目
- 名古屋鉄道の車両
- 現用車両
- 特急用電車 : 2000系・2200系 | 1000系・1030系・1200系・1230系・1800系・1850系 | 1600系
- 一般用電車(SR系高性能車) : 7000系・7100系・7700系 | 5700系・5300系 | 6000系・6500系・6600系・6800系 | 1380系
- 一般用電車(VVVF車) : 3500系II・3700系III・3100系 | 3300系III・3150系
- 地下鉄乗入用電車 : 100系・200系 | 300系
- AL系電車 : 6650系・6750系
- 電気機関車 : デキ300形 | デキ370形 | デキ400形 | デキ600形
- 過去の車両
- AL系電車 モ3300形・モ3600形・ク2040形 | モ800形I | モ850形 | 3400系 | 3500系I | 3550系 | 3560系 | 3600系・3650系 | 3700系I | 3800系 | 3850系 | 3880系 | 3900系 | 7300系 | 3300系II
- HL系電車(車体更新車) : 3700系II・3730系・3770系・3780系 | 3790系
- SR系高性能電車 : 5000系・5200系 | 5500系 | 7500系 | 8800系
- 600V鉄道線用電車 : モ700形・モ750形 | モ3080形・ク2020形・ク2320形
- 600V軌道線用電車 : モ510形 | モ520形 | モ550形 | モ560形 | モ570形 | モ580形 | モ590形 | モ600形 | モ770形 | モ780形 | モ800形II | モ870形 | モ880形
- 気動車 : キハ10形・キハ20形・キハ30形 | キハ8000系 | キハ8500系
- 現用車両
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