名鉄7000系電車
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7000系電車(7000けいでんしゃ)は、名古屋鉄道の車両である。
なお、本項では当系列の中間車を先頭車化改造した7100系電車、運転台以外が同じ7700系電車、性能が異なるが、車体が類似で長年共通使用されてきた7500系電車についても解説する。
また、7000系・7500系にはパノラマカーの愛称があり、第5回(1962年)鉄道友の会ブルーリボン賞受賞車である。
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[編集] 形式別概要
[編集] 7000系
1961年(昭和36年)に日本車輌製造で製造され、名古屋本線の特急に投入された。
名鉄の主な路線がある愛知県はトヨタ自動車のお膝元であり、当時芽生え始めていたモータリゼーションへの対策として、乗客にインパクトを与えられる車両の製作を企画していた。
1960年(昭和35年)8月に名鉄でデザインされたスケッチが新聞に発表されたが、いざクレイモデル(=粘土で作られた模型)を作成してみたところ、名鉄内で否定的な意見が出され、日本車輌製造へ再デザインを依頼、同社は民間工業デザイナーの萩原政男に依頼し、現在のスタイルとなった。ちなみに、名鉄が発表したスケッチには既に展望室があったが、ボンネット部分がかなり前に突き出た格好であった。
車体色は、過去に例を見ないインパクトあるスカーレットレッドを用い、今なお衰えない奇抜なデザインの6両固定編成として登場した。なお、将来の10連化を見越して製造されている。
当初、車両最前部には不死鳥の"Phoenix"名を刻んだエンブレムが取り付けられていたが、1年ほどで「逆さ富士」型の行先表示板が設置されたため、撤去された。
1961年(昭和36年)に刊行された鉄道雑誌『鉄道ファン』の創刊号の表紙を飾っている。
7000系製造の際、車両開発部は当時の社長から「ブルーリボン賞を取れなかったら車両開発部・部長以下全員クビだ」と言われていた。まさに社運を賭けた車両だったのである。
[編集] 特徴
この車両の特徴は、運転室を前面上部に上げ、通常の鉄道車両で乗務員室が位置する部分に低床の展望室を配置したことである。万一の衝突から展望室の乗客を守るため、強力な油圧式ダンパを標識灯横に設置している。1961年(昭和36年)に7004号が木曽川堤駅隣の踏切でダンプカーを跳ね飛ばしたということから、これをもって「ダンプキラー」と呼ぶ鉄道ファンも居る。なお、製造にあたって運転室への出入りは車内からではなく、旅客ドアと展望窓の間に設置されたハシゴを登って出入りできるようになっている。
この構造は、名鉄幹部がイタリアへ行った際、当時の特急「セッテベロ」号に強い印象を受けたのが始まりといわれる。この車両の図面は1954年(昭和29年)頃からあった。しかし、固定ガラス張りとなる展望室内には温度調節を行うシステム(冷暖房)が不可欠だが、当時はこれを搭載できる見通しが立たなかった。その後、5500系製造時に他の機器を可能な限り小型としてスペースを生み出し、車両冷房を実現した。これによって展望室付きの車両も製造可能となった。なお、展望室部分だけは屋上に冷房装置を搭載できないため、室内最前席の前に床置式冷房装置を設置した。
展望室構造のため、先頭車の車体長は中間車よりも1m長い19mとし、車体断面は国鉄151系電車のように窓部を内傾させ窓下の裾を絞った形状とした。但し車体幅(外板間)は2,730mmで裾の絞りは緩く、屋根高さは5500系と同じ3,500mmであり、以後の名鉄車両ではこの車体断面形状が多少の寸法変更を伴いながらも3500系まで適用されている。先述のように、展望室部分は床面高さが他の1,150mmに対して1,040mmの低床構造となっている。また、高所にある運転台とは別個に、車掌台・車掌扉を先頭車の後位車端に設けた。ここには補助席が設置されており、車掌台として使用しない時は着席することができる。
この前面展望式の構造は、後の小田急電鉄ロマンスカー3100形「NSE」をはじめ、国鉄時代の165系改造車「パノラマエクスプレスアルプス」(2003年より富士急行2000形「フジサン特急」)などにも受け継がれた。同車は大好評を博し、最高速度110km/hで三河・濃尾平野を快走する姿は全国の鉄道ファンを魅了したものである。また、当時の資料によれば、設計最高速度は140km/h、モーターの許容回転数では150km/hに達し、これは7500系を除いた5000系から7700系、さらに8800系(登場時)、5300系までの全電動車系列に共通である。
制御方式は直巻整流子電動機を用いた「抵抗制御方式」で、出力75kW(340V・246A・2,000rpm)のモーターを4基ずつ搭載する全車電動車方式である。弱め界磁率は30%まで可能だったが、5000系(50%)との兼ね合いから40%で使用してきた(40%界磁でも定格速度は110km/h)。マスコンを通常と反対方向に回した場合は直列の最終段から弱め界磁制御を行うことができ、電力事情の悪かった支線でもHL車以上の高速運転を行うことができた。制御段数は力行が抵抗制御16段(3次車以降13段)・弱め界磁4段、発電ブレーキが20段(3次車以降17段)となっている。
登場の翌1962年には2次車(7007編成~)が加わって計7編成となり、本線急行の他、犬山線にも進出している。1963年(昭和38年)からは、名古屋本線用には改良版の7500系を製造し、順次6~8両編成として投入されたが、支線でも広がるパノラマカー人気に対応するため、1967年(昭和42年)に4両編成が登場した(3次車:7015編成~、冷房装置などを変更)。1968年(昭和43年)には一部の車両が8両固定編成を組んでいたが、短期間で解消し、以後は従前車も4両編成に組成変更して増備されていった。そのため、1969年(昭和44年)製の5次車(7029・7031編成)は4両フル編成だが、その前後の4次車と6次車は先頭車のみの製造である。1971年(昭和46年)登場の7次車(7039編成~)も4両編成で、冷房装置が再度変更されている。1973年(昭和48年)から4両編成の大部分を連結化改造し、本形式の4+4=8両編成はもとより他形式との連結運転も可能になり、同年暮の第1次オイルショックに伴う輸送需要増にも対応することができた。1974年(昭和49年)増備の8次車2本(7045・7047編成)は久々の6両編成となり、先頭車の最終タイプを含む。非連結化4両編成も1975年(昭和50年)に最終増備車の両開き扉中間車(9次車、モ7050形7100番台)を組み込み、6両編成となっている。結果的に7000系として製造されたのは116両である。
全車が健在の時期には6両編成10本(60両)と4両編成14本(56両)という陣容であった。
1982年(昭和57年)4両編成の一部が白帯を巻いて特急専用車化(同時に行先表示板を逆さ富士形から楯形に変更)され、翌1983年(昭和58年)から1987年(昭和62年)まで1~3次車のうち42両について特別整備が行われたが、延べ15本(4両に短縮した編成あり)に施工された特急専用車装備に関しては現在解除されている。特別整備未施工の車両は1984年(昭和59年)から廃車が発生し、2007年(平成19年)現在、最盛期の約3分の2にまで減少した。現存する7000系のほとんどは、製造年次の異なる車両や7700系の中間車が混在した編成となっている他、6両編成の前頭表示が電照幕式に統一された。
[編集] 警笛
警笛においては、通常の空気式に加えて、その補助としてトランジスタ式の電気警笛(今で言う電子警笛)を装備している。3音階で作られた音楽を奏でるミュージックホーン(音楽ホーン)と、3音階同時吹奏による電気笛(電笛)である。なお、空気笛も音が最後で切れる独特のタイプとなっている。
ミュージックホーンは、7000系の後継特急車となる1000系や1600系は基より、中部国際空港の連絡特急用として2004年に新製された2000系などにも受け継がれ、名鉄特急には欠くべからざる存在として鉄道ファンや利用者からも親しまれている。
[編集] 車体塗色
鮮やかなスカーレット一色の塗装は、画家杉本健吉の進言によるとされる。第一案では濃緑、第二案でスカーレットが示された。当時では7000系のみが身に纏っていたスカーレット塗装も、昭和50年代以降は新製車両をはじめ、既存の車両もその強烈な個性にあやかるかのように、順次スカーレット一色へと塗り替えられていき、現在の「赤い電車=名鉄」とのイメージが定着するきっかけとなった。 なお、1994年頃より、従来よりも明るいスカーレットに変更されている。 前面の排障器とスカートの塗色は登場以来白であったが、これも2000年頃以降、6500系初期車の前面上部と同じグレーに変更されている。
[編集] フロントアイ
前頭部中央に斜め下を向いて設置され、一見するとスポットライトのようだが、これは発車時に車両直前の安全確認を徹底させるための装置で、フロントアイと呼ばれている。広角凸レンズを用いて運転席から車両直前の死角が見えるようになっている。当時、特に支線では停止位置の直前が構内踏切という箇所が多かったための安全対策である。3次車から採用され、後に従前車にも設置された。ちなみに、運転席からフロントアイを覗くと天地が逆さに見える。
[編集] 旋回式前照灯
上下に4灯ある前照灯のうち、油圧式ダンパと一体になった窓下の2灯は、列車後尾となった時は赤色のフィルターを掛けて尾灯となる。さらにこの2灯は、運転障害で不時停止した際などに、前照灯・尾灯いずれの状態でも光源を旋回させることによって、他の列車に緊急事態を知らせる機能をもっている。
[編集] 空気バネ台車
名鉄で初めて空気バネ台車を本格的に採用した。当時はまだ珍しかった車体直結式(ダイレクトマウント)空気バネで、1・2次車がベローズ式、3~7次車はダイヤフラム式となった他、後に2次車の一部がダイヤフラム式に改造された。なお、7500系の台車は当初からダイヤフラム式であった。以上は軸箱支持がペデスタル式であるが、7000系の8・9次車のみは台車形式自体が先に7700系で採用されたS型ミンデン式に変更されている。後年、8800系に流用されたのはこのS型ミンデン台車である。
[編集] 連続固定窓
前面のみならず、側面もパノラマカーの名に相応しく最大180cm×85cmのガラス構成による連続固定窓である。当初は複層ガラスで金属支持であったが、7次車から合わせガラスのHゴム支持に変更した。後に6次車以前も全て合わせガラスに交換し、特別整備を受けた車両はHゴム支持化も行われている。この窓の形状はキハ8000系を始めとして6000系初期車や5300系・5700系、また1枚窓ではあるが100系・200系にも採用され、室内の横引きカーテンとともに、通勤車に至るまでパノラマカーのイメージが受け継がれている。また、名鉄特急=連続窓という伝統は1000系・1200系において一旦途切れたが、1600系や2000系では間柱部分の処理など従前と異なる形状で復活した。
[編集] その他
15年間にも亘って製造され、さらに特別整備や特急専用化改装を受けた車両もあるため、台車、冷房装置、側窓支持方式、前頭表示板、座席などの変化の組み合わせにより、実にバラエティに富んでいる。外観で最も変化の分かり易い冷房装置は、1次車・2次車が5500系の量産版である分散型、3次車~6次車が能力は同じでポンプレス型と呼ばれるタイプ、7次車~9次車は集約分散型として台数を半減した。ブレーキの制輪子は7次車からレジンシューに変更され、従前車も特別整備の際などにレジン化されたが、中には比較的後年まで鋳鉄シューのまま残った編成もあった(7027編成など)。
元来は特急用であった7000系だが、増備につれて通勤列車に充当される機会が増えたため、4次車(モ7025~7028)からロングシート部分に吊革が設置された。さらに1973年暮のオイルショック以後ラッシュの混雑が激化したため、2つドア車とロングシート3つドア車とで比較実験が行われた。パノラマカーでのラッシュ対策車として、1975年に生まれたモ7050形7100番台車では、ドアが両開きとなり、ドア付近のクロスシート4脚分をロングシートに変更した。シートピッチも840mmに詰められている。しかし、実験の結果、3つドア車とでは、ラッシュ時の収容力や乗降時間の短さは比べ物にならず、以後、7100番台車に準じた両開き2つドア・転換クロスシートの5700系・5300系(1986年)を唯一の例外として、一般車は3つドア車の時代へと入って行く。後に1984年、先の7100番台車のうちの2両が先頭車に改造されて、7100系となった。なお、モ7050形7100番台車の転換クロスシートは、前年にAL車・HL車の扉付近から撤去された流用品で、肘掛けの形状など5500系のものとほぼ同型である。
1990年に7700系の中間車を編入して以来、6両編成の中でも、自動解結装置・電気連結器の有無によって連結運転が可能な車両と不可能な車両があり、内部的には前者(モ7750形組込み)を「SR6」(5700系6両編成と共通)、後者(モ7050形7100番台組込み)を「P6」と呼んで明確に区別していたが、2006年(平成18年)以降は連結運用が消滅したため、両者は共通運用となった(「P・NSR」運用)。なお、4両編成はすべて連結運転が可能で「P4」と略称される。
本形式を含めた5200系から7700系、8800系(登場時)までの名鉄の2扉オールM高性能車は、豊橋方の電動発電機・空気圧縮機搭載車と岐阜方のパンタグラフ・主制御器搭載車の2両で1ユニットを組み、車番の末尾を前者は奇数、後者は偶数としている。従って、編成を特定する場合は必ず奇数の車番で表すことになる。
[編集] 廃車
1984年と1987年に8800系(パノラマDX)に主要機器を譲るために中間車8両が廃車された。なお、冷房装置は瀬戸線の6600系に転用されている。1998年(平成10年)からは編成単位での廃車も始まり、現在までに38両が廃車になっている。今後、現在在籍している車両も新形式車両による置き換えによって2010年(平成22年)までに廃車となる予定である。
[編集] 7500系
パノラマカーの1つである。
1963年(昭和38年)、7000系の前面展望をベースに走行性能を大幅に改良して登場した。7000系は先頭車の展望部の床面が少し低くなっているが、7500系では重心を下げるため、車両全体を低床化したことにより、フラット化した。運転台高さは7000系と同一としたため、外観上運転台部分が7000系より突出した感じとなっている。また、パンタグラフは高さを稼ぐため、高めの台座の上に設定されているのが7000系と異なる。1970年(昭和45年)をもって増備が終了し、製造両数は72両にとどまったが、それでも当時の名鉄では7000系に次ぐ勢力であった。
主電動機出力75kW、営業最高速度110km/hという数値こそ従来のSR車と同じであるが、定格回転数2,400rpmの複巻電動機を使用して広範囲で弱め界磁制御を行う。当時の資料によれば設計最高速度は180km/hとされており、実際に170km/hで試験運転したことがある[要出典]。(注:「170km/hでの試験運転は計画のみで行われなかった」との意見もある)
登場時は廃車時と同様の6両であったが、すぐに性能面の余裕を利用して付随車サ7570形(後の8両化の際に電装されモ7570形となる)を含んだ7両編成で一時期運行されていた。また、登場当時は将来的に130km/h運転の構想もあったが、重軌条化やPC枕木化などの路盤整備が追い付かず、営業運転速度の120km/hへの引き上げは1000系「パノラマSuper」登場以降となり、110km/hを超える営業運転は実現しなかった(機器流用の1030系で実現)。なお、現在の120km/h運転では合成制輪子を装着し、ブレーキ性能を増強する改造が他車には施工されたが、7000系や7500系などは遂に未施工のままであった(7000系は合成制輪子化のみ施工済み)。
7500系は元々鋳鉄制輪子の使用を前提としたシステムで増圧ブレーキを備え、性能としては120km/h運転でも法令に定められた「最高速度から600m以内の制動距離」をクリアしていたが、加速に時間(距離)をとられてダイヤ上の時間短縮効果がわずかにとどまる点、当時の名鉄は踏切事故が多かったため、速度向上に比例して事故のリスク(被害の規模)が大きくなる点などがネックとなり、120km/h運転の実現には至らなかった。
[編集] 特徴
制御方式は複巻整流子電動機を用いた他励界磁制御である。これは複巻電動機の分巻界磁を制御する電源にMG(電動発電機)を利用するもので、これにより回生ブレーキだけでなく一定の速度を保つ定速度制御による運転も可能とした。主制御器は主電動機と同じく東洋電機製、制御電源となる電動発電機が日立製という、当時の名鉄の高性能車では珍しい取り合わせである。このように、当時としては先進的な足回り装備を施したが、他車との併結はこの制御装置のために行うことができなかった。後に制御回路の磁気増幅器をトランジスタ回路に置き換え、定速度制御機構を撤去するなど制御装置の更新を行ったが、基本構造には手を加えられなかったため、車両運用上では最後まで異端車として扱われ、7000系の項で述べた「P6」(他車とは連結しない)運用で使用されていた。ちなみに、7500系の機器を流用した1030系・1230系・1850系は、マスコンや弱め界磁率の変更などによって他系列との総括制御が可能となっており、これの一派である1380系と7000系の連結運転も行われたことがある。
なお、7500系の中の異端車としては、運転台を装備しながら普段は中間車として使用された先頭車モ7566・モ7665が挙げられる。これは踏切事故など万一先頭車が使用不能となった場合に代用するためのものであった。本来の目的で使用されることはなかったが、重整備工事(体質改善工事)を行なっている間は頻繁に先頭に出て活躍していた。7300系や3780系を低運転台にしたような切妻型の前頭形状であった。
車体は7000系をそのまま16cm低くした形だが、ホームの建築限界に抵触しないように裾の絞りがやや大きく、扉下ステップの張出しも無かった。また、車体のみの長さを先頭車19.05m、中間車18.1mとし、連結部の隙間は73cmとなった。低床構造のためコンパクトに造られた床下機器は、現在でも1030系・1230系・1850系で観察することができる。
登場後しばらくは回生ブレーキに対応した変電所システムが本線系統だけであったため、一時的な運用変更で西尾線に入った際に、回生電力が影響して変電所の回転変流機(交流-直流変換機)の回転数が異常に上昇し、遮断機(ブレーカー)が動作して停電になったという逸話が残っている。
[編集] 廃車の経緯
当初は登場後20年以上を経過した車両から順次車体外板の張り替えなど重整備(特別整備)工事を施行し、1次車・2次車のうち42両が竣工していたが、1992年(平成4年)以降はラッシュ時にダイヤを乱す元凶である2扉クロスシート車の延命措置がすべて中止された。このため、主に3次車以降の車両から成る7515~7523編成の5編成30両は廃車の方針が取られ、その機器を利用して「一部指定(現特別車)編成」と同様の車体を新製し1030系・1230系・1850系に生まれ変わった。また、床面が他車(1,100~1,150mm)よりもかなり低い990mmのため、駅のバリアフリー化(プラットホームを嵩上げし順次1,070mmに統一する計画)を妨げるとの事情もあって2004年度に再び廃車処分が開始され、かつ空港線への乗り入れにも対応しないまま2005年(平成17年)8月までに残る7編成(7501~7513編成)もすべて廃車された。
なお、重整備工事施行車は、側面行先表示器が正面の行先表示の電動幕への改造とともに取り付けられた。7500系よりも前に重整備工事を受けた7000系には取り付けられなかったため、7000系と見分けるポイントの一つとなっていた。客室化粧板も5700系と同じものになるなど、高性能ぶりに見合った更新内容であった。
[編集] 7700系
1973年(昭和48年)に登場した車両で、7000系が入線できない支線区への運用と途中駅での増・解結運用を考慮して、先頭車も運転台が2階ではなく通常の平屋構造になった。それ以外の車体構造や車内見付け、制御機器などは7000系と同様である。このため、ファンからは「セミパノラマカー」「合いの子パノラマ」などとも呼ばれる。前照灯を前面上部に3灯並べた前頭形状は7000系以前に登場した5200系・5500系の流れを受け継ぎ、1971年に製造された7300系をさらに改良し洗練したデザインとなった。座席指定特急に優先使用する目的で登場したため、名鉄特急伝統のミュージックホーンも装備している。また、S型ミンデン台車や赤色モケットの座席は本形式が初採用である。寸法の面では、7500系に続いて車体のみの長さを18,100mmに、連結部の隙間を730mmとし、7000系8次車・9次車を始め、6000系以降の新形式車両の標準寸法となる。形式番号は、7000系(7000・7050・7150形)、7300系(7200・7300・7400・7450形)、7500系(7500・7550・7570・7650形)によって7000番~7600番が埋まっていたため、7700番台(7700・7750形)となった。
[編集] 特徴
登場から1999年(平成11年)頃まで、7000系とともに座席指定の特急にも用いられていた。24両のうち7701~7707編成が中間にモ7750形を組込んだ4両編成、7709~7715編成が先頭車のみの2両編成であった。現在ある先頭車は内装が1990年(平成2年)の名古屋本線での「一部指定席特急」運行にあたって有料の「指定席車」仕様にグレードアップ改造された。同時期にすべてが2両編成となり、余った4両編成の中間車モ7750形8両は7000系に組み込まれた。こちらは先の改造を受けていない。
[編集] 現状
1993年(平成5年)に名古屋本線の1000系+1200系による新編成15本が出揃って本線特急の任を解かれた。これ以降定期特急での使用が減り、1999年までは臨時特急の増結の「指定席車」として用いられたが、その他は急行や普通として運用されている。2001年(平成13年)の三河線山線でのワンマン運転に伴い、そのための改造を施された。また2006年春のダイヤ改正から三河線海線でもワンマン運転が開始されることになったため、運転台にはホームの監視モニターが設置された。ただ、現在も時折名古屋本線や犬山線、広見線などでも見ることができる。
なお、名鉄ファンサイトや運用情報サイトでは略記として「SRs」と表示されることもある。また「SR」運用にも時折入る。
[編集] 7100系
元は1975年に登場した7000系の最終増備(9次)車となったモ7050形中間車の7100番台である。この中間車は乗降扉を従来の片開き1m幅から両開き1.3m幅に変更するなど、石油ショック以後の急激な乗客増によるラッシュ対策用として登場し、当時併結工事が未施工であった7001~7011編成の3・4号車に組み込まれ、6両固定編成として運用に就いていた。
[編集] 特徴
このうち7001編成と7003編成が長期入場した際に3・4号車が分離され、両編成とも6両固定から4両固定となった(両編成とも、その後上記モ7750形中間車を組み込み再び6両固定編成となった。)。ここで捻出された車両4両(7101~7104号)のうち、7101号と7104号に通勤車両6000系に準じた運転台を取り付けたものが7100系車両である。前面形状のうち標識灯と尾灯のみ6500系と同じもの(当時)となっている。先頭車化に際して前位客扉が移設されなかった結果、その位置は他の2扉SR車よりも乗務員室寄りにある。従って乗務員室背後の座席も6000系と同様3人掛けロングシートとなっている。
パノラマカーの中間車モ7050形の一部という扱いであったが、改造により正式にモ7100形(→「7100系」)とされた。最初は先の4両で編成を組んでいたが、その後の編成替えで中間の7102号と7103号が7045編成に編入されたため、先頭車2両のみの編成となった。この形式には電動式行先表示器が装備されたが、種別のみは表示器を用いることはできたが、行先表示の方向幕に50コマしかなく、また本線用の幕を搭載していたため支線には表示できない駅が多く、結局は7700系同様の系統版(行先表示板)を使用する事例が多く見られた(現在は60コマの幕を使用するため、支線での方向幕表示も可能になった。)。この車両は、座席指定特急への使用を前提とした改造ではないためミュージックホーンは装備されず、さらに登場時には装備されていた席番表示も外されて、5500系などと同様のグループとして運行されていた。
[編集] 現状
現在は、7700系と同様に三河線(山線・海線とも)のワンマン運転仕様に改造され、名鉄ファンサイトや運用情報サイトでは略記として「SRs」と表示されることもある。
[編集] 現状
7000番台の形式をもつ車両は総数242両が製造され、1970年代までは名鉄電車の約3分の1を占める一大勢力であったが、近年は急速に勢力が縮小する傾向にある。
1998年に「10年間で『パノラマカー』を全廃する」旨が名鉄から公式に発表された。ラッシュ輸送や省エネルギーに適さない等の理由が添えられている。以後、1999年5月10日の特急運用からの引退、さらに2005年3月31日の平成17年度設備投資計画での7500系の全廃の発表が挙げられ、同年8月7日に7500系の全車両が廃車された。今後は3300系・3150系の増備や瀬戸線への新車投入に伴う6000系列の転属、さらには天井の内側の吹き付けにアスベストが使用されている車両があることから(使用が判明したのは7000系54両)、2010年頃までを目処に全車が運用を離脱する予定である。
[編集] 現在の使用路線
[編集] 保存車両
2002年に廃車された7027編成のうちの3両が、豊明市にある中京競馬場内で静態保存され、「パノラマステーション(ビュッフェ・パノラマ)」として展示・公開されている。客車内は休憩室として開放されている他、食堂として利用している車両もある。また、土・日曜日には運転台に登ることができる。
また、7000形先頭車2両を「オールドEC保存会」が引き取り動態保存する方針を示している。
[編集] 参考文献
- 白井 昭「名鉄パノラマカー誕生とその後」
- 交友社『鉄道ファン』2005年1月号 No.525 p136~p142
- 名古屋鉄道車両部車両課「名鉄7000系パノラマカーの現況」
- 交友社『鉄道ファン』2005年1月号 No.525 p143~p147
- 湯本洋一「名鉄パノラマカー 中京競馬場へ」
- 交友社『鉄道ファン』2002年12月号 No.500 p146~p147
- 萩原政男「通勤用の展望車・名鉄7000」
- 工業技術院産業工芸試験所『工芸ニュース』第29巻第6号 昭和36年8月発行 p34~p35
[編集] 外部リンク
[編集] 関連項目
- 名古屋鉄道の車両
- 現用車両
- 特急用電車 : 2000系・2200系 | 1000系・1030系・1200系・1230系・1800系・1850系 | 1600系
- 一般用電車(SR系高性能車) : 7000系・7100系・7700系 | 5700系・5300系 | 6000系・6500系・6600系・6800系 | 1380系
- 一般用電車(VVVF車) : 3500系II・3700系III・3100系 | 3300系III・3150系
- 地下鉄乗入用電車 : 100系・200系 | 300系
- AL系電車 : 6650系・6750系
- 電気機関車 : デキ300形 | デキ370形 | デキ400形 | デキ600形
- 過去の車両
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- 600V軌道線用電車 : モ510形 | モ520形 | モ550形 | モ560形 | モ570形 | モ580形 | モ590形 | モ600形 | モ770形 | モ780形 | モ800形II | モ870形 | モ880形
- 気動車 : キハ10形・キハ20形・キハ30形 | キハ8000系 | キハ8500系
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