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富山ライトレール富山港線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

PORT LOVE(2007年2月撮影)
PORT LOVE(2007年2月撮影)
富山ライトレール岩瀬浜駅2006年7月16日
富山ライトレール岩瀬浜駅
2006年7月16日

富山港線(とやまこうせん)は、富山県富山市富山駅北駅から岩瀬浜駅までを結ぶ富山ライトレール軌道鉄道路線である。

2006年2月28日まで西日本旅客鉄道(JR西日本)が運営していた鉄道路線地方交通線)を第三セクター会社の富山ライトレールに移管し路面電車 (LRT)化した路線で、同年4月29日から富山ライトレールによる営業を開始した。

目次

[編集] 路線データ

[編集] 富山ライトレール移管後

[編集] JR西日本運営時

  • 路線距離(営業キロ):8.0km(第一種鉄道事業
  • 軌間:1067mm
  • 駅数:10駅(起終点駅・臨時駅含む)
  • 複線区間:なし(全線単線)
  • 電化区間:全線(直流1500V)
  • 閉塞方式:自動閉塞式(特殊)
    交換可能駅:1(城川原)

[編集] 運行形態

富山ライトレール移管後は、平日朝ラッシュ時は10分間隔、昼間から夜19時台までは15分間隔、深夜は30分間隔で、休日は朝から夜まで15分間隔、深夜は30分間隔となる。平日朝に富山駅北発越中中島止めが2本ある。なお沿線で祭りや花火大会などの大規模なイベントがある場合、運転間隔が延びる深夜に臨時列車を運行して利用者の便宜を図っている。また開業初年度には、元日のほか、競輪場前駅近くにある岩瀬諏訪神社での春季例大祭の期間中には、午前0時を過ぎた深夜時間帯に臨時列車が運行された。

富岩鉄道・国鉄・JR時代の運行形態は歴史を参照。

[編集] 利用状況

乗車人数100万人達成ステッカー2006年12月撮影
乗車人数100万人達成ステッカー
2006年12月撮影

JR線時代は各駅ともに朝夕は利用客が多く、1駅1本あたり40人程度が乗降していたが、昼間は利用客は少なかった。

移管開業の時点では、1日当たりの利用者の目標を、JR時代の2002年度の実績(定期券などの売上からの換算)に相当する3400人としていた。しかしJR時代末期に実施された利用者の実数調査では、2005年10月2日(日)には1045人、10月6日(木)には2266人という結果が公表され、さらに工事期間中に運行されていた代替バスについては、2006年3月1日から28日の期間で1日当たりの利用者が、平日1776人、土休日744人という結果が公表されていた。そのため前途は厳しいという見方もあったが、実際に開業すると、初日に12750人の利用があり、その後も開業ブーム、開業関連イベントの開催、運賃の割引という要因もあって順調な利用が続き、開業から195日目にあたる11月9日の正午頃に乗車人数が100万人に達した。これは単純計算で1日当たり約5100人が利用したことになり、当初の目標を大きく上回った。なお100万人達成を記念して、翌日から12月末まで、各車両の前面に100万人記念ヘッドマークが貼られていた。

沿線にある龍谷富山高校、県立ろう学校県立富山北部高校などへの通学利用のほか、沿線から富山駅に向かう通学利用も多い。また富山駅周辺の官庁や企業には、駐車場が確保できない所も多く、通勤にも利用されている。そのほか週末の夕刻には、富山駅周辺の飲食店に向かう利用も多少はあり、さらに積雪時には、道路の混雑が激しく自転車などの利用も困難になるため、一時的に利用者が増える。

JR時代、観光やマリンレジャーでの利用は少なかったが、末期は記念乗車や撮影でにぎわった。移管開業の際には、運転本数の大幅増加や話題性によって観光での利用増加が期待されており、終点に近い富山市岩瀬地区では観光客誘致を目的とした環境整備が進められた。

沿線にある富山競輪場は、広大な無料駐車場があり、しかも各地から無料送迎バスも運行されているが、当路線を利用する入場者も皆無ではない。鉄道利用促進のため、ライトレール開業に合わせて富山駅北口とを結ぶ無料送迎バスが廃止され、代わりに専用ICカードを発行している。

移管開業の際、鉄道利用促進などの目的で並行する路線バスが廃止された。その代替として蓮町駅および岩瀬浜駅を起点とするフィーダーバスの運行が開始された。

[編集] 車両

搬入中のTLR0607A(紫)2006年3月30日
搬入中のTLR0607A(紫)
2006年3月30日

車両は新潟トランシス社製のLRV(超低床電車)、2車体連接の車両(愛称:ポートラムTLR0600形7編成が導入された。

2006年3月23日から30日にかけて全ての車両が新潟トランシスからトレーラーで城川原駅東側に輸送され、クレーンで車両基地内に搬入された。4月3日に奥田中学校前駅と岩瀬浜駅との間で、4月8日からは併用軌道区間を含む全線で試運転が開始された。

なお、クリスマスバレンタインデーに合わせて、一部編成の車両内外に装飾を施した「クリスマスポートラム」や「PORT LOVE」を運行している。

そのほか、2006年11月に除雪車が1台導入された。この除雪車は、「軌陸兼用走行式小型軌道除雪車」とも呼ばれ、歩道用除雪車をベースとしており、線路上のほか道路上の走行もできる。第一種鉄道事業線である奥田中学校前駅岩瀬浜駅との間で除雪作業を行なうが、通常は城川原駅1番線の南側にある専用の車庫内に留置されている。

[編集] 運賃・乗降など

運賃は均一制で大人が200円、小人(小学生)が100円である。したがってJR時代に営業キロが6km以下だった区間では値上げになった。ただし65歳以上の富山市民を対象として「シルバーパスカ」を販売しており、これを使用した場合には日中に限り運賃が100円になる。なお開業から2007年3月31日までの約11ヶ月間は、平日の日中と土休日は半額に割引されていた。

定期券およびプリペイド券(回数券に相当)は、「passca」という愛称が付けられたICカードを使用している。

これは東日本旅客鉄道(JR東日本)のSuica西日本旅客鉄道(JR西日本)のICOCA、さらには東海旅客鉄道(JR東海)のTOICAと同様にソニーのFelica技術を採用しておりサイバネティクス協議会規格にも準拠している。

プリペイド券は2000円で販売されており、そのうち預り金として500円を差し引いた1500円に1割が加算された1650円分の利用ができる。またチャージ(積み増し)については、支払い金額に対して2割増しの金額が加算され、入金の上限は20000円である。なお積み増しの際の割増率は当初1割だったが、運賃半額割引の終了に伴い、2007年4月1日から引き上げられた。そのほか富山競輪場利用者向けに「競輪専用ライトレール利用ICカード」も発行されているほか、開業記念プリペイド券が限定1500枚作成された。

定期券やオリジナルグッズなどの販売窓口は、JR富山駅北口建物内と城川原駅の本社内にあり、プリペイド券の販売機も設置されている。また岩瀬浜駅近くの岩瀬カナル会館にも販売機が設置されている。チャージについては、この3箇所に入金機が設置されているほか、車内の運賃箱でも可能である。

乗降については、後寄りの車両のドアから乗車して、前寄りの車両の運転席横のドアから降車する「後乗り前降り」である。降車時に運賃の支払いや定期券の確認を行なう。降車用ドアの運転席側には、運賃箱と一体になったICカードリーダーが設置されているほか、ドアの客室側にもICカードリーダーが設置されている。なお途中駅で降車する場合、事前に降車ボタンを押すのが原則だが、押されなかった場合でも各駅に一旦は停車する。しかし乗降がないと判断されると直ちに発車することがある。また整理券を発行していないため、降車用ドアからの乗車も日常的に行なわれている。

「前降り」方式となっているため、朝ラッシュ時に降車客が集中する駅で停車時間が長くなり、ダイヤの乱れや踏切遮断時間が延びるという問題が発生していた。そのため2006年7月10日から、朝ラッシュ時限定で4駅に係員を配置して、定期券利用者に限り、後寄りの乗車用ドアからも降車できるように改善された。その間、降車用ドアの客室側に設置されていたICカードリーダーを乗車用ドアに移設する作業が行なわれた。そして移設作業の完了した7月31日から、passca利用者は、朝ラッシュ時に限り、全駅で乗車用ドアからも降車できるようになった。その際は乗務員などの目が届かない中で運賃を支払う「信用乗車」となる。なお一旦撤去された降車用ドアの客室側のICカードリーダーは、9月中に再整備された。

運賃収入以外の収益を確保するため、チョロQ最中ネクタイなどのオリジナルグッズが開業当初から販売されている。詳細については公式ホームページに掲載されている。

[編集] 停留場

起点の富山駅北駅は交互発着のできる3面2線、終点の岩瀬浜駅は1面1線である。他の中間駅は相対式の2面構造で、西側(または北側)が下り用の1番線、東側(南側)が上り用の2番線になっている。したがって中間駅では、上下列車とも進行方向に対して左側のドアで乗降を行なう。交換設備のない中間駅はインテック本社前駅競輪場前駅を除いて、ホームが踏切を中心とした千鳥配置になっており、踏切の遮断時間を抑制している。なお、駅周辺の踏切は、列車が駅に停車することを前提にして作動開始時期が設定されている。そのため回送列車でも各駅で一旦は停車する。

低床ホームは各駅ともデザインが統一されており、上屋やイスやスロープのほか、スピーカーが組み込まれたLED案内機が設置されている。さらに一部の駅には監視カメラも設置されている。またホームの背面は全面的にガラスで覆われており、この面が支柱を境に3区画に分割されている。中央の区画には駅名標や時刻表や地図などが掲示されており、端寄りの1区画は「個性化スペース」として、各駅にまつわる風景などがフィルム貼付によって描かれている。そして残り1区画は「広告スペース」になっており、グッズ販売と並ぶ運営会社の貴重な副収入源となっている。なお、「広告スペース」については、2006年秋以降、下奥井駅から岩瀬浜駅の間の各駅で、鳥居形のものが新たに設置された。

駐輪場は、奥田中学校前駅以北の全駅で移管開業に合わせて新設された。また公衆トイレは、移管開業に合わせて蓮町駅と岩瀬浜駅に新設されたほか、城川原駅の本社待合室と東岩瀬駅の駅舎内にも設置されている。 東岩瀬駅にはJR時代まで使っていたホームと駅舎が残されており、この駅舎については改修工事を終えた2007年2月から、待合室等として利用されている。競輪場前駅もJR時代の駅舎が残っている。

[編集] 併用軌道区間

芝生軌道と牛島町交差点2006年9月撮影
芝生軌道と牛島町交差点
2006年9月撮影
ポイントと永楽町交差点2006年9月撮影
ポイントと永楽町交差点
2006年9月撮影
富山駅北駅の出発信号機2006年5月撮影
富山駅北駅の出発信号機
2006年5月撮影

北陸新幹線の建設に合わせて実施される富山駅周辺の連続立体交差事業が具体化する段階で、富山港線の取り扱いについても検討されたが、費用対効果や用地などの面で高架駅への乗り入れは見送られた。そのため旧富山港線が市道綾田北代線を横断していた中学校踏切までの区間を廃止した上で、代替となる併用軌道を市道上に建設して、この両端と中間に計3箇所の停留場を新設した。この併用軌道区間の名称は、富山市都市計画審議会で「富山ライトレール線」とすることが決められた。

この区間の経路について下り方向で順に挙げると、まず最初の富山駅北駅は、JR富山駅北口に隣接しており3面2線構造である。駅を出ると直ちに富山駅北口交差点を横切って、その先で1線に合流してから市道富山駅北線の路肩を北に進み、牛島町交差点に達する。ここで右に曲がって市道綾田北代線に移り、以降は道路の中央を東に進み、インテック本社前駅、牛島新町西交差点、牛島新町交差点、いたち川に架かる八田橋、永楽町交差点を通過する。その後2線に分岐してから北向きに曲がり、道路の東行き車線を横断して奥田中学校前駅に達して旧線と合流する。なお八田橋については、強度の面で従来の橋桁を流用できなかったため、橋桁の中央部分を一旦撤去した後、新たに軌道専用の下路プレートガーダ-橋を架設している。

軌道の施工に際しては、インファンド (INFUNDO) と呼ばれる技術が導入されている。これは2列の溝が形成されたコンクリート板を路面に埋設して、この溝の中に樹脂などを介して溝付レールを固定するもので、騒音や振動が従来よりも抑制されている。また積雪対策として、軌道の両側に沿って撒水式の消雪装置が設置されている。

富山駅北口交差点と牛島町交差点は、その手前に列車を検知するセンサーが設置されており、交通信号が切り替わる際に列車だけを通過させる方式になっている。しかし列車が止まることなく通過できる優先信号が設置されている交差点はない。そのため信号待ちが発生することや、右折車が軌道をふさぐことがあり、若干の遅れが出ることがある。特に朝ラッシュ時の10分間隔ダイヤを維持するには、インテック本社前駅での停車を含めて、各列車がこの区間を5分以内に走り抜ける必要があるが、現実には難しく、富山駅北駅周辺のダイヤは乱れやすい。なお列車を検知するセンサーとしては、トロリーコンタクターのほか、左右レールの内側に接するように埋め込まれた物も使用されており、いずれも場合も、列車の進行方向を検知するため複数個を並べて設置している箇所が多い。

市道綾田北代線は軌道の敷設によって、当初の4車線から2車線(一部は右折車線を含む3車線)に削減された。そのため一部区間を拡幅する計画があり、これに合わせて八田橋の東側から奥田中学校前駅までの軌道を複線化する予定で、そのための分岐器が当初から設置されている。

富山駅北口交差点から牛島町交差点までの区間は、市道富山駅北線の西側の路肩に軌道が設置されており、縁石によって車道と区画されている。そのため自動車が入り込むことはなく、軌道の中央に芝生が敷かれている。また富山駅北駅構内はバラスト軌道に溝付レールという構造になっており、開業当初は枕木が見えていたが、2006年夏頃、全体に芝生が敷き詰められた。

両端の駅と一部の交差点には、進行を黄色の矢印で、停止を赤色のバツ印で示す軌道用の信号機が設置されている。両端駅にある出発信号機には、軌道区間における先行列車(表示:S)または対向列車(表示:T)の存在と、その列車本数(表示:1または2)を知らせる表示装置が併設されている。また富山駅北駅には場内信号機も設置されており、進行の現示と合わせて到着番線が表示される。

[編集] 歴史

元々は富岩鉄道が開業した路線で、その後富山電気鉄道を経て富山地方鉄道富岩線となり、私鉄の戦時買収により国鉄富山港線となった。このような経緯から富山駅で接続する北陸本線が交流電化であるのに対し直流電化となっており、七尾線が1991年に直流電化されるまで、長らく北陸地方の国鉄・JR線では唯一のものとなっていた。また、富山港線は国鉄に買収された私鉄路線の中では最後に600Vから1500Vに昇圧された路線でもあった。

富岩鉄道時代の1934年10月時点では、朝に増発され、深夜に1時間間隔となるほかは、ほぼ終日30分間隔の運行であった。

国鉄時代は1967年の昇圧まで南武鶴見臨港宇部伊那などの買収国電、昇圧後は17m省形を経て72系などの直流用電車で運行され、1985年からは457系・471系・475系などの交直流電車で運行されていた。JR線時代までを通して全て線内折り返しの普通列車であった。ちなみに、72系については、富山港線での運用が国鉄の旅客営業列車としての最後の72系の運用となった。

72系での運用末期は、富山方のクモハ73形と、岩瀬浜方のクハ79形で構成される2連が計5編成配置されており、朝夕は2編成を連結した4連が2本組成され、概ね30分間隔で運転されていた。残る1編成は予備車であり、連結を外されて城川原駅にある2本の側線に留置されていた。

その後に導入された457系・471系・475系は、基本ユニットを構成する3連での運用になった。しかし朝ラッシュ時については、以前の4連並みの輸送力を確保する必要があり、この時間帯に使用される2運用のうちの1つは、富山方にクハ455形を重ねた変則的な4連となっていた。この運用は後に近郊形である413系の3連に置きかえられたが、最終的にはこのような限定運用はなくなった。そしてJRとしての運営末期である2005年秋からは、記念イベントとして475系の2編成が交直流急行色に塗装され、当線限定で運用されていた。

富山市中心部や沿線の工場等への通勤・通学路線の役目を担ってきたが、閑散時間帯の合理化のため、2001年からレールバスキハ120形)を導入して高山線と共通運用にし、朝と夕方の列車を電車で、昼間と夜の列車をレールバスで運行していた。JR末期にあたる2005年7月時点では、富山~岩瀬浜間は朝夕を除いて概ね1時間間隔の運転であったが2時間ほど運転間隔が開く時間帯もあった。全20往復(土休日は18本)のうち、475系は朝と夜のみの運用で、日中を中心に10往復がキハ120形の単行での運転となっていた。なお、廃線直前の2006年2月11日からは同線運用の交直流急行色に塗装変更された475系2編成の先頭車の前面に「ありがとう富山港線」と表記されたヘッドマークを掲出し、25日から最終日の28日までは終日全列車475系で運転された。

国土交通省ホームページ内の「国土情報ウェブマッピングシステム」では、昭和50年度(1975年度)に富山市などを撮影した空中写真(縮尺は1/8000)が公開されており、また国土地理院ホームページ内の「空中写真閲覧サービス」では、1946年7月に米軍が撮影した空中写真(尺度は1/10000)が公開されている。いずれも縮尺が小さく、解像度の高い写真では、貨物線を含む当時の線形の概要を把握できる。

[編集] LRT化計画

2003年にJR西日本が富山港線と吉備線について路面電車(LRT)化を検討していると発表した。駅の増設、列車の増発、既存の軌道線との直通運転などにより利便性を高めるというものである。

富山港線については、富山市を中心とする第三セクター会社が経営主体となって引き継ぐことが決定し、2004年4月21日に富山ライトレール株式会社が設立された。

計画では、富山駅北~下奥井駅間の一部(富山駅北~奥田中学校前踏切)に併用軌道を新設し、既存のルートは廃止する(富山口駅は廃止、新ルートに新駅を設置)こととされ、また、駅間600mを目安とし4か所の新駅を設置することとされた。2014年度に予定される北陸新幹線の富山乗り入れに合わせて2006年に富山駅北~岩瀬浜駅間をLRT化し、富山駅付近の高架化が完成した後に富山地方鉄道富山市内軌道線と接続し直通運転を行う予定となっている。

[編集] 富山ライトレール開業に向けて

直流600Vの富山地方鉄道富山市内軌道線への将来的な乗り入れも視野に入れ、き電設備・架線電圧が直流1500Vから600Vに降圧された。そのため従来の変電所は使用できず、城川原駅奥田中学校前駅に新設された。また車両がLRVに切り替わることから、新たに低床ホームが設置された。JR西日本時代までに使用されていた駅舎は、休憩所などとして利用される予定の東岩瀬駅と、建物が比較的新しい競輪場前駅を除いて開業までに解体され、旧ホームについても東岩瀬駅の一部を除いて開業までに解体された。

代替バス富山駅北停留所
代替バス富山駅北停留所

架線柱の更新、信号機の設置、ホームの基礎整備などは、JR西日本営業末期から工事が進められていた。しかし交換設備の設置、踏切の改修、ホームの本格的な施工などは、運転を休止した2006年3月始めから開始された。電力関係については、架線柱がほぼ全区間で建て替えられるなど大幅に改修されたが、レール枕木などの下部構造については、駅区間や一部踏切を除きそのまま使用されている。また踏切動作反応灯が新たに設置されたほか、踏切の遮断時間が短縮された。そのほか奥田中学校前駅に0キロポストが設置され、全線で距離標が更新された。

移管開業までの約2ヶ月間はバスによる代行輸送が行われた。代替バスは、並行する県道1号、30号線や市道綾田北代線を経由するルートで、運行は富山地方鉄道に委託されており、旧富山港線の各駅の周辺に専用のバス停が設置された。ただし富山口駅の代用として永楽町バス停があり、競輪場前駅バス停は臨時扱いではなかった。平日朝ラッシュ時には高頻度で運転されていたが、他の時間は1時間に1本となることもあった。

一連の移管開業に伴う事業費は約58億円と公表されている。その内訳については、7編成の車両の購入に18億5千万円、新設の併用軌道区間の施工に15億5千万円、既設区間の改良工事に24億円であることが2004年7月頃に報道されている。この財源については、富山駅連続立体交差事業の補償金として33億円が支出されている。また富山市は、移管後の経営にJR西日本が一切関与しないことを前提として、同社から13億9千万円の寄付を受けた上で、旧富山港線の鉄道資産を簿価に相当する3億9千万円で購入している。そのため実質的には、富山市が鉄道資産を無償で譲り受けた上で、10億円の寄付を受けたことになる。


[編集] 年表

  • 1924年大正13年)7月23日 - 富岩鉄道 富山口~岩瀬港間が旅客線として開業。富山口駅、奥田中島停留場、城川原駅、高等学校前駅、岩瀬港駅(現在の岩瀬浜駅)開業。
  • 1924年(大正13年)9月20日 - 越中岩瀬停留場(現在の東岩瀬駅)開業。
  • 1927年昭和2年)12月15日 - 富山~富山口間が貨物線として開業。富山口~岩瀬港間の貨物営業を開始。
  • 1927年(昭和2年)6月1日 - 下奥井駅開業。
  • 1928年(昭和3年)7月11日 - 富山~富山口間の旅客営業を開始。
  • 1929年(昭和4年)5月10日 - 越中岩瀬停留場を駅に格上げ。
  • 1933年(昭和8年)7月7日 - 富山口~下奥井間に薬専校前停留場開業。
  • 1936年(昭和11年)12月27日 - 西ノ宮信号所~岩瀬埠頭間が開業。岩瀬埠頭駅(後の富山港駅)開業。
  • 1938年(昭和13年)1月1日 - 岩瀬港駅を岩瀬浜駅に改称。
  • 1938年(昭和13年)8月24日 - 富山市営鉄道運河線(貨物線) 富山~日曹工場前間が開業。富岩鉄道に貸渡。船溜駅、日曹工場前駅(後の奥田駅)が開業。
  • 1939年(昭和14年)2月8日 - 西ノ宮信号所が駅に昇格し日満工場前駅(現在の大広田駅)開業。
  • 1939年(昭和14年)3月11日 - 木場町駅開業。
  • 1941年(昭和16年)12月1日 - 富岩鉄道が富山電気鉄道へ富山~岩瀬港間、日満工場前~岩瀬埠頭間を譲渡、富岩線となる。富岩鉄道は解散。
  • 1943年(昭和18年)1月1日 - 富山電気鉄道が富山地方鉄道となる。
  • 1943年(昭和18年)6月1日 - 富山地方鉄道富岩線 富山~岩瀬浜間、大広田~富山港間、富山~奥田間が国有化され、富山港線となる。
    • 停留場を駅に格上げ。奥田中島停留場を越中中島駅に、高等学校前駅を蓮町駅に、日満工場前駅を大広田駅に、岩瀬埠頭駅を富山港駅に、日曹工場前駅を奥田駅に改称。薬専校前停留場、(貨)船溜駅、(貨)木場町駅廃止。
  • 1944年(昭和19年)5月1日 - 貨物支線 大広田~富山港間の電気運転廃止。
  • 1950年(昭和25年)5月20日 - 越中岩瀬駅を東岩瀬駅に改称。
  • 1959年(昭和34年)4月18日 - (臨)競輪場前駅開業。
  • 1959年(昭和34年)11月2日 - 貨物支線 富山~奥田間の電気運転休止。
  • 1960年(昭和35年)12月24日 - 貨物支線 富山~奥田間の電気運転廃止。
  • 1967年(昭和42年)3月30日 - 架線電圧を600Vから1500Vに昇圧。
  • 1984年(昭和59年)2月1日 - 大広田~岩瀬浜間の貨物営業と貨物支線 富山~奥田間が廃止。
  • 1985年(昭和60年)3月14日 - ダイヤ改正に伴い車両を北陸本線と共通化。前日に旧型国電の運行終了。これに先立ち富山駅構内に電留線を整備したほか、北陸本線との渡り線にデッドセクション設置。
  • 1986年(昭和61年)11月1日 - 富山~大広田間の貨物営業と貨物支線 大広田~富山港間が廃止。
  • 1987年(昭和62年)4月1日 - 国鉄分割民営化により西日本旅客鉄道が承継。
  • 2001年平成13年)3月3日 - 昼間と夜の列車に気動車を投入しワンマン運転化。
  • 2006年(平成18年)3月1日 - JR線としては廃止。富山口駅廃止。
  • 2006年(平成18年)4月29日 - 富山ライトレールによる運営開始。架線電圧を600Vに降圧。富山駅北駅、インテック本社前駅、奥田中学校前駅、粟島(大阪屋ショップ前)駅、犬島新町駅開業。競輪場前駅通年営業化。

[編集] 駅一覧

駅名 営業キロ JR
時代の
営業キロ
接続路線 所在地
富山駅北駅 0.0 --- 西日本旅客鉄道:北陸本線高山本線富山駅
富山地方鉄道:本線電鉄富山駅)・富山市内軌道線富山駅前駅
富山県富山市
インテック本社前駅 0.4 ---  
奥田中学校前駅 1.1 ---  
下奥井駅 2.0 2.3  
粟島(大阪屋ショップ前)駅 2.8 ---  
越中中島駅 3.2 3.5  
城川原駅 4.2 4.5  
犬島新町駅 4.6 ---  
蓮町駅 5.4 5.8  
大広田駅 6.1 6.4  
東岩瀬駅 6.6 6.9  
競輪場前駅 7.2 7.5  
岩瀬浜駅 7.6 8.0  

富山ライトレール移管後は富山駅北駅が起点となり、富山駅北駅~下奥井駅間に2駅、下奥井駅~越中中島駅間に1駅、城川原駅~蓮町駅間に1駅の新駅(電停)が設置された。2005年10月にこの4電停の命名権が1電停当り1,500万円で発売され、うち2電停の命名権をそれぞれインテック大阪屋ショップが買い取り、それぞれ「インテック本社前」、「粟島(大阪屋ショップ前)」と命名された。残り2電停は仮称の「奥田中学校前」、「犬島新町」が正式名称となった。

[編集] 廃止区間

括弧内は起点からの営業キロ。国鉄・JR西日本時代の富山駅接続路線は現在の富山駅北駅と同じ。

本線(2006年3月1日廃止)
富山駅(0.0km) - 富山口駅(0.7km) - (奥田中学校前踏切) - 下奥井駅(2.3km)
貨物支線(1986年11月1日廃止)
大広田駅(0.0km) - 富山港駅(1.4km)
貨物支線(1984年2月1日廃止)
富山駅(0.0km) - 船溜駅 - 木場町駅 - 奥田駅(1.9km)

[編集] 廃駅

2006年3月1日廃止
  • 富山口駅
1986年11月1日廃止
  • 富山港駅
1984年2月1日廃止
  • 奥田駅
1943年6月1日廃止
  • 薬専校前停留場(奥田中学校前~下奥井間)
  • 船溜駅(富山~奥田間)
  • 木場町駅(富山~奥田間)

[編集] 参考文献

  • 写真でつづる富山地方鉄道50年の歩み(富山地方鉄道、1979年)
  • ありがとう富山港線、こんにちはポートラム(TC出版プロジェクト、2006年、ISBN 4-916181-21-2

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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