東急7600系電車
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7600系電車(7600けいでんしゃ)は、1986年(昭和61年)5月1日に営業運転を開始した東京急行電鉄の通勤形電車。全車7200系から改造された。
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[編集] 概要
1986年に7200系を目蒲・池上両線に転用した際、余剰となったクハ7500形6両をVVVFインバータ制御・三相交流かご形誘導電動機を用いて電装したのが本系列の発端である。その後、使用実績や情勢変化に応じて改造や編成替えを繰り返し現在に至っている。詳細は後述する。
[編集] 車体構造・内装
[編集] 仕様・性能
- 東洋電機製造製GTO素子使用のVVVFインバータ制御装置を搭載した。当初制御装置1基で2両分8個の電動機をコントロールする1C8M方式であったが、後に1C4M方式に改造した。
- 三相交流かご形誘導電動機の定格出力は110kWである。
- 当初は7200系との併結を前提に、運転台機器は改造前と同様にマスコンハンドルとブレーキハンドルが別個のツーハンドルであったが、ワンマン運転対応改造時にワンハンドル式に変更された。
- 改造当初のブレーキ方式は回生ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキ (HSC-R) であったが、ワンマン運転対応改造後は回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ (HRD-R) とされた。
[編集] 改造後の変遷
当初6両を改造し、デハ7600形+デハ7650形の2両編成3本を構成した。デハ7600形は方向転換し、デハ7650形は屋根上にパンタグラフを2台装備した。前述したが、VVVFインバータ制御装置は同時期に製造した9000系では日立製作所製の1C4M方式を採用したのに対し、本系列は東洋電機製造製の1C8M方式とし、デハ7650形に装備した。
7601-7651・7602-7652は7200系クハ7500形(7503・7510)を連結した6両編成を組み大井町線で、7603-7653は7200系デハ7200形(7255)を連結した全電動車の3両編成で目蒲線で使用した。
- 1986年当時の編成
- Mc7601=Mc7651-Tc7503+Mc7602=Mc7652-Tc7510→二子玉川園
- Mc7255-Mc7603=Mc7653→蒲田
- =: ユニット連結面 -:先頭-中間連結面 +:先頭-先頭連結面
しかし、8090系の大井町線転属に伴い、クハ7500形をデハ7650形7661・7662に改造して7600系に編入し、デハ7600形は電装解除しクハ7600形として3連化した。同時に台車を両者で交換しており、クハ7600形はパイオニアⅢ形台車を装備することとなった。加えてこの際に主制御器は故障時のバックアップを目的に、1編成2台搭載とすることから1C4M方式とした。この改造工事の途上、一旦7601・7602Fにもデハ7200形を連結し、目蒲線で運用した。
- 1989年当時の編成
- Tc7601=Mc7651-Mc7661
- Tc7602=Mc7652-Mc7662
- Mc7255-Mc7603=Mc7653→蒲田
7603Fについても、7200系デハ7400形7402号をインバータ制御に変更したデハ7673(形式はデハ7400形のまま)を中間に挟み、同時にデハ7653の連結面側のパンタグラフを撤去した。これらの組み換えの際に全編成の制御装置を1C4M方式に統一した。取り外したデハ7402の電装品は、アルミニウム車体の試作車クハ7500を架線検測車であるデヤ7290に改造する際に流用している。クハ7600形のパイオニア台車は他車同様のペデスタル台車に再交換した。
当初は前面帯などがなかったが、1988年頃に7000・7200・7700・8000の各系列とともに先頭車前面に赤帯を追加した。
その後、3本ともワンマン運転対応工事としてワンハンドルマスコン化、ブレーキ方式の全電気指令(HRD-1)化が行われたことにより、事業用車を除く7200系との併結ができなくなった。同時に車体内・外のリニューアルが実施され、外装の赤・黒帯への変更(通称「歌舞伎塗り」)、中間に連結するデハ7651・7652は仕切りなども含めた乗務員室撤去(灯具・乗務員扉は残存)・車いすスペースと座席の新設・デハ7670形7681・7682への改番、室内化粧板の交換を実施した。また、同時にデハ7673もデハ7670形に正式に編入された。こうした編成替えの経緯により、パンタグラフの位置・個数および中間車の形状が7601・7602Fと7603Fで異なっているが、機能的差異は前者2編成の中間車の乗務員室跡に設置したロングシートの座席定員が1名少ない点のみである(この部分の反対側は車いすスペースとなっている)。さらに7603Fはシングルアーム式パンタグラフに交換された。
- 2007年現在の編成
- Tc7601=M7681=Mc7661
- Tc7602=M7682=Mc7662
- Tc7603=M7673=Mc7653→蒲田
当初、併結運転も行われるなど7200系の派生のように扱われていた本系列は、外観上特徴的なパンタグラフ配置や通称“歌舞伎塗り”を別にすれば、現在も通称“ダイヤモンドカット”と呼ばれる前面形状をはじめ、7200系の車体形状をそのまま引き継いでいる。しかし、機能的にはワンマン化に伴う上記の改造により、事実上7200系からは独立した系列になったといえる。
[編集] 備考
[編集] 運用
当初は目蒲線および大井町線で使用し、その後池上線に転属し、7200系と共通運用とされた。2007年(平成19年)現在では東急多摩川線と池上線で使用されている。7700系や1000系と運用上の区別はなく、共通で使用されている。
[編集] 在籍車両数
2007年現在、3両編成3本(9両)が在籍している。
改造種車である7200系は2000年(平成12年)9月までに事業用車への改造ないしは他社へ転籍している。
[編集] 今後
2007年2月12日、池上線と東急多摩川線各駅に5000系をベースとした新型車両導入のポスターが掲示された。それによると、同年度から新型車両の導入を開始し、2011年度には両線に在籍する3両編成28本中19本がこの新形車両に置き換わるとしている。これにより7600系は全車廃車となる予定である。