海南市
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海南市(かいなんし)は、和歌山県北部沿岸部に位置する市。紀州漆器の産地として全国的に知られている。海草郡南部に位置することから市制施行の1934年にこの名称がついた。
2005年4月1日に、海南市と下津町が合併して誕生し、新市名も海南市となった。本記事では必要に応じ合併前を旧・海南市、合併後を新・海南市として記す。
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[編集] 自然
- 市の北半分は丘陵地で比較的なだらかであるが、南半分は長峰山脈と藤白山脈を控え、山岳に覆われている。最高峰は鏡石山で558メートル。それ以外に熊尾寺山543メートル、黒沢山509メートルなど500メートル級の山が連なる。主な河川は東部を縦貫する貴志川、北部と中央部を縦貫し、和歌山市南部で海に注ぐ亀ノ川、鏡石山に水源をもち、市の中心部で海に注ぐ日方川などがある。旧海南市域には、灌漑・治水を目的とした人工池が多数見られ、中でも亀池は景勝地として知られている(下記の「亀池公園」を参照)。市の西側は紀伊水道に面し、四国、淡路島、沼島を望むことができる。
[編集] 歴史
古墳や弥生式土器なども見られ古くから人間が生活した痕跡が伺える。熊野古道もあり、古くから都と白浜の湯治場の中継地として栄えていた。市南部の藤白山の麓では有馬皇子が非業の死を遂げ、遺恨碑も建てられている。戦国時代には全国を制覇しようと目論む信長側とこれを阻む雑賀衆との合戦も行われた。江戸時代、紀伊徳川家は黒江地区を漆器の生産地として特別の保護を与え、大いに栄える。
[編集] 沿革
・中野上村を編入。
[編集] 産業
もとより工芸の町として知られ、黒江地区では漆器が、内海地区では和傘が、日方地区では製塩が行われていた。1960年代に臨海工業基地が造られ、住友金属工業(和歌山製鉄所)、関西電力、富士興産(石油精製業)などの重化学工業が進出する。一時期発展するがバブル崩壊以降は、リサーチラボなど先端情報産業の誘致に取り組み、重化学工業への依存体質からの脱却を図ろうとしている。黒江地区では漆器工芸を生かした観光にも取り組んでいる。東部地区は農業地帯で、イチゴ、桃、かんきつ類などの果樹栽培が行われている。この他、和雑貨及び醸造が盛ん。特に棕櫚を用いたたわし製造から始まった日用雑貨品生産は、市の代表的な地場産業であり(後述)、醸造は黒江、内海、野上地区で行われている。
[編集] 海南市の家庭日用品産業
和歌山県海南市及び海草郡旧野上町(現紀美野町)一帯は、スポンジや洗濯ハンガーなど家庭日用品の一大産地である。これは原料となる良質の棕櫚が近くで採れたため、たわし、箒、縄などの棕櫚加工品の製造が盛んになった。その後、時代の変化と共に原材料はプラスチック、化学繊維製とシフトしていくが、今日でも炊事、洗濯、トイレ、風呂など水回り品においては全国の8割強を占め、中小含め企業数は100近くに上る。一部は全国展開するほど大規模で、大都市に販路を持ち、全国のホームセンター、スーパーマーケットやドラッグストアなどに提供されている。近年は安価な輸入品に押されがちであったが、アイデア商品や高付加価値商品を開発することで、差別化を図ってきており、新たな成果が見られている。
など
また、上記に挙げる他、昔ながらの棕櫚束子、箒、ブラシを手作業で作っている職人もおり、一部は県の伝統工芸品となっている。
[編集] 交通
熊野古道に沿う形で、紀伊半島を一周する国道42号と紀勢本線(きのくに線)が縦貫している。
なお、関西国際空港へは高速道路利用で1時間足らずである。
[編集] 鉄道
JR以外にかつては和歌山市との間を連絡する路面電車南海和歌山軌道線、野上町との間を連絡する野上電鉄があったが、それぞれ昭和46年、平成6年に廃止されてしまった。
[編集] 道路
[編集] 高速道路
[編集] 一般国道
都市部を除き、道路事情はそれほど良くないが、近年改善されつつある。
[編集] 県道
[編集] みどころ
- 長保寺 - 平安時代創建の勅願寺。国宝建造物3棟。紀伊徳川家の菩提寺、国指定史跡。
- 善福院 - 鎌倉時代、栄西による創建。現在に遺る釈迦堂は国宝に指定されている。
- 藤白神社
- 春日神社 - 境内に九十九王子の一つ松代王子神社が合祀されている。
- 温山荘園 - 琴ノ浦にある、大正期に大阪の豪商によって立てられた別荘で、広大な日本庭園と洞窟がある。ひらがなで書くと「おんざんそう」であるが、地元では「おんだんそう」と呼ばれる。
- 和歌山県立自然博物館
- 長久邸
- 黒江 - 漆器工芸の伝統的町並みが保存されていて散策によい。温故伝承館(きき酒ができる)、黒江ぬりもの館(漆器の小物をお土産に買うことができる)、紀州漆器会館(イチローのサインの入った漆塗りのバットがある)などがある。なぜイチローなのかは鈴木屋敷を参照。
- 浄国寺
- 中言神社
- 紀州漆器伝統産業会館
- 紀州漆器まつり
- 黒江ぬりもの館
- 亀池公園 - 亀池は徳川吉宗将軍時代に治水家として全国に知られた技師、井沢弥惣兵衛により宝永7(1710)年に建造された人工池。井沢弥惣兵衛は海南生まれ(現在の野上新地区)。桜が美しいことで知られる。池の内部には人工島である「中島」があり、昭和43(1968)年に双青閣が移築されている。双青閣とは、亀池の近くにある和歌浦東照宮近辺に建造された大正期の旧徳川家別邸で、昭和天皇が紀州路を行幸中に宿泊されたことで知られる。大正期の建築が見事に維持されている。亀池のほとりからは歩行者専用のつり橋で中島まで往来できる。和歌山県の県立自然公園に指定されている。
- 禅林寺 - 地元では「薬師さん」と呼ばれボケよけ寺として知られる。
- 黒沢山 - 山頂には黒沢ハイランド(牧場、乗馬場、キャンプ場、アーチェリー場)があるが、施設は古くなっている。ソフトクリームがおいしい。
- 釣り公園シモツピアーランド - 下津にある海釣り専用施設
- 和歌山マリーナシティ - JR海南駅からバスで約15分の埋立地にある。テーマパークのポルトヨーロッパや海産物を販売する黒潮市場などがある。
一時期マリーナシティは和歌山市、海南市との間で領有・境界をめぐる係争が生じた。訴訟の結果、海南市側は敗訴し、マリーナシティの住所は和歌山市となった。
- すわん江戸村
- 孟子不動谷自然公園
[編集] 出身有名人
- 谷口和史(衆議院議員)
- 小野田寛郎
- 駒野友一(サンフレッチェ広島、 ドイツW杯本大会のメンバー)
- 橋爪伴之(大阪フィルハーモニー交響楽団トランペット奏者)
- 高岡伸夫(株式会社タカショー 社長、著書「誰も教えてくれないベンチャー社長学(財界研究所)」)