深名線
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深名線(しんめいせん)は、北海道旅客鉄道(JR北海道)/日本国有鉄道(国鉄)が運営していた鉄道路線(地方交通線)。北海道空知支庁管内の深川市で函館本線から分岐し、雨竜郡幌加内町を経て上川支庁管内の名寄市で宗谷本線に接続していた。道内でも屈指の閑散ローカル線であり、赤字83線や特定地方交通線の廃止論議の際にも候補にあげられたが、冬季の代替交通機関の未整備を理由に、廃止対象から外されていた。しかし、国鉄分割民営化後に代替バス運行の目途がついたことから1995年(平成7年)9月4日に廃止された。 冬の沿線風景が鉄道ファンの間では有名だった。
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[編集] 路線データ(廃止時)
- 管轄(事業種別):北海道旅客鉄道(第一種鉄道事業者)
- 区間(営業キロ):深川~幌加内~名寄 121.8km
- 駅数:21(起終点駅を含む)
- 軌間:1067mm
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化区間:なし(全線非電化)
- 閉塞方式:タブレット閉塞式(末期の朱鞠内-名寄間は票券閉塞式)
- 交換可能駅:2(幌加内、朱鞠内)
[編集] 運行形態
※廃止直前の運行形態
早朝の深川発と夕方の名寄発が全線直通だったのを除き朱鞠内駅で系統を分割されていたが、朱鞠内駅での列車の接続はあまり考慮されていなかった。
深川駅~幌加内駅間が1日5往復、幌加内駅~朱鞠内駅間が1日3.5往復、朱鞠内駅~名寄駅間が1日3往復の運転であった。このうち深川-名寄間直通は1往復だった。
[編集] 歴史
深川~朱鞠内間は、沿線の林産資源開発と雨竜川水系での発電を目的とした雨竜第1ダム(朱鞠内湖)の建設にともなって建設された鉄道で、1924年に深川~多度志間が雨龍線(うりゅうせん)として開業したのが始まりである。以降、延伸を繰り返し、1931年に幌加内線(ほろかないせん)に改称、1932年に朱鞠内に到達した。
一方、名寄~朱鞠内間は、改正鉄道敷設法別表第143号に規定する「天鹽國名寄ヨリ石狩國雨龍ヲ經テ天鹽國羽幌ニ至ル鐵道」の一部である。1937年に名雨線(めいうせん)として名寄~初茶志内(後の天塩弥生)間が開業し、1941年に朱鞠内に到達し、幌加内線に接続。両線をあわせて深名線と改称した。
朱鞠内~羽幌間については、羽幌炭礦鉄道が1941年に羽幌線に接続して築別~曙~築別炭礦間を開業し、うち築別~曙間が予定線に並行していた。残りの朱鞠内~曙間が名羽線(めいうせん)として建設が進められ、そのうち、曙~三毛別間については完成し、国鉄の非営業線ながら資材輸送と羽幌炭礦鉄道による石炭輸送が行われていたが、羽幌炭礦鉄道は築別炭鉱の閉山により1970年に廃止された。残りの区間についても日本鉄道建設公団により工事が進められたが、建設工事の可能な季節が限られることや、たびたび予算を削られたことで、思うようには進まなかった。特に最も難工事が予想された苫竜トンネルは着工こそされていたが、実際には何の工事も行われていなかったことが後年の探査で明らかになっている。加えて開業すれば大赤字必至のこの鉄道の引受けができるはずもなく、国鉄再建法の施行により、1980年に工事は中止され、完成していた鉄道施設は無人の山中に放棄された。また、接続するはずであった羽幌線も、特定地方交通線廃止の波の中で1987年に廃止されている。
既開業線についても、第2次特定地方交通線に指定されたが、冬季の代替輸送に問題がある(積雪によるバスの運休が年10日以上ある)として対象から外され、1987年にそのまま北海道旅客鉄道に承継された。しかし、沿線の道路整備によりバスによる代替輸送に問題がなくなったとして、1995年に廃止、JR北海道バス(現在はジェイ・アール北海道バス)に転換された。なお、運行最終日まで車掌が乗務して運行していた。
- 1924年10月25日 【開業】雨龍線 深川~多度志(14.0km) 【駅新設】多度志
- 1926年11月10日 【延伸開業】多度志~鷹泊(13.3km) 【駅新設】幌成、鷹泊
- 1929年11月8日 【延伸開業】鷹泊~幌加内(16.4km) 【駅新設】沼牛、幌加内
- 1931年9月15日 【延伸開業】幌加内~添牛内(24.9km) 【駅新設】雨煙別、政和、添牛内
- 1931年10月10日 【線名改称】幌加内線
- 1932年10月25日 【延伸開業・全通】添牛内~朱鞠内(10.2km) 【駅新設】朱鞠内
- 1937年11月10日 【開業】名雨線名寄~初茶志内(7.2km) 【駅新設】西名寄、初茶志内
- 1941年10月10日 【延伸開業】初茶志内~朱鞠内(35.8km) 【線名改称】深名線 深川~名寄(幌加内線に名雨線を編入) 【駅新設】北母子里、白樺、蕗ノ台、宇津内
- 1946年6月1日 【仮乗降場新設】上多度志
- 1949年4月1日 【駅→仮乗降場】宇津内
- 1950年1月15日 【仮乗降場→駅】上多度志
- 1951年7月20日 【駅名改称】初茶志内→天塩弥生
- 1955年8月20日 【仮乗降場新設】円山、宇摩、下幌成、新成生、上幌加内、下政和、大曲、共栄
- 1955年9月2日 【仮乗降場新設】新富
- 1956年5月1日 【仮乗降場新設】湖畔
- 1956年9月20日 【仮乗降場→駅】新富
- 1956年11月19日以降 【仮乗降場廃止】宇津内
- 1960年9月15日 【無人化】西名寄
- 1961年12月1日 【仮乗降場新設】政和温泉 【仮乗降場廃止】下政和
- 1964年4月1日 【無人化】蕗ノ台、白樺
- 1976年2月1日 【仮乗降場廃止】大曲
- 1982年3月30日 【無人化】上多度志、幌成、沼牛、雨煙別、添牛内、天塩弥生
- 1982年11月1日 【貨物営業廃止】全線(-121.8km)
- 1984年11月10日 【無人化】多度志、鷹泊、政和、北母子里
- 1987年4月1日 【承継】北海道旅客鉄道 【駅→臨時駅】雨煙別、蕗ノ台、白樺 【仮乗降場→駅】円山、宇摩、下幌成、新成生、上幌加内、新富、共栄、湖畔 【仮乗降場→臨時駅】政和温泉
- 1990年3月10日 【駅廃止】(臨)雨煙別、(臨)政和温泉、(臨)蕗ノ台、(臨)白樺
- 1990年9月1日 【駅廃止】新富
- 1995年9月4日 【路線廃止】全線(-121.8km)。JR北海道バス(現ジェイ・アール北海道バス)にバス転換
[編集] 駅一覧
深川駅 - 円山駅 - 上多度志駅 - 多度志駅 - 宇摩駅 - 幌成駅 - 下幌成駅 - 鷹泊駅 - 沼牛駅 - 新成生駅 - 幌加内駅 - 上幌加内駅 - (臨)雨煙別駅 - (臨)政和温泉駅 - 政和駅 - 新富駅 - 添牛内駅 - 大曲仮乗降場 - 共栄駅 - 朱鞠内駅 - 湖畔駅 - 宇津内仮乗降場 - (臨)蕗ノ台駅 - (臨)白樺駅 - 北母子里駅 - 天塩弥生駅 - 西名寄駅 - 名寄駅
駅名は、路線廃止時点で廃止済みの駅
雨煙別駅・政和温泉駅は毎年12月1日~4月20日の間、蕗ノ台駅・白樺駅は毎年12月1日~4月30日(1987年(昭和62年)までは4月20日)の間全列車通過していた。
[編集] 接続路線
[編集] 関連項目
- 深名線 (ジェイ・アール北海道バス)(転換後のバス路線)
- 羽幌炭礦鉄道