神重徳
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神 重徳(かみ しげのり、1900年(明治33年)1月23日 - 1945年(昭和20年)9月15日)は、日本の海軍軍人。最終階級は海軍少将。鹿児島県出水市出身。
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[編集] 略歴
旧制鹿児島県立川内中学校より海軍兵学校第48期補欠募集入校。入校時成績順位は29名中第16(166)位、卒業時成績総順位は171名中第10位。
天才肌で知略に飛んだ作戦を立案出来る人物であったと云われ、日独伊三國同盟条約早期締結者として上司の井上成美から論破され一時的におとなしくなるが海軍大臣に及川古志郎が親補されるや優柔不断の人物と判断し押しの強さで海軍の締結同意を取り付けさせる。
聯合艦隊参謀に着任した際には既に大勢が決しており捨て鉢的な特攻作戦を立案する事しか出来なかった。
レイテ沖海戦での囮艦隊を用いて敵の主力艦隊を引き付け、ガラ空きのレイテ湾に戦艦を突入させて敵上陸部隊を攻撃すると云う作戦は、制空権の無い中で非常に機知にとんだ作戦計画である。神の立案能力の高さは戦後アメリカ側から評価されている。 一方で菊水作戦時の戦艦大和水上特攻等に見られる様に成功の見込みが極めて無謀な作戦を立案した事から批判する見解も少なくない。
神は高木惣吉海軍少将が首謀指揮した東條英機内閣総理大臣暗殺計画の実行メンバーの1人として加担していたが暗殺実行直前に神が聯合艦隊参謀に転出し更に東條内閣自体がサイパン島失陥が原因で総辞職した為に暗殺計画は陽の目を見なかった。
戦後直ぐ、青森県三沢沖に於いて搭乗の飛行機が不時着水。事故機のパイロットによるとしばらく一緒に泳いでいたが、天を仰いでくるりと360度辺りを見回すとそのまま水中に没したという。彼は水泳が得意であり周囲の者は自決ではないかと疑ったというが真偽は不明。
[編集] 人物像
海軍大学校卒業後、神はドイツ駐在となるが帰国後はナチス一点張りとなり周囲に警戒感を抱かせたと言う。
[編集] 年譜
- 1900年(明治33年)1月23日- 鹿児島県出水郡高尾野村(現在の出水市)生
- 1917年(大正6年)10月10日- 海軍兵学校補欠募集入校 入校時成績順位29名中第16(116)位
- 1919年(大正8年)10月8日- 成績優等章授与
- 1920年(大正9年)7月16日- 海軍兵学校卒業 卒業時成績総順位171名10位・任 海軍少尉候補生・装甲巡洋艦「浅間」乗組
- 1921年(大正10年)4月2日- 帰着
- 1922年(大正11年)7月12日- 海軍砲術学校普通科学生
- 12月1日- 海軍水雷学校普通科学生
- 1923年(大正12年)3月30日- 1等海防艦「八雲」乗組 少尉候補生指導官附
- 1924年(大正13年)4月5日- 帰着
- 1925年(大正14年)12月1日- 任 海軍大尉・海軍砲術学校高等科第25期学生
- 1926年(大正15年)11月27日- 海軍砲術学校高等科優等修了
- 12月1日- 戦艦「伊勢」分隊長
- 1927年(昭和2年)12月1日- 戦艦「扶桑」分隊長
- 1928年(昭和3年)12月10日- 海軍兵学校教官兼監事
- 1930年(昭和5年)12月1日- 巡洋戦艦「霧島」分隊長
- 1931年(昭和6年)10月24日- 海軍軍令部第1班第2課
- 12月1日- 任 海軍少佐・海軍大学校甲種第31期学生
- 1933年(昭和8年)5月20日- 海軍大学校甲種卒業 卒業時成績順位24名中首席
- 1935年(昭和10年)4月1日- 在ドイツ日本大使館附海軍駐在武官府補佐官補
- 12月11日- 帰朝
- 1936年(昭和11年)3月10日- 海軍省出仕 兼軍令部出仕
- 1937年(昭和12年)11月20日- 兼 大本営海軍報道部員
- 1938年(昭和13年)5月18日- 免 艦政本部出仕
- 1939年(昭和14年)5月1日- 第5艦隊司令部参謀
- 11月15日- 軍令部第1部第1課 兼大本営海軍参謀
- 1940年(昭和15年)11月15日- 兼 陸軍参謀本部参謀
- 1941年(昭和16年)10月15日- 任 海軍大佐
- 1942年(昭和17年)6月15日- 横須賀鎮守府附
- 7月14日- 第8艦隊司令部参謀
- 1943年(昭和18年)6月14日- 第5艦隊司令部附
- 1944年(昭和19年)5月15日- 海軍省教育局第2第3課長兼務
- 1945年(昭和20年)4月25日- 兼 海上護衛艦隊司令部参謀
[編集] 参考文献
- 戦史叢書・第83巻 南東方面海軍作戦(2) (防衛庁防衛研修所戦史部編・朝雲新聞社)
- 戦史叢書・第29巻 北東方面海軍作戦 (防衛庁防衛研修所戦史部編・朝雲新聞社)
- 戦史叢書・第46巻 海上護衛戦 (防衛庁防衛研修所戦史部編・朝雲新聞社)
- 戦史叢書・第93巻 大本営海軍部聯合艦隊(7) (防衛庁防衛研修所戦史部編・朝雲新聞社)
- 高松宮日記(細川護貞・阿川弘之・大井 篤・豊田隈雄編・中央公論新社) ISBN 4-12-490040-6 C0320
- 細川日記(中央公論新社) ISBN 4-12-000818-5 C0020
- 高木惣吉日記と情報・上下巻(みすず書房) ISBN 4-622-03506-5 C3031
- 思い出の記 井上成美私稿
- 井上成美(阿川弘之著・新潮社) ISBN 4-10-300414-2 C0093
- 私観太平洋戦争(高木惣吉著・光人社NF文庫) ISBN 4-7698-2220-0 C0195
- ある終戦工作(森 元治郎著・中公新書) ISBN 4-12-100581-3 C1221
- 元軍令部通信課長の回想(鮫島素直著・私稿版)
- 5人の海軍大臣(吉田俊雄著・文春文庫) ISBN 4-16736-002-0 C0193
- 海軍の昭和史(杉本 健著・光人社NF文庫) ISBN 4-7698-2226-X C0195
- かくて、太平洋戦争は終わった(川越重男著・PHP文庫) ISBN 4-569-66398-2 C0131
- 日本陸海軍の制度・組織・人事(日本近代史料研究会編・東京大学出版会)
- 海軍兵学校沿革・第2巻(海軍兵学校刊)
- 海軍兵学校出身者名簿(小野寺 誠編・海軍兵学校出身者名簿作成委員会)