西武2000系電車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2000系電車(2000けいでんしゃ)は、西武鉄道の通勤形電車。2006年現在、多摩川線・西武有楽町線・西武秩父線と新交通システムを採用しているレオライナー山口線を除く全線で使用されており、西武では保有車両数が最も多い(436両)系列である。
1977年(昭和52年)に登場した車両と1988年(昭和63年)に登場した車両ではそれぞれ外観が変わっているが、電装品などは共通である。本稿では前者を「2000系」、後者を「新2000系」として記述する。両者ともに新宿線の主力車両であり、西武鉄道を代表する車両でもある。
目次 |
[編集] 車両別概要
[編集] 2000系
[編集] 特徴
- 西武鉄道ではそれまで主に3扉車を投入していたが、駅間距離の短い新宿線用として乗降時分を短縮できる4扉車での製造となった。以前には63系譲渡車の初代401系が4両存在していた。
- 先頭車の前面形状は、従来製造されていた湘南スタイルや切妻スタイルではなく、非常用貫通扉を設置した。これは当時計画されていた国鉄新宿駅への乗り入れのため、地下区間でも適合する規格を、という事で採用されたという話もある。
- 西武では初めて界磁チョッパ制御(日立製作所製)、回生ブレーキ併用全電気指令式ブレーキ(HRD系)を採用した。
- 客室側窓は下段上昇・上段下降の二段式で、上段はフリーストップ式。この窓構造は新101系にも採用された。
- 主電動機出力は130kW。制御器メーカーと歯車比(5.31)は自然冷却式主電動機の東京急行電鉄8000系・8500系と共通する。
- 1977年に登場した当時はホームの有効長が十分ではなかった新宿線用であった。
- 2000系が池袋線で初めて運転されたのは1990年(平成2年)1月である。編成は2011Fが使用された。池袋線では初めての新2000系2065Fの導入(後述)を前に、データ収集のために池袋~飯能間で一時期運転されていた。その後も1997年(平成9年)10月の横瀬車両基地での車両展示・撮影会の時の臨時列車にも池袋~西武秩父間を運転しており、この時は初めて西武秩父線を運転し、編成は8両編成のうちの2両だった。
[編集] 沿革
1977年(昭和52年)から製造開始された初期型は、1983年(昭和58年)までと1988年(昭和63年)に増備された。基本的に6両編成での投入だったが、途中から新宿線のホームが延伸され、2両の増結編成や組み替え、1986年(昭和61年)の田無事故での事故廃車により、2006年現在は8両編成4本(32両)・6両編成12本(72両)・2両編成9本(18両)の計122両となり、全車が新宿線に配置されている。
[編集] 更新工事など
- 新2000系の登場後、全車に側面行先表示器を設置した。同時に前面表示器の字幕を白地黒文字から黒地白文字へ交換し、表示窓ガラスを支持するHゴムについても白色から黒色への交換が行われている。
- 更新工事は1996年(平成8年)から2006年(平成18年)まで10年間かけて実施された。外観では前面下部への排障器(スカート)の取り付け、パンタグラフの削減、2000年(平成12年)以降実施された車両は行先・種別表示器を20000系と同様のLED式へ取り替えた。旧2000系の未更新車は最後まで未更新で残った2419Fが2006年12月に更新入場したことにより消滅した。
- また、2004年(平成16年)以降の施工車は、最初に検査入場を行った2001Fより従来の「◇型」のパンタグラフを20000系と同じ新型「<型」のシングルアーム式に変更し、以後他編成にも拡大した(2411Fなど一部例外あり)。
- その他、工事にあたって電動ワイパー、警笛の電気笛化や、さらに側面ドア窓の支持方式がHゴムの車両については701系と101系の廃車発生品のドアへの交換も行われている。
- 一部、旧型空気圧縮機(6・8連がHB-2000、2連がAK-3)からHS-10(2連)・HS-20(6・8連)への交換が行われた。
- 転落防止外幌が2001年から2004年にかけて全車の連結面に装備された。
- 2005年(平成17年)度からドア付近へのつり革増設工事が実施されている。
- 2006年2月に2031Fが車体更新工事を受けて出場した。この編成は2033F・2417F・2419Fと共に1988年に登場した車齢の若いグループである。工事の内容は、座席のバケット化、スタンションポール・車いすスペースの設置、空気圧縮機の交換、パンタグラフのシングルアーム化(以上は2004年以降の施工車と同様)、車体側面の車両番号表記をプレート化、優先席付近のつり革の低位置化、LED式車内案内表示器の設置(千鳥配置)、自動放送装置・ドアチャイムの設置、西武新宿方先頭車のスカートへの連結面注意放送用スピーカーの設置(このスピーカーの設置された先頭車が編成の中間に入ると停車中に連結面の隙間への転落防止注意を喚起する放送が流れる)など(以上は2000系では初めて施工された)である。なお今回の工事では補助電源については電動発電機(MG)を存置した。その後同様の更新メニューで2417Fと2033Fが出場しており、2419Fも入場中である。
- 2031Fは出場以降しばらく国分寺線地区で運用されていたが、2006年4月より新宿線地区でも運用され始めた。
- この更新メニューの編成では自動放送装置が設置されている事から、他の編成と連結する際、進行方向後方に連結されている場合では、進行方向前方の編成にも自動放送装置による放送が流れるが、そうでない場合は通常通りの車掌による放送となる。
[編集] 編成の状況(2007年2月9日現在)
- シングルアーム式パンタグラフ搭載編成
- 2001F・2009F・2011F・2013F・2015F・2023F・2025F・2029F・2031F・2033F・2401F・2403F・2405F・2407F・2409F・2417F
- 車内設備更新編成
- 2005F・2009F・2011F・2013F・2015F・2023F・2027F・2031F・2033F・2401F・2403F・2405F・2407F・2409F・2411F・2413F・2417F
- 2005F・2011F・2013F・2015Fは車いすスペース未設置
- LED式行先表示器搭載編成
- 2003F・2007F・2009F・2019F・2021F・2023F・2027F・2031F・2033F・2401F・2403F・2405F・2407F・2409F・2411F・2413F・2417F
- パンタグラフ削減編成(母線引き通し車)
- 2001F・2003F・2005F・2007F
- 箱型通風器搭載編成
- 2031F・2033F・2417F・2419F
- 自動放送・ドアチャイム・車内案内表示搭載編成
- 2031F・2033F・2417F
- ドア一部締め切り装置搭載編成
- 2005F・2011F・2013F・2015F・2031F・2033F・2417F
- つり革増設編成
- 2011F・2013F・2015F・2031F・2033F・2403F・2417F
- 2001F~2007Fは8両編成、2009F~2015F・2019F~2033Fは6両編成(2017F欠番)、2401F~2413F・2417F~2419Fは2両編成(2415F欠番)。
[編集] 性能諸元
- クモハ2401形(登場時)
- 全長 - 20,000mm
- 全高 - 4,246mm
- 全幅 - 2,849.5mm
- 自重 - 40.0t
- 定員 - 136人(座席48人)
- 制御装置 - MMC-HTR-20D
- 主電動機 -
- 出力 - 130kW×4
- 歯数比 - 16:85=1:5.31
- 制動方式 - HRD-1-R
- 台車 - FS-372A
[編集] 新2000系
1988年(昭和63年)に2000系の車体に変更を加えた車両が登場した。これらは新2000系や2000N系と呼ばれる事もある。これらが増備されるまで西武の通勤車は前面の湘南スタイル・非貫通構造、3扉車が主流で、前面貫通扉を持つ4扉車の2000系は一部線区の異端車といった存在だったが、新2000系の大量新造で一気に西武のフラッグシップ的存在となった。
[編集] 特徴
- 前面は、下部に排障器(スカート)が装着され、窓および種別・行先表示器の周りが黒く縁取られた。
- 車体側面は、従来車では省略されていた戸袋窓が復活し、客室側窓は一枚下降窓となり、落成時から行先表示器が設けられた。
- 車内でのAM・FMラジオ聴取用の電波増幅器が後期の8両編成のみ取り付けられている。
[編集] 沿革
最初に製造されたのは従来車には存在しない4両編成だった。そして池袋線の4扉化を推進するため、池袋線にも大量に投入された。1991年(平成3年)までの短期間に大量製造され、2006年現在は新宿線に8両編成8本(64両)・6両編成5本(30両)・4両編成23本(92両)、池袋線に8両編成14本(112両)・2両編成8本(16両)の計314両が在籍する。新宿線系統へ初めて導入されたのは4両編成の2501F(1988年)、池袋線系統へ初めて導入されたのは8両編成の2065F(1990年)である。
そのうち、2097Fの一部車両は6000系を導入するにあたってのVVVFインバータ制御試験車として、三菱電機製のGTO素子によるVVVFインバータ制御とされた。この車両は池袋線に在籍し、2005年1月に行先表示器がLED化された。
新2000系は製造時期によって仕様が若干異なり、大別すると前期形、中期形、後期形の3タイプとなる。
前期形(2501F~2529F・2045F・2051F・2053F・2057F・2451F・2453F)は側扉窓と戸袋窓が角の丸い小型で、製造当初ではドア付近のつり革が増設されていなかったため、今後の更新工事において随時増設される。この中で最初期の2501F~2519F・2051F・2451Fは前面の貫通扉窓も小型とされた。この前期形は全車新宿線系統に新製配置されたので当初は池袋線系統には所属していなかったが、後に2451F・2453Fが池袋線に転属している。
中期形(2531F~2545F・2059F~2067F)は側扉窓が角ばった大型、戸袋窓が角の丸い大型となり、そのうち2533F・2535F・2545Fは補助電源装置を静止形インバータ(SIV)に交換され、電動空気圧縮機もレシプロ駆動からスクリュー駆動に交換された。
後期形(2047F・2049F・2055F・2069F~2097F・2455F~2465F)は側扉窓が角の丸い小型に戻り、戸袋窓が角の丸い大型となっていて、このタイプは全車両の補助電源装置が静止形インバータとなり、またドアエンジンは従来と同じ空気式ではあるが、客室床上の座席内部に搭載するタイプからドア上部の鴨居部に搭載するタイプに変更されており、開閉動作にも違いが見られる。その後行先表示器のLED化とパンタグラフの削減工事が実施された。
また、2045F(6両編成)は製造当初2055Fとして使用されていたが、輸送力増強のために車両番号が-10され、新たに8両編成の2055Fが1993年(平成5年)に製造された。この2代目2055Fは数字上からは分からないが、2097Fより後に製造されており、これが新2000系の最終編成となっている。
前述したが2000系は新旧合わせると西武の現有系列では最多の436両が在籍し、全一般車の4割弱にあたる。特に配置数の多い新宿線では、新旧の2000系が2・4・6・8両を組み合わせて6~10両で運行され、新宿線に乗ればまず見掛ける存在であるが、運用上は旧2000系と6000系・20000系を優先的に使用している。ただし拝島線(普通電車)・多摩湖線(小平~西武遊園地)では4連運用や朝ラッシュ時の分割併合があり、特に4連運用列車には自ずと新2000系が使用される。
なお、多摩湖線萩山~国分寺間にはワンマン運転開始後は入線することは稀である。また、池袋線所属車であっても抑速ブレーキを装備しないため、営業運転されるのは平坦区間である池袋~飯能間に限られ、基本的に飯能~吾野間と西武秩父線には入線しない。ただし、毎年12月3日に埼玉県秩父市で開催される秩父夜祭や同市にある羊山公園の芝桜が見頃になる時期(4月上旬~5月上旬)には4扉車による収容力の高さから臨時列車として入線する事があり、その中には池袋直通もある。
西武秩父線では1997年(平成9年)10月の横瀬車両基地での車両展示・撮影会の時の臨時列車としても池袋~西武秩父間を運転しており、編成は8両のうちの6両だった。
[編集] 工事など
2002年から後期車を中心とした一部の編成でパンタグラフの削減と行先・種別表示器のLED化が実施されている。また2003年度から前期車と中期車の4両編成車については空気圧縮機をスクリュー式に、電動発電機を静止形インバータに交換(前期車は対象外)された。2005年度に検修を受けた編成はつり革の増設工事のみが行われ、静止形インバータへの交換は実施されなかったが、2006年に2531Fが空気圧縮機・電動発電機の交換工事を受けている。
2003年から2004年にかけて転落防止外幌が全車の連結面に装備された。2005年度からはドア付近へのつり革増設が実施されている。
2006年3月、中期車としては初めて2059Fに、また同時期に前期車としては初めて2057Fに行先・種別表示器のLED化工事が実施された。
2007年2月には2505Fが検査出場したが、この編成では特別修繕施工車ではないものの検査出場時に各部の改良が行なわれ、以前から実施されている吊り手増設工事の他、スタンションポール設置、ドア付近の床への警戒色の追加、非常通報装置交換、そして2031Fや2417Fの特別修繕で行なわれた優先席部分の吊革の低位置化や西武新宿方先頭車スカートへの連結面注意放送用スピーカーの設置などが行われている。
[編集] 編成の状況(2007年2月9日現在)
●は前期形、▲は中期形、■は後期形
- 2両編成(全車池袋線所属)
- 2451F・2453F(以上●)・2455F・2457F・2459F・2461F・2463F・2465F(以上■)
- 4両編成(全車新宿線所属)
- 2501F・2503F・2505F・2507F・2509F・2511F・2513F・2515F・2517F・2519F・2521F・2523F・2525F・2527F・2529F(以上●)・2531F・2533F・2535F・2537F・2539F・2541F・2543F・2545F(以上▲)
- 6両編成(全車新宿線所属)
- 2045F・2051F・2053F(以上●)・2047F・2049F(以上■)
- 8両編成(2055F~2061F・2081F・2085F・2093Fは新宿線所属、その他は池袋線所属)
- 2057F(●)・2059F・2061F・2063F・2065F・2067F(以上▲)・2055F・2069F・2071F・2073F・2075F・2077F・2079F・2081F・2083F・2085F・2087F・2089F・2091F・2093F・2095F・2097F(以上■)
- つり革増設工事施工車
-
- 4両編成
- 2501F・2503F・2505F・2519F・2521F・2527F・2537F・2539F・2541F・2543F・2545F
- 6両編成
- 2045F
- 8両編成
- 2055F・2057F・2061F・2063F・2065F・2069F・2073F・2081F・2093F
- ドア一部締め切り装置搭載編成
-
- 4両編成
- 2501F・2503F・2505F・2521F
- 8両編成
- 2061F・2069F
- 室内設備改良車(スタンションポール設置、ドア付近の床への警戒色の追加、優先席部分の吊り手の低位置化など)
-
- 4両編成
- 2505F
- 2501F~2519F・2051F・2451Fは前面貫通扉窓が小型。
- 2097Fのモハ2197の制御装置はVVVFインバータ制御。
- 2531F・2533F・2535F・2537F・2545F・2065Fと後期形の全車両は補助電源装置がSIVである。
- 4両編成の前期形車両の一部は電動空気圧縮機の電源を直流から交流に変更されている。
- 2055F・2097Fは屋根上の通風器がステンレス製無塗装となっている(他の編成はグレーに塗装)。
- 2501F・2503F・2505F・2521F・2061F・2065F・2069Fは、乗務員室後方のドア付近に長手方向にもつり革が増設された。これは先に特別修繕工事を受けた2031Fで試験的に導入したものを、当初と若干形状を変えて導入したものである。
[編集] 関連商品
- プラレール(トミー※現タカラトミー)…限定発売
- ダイキャスト玩具(トレーン)
- Nゲージ鉄道模型(グリーンマックス)…塗装済・未塗装キットで販売
- Nゲージ鉄道模型(銀河モデル)…金属未塗装キットで販売(別途上記キットが必要)
- Bトレインショーティー(バンダイ)
- HOゲージ鉄道模型(エンドウ)