黄金の日日 (NHK大河ドラマ)
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黄金の日日(おうごんのひび)は1978年1月8日~12月24日に放送されたNHK大河ドラマ第16作である。原作は城山三郎、脚本は市川森一の書き下ろし。 安土桃山時代にルソンに渡海し、貿易商を営むことで巨万の富を得た豪商呂宋助左衛門(ドラマ内では助左または納屋助左衛門と呼ばれている)と堺の町の栄枯盛衰、今井宗薫の妻・美緒をめぐる今井宗薫、助左衛門ら男たちの争いを描いた作品である。
今までは武士をメインに取り上げた大河であったが、この作品で初めて庶民と経済からの視点を得、多くの視聴者の共感を得たり、歴史の中でもかなり人気のある豊臣秀吉を関白就任後は徹底した悪役に、石田三成を善人にすえるという今までにない展開により、平均視聴率も後半に裏で始まった「西遊記」に数字を盛りかえされるも、当時の上位であった「赤穂浪士」(31.9%)、「太閤記」(31.2%)に次ぐ25.9%を記録(この余勢か、再び市川が脚本を担当した「山河燃ゆ」には主演の九代目松本幸四郎初め数人が再び一堂に会している)し、また後年大河ドラマ「新選組!」の脚本を担当した三谷幸喜もこのドラマに思いを寄せている。
また、最終回に少年役で藤間照薫(後の七代目市川染五郎)、助左の父親役に八代目松本幸四郎(後の初代松本白鸚)と、松本家親子三代で出演、李麗仙、唐十郎夫妻(当時)が間接的ながら共演している。唐が主催する状況劇場に所属していた根津甚八もこの作品に出演し、一躍、全国区の人気を得た。
- 初回から最終回まで全エピソードをNHKが保存している。歴代大河ドラマの中で全映像の現存が確認されているのは本作が最古。
- 全映像が現存しているため、ビデオやDVDでは、総集編だけでなく、全放送回を収録した完全版も発売されている。
NHK大河ドラマ | ||
通番 | 題名 | 放映期間 |
第15作 | 花神 | 1977年1月2日 ~1977年12月25日 |
第16作 | 黄金の日日 | 1978年1月8日 ~1978年12月24日 |
第17作 | 草燃える | 1979年1月7日 ~1979年12月23日 |
目次 |
[編集] 出演
[編集] 助左をめぐる主要人物
- 堺の孤児で助左の憧れの人、キリシタン。今井宗久に拾われ今井家に仕える。今井宗薫と結婚するも宗薫は妹としか見てくれず、助左とは忍ぶ恋仲に。梢が宗薫の子を身籠ったことから居場所を失い、彦助に頼んでルソンへ半年間渡るが、梢の死と宗薫が堺にいない事から堺へしぶしぶ帰国する。以降、堺の自治をめぐる権力争いに巻き込まれる。
- 納屋助左衛門と石川五右衛門の幼馴染(ドラマ中の設定)。鉄砲の名手と言われる僧侶で、信長暗殺に依頼されるも失敗。その輸送途中、船が難破し五右衛門、助左と共にルソンへ漂着し、現地の女性と結婚するも、日本に帰国し堺でお仙の元で木綿の火縄を発明する。(後にこれが助左の商売の足がかりとなる)宗薫に捕まり、助命の引き換えに隠居を条件にされた今井宗久が家を守るため、織田家に引渡され、鋸引きで処刑される。川谷の当たり役。
- 桔梗:竹下景子 (少女時代:堀越恵里子)
- 宗久と今井に仕えた女中・しま竹下景子(二役)の間の子。暇を出され伊勢長島の合戦で母を信長軍に殺された事から信長を恨み、善住坊と共に加賀へ落ち延び、鉄砲の撃ち方を学ぶ。成人し堺で助左と再会し助左の店で働くが、難破した船乗り達の金の用立てと引き換えととして宗薫の妹として今井家へ戻る。宗薫の命により豊臣秀次の側女(鉄砲指南役)を経てルソンに渡り、助左にプロポーズされるも、婚礼前日に日本人村がイスパニア人に襲撃され、自殺する。
[編集] 堺の商人・住人
- 史実と違い、秀吉には仕えず、安土城が炎に包まれると、「ルソンへ旅立つ」と言い残し船出し、行方不明になる。
- 今井家を徳川方になびかせる為に服部半蔵が送り込んだくのいち、正体がばれるも、妊娠が発覚し九死に一生を得る。宗薫の子・小太郎を生み、間もなく家康の伊賀越えで落武者狩りと交戦し、戦死。
- 小太郎:江藤潤
- 今井宗薫と梢の間に生まれた子。美緒、桔梗が去り今井家が家庭崩壊状態となった事から助左衛門を恨み、殺害のため朝鮮出兵に同行、しかし助左の人格に触れ心を許す。
- 堺の豪商集団・会合衆の一員。小西行長の父。
- 堺の豪商集団・会合衆の一員。反信長派。
- 日比屋了慶:渥美国泰
- 堺の豪商集団・会合衆の一員。モニカの父。敬虔なキリシタンであり、自邸には礼拝堂と釣鐘も備えている。助左が今井を離れて行商を始める時に木綿を卸して貰ったのもこの日比屋であり、後年助左はその礼拝堂付きの邸宅を買い取って住まう事になる。
- お仙:李礼仙(現・李麗仙)
- 堺の船堀で暮らす占い師。善住坊の死を見事当て、堺の堀の埋め立てのショックから病気にかかる。
- 笛(モニカ):夏目雅子
- キリシタンの教会の女性、新しい礼拝堂構築の事故で彼女を物にしたい五右衛門に助けられるもすでに結婚が決まったことを知り、焦った五右衛門は彼女を強姦し、彼女の元を去る。恨みながらも愛しいという五右衛門を追い、再会を果たした矢先に病気と五右衛門の誤った診療で醜い顔になってしまい、五右衛門はまたしても彼女から逃げるも高槻で再会、自らの希望で五右衛門に絞殺される。
- 銭丸:前田晃一
- 堺の町の浮浪児だったのを助左に拾われ、幼いながらも助左を助けて“番頭さん”と呼ばれる。助左の留守中は桔梗と共に店を守る。原田喜右衛門一味の襲撃を受け、桔梗を庇って命を落とす。
[編集] 豊臣家
- 信長の配下時代は、助左たちとは友好的だったが、天下をほぼ手中に収め、権力を手に入れると、支配者として堺の自治を認めず、目をかけるも要求を撥ね付け、わが道を行く助左や徳川に肩入れする宗薫ら堺商人たちと対立する。1965年の大河ドラマ太閤記と同じ配役。
- 長浜で助左と知り合い、一緒にたまの帰りを送ったことから親友となる。ねねの尾張訛りをひどく嫌う、堺奉行に就任してからは、親友の助左と上司の秀吉の間で苦悩する。朝鮮出兵中、徹底抗戦の加藤清正、福島正則に対し、無駄な犠牲者を出すよりも、友好関係を築こうとした。数々のドラマで利休を讒言して死に追い込む役が多い三成だが、このドラマ中では利休とは対立せず、むしろ秀吉の利休切腹に難色を示している。
- 史実と違い、1600年(関ヶ原の戦い直後)に自らルソンへ渡る。
- 朝鮮出兵中、友好関係を築こうとする三成、行長、宗義智に対し、福島正則と供に徹底抗戦を主張し豊臣家分裂のきっかけを作る。
- 福島正則:加藤正之
- 浅野長政:辻萬長
- 増田長盛:金内吉男
- 蜂須賀小六:室田日出男
- 竹中半兵衛:梅野泰靖
- 蒲生氏郷:山本寛
- 石田正澄:内田稔
- 長宗我部元親:庄司永建
- 三好政康:平野元
- 三好長逸:渡辺厳
- 古田織部:戸沢佑介
- 筒井順慶:岸本功
[編集] 織田家
- 1965年の大河ドラマ太閤記と同じ配役。
- お市の方:小林かおり
- 織田有楽斎:奥野匡
- 北畠信雄:横尾三郎
- 神戸信孝:酒井郷浩
- 織田三法師:田村宗正
- 明智光秀:内藤武敏
- 細川ガラシャ(たま):島田陽子(現:島田楊子)
- 柴田勝家:新田昌玄
- 丹羽長秀:坂本長利
- 滝川一益:金井大
- 荒木村重:北島和男
- 力士・鳴海:栃櫻光輝
- 鳴海以外の力士:日本大学相撲部
[編集] 織田家以外の戦国武将
- 徳川家康:児玉清
- 足利義昭:松橋登
- 武田信玄:観世栄夫(声のみの出演)
- 浅井長政:伊藤高
- 浅井久政:増田順司
- 一色藤長:日野道夫
- 六角承禎:奥村公延
- 服部半蔵:前田満穂
- 前田利家:臼井正明
- 細川藤孝:加藤精三
- 細川忠興:柴田侊彦
- 吉川経家:浜畑賢吉
- 安国寺恵瓊:神山繁
- 鍋島直茂:小瀬格
- 相良頼房:小沢象
- 島津義久:初代中村靖之介
- 島津義弘:平泉成
- 原田喜右衛門:唐十郎
- 長崎の豪商、助左を海賊と勘違いし、捕縛。誤解が解け、助左とルソンでイスパニア軍との交易を持ちかけるが、助左に断られた事から船を襲い、五右衛門に命を狙われる。人身売買が元で助左の襲撃に遭い、敗死。
[編集] その他
- ルイス・フロイス:ルイス・カンガス
- ガスパル・ヴィレラ:ミシェル・マサポ
- グネッキ・ソルディ・オルガンティノ:ジェームズ・ゴードン
- 原マルチノ:吉田次昭
- 彦助:岸部一徳
- ある金山で助左と知り合った炭鉱夫。今井家の金を強奪する計画を助左に漏らし、阻止される。その後堺で船の修理工として働き、助左と再会しルソンへ渡る。到着後ルソンに残り、そこで騙されて売られた女性と恋仲になり彼女の国元で暮らす。
- 末蔵:小松方正
- 高山右近から紹介された船頭、初めてのルソン航海で助左に惚れ込むも、ルソン丸の難破で、行方不明に。
- 孫七:常田富士男
- 長崎屋の奉公人。助左に論語などの中国の書を売りつけられ、二束三文で引きとらせる。
- ツル:安奈淳
- フィリピン人。喜右衛門に捕らわれた兄を救うため、助左の船から鉄砲を奪おうとし失敗するも事情を知った助左が協力を申し出て喜右衛門を討ち取る。
- 高砂甚兵衛:八代目松本幸四郎(後に松本白鸚)
- 助左の生き別れた父親。航海中に難破して記憶を無くし、気がつけば海賊の頭になっていた。助左によって堺の町を思い出し、堺へ帰ろうと助左に言われるが子分を見捨てられず船に残る。別れ際に助左は「おとっつあん!」と叫び、僅かな親子の再会に涙を流した。