炎立つ (NHK大河ドラマ)
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炎立つ(ほむらたつ)は、1993年(平成5年)7月4日から翌1994年3月13日まで放送された第32作目のNHK大河ドラマ。三部構成。平安時代前期の朝廷と東北地方の関わりから鎌倉時代に源頼朝による奥州合戦で奥州藤原氏が滅亡するまでを描く。
NHK大河ドラマ | ||
通番 | 題名 | 放映期間 |
第31作 | 琉球の風 | 1993年1月10日 ~1993年6月13日 |
第32作 | 炎立つ | 1993年7月4日 ~1994年3月13日 |
第33作 | 花の乱 | 1994年4月3日 ~1994年12月25日 |
目次 |
[編集] 概要
物語の前提として、従来不明な事も多かった奥州藤原氏の、直系祖先が五位に列せられる歴とした貴族・藤原経清であることが史料の上からも断定されたこと、中尊寺金色堂に奥州藤原氏三代の当主のミイラと共に密かに安置されている首級が、俗説では義経に味方して死んだ泰衡の弟藤原忠衡ではないかと言われていたのが、科学的鑑定と史料の記述の一致などから泰衡その人のものだと断定されたことなど、近年判明した史実を踏まえている。物語はあくまで空想の域を出ないが、これらの史実が奥州藤原氏に関して従来とは違う、より自由な解釈を可能としたことが、本作の構想の基盤となった。
渡辺謙、佐藤慶などが二役を演じている。またオープニングテーマでは、第一部と第二部では岩手県奥州市に伝わる伝統芸能である「鹿踊り」の舞姿の部分が、第三部では平泉の中尊寺金色堂にモミジの舞い散るシーンになっている。
アテルイから奥州藤原氏までの東北政権の立場から、奥州藤原氏三代、ならぬ奥州藤原氏五代(0代藤原経清~四代藤原泰衡)を描く。従来主役として扱われることの多かった河内源氏嫡流を悪玉とするストーリーを評価する見方もあるが、平均視聴率は17.7%と冴えない展開となった。これは視聴者になじみの薄い時代・事件・人物達を取り上げた作品であったこともある。それでも第一部では安倍一族の衣装は大陸風もしくは奈良時代以前の装束を意識した活動的な筒袖を採用、甲冑も非実用的な大鎧ではなく黒を基調としたシンプルなデザインを考案するなど、随所に工夫が見られ、意欲が感じられた。が、第二部はわずか8話で単なる繋ぎに終わってしまい、第一部にも登場した人物がまるで違うキャラクターになってしまう(特に経清正室・清衡生母の結有は、第一部では経清への愛と安倍一族としての理想に燃える魅力的な女性であったのに、第二部では)など、ドラマの流れに齟齬をきたすようになる。第3部に至っては原作者の高橋克彦の執筆がドラマ進行に追いつかず(これにより第3部は「原作:高橋克彦」のクレジットがされていない)、脚本家の中島丈博がほとんど一から書くことになり、撮影スケジュールの変更から当初予定されていた主要キャストが降板する事態まで起きた。このNHKの段取りの悪さに、中島は二度と大河の仕事を受けない、と激怒したといわれる。しかし、本作の中島の脚本は魅力に欠け、渡辺をはじめとするせっかくのキャスト陣を生かせなかった印象が強い。原作者の高橋が(キャスティングが決定した)第一部中盤以降、経清=泰衡=渡辺謙と想定して物語を構成した(義家=義経という想定もあった)のに対し、中島にはそういう思い入れはなかった。特に第三部は、従来奥州藤原氏を滅ぼした無能者で英雄・源義経を殺した悪人としてしか描かれなかった藤原泰衡をあえて主人公とし渡辺に演じさせ、泰衡の名誉回復を意図した作品となるはずであったのに、泰衡のキャラクター設定に一貫性がなく、頼朝・義経に関しては従来通りの解釈を踏襲したため、矛盾だらけの作品になってしまった。さらに当時中島が自ら連載していたドラマ戯曲専門誌で、高橋に対する個人的な怨嗟をぶちまけた上、キャスティングに関するスキャンダルを暴露する記事を掲載し、問題視された。
しかし、全体としては骨太のストーリーで、作品としての評価は高い。無難なストーリーやキャスティングが多い大河ドラマの中では異色の物語ともいえ、大河ドラマの中での再評価が必要だろう。
なお、このドラマのために建てられたオープンセットは、撮影終了後もえさし藤原の郷として維持され、テーマパーク兼撮影所として多くのドラマや映画の撮影に利用されている。
- 2007年、DVDで完全版の発売が予告されている。
[編集] スタッフ
[編集] 構成
- 第1部「北の埋(うず)み火」(全12回)※原作本の第1巻~第3巻に相当。
- 前九年の役終結まで。主演は渡辺謙。
- 藤原経清は親の代の不祥事で奥州に土着を余儀なくされたが、本来は名門の家柄であった。が、朝廷のやり方に失望し、次第に安倍一族の思想に共感するようになり、一族の女性・結有を愛し、結ばれる。ついには自ら望んで安倍一族と共に朝廷と闘う決意をするが、力及ばず非業の死を遂げる。
- 第2部「冥(くら)き稲妻」(全8回)※原作本の第4巻に相当。
- 後三年の役終結まで。主演は村上弘明。
- 経清の忘れ形見・清衡は、母・結有が再嫁した清原家の勢力争いに巻き込まれながらも、父の果たせなかった奥州独立国家の夢を実現する。
- 第3部「黄金楽土」(全15回)※原作本の第5巻に相当する予定だった。
- 源平の争乱と奥州藤原氏滅亡まで。主演は渡辺謙(二役)。
- 奥州藤原氏の後継者となった藤原泰衡。しかし時代は源頼朝を盟主とする東国武家政権樹立へと一気に流れていく。が、奥州藤原氏はそれを理解できない源氏の御曹司・義経を抱え込んでしまう。泰衡は苦悩の末、自らの命と引き換えに、奥州の民の平和と文化を守ろうとする。
[編集] キャスト
[編集] 安倍一族とその関係者
- 藤原経清:渡辺謙(
亘理 の豪族、権太夫(従五位下)の位を持つ貴族) - 結有:古手川祐子(経清の妻、頼時の娘)
- 安倍頼時:里見浩太朗(
俘囚 長) - 瑞枝:赤座美代子(頼時の正室)
- 安倍貞任:村田雄浩(頼時の次男)
- 流麗:財前直見(貞任の妻)
- 安倍宗任:川野太郎(頼時の三男)
- 安倍正任:若松俊秀(頼時の四男)
- 安倍家任:森永健司(頼時の五男)
- 安倍重任:松田敏幸(頼時の六男)
- 安倍則任:安倍高志(頼時の七男)
- 安倍行任:藤原恭次(頼時の八男)
- 菜香:鈴木京香(平永衡の妻、頼時の娘)
- 安倍良照:塩見三省(頼時の弟)
- 千世丸:坂本裕史→板垣翔大→角田亮(貞任の子)
- 小田忠平:稲垣吾郎(経清の家臣)
- 吉次:西村晃
- 乙那:寺田稔(吉次の子)
- 沙羅:多岐川裕美(巫女。吉次の娘、頼時の側室)
[編集] 清原一族
- 清原光頼:石田太郎(出羽の豪族、武則の兄)
- 清原武則:新克利(鎮守府将軍)
- 清原武貞:名高達男(武則の子、結有の再婚相手)
- 清原真衡:萩原流行(武貞の子、清衡の義兄)
- 清原家衡:高村祐毅→豊川悦司(清衡の異父弟)
- 清原武衡:渋谷天外(武則の子)
- 清原成衡:米山望文(真衡の養子)
- 吉彦秀武:蟹江敬三(清原一族の重鎮)
- 吉彦武忠:岩渕憲昭(秀武の子)
- 岐巳:高橋かおり(成衡の妻)
- 佐登:高田美穂(真衡の側室)
- 千任:織本順吉(家衡の家臣)
[編集] 奥州藤原氏
- 藤原清衡:森田洸輔→福原学→村上弘明(経清の子、奥州藤原氏初代)
- 藤原秀衡:渡瀬恒彦(奥州藤原氏三代目) ※当初の配役は北大路欣也の予定であり番宣素材も作られた。
- 藤原泰衡:渡辺謙(奥州藤原氏四代目)
- 藤原国衡:三浦浩一(泰衡の兄)
- 藤原忠衡:嶺岸和城→角田英介(泰衡の弟)
- 藤原基成:林隆三(泰衡の外祖父)
- 藤原伴丸:塙翔平→松本義之→松本義光→服部有吉(泰衡の子)
- 藤原基顕:中原丈雄(基成の子)
- 貴梨:坂本冬美(清衡の妻)
- 茜:田原加奈子→河野由佳(清衡の娘)
- 澪丸:清水京太郎→太田翔平(清衡の息子)
- 亜古耶:中川安奈(泰衡の妻)
- 薫子:中嶋朋子(秀衡の娘)
- 河田次郎:安藤一夫(泰衡の家臣)
- 弥五郎:小宮孝泰(泰衡の側近)
- 鬼丸:河原さぶ(亜古耶の父、刀鍛冶)
- 牧:大林丈史(清衡の側近)
[編集] 源氏とその家臣
- 源義家:伊崎充則→佐藤浩市(頼義の子、のち陸奥守)
- 源頼義:佐藤慶(陸奥守、鎮守府将軍)
- 源頼朝:長塚京三(鎌倉幕府初代将軍)
- 源義経:野村宏伸(頼朝の庶弟)
- 常盤御前:松田美由紀(義経の母)
- 郷御前:高取茉南(義経の妻)
- 源行家:筑前翠瑶(頼朝の叔父)
- 多田行綱:三田村周三(多田源氏)
- 北条時政:本郷功次郎(鎌倉幕府初代執権)
- 北条宗時:湯江健幸(時政の長男)
- 北条義時:黒樹洋(時政の次男、鎌倉幕府2代目執権)
- 武蔵坊弁慶:時任三郎(義経の家臣)
- 佐藤継信:上田雄太(義経の家臣)
- 佐藤忠信:小林良平(義経の家臣)
- 安達盛長:勝部演之(御家人)
- 土肥実平:小野進也(御家人)
- 仁田忠常:舘大介(御家人)
- 三浦義村:大森啓祠朗(御家人)
- 加藤景廉:小野了(御家人)
- 佐々木高綱:熊谷俊哉(御家人)
- 千葉胤頼:山口真司(御家人)
[編集] その他
- 後白河法皇:中尾彬
- 丹後局:木村翠
- 藤原登任:名古屋章(陸奥守)
- 平永衡:新沼謙治(陸奥郡司)
- 平繁成:田口計(秋田城介)
- 藤原頼通:森塚敏(関白)
- 藤原教通:藤木孝
- 藤原基房:寺泉憲
- 九条兼実:斉藤洋介
- 平宗盛:斧篤
- 藤原長成:村松克巳
- 藤原成親:小川隆市
- 藤原経輔:イッセー尾形
- 西光:中平良夫
- 俊寛:石森武雄
- 文覚:深水三章
- 静賢:山崎一
- 源隆国:田山涼成
- 源経成:篠井英介
- 西行:柳生博
- 坂上田村麻呂:佐藤慶(征夷大将軍)
- アテルイ:里見浩太朗(蝦夷の軍事指導者)
- 藤巻三郎光能:安岡力也
- 村雨:李麗仙
- 柾:洞口依子
- 平間裕常:浜村純
- 橘似:紺野美沙子
- 城助能:中西良太
- 貴族:亀山助清
- 薬師:加藤治、山崎満
- 盗賊:松山鷹志
- その他:及川勉(当時の江刺市長)
ほか