ヴェネツィア
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ヴェネツィア (Venezia) |
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国: | ![]() |
州: | ヴェネト |
県: | ![]() |
測地系: | 北緯: 45°26′0″ 東経: 12°19′0″ |
標高: | 海抜 m |
面積: | 412 km² |
人口: | 271,251 2004年12月31日 |
密度: | 646 人/km² |
分離集落: | メストレ、 マルゲーラ、 ムラーノ、 ブラーノ、 ジュデッカ、 リード |
隣接コムーネ: | カンパーニャ・ルーピア、 カヴァッリーノ=トレポルティ、 キオッジャ、 イェーゾロ、 マルコーン、 マルテッラーゴ、 ミーラ、 モリアーノ・ヴェネト (TV)、 ムジーレ・ディ・ピアーヴェ、 クアルト・ダルティーノ、 スコルツェ、 スピネーア |
CAP(郵便番号): | 30100 |
市外局番: | 041 |
ISTATコード: | 027042 |
IDコード: | L736 |
住人の呼称: | veneziani |
守護聖人: | 聖マルコ・エヴァンジェリスタ (San Marco Evangelista) |
祝祭日: | 4月25日 |
公式サイト | |
ヴェネツィア(IPA[veˈnɛʦja] 伊:Comune di Venezia)は、イタリアの北東部に位置するコムーネで、ヴェネト州の州都、ヴェネツィア県の県庁所在地である。
中世にはヴェネツィア共和国の首都として盛えた都市で、「水の都」として有名である。
目次 |
[編集] 名称
古来はラテン語でウェネティ人の土地を意味し、ウェネティ人が住んでいたアドリア海の奥に拡がる土地をウェネティア(Venetia)と呼んだ事から来ている。この綴りをそのままイタリアでのラテン語の読み方に従うとヴェネツィアとなる。英語でヴェニス(Venice)、フランス語でヴニーズ(Venise)、ドイツ語でヴェネーディヒ(Venedig)と呼ばれる。漢字ではヴェニスを音訳して威尼斯と表記する。ヴェネツィア方言ではヴェネスィア(Venesia)となる。
日本語では表記の揺れが激しく、イタリア語から来たものでもヴェネーツィアを始めとして、ヴェネチア、ベネチア、ベネツィア果てはベネティア、ヴェネティアなどもある。英語由来ではヴェニス、ベニスなどと書かれる。救いはまぎらわしい地名がないことである。
[編集] 地理
アドリア海の最深部、ヴェネツィア湾にできた「ラグーナ(潟)」の上に築かれた、運河が縦横に走る水の都である。
ヴェネツィア本島は大きな魚のような形をしており、その真ん中を逆S字形に「大運河(カナル・グランデ)」が流れている。また、島のあちこちを細い運河が流れており、本島全体が小さな島々から出来ているように見せている。 運河には大小の無数の橋がかかっており、また地上には狭い道路が迷路のように巡っている。
ヴェネツィアは、セスティエーレと呼ばれるそれぞれが、ドルソドゥーロ(Dorsoduro)、サンタ・クローチェ(Santa Croce)、サン・ポーロ(San Polo)、サン・マルコ(San Marco)、カンナレージョ(Cannaregio)、カステッロ(Castello)という地区に分れている。
本島のすぐ南には、「サン・ジョルジョ・マッジョーレ島」「ジュデッカ島」、さらに南に下ると映画『ベニスに死す』で有名な「リード島」がある。また、本島のすぐ東には、墓地となっている「サン・ミケーレ島」、さらに東にはヴェネツィアングラスで有名な「ムラーノ島」、レース編産業の地「ブラーノ島」、そして、もっとも古い時代に栄えた「トルチェッロ島」がある。
かつては海上に浮かぶ孤島であったが、オーストリア帝国治世下の1846年にイタリア本土との間に鉄道が引かれ、後に自動車用道路の「リベルタ橋」も引かれ、イタリア本土との往来は容易である。ただし、ヴェネツィア本島内は車での移動は禁止(自転車を含む。乳母車、車椅子は可)されているため、自家用車はリベルタ橋をわたったすぐにある「ローマ広場」の駐車場に置いて、島内を徒歩か船舶で移動することになる。
車が入れないために、また、運河が発達していることもあり、主な交通機関は必然的に船になり、水上路線バスの「ヴァポレット(Vaporetto)」や水上タクシーの「モトスカーフィ(Motoscafi)」、大運河の岸と岸を渡る渡し舟「トラゲット(Traghetto)」が、大運河、および、ヴェネツィア湾内を縦横無尽に走っている。警察もボートで警邏を行う。また、運河に面した玄関を持つ建物も多い。なお、ゴンドラと呼ばれる手漕ぎの舟が有名だが、現在では一部の渡し舟を除き観光用途で運行されている。
大潮、気圧の変化、そして、アドリア海を南から吹く風「シロッコ」の3つの要因が重なると、「アクア・アルタ(acqua alta、高水の意)」と呼ばれる高潮がヴェネツィア湾で起こる。このとき、ヴェネツィアの街中まで水が入り込み、特に一番低い「サン・マルコ広場」は水没する(広場や道路には臨時の高床が組まれ、通行を確保する)。過去に北の対岸の本土マルゲーラ地区で工業用の地下水のくみ上げが行われたことにより地盤沈下が起こり、アクア・アルタによる洪水の水位が1m以上になったこともある。更に今後の地球温暖化によって海面上昇が加速されることとなれば、将来ヴェネツィアの街全体がアドリア海に水没してしまうことが懸念されている。水没を防ぐために、アドリア海との間に3カ所の水門を設けるモーゼ計画があるが、環境に与える影響が心配されており、反対もある。
[編集] 歴史
ヴェネツィアの土地は、大陸からの川の流れに乗ってくる土砂、そしてアドリア海の波と風の力によって作られた湿地帯である。
元々はただの湿地帯だったが、6世紀頃に東方からゲルマン系諸族やフン族がイタリア本土のヴェネト地方に侵入してきたため、住民がこの湿地帯へと避難してくることから歴史が始まる。この時避難してきた先が現在の「トルッチェロ島」である。足場が悪い湿地帯のため、侵入者は追ってくることが出来ず、避難した人々はここに暮らし続けるようになる。
アドリア海沿岸地域は元々ビザンティン帝国の支配下にあるため、ヴェネツィアも同じように支配されていたが、697年、初代総督を選出して独自の共和制統治が始まる。
9世紀はじめ、フランク王国がヴェネツィアを支配下に置こうとして軍を派遣、そのため、トルッチェロにいた人々は更なる避難を余儀なくされ、現在のヴェネツィア本島へと移り住むことになった。このときにたどり着いたのが今の「リアルト地区」である。
810年にビザンティン帝国とフランク王国との間で結ばれた条約で、ヴェネツィアはビザンティン帝国に属するが、フランク王国との交易権ももつこととなり貿易都市への布石が置かれた。
このころ、ヨーロッパ各国では、その国の存在をアピールする目的でその国の守護聖人を求める風潮にあった。ヴェネツィアも同様に守護聖人を求めていたところ、福音書著者聖マルコの遺骸がエジプトのアレキサンドリアにあり、イスラム教徒に奪われる恐れがあることを聞きつけ、828年、それを奪い取りヴェネツィアに運んだ。この時よりヴェネツィアは聖マルコを守護聖人とすることになった。
10世紀後半からはイスラム諸国とも商業条約を結び交易を拡大した。さらにアドリア海沿岸への支配地域の拡大に努めていった。ジェノヴァなどの同じイタリアの貿易都市とは違い、都市の周辺海域が大国・ビザンティン帝国の制海権内にあったために、イスラム勢力による海上からの直接的脅威を感じることが少なかったことも、イスラム諸国との関係を積極的に進める要因となった。
11世紀に、弱体化したビザンティン帝国の要請でアドリア海沿岸の海上防衛を担うことになり、その代償としてビザンティン内での貿易特権を得た。その後の十字軍遠征と、それに伴うアジアとの貿易との拡大によって、ヴェネツィアは勢力を拡大した。
1204年、第4回十字軍とともにヴェネツィア艦隊はビザンティン帝国首都のコンスタンティノープルを攻略、援助への代償としてクレタ島などの海外領土を得て東地中海最強の海軍国家となり、アドリア海沿岸の港市の多くがヴェネツィアの影響下におかれた。東地中海から黒海にかけての海域が、いわば「イタリア商人の海」ともいうべき状況になったことは、おなじ13世紀に、ヴェネツィアのマルコ・ポーロが黒海北岸から中央アジアを経て元へ向かうことを容易にさせた。
15世紀になるとオスマン帝国の進出により、ヴェネツィアの海外領土が少しずつ奪われていき、勢力にもかげりが見えてきた。1538年におけるプレヴェザの海戦で、ほぼオスマン帝国は地中海の制海権をおさえ、さらにヴェネツィアにとっての圧力となった。
1797年、ヴェネツィアはナポレオン・ボナパルトに侵略され、1805年にナポレオン支配下のイタリア王国に帰属、1815年にはオーストリアの支配下(ロンバルド・ヴェネト王国)に置かれるようになった。オーストリアは、港湾都市としてヴェネツィアよりトリエステを重視したため、ヴェネツィア経済は衰退した。1848年に共和国は一時復活したが1849年にオーストリアの攻撃により降伏した。1866年に普墺戦争がはじまると、イタリア王国はこれを第3次イタリア統一戦争としてオーストリアに宣戦布告し、この結果ヴェネツィアとヴェネト地方はイタリア王国に編入された。
1987年、世界遺産(文化遺産)に『ヴェネツィアとその潟』として登録された。
[編集] 遺跡・名所
- カナル・グランデ
- サン・マルコ広場
- サン・マルコ大聖堂
- ドゥカーレ宮殿
- フェニーチェ劇場
- サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂
- サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂
- サンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ聖堂
- サンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ聖堂
- カ・ドーロ
- カ・ダ・モスト
- カ・フォスカリ (ヴェネツィア大学)
- カ・ペーザロ
- カ・レッツォーニコ
- リアルト橋
- スカルツィ橋
- アッカデーミア橋
- アッカデーミア美術館
- リベルタ橋
- ため息橋
[編集] 行政
- 代表(Sindaco): Massimo Cacciari(2005年04月18日選出)
- コムーネの代表電話: 041 2748111
- コムーネのe-mail アドレス: ufficio.stampa@comune.venezia.it
- 気候区分: zona E, 2345 GR/G
[編集] 人物
[編集] 姉妹都市
[編集] 関連項目
- ヴェネツィア共和国
- ドージェ
- ロンバルド=ヴェネト王国
- ヴェネト共和国
- イタリア社会共和国
- ヴェネツィアン・グラス
- ゴンドラ船
- ゲットー
- ヴェネツィア国際映画祭
- ヴェネツィア・ビエンナーレ
- ヴェネツィア派
- 世界遺産の一覧
- ACヴェネツィア
- ヴェネツィア憲章 歴史的建造物の保存・修復に関わる憲章
- オリエント急行(ヴェネチア-パリ-ロンドンを結ぶヴェニス・シンプロン・オリエント急行のヴェネチア側の発着駅は、サンタルチア駅である)
- 名古屋港イタリア村
- 陣内秀信
[編集] ヴェネツィア関連作品
[編集] ヴェネツィアを舞台とした作品
- 『ヴェニスの商人』 - シェイクスピア
- 『ベニスに死す 』 - トーマス・マンの小説。のちに映画化
- 『ヴェネツィア・コード』
- 『ヴェネツィアの宿』 - 須賀敦子の小説
- 『ヴェネツィア恋物語』 - ラウラ・フェッロの漫画
- 『海の都の物語 ~ヴェネツィア共和国の一千年~』 -塩野七生の歴史小説
- 映画『旅情』
- 映画『ベニスに死す』
- 映画『夏の嵐』 - ルキノ・ヴィスコンティの映画。
- 映画『バンパイア・イン・ベニス』
- 映画『ベニスに恋して』
[編集] ヴェネツィアが登場する作品
- 映画『007 ムーンレイカー』
- 映画『幸せになるためのイタリア語講座』
- 映画『007 カジノ・ロワイヤル』
- 漫画『ジョジョの奇妙な冒険 Part2 戦闘潮流』 - 主人公の修業の舞台となる
- 漫画『ジョジョの奇妙な冒険 Part5 黄金の風』 - 主人公の目的地の一つ
[編集] ヴェネツィアをモデルとした作品
- 漫画・TVアニメ『ARIA』(ネオ・ヴェネツィア) - 水没した未来のヴェネツィアから移築されたアクア(火星)にある街が舞台。
- 映画『劇場版ポケットモンスター 水の都の護神 ラティアスとラティオス』(アルトマーレ) - ヴェネツィアと同じく「水の都」と呼ばれる。
- 漫画・TVアニメ『魔法先生ネギま!』(図書館島) - サン・ジョルジョ・マッジョーレをモデルとした島。
- 漫画・TVアニメ『ONE PIECE』(ウォーターセブン) - ヴェネツィアと同様に水害の悩みを抱える造船の町。
- PCゲーム『月光のカルネヴァーレ』(ヴェネツィア) - 架空の世界観における「ヴェネツィア」が舞台の一つ。『ヴェニスの商人』に登場する架空都市と同名のベルモントが主要舞台である。
[編集] 外部リンク
- Venezia OnLine - Japanese
- ヴェネツィア
- Venice, Italy in Virtual Reality Virtual travel in the city of Renaissance.
- Venice - A bridge one street Venice of the venetians
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