小海線
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小海線(こうみせん)は、山梨県北杜市の小淵沢駅から長野県小諸市の小諸駅までを結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線(地方交通線)。八ヶ岳高原線の愛称がある。なお、しばしば、「小梅線」と誤記される。
八ヶ岳東麓の野辺山高原から千曲川の上流に沿って佐久盆地までを走る高原鉄道。甲斐小泉~海尻間は標高1000mを超える高所を走っており、清里~野辺山間には標高1375mの「JR鉄道最高地点」があり、野辺山駅は標高1345mの「JR線最高駅」となっている。
目次 |
[編集] 路線データ
- 管轄(事業種別):東日本旅客鉄道(第一種鉄道事業者)
- 区間(営業キロ):小淵沢~小諸 78.9km
- 軌間1067mm
- 駅数:31駅(起終点駅含む)
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化区間:なし(全線非電化)
[編集] 沿線風景
始発駅の小淵沢駅から見上げる八ヶ岳は雄大。発車してすぐ広い斜面を大きくターンしながら登ってゆく。林の中の別荘地を抜けると清里、駅周辺は1980年頃から急にカラフルになった。野辺山までの間、左手に見える八ヶ岳は本当に美しい。最高地点標識を過ぎると右手の林の中に野辺山電波天文台の大アンテナが見える。この天文台は年末年始を除き毎日見学が可能で、見学コースも充実している。信濃川上駅からは千曲川沿いに進むが、小海駅までに千曲川を7回横断する。小海駅からは千曲川の右岸を走ってゆく。佐久市に入ると千曲川は北西方面に曲がって行く。浅間山も間近に迫ってきた。岩村田駅から中佐都駅までは高架になっており北陸新幹線と国道141号線をオーバーパスする。乙女駅からはしなの鉄道線と並走し、終点の小諸駅に到着。
[編集] 運行形態
現在は、普通列車のみの運転で、他線との直通運転はない。小淵沢~小諸間の列車が概ね1~2時間毎に運転されるほか、小海・中込~小諸間の区間運転列車がある。また、観光シーズンになると小淵沢~野辺山間に1日3往復ほど臨時列車が運行される。
車両基地は中込にあり、1991年4月1日に中込運輸区から改組された小海線営業所が全線を統括している。1992年3月14日のキハ110系気動車置換えと同時にワンマン運転を開始した。
列車編成は1~3両で、中込駅で列車の増結・切り離しが行われる場合がある。
2005年(平成17年)11月8日、世界初のハイブリッドシステムを導入した新型車両、「キハE200形」を2007年(平成19年)夏頃に営業運転を開始する計画が発表された。
[編集] 過去に運行されたイベント列車
一時期、高原列車としてのイメージを生かすべく、いくつもイベント列車が運行された。
[編集] ときめきの恋列車
1986年夏に、小海線のキハ52形気動車のうちの2両(122・123)が、白地に八ヶ岳連峰と気球・飛行船が描かれた塗色に変更され、小淵沢駅~軽井沢駅間を結ぶ臨時列車「ときめきの恋列車」として運行された。内装も変更されており、天井は夜空をイメージした濃い青に塗られ、夜光塗料で星座模様が描かれたものであった(ただし、正確な星座を描いたわけではなく、「ときめきの恋」「JNR」など、遊び感覚も多分に盛り込まれていた)。1991年頃までこの塗色のまま他車と共通運用となっていた。
[編集] 葉ッピーきよさと
1988年夏より、新宿駅~清里駅間を直通運転する臨時快速「葉ッピーきよさと」が運行され、長野支社所属の、簡易リクライニングシートに改装された169系電車が使用された。この列車の特徴は、中央東線では自力で走行するが、小海線内ではDD16形ディーゼル機関車に牽引されるというものであった。初年度は快速「みすず」用の169系4両編成を使用し、小海線内ではドア開閉用の電源車としてスハフ12を連結した。翌1989年以降は169系3両編成に短縮されたが、DD16のうち301・302号機にに静止形インバータ(SIV)を搭載したため、電源車を連結する必要はなくなった。なお、電源容量の関係で、小海線内では冷房は使用出来なかった。また、小淵沢駅ではホームに面していない線路で機関車の連結・解放を行うため、運転停車となっていた。1992年まで運行された。
[編集] 車両
- 小海線運輸営業所所属
[編集] 過去の車両
- いずれも、中込機関区(後の中込運輸区、現・小海線運輸営業所)所属
[編集] 歴史
小諸~小海間は私鉄の佐久鉄道(さくてつどう)によって1919年に全通した。佐久鉄道は南は甲府まで、北は直江津・長岡までの鉄道を計画し、身延線の前身である富士身延鉄道と結んで中部横断鉄道となることを構想していた。小諸以北のうち屋代~須坂間の敷設免許を1919年に取得したが、翌1920年に地元有志らと共に設立した河東鉄道(長野電鉄の前身)に譲渡された。小海以南の建設は第一次世界大戦後の不況で計画が進まなかった。その後、小海~小淵沢間が国鉄線として小海側と小淵沢側の双方から建設が進められ、佐久鉄道から買収・国有化した区間と合わせて、1935年に全線が開通した。
小淵沢~甲斐小泉間には急カーブがあるが、これは小海線計画当時の鉄道大臣小川平吉が富士見町出身ということもあり、富士見駅を起点とする予定であったところを、工事費用などの点から小淵沢駅起点に変更したために生じたものである。
[編集] 佐久鉄道
- 1915年(大正4年)8月8日 【開業】佐久鉄道 小諸~中込(13.4km) 【駅新設】(小諸)、乙女(停留場)、土橋(停留場)、市村(停留場)、中佐都(停留場)、岩村田、久保(停留場)、中込
- 12月28日 【延伸開業】 中込~羽黒下(7.7km) 【駅新設】大奈良(停留場)、三反田、入沢(停留場)、羽黒下
- 1916年(大正5年)6月6日 【駅新設】滑津(停留場)
- 1919年(大正8年)3月11日 【延伸開業・全通】羽黒下~小海(9.5km) 【駅新設】海瀬(停留場)、佐久穂積、高岩(停留場)、馬流(停留場)、小海
- 1925年(大正14年)4月14日 【駅新設】三岡 【駅廃止】土橋(停留場)、市村(停留場)
- 1934年(昭和9年)9月1日 【買収・国有化】小諸~小海(-30.6km)。小海北線に編入
[編集] 小海北線
- 1932年(昭和7年)12月27日 【開業】小海線 小海~佐久海ノ口(17.5km) 【駅新設】(小海)、松原湖、海尻、佐久海ノ口
- 1933年(昭和8年)7月27日 【線名改称】小海線→小海北線(小海南線開業のため)
- 1934年(昭和9年)9月1日 【路線統合】小諸~小海(30.6km)(佐久鉄道線を買収・国有化し編入) 【停留場→駅】乙女、中佐都、久保、滑津、大奈良、入沢、海瀬、高岩、馬流 【駅名呼称変更】三反田(さんだんだ→さんたんだ)
- 1935年(昭和10年)1月16日 【延伸開業】 佐久海ノ口~信濃川上(7.9km) 【駅新設】佐久広瀬、信濃川上
[編集] 小海南線
- 1933年(昭和8年)7月27日 【開業】小海南線 小淵沢~清里(17.5km) 【駅新設】甲斐小泉、甲斐大泉、清里
[編集] 小海線(全通後)
- 1935年(昭和10年)11月29日 【延伸開業・全通】清里~信濃川上(14.0km) 【線名改称】小海南線・小海北線→小海線 【駅新設】野辺山
- 1944年(昭和19年)3月1日 【駅名改称】久保→北中込 【駅廃止】滑津
- 11月11日 【駅営業休止】馬流、入沢、大奈良、乙女
- 1952年(昭和27年)3月1日 【駅新設】滑津(2代) 【駅名改称】入沢→青沼、大奈良→龍岡城 【駅営業再開】馬流、青沼、龍岡城、乙女
- 1959年(昭和34年)10月1日 【駅名改称】佐久穂積→八千穂
- 1963年(昭和38年)10月1日 【駅名改称】三反田→臼田
- 1984年(昭和59年)2月1日 【貨物営業廃止】全線(-78.9km)
- 1986年(昭和61年)7月6日 【駅新設】フォトデッキ(臨時駅)
- 9月1日 【駅廃止】フォトデッキ
- 1987年(昭和62年)4月1日 【承継】東日本旅客鉄道
- 1988年(昭和63年)12月1日 【駅新設】美里
- 1997年(平成9年)10月1日 【駅新設】佐久平(北陸新幹線(長野新幹線)開業)
[編集] 駅一覧
駅名 | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|
小淵沢駅 | 0.0 | 東日本旅客鉄道:中央本線 | 山梨県 | 北杜市 |
甲斐小泉駅 | 7.1 | |||
甲斐大泉駅 | 12.2 | |||
清里駅 | 17.5 | |||
1986年の夏の間だけ設置されていた臨時駅 | 長野県 | 南佐久郡南牧村 | ||
野辺山駅 | 23.4 | |||
信濃川上駅 | 31.5 | 南佐久郡川上村 | ||
佐久広瀬駅 | 34.9 | 南佐久郡南牧村 | ||
佐久海ノ口駅 | 39.7 | |||
海尻駅 | 42.1 | |||
松原湖駅 | 44.8 | 南佐久郡小海町 | ||
小海駅 | 48.3 | |||
馬流駅 | 49.9 | |||
高岩駅 | 51.7 | 南佐久郡佐久穂町 | ||
八千穂駅 | 53.9 | |||
海瀬駅 | 56.5 | |||
羽黒下駅 | 57.8 | |||
青沼駅 | 59.5 | 佐久市 | ||
臼田駅 | 60.9 | |||
龍岡城駅 | 62.1 | |||
太田部駅 | 64.1 | |||
中込駅 | 65.5 | |||
滑津駅 | 66.5 | |||
北中込駅 | 68.4 | |||
岩村田駅 | 70.6 | |||
佐久平駅 | 71.5 | 東日本旅客鉄道:北陸新幹線(長野新幹線) | ||
中佐都駅 | 72.4 | |||
小諸市 | ||||
美里駅 | 73.8 | |||
三岡駅 | 75.3 | |||
乙女駅 | 76.4 | |||
東小諸駅 | 77.4 | |||
小諸駅 | 78.9 | しなの鉄道:しなの鉄道線 |
[編集] 過去の接続路線
- 小諸駅:布引電気鉄道 - 1936年10月30日免許取消