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本多勝一 - Wikipedia

本多勝一

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

中立的な観点:この記事は、中立的な観点に基づく疑問が提出されているか、あるいは議論中です。そのため、偏った観点によって記事が構成されている可能性があります。詳しくは、この記事のノートを参照してください。

本多 勝一(ほんだ かついち、1932年1月28日? - 、生年は著書によって1931年1933年とするものもあり、詳細は不明。後述)は、日本ジャーナリスト長野県下伊那郡大島村(現在の松川町)生まれ(本人の意向に基づいて表記すれば、信濃国伊那谷の出身)。当人のことを「ホンカツ」、また著作の愛読者を「ホンカツ教信者」などと、揶揄して支持者・批判者ともに呼称することもある。

目次

[編集] 人物

長野県下伊那郡大島村上新井にて生まれる。生年は著書によって1931年1932年1933年の3通りを記しており、どれが正しいのかは不明である。たとえば『中国の旅』ハードカバー版(1972年朝日新聞社)によると1931年であり、同書文庫版(1981年朝日新聞社)によると1933年であり、『殺される側の論理』(1982年朝日新聞社)によると1932年であるという。生年月日を記した唯一の資料『現代日本人名録98』によると、1932年1月28日生まれだが戸籍上は1931年11月22日生まれであるという。ただし殿岡昭郎『体験的本多勝一論』(2003年、日新報道)によると、1987年3月3日京都地裁で開かれたベトナム僧尼団焼身自殺をめぐる民事裁判の原告本人質問にて、本多は「1933年4月28日生まれである可能性がある」と発言した。

少年時代は自然に親しむ一方、漫画を描くことを趣味にしていた。第二次世界大戦中、日本軍が秘密兵器でアメリカ合衆国本土に上陸する漫画を描いていたが、その途中で日本が無条件降伏してしまったという。手塚治虫に手紙を出したこともあり、手塚を師と仰ぐ一人だった。現在でも手塚作品を宮崎駿のアニメと並んで高く評価している。

1950年3月、長野県飯田高等学校卒業。高校在学中は京都大学木原均にあこがれて生物学を志したが、薬剤師免許取得が父親から認められた大学進学の条件だったため、1954年3月に千葉大学薬学部を卒業して薬剤師免許取得後、1954年4月に京都大学に進学。1956年4月、京都大学農学部農林生物学科応用植物学教室に進む。京都大学では山岳部に所属し、のち探検部の創設にかかわった。探検部時代にヒマラヤ山脈からヒンドゥークシュ山脈奥地にかけての合同調査隊に加わり、その体験をまとめて初の著書となる『知られざるヒマラヤ 奥ヒンズークシ探検記』を刊行した(1958年角川書店)。京大探検部を朝日新聞社が援助したところから朝日新聞と縁が生じ、同年10月、京都大学を卒業しないまま朝日新聞社東京本社校閲部に途中入社。推薦人は朝日新聞社主上野精一だった。同期に筑紫哲也がいる。

1959年から1962年まで朝日新聞北海道支社に勤務した後、東京本社に転じ、『カナダエスキモー』、『ニューギニア高地人』、『アラビア遊牧民』といった、短期間とはいえ現地で実際に生活を共にした上で取材した人類学系の探検ルポ三部作により高い全国的評価を得た。こういった自然系や人類学系のルポでは、北海道支社時代の記事をまとめた『きたぐにの動物たち』も有名である。

このようにもともと本多の専門分野は自然探検を主題とする文化人類学的なルポルタージュであったが、そのことによって獲得したスター記者としての高い評価を背景に、本多は日本の一般市民にとってアクセスが困難という意味では探検の要素をもつものの、実質的な面においては社会派報道となる分野へと進出した。その最初のものとなるのが1967年5月から11月にかけて朝日新聞の朝夕刊に6部に分けて連載されたベトナム戦争ルポ「戦争と民衆」であった。この連載はその後1968年に『戦場の村-ベトナム-戦争と民衆』としてまとめられて刊行され、同年の毎日出版文化賞を受賞している。この路線の延長で特に有名なのは、中国で取材した南京大虐殺についての連載記事をまとめ直した『中国の旅』で、これは連載当時から大きな反響を呼んだ。この社会派報道への進出以後、彼への評価は極端に分かれていくことになった。本多の業績に否定的な立場からは、1970年代初頭、朝日新聞社内に広岡知男社長や森恭三論説主幹の指導によって安保調査会が結成され、反米親中を旨とする編集方針が定まると共に思想的転回を遂げたとされる(『WiLL2006年8月号p.71によると、この時期の本多は任錫均という朝鮮系の左翼理論家から多大な影響を受けたという。本多はこの時期、日本共産党系の通信制市民大学である勤労者通信大学に変名で在籍し、社会科学を学んだことも明らかになっている。熊谷京二郎という変名を名乗ることもあった。)

記者としての名声を決定づけた探検ルポ三部作は、彼が新聞記者には珍しい理科系出身者であり、京都大学山岳部等での活動を通じて、今西錦司梅棹忠夫といったいわゆる京都学派と親しくしてその影響を強く受けていたからこそ成し得たといえよう。その後の、評価が極端に分かれることの多い彼のジャーナリストとしての傾向を分析するのにも、この京都学派、わけても今西学派からの影響は無視できない。

日本語に対する関心も深く、『日本語の作文技術』『実戦・日本語の作文技術』では、読点の打ち方や一つの被修飾部に複数の修飾部を必要とする場合の並べ方といった、分かりやすい日本語を書くための文章の書き方を明確にルールとして提唱している。また、独自の観点からアメリカ合衆国を「アメリカ合州国」と呼ぶこと、また第二次世界大戦占領軍によって強制され定着した方法から日本語として合理的な、桁数の多い数字の4桁区切り表記へ戻ることを主張する、などでも知られている。

スポーツでは野球嫌いで知られている。朝日新聞社では新人は必ずやらされるという高校野球の取材も、「野球は嫌いだ。甲子園は愚劣だ」と言い続けたため、ついにその機会は無かったという。新渡戸稲造の『野球と其害毒』の後を承け、『貧困なる精神』のすずさわ書店版第21集は『新版「野球とその害毒」』のサブタイトルで、野球害毒論を説いた。とはいえ、高校野球の過密スケジュールによる選手の酷使を取り上げるなど、単なる野球嫌いの内容ではない。新渡戸の野球害毒論が『朝日新聞』連載であり、しかもその後朝日新聞社が夏の甲子園大会の主催者に名を連ねた事実と照らし合わせると意味深ではある。

朝日新聞社を退職後、1993年に筑紫哲也久野収らと「週刊金曜日」を創刊し、現在同誌の編集委員を務めている。著書は朝日新聞時代から退職後に至るまで多数。

2002年、以前週刊金曜日の編集者だった山中登志子(『買ってはいけない』の著者の一人でもある)に請われて、「独断と偏見を無責任に編集すること」を唱う「月刊あれこれ」創刊編集長に就任し、2003年3月に創刊にこぎつけた。前述の「月刊あれこれ」のコンセプトは、言い替えると「主流のマスメディアに対してオルタナティブなメディアとして書き飛ばす」というものであり、これが、中立性を拒否するという彼の新聞記者時代からのジャーナリストとしての自己規定に沿うものであったことが、編集長の名義を引き受けた理由であったとみられる。実際の中心人物であった山中も『買ってはいけない』の各種商品の危険性を強調する路線をさらに推し進めた記事を執筆していた。一方で、同誌は「週刊金曜日」の生真面目な内容に限定された内容よりは、ややくだけた内容とすることを目指していた。そこで、本多自身も恋愛を話題にするなどこれまでとは全く異なる側面を見せる記事を積極的に執筆した。しかし、同誌は同年敢無く休刊した(現在はメールマガジンとなっている)。

現役の記者として有名になったときから、公式写真での姿を含めた公の場ではぼさぼさの黒髪(後に白髪)のカツラにサングラスをかけた変装をしている。彼自身の説明では、極右からの襲撃をかわす目的であった(「相手は自分の顔を知っているが、自分は相手の顔を知らない」という状態を避けるため)。また、記者として顔と名前が広く知られてしまうと対面した人が最初から記者だと分かってしまうので、素顔を隠すことは取材に際しても有益である、ともしている。なお、小林よしのりゴーマニズム宣言』によると、素顔は老眼鏡をかけ髪の毛は完全に後退しているらしい。

[編集] 肯定的評価

[編集] 言葉に対する意識

日本語の数詞呼称に基づいたアラビア数字表記の区切り方の案、英語をイギリス語、後にはアングル語と呼称する案など、日本に浸透したアングロサクソン系文化の相対化を意図した問題提起を行なっている。自著の冒頭にも、そうした独特の表記ルールを一覧表として掲げている。また、鉄道車内の英語案内放送について、「日本語の地名は、英語風のアクセントイントネーションではなく、きちんと日本語で発音されるべき」と苦情を呈してもいる。本多が日本語に抱くこのような問題意識は、左派寄りの論者には世界における民族国家の対等・平等を目指すものとして歓迎され、右派寄りの論者からは民族主義的表現として支持されている。これらの主張は、自著『殺す側の論理』『殺される側の論理』にまとめられている。本多の政治的な立ち位置は、第二次世界大戦後の対米従属に反発する反米ナショナリストの色合いが強い。この点は、民族・国家間の支配・被支配関係を嫌う左寄りの思想陣営と、自らの民族に至上の価値観を置く右寄りの思想陣営両方に受け入れられている。常に戦争被害者の側に立つ弱者擁護の立場から、イデオロギーを越えて共感する声も存在している。

[編集] 少数民族関係

  • マイノリティーとして無視されがちな少数民族アイヌ民族への関心を高めた。
  • 石器民族として差別的に扱われていたニューギニア高地人の生活を詳細に報告し、差別観の撤廃に努めた。
  • 極北の民族カナダエスキモーイヌイット)の民族性を報告した。
  • 砂漠の民アラブ遊牧民の特徴在る生活を訪れ、彼らと1ヶ月以上生活を共にした。
  • 『戦争の村』で、ベトナム戦争下のサイゴンの一般家庭に入り込み、戦争の悲惨さを身をもって体験し、それをルポルタージュした。

[編集] 南京事件について

  • 松村俊夫著『「南京虐殺」への大疑問』で「ニセ被害者」とされた、南京大虐殺の被害者李秀英の雪冤を果たし、彼女の名誉回復を進めた。展転社の記事も参照を。
  • 『中国への道』で日本側のジャーナリストとして初めて南京大虐殺を開陳した意味は大きい。
  • 南京大虐殺否定論との論戦に立ち向かい、被害者側の心情を受け止めるルポルタージュをしたことは、ジャーナリストとして高く評価される。度重なる否定派からの批判にも徹底して論駁する。
  • 南京大虐殺否定論者に公開書簡を何度も送付しているが、返信がなされたことは一度もない。

[編集] クメール・ルージュについて

  • カンボジア大虐殺』でクメール・ルージュの残酷さを世界に報告した。
    ただしこの件については本記事「批判」項目の「カンボジアについてのルポルタージュへの批判」も参照のこと。

[編集] 反米・反体制姿勢について

  • 反米保守など現れる以前から、一貫してアメリカ合衆国の覇権主義に批判的である。その点では、いちどもぶれることなく、現代の中東状況にも通じている。
  • 戦前にも従軍ジャーナリストはいるにはいたが、自由な立場での戦時下ジャーナリストの草分け的存在であり、後世への先達者の一人として語られよう。
  • 軍縮反核運動を積極的に支持し、軍備拡張を謳うタカ派を批判。彼らに妥協したり協力したりする文化人にも厳しい。
    ただしこの件については本記事「批判」項目の「『核戦争の危機を訴える文学者の声明』をめぐる大江健三郎批判への批判」も参照のこと。
  • 一貫して反体制側からの報道姿勢であり、民主主義が揺らぎかけている現在その存在感がますます高まっている。
  • アメリカ一国主義が鮮明になってきた今、彼の報道姿勢は、未来予見的であった。

[編集] その他

  • 登山についての実地体験の本を数々手がけている。
  • 北海道に特別の愛着を持ち、僻地と揶揄されかねないところまで、実際に足を運び、ルポルタージュしている。
  • 自らの経験もあり、未踏峰に挑んだ故長谷川恒男氏ら最高級登山家に好意的であるが、故植村直己には手厳しい評価を下している。
  • 少年・少女向けの作文指導をしている。
  • 堀江謙一が単独太平洋横断を成し遂げた時、日本国内では堀江の「密出国」をとがめる声が多かったが、「冒険家精神」を訴え、堀江を擁護した。石原慎太郎のペテン師呼ばわりに対しては激しく反論した。(※ 代表的著作「貧困なる精神」には石原批判の項目が出てくるが批判のきっかけが『ペテン論争』だった事が容易に想像がつく。)
  • 太平洋戦争に関しては、アジアに対しては日本の侵略戦争、英米に対しては帝国主義国家間の覇権争いの戦争だったととらえている。

[編集] 批判

[編集] 批判の総論

朝日新聞社北海道支社時代に出会ったアイヌ差別問題の影響で抱いた弱者への抑圧者に対する嫌悪感を、アメリカ合衆国や明治以降の日本政府に強く投影している面があり、そのためアメリカや現代の日本政府に対する対抗陣営とみなした中華人民共和国などにある程度の肩入れをし、心情的報道をした。

[編集] 中国についてのルポルタージュへの批判

著書『中国の旅』については、「中国当局から紹介された人々からの聞き取りをそのまま載せている、中国政府の主張のままだ」として、大虐殺否定論者などから攻撃されることが多い。

『中国の旅』にて、「2人の日本軍将校が百人斬り競争を行った」との当時の報道を紹介したことに対し、その将校の遺族3人から、事実無根の報道をされたとして、朝日新聞社等と共に謝罪や損害賠償を求める訴訟を起こされた。2005年8月24日東京地裁は本多勝一の著述が「一見して明白に虚偽であるとまで認めるに足りない」として原告団訴訟請求を棄却。原告は控訴したが、2006年5月24日東京高裁は一審判決を支持し、控訴を棄却した。原告は最高裁判所上告したが、2006年12月22日最高裁は上告を棄却した。

[編集] カンボジアについてのルポルタージュへの批判

1975年のプノンペン陥落直後に相次いで発表した『欧米人記者のアジアを見る眼』『カンボジア革命の一側面』という2本の記事、特に後者の「例によってアメリカが宣伝した 『共産主義者による大虐殺』などは全くウソだったが(それを受けて宣伝した日本の反動評論家や反動ジャーナリストの姿はもっとこっけいだったが)、しかし末端にはやはり誤りもあったようだ。」というくだりとその後の文面の改変が批判派と擁護派の間で論争の的となっている。

カンボジアでのクメール・ルージュによる自国民大虐殺について、本多勝一は当初懐疑的だった。いきおい、記事や著作の一部で、クメール・ルージュの上層部が事態に関与していない可能性を匂わせていたこともあった。さらには、クメール・ルージュに対して批判的な報道をしたニューヨーク・タイムズ紙のシドニー・シャンバーグ記者の記事(後にピューリッツァー賞受賞。キリング・フィールドも参照)を「欧米人記者の眼による救い難い偏見で充満していて、アジア人の生活も心も全く理解できない欧米人記者による不幸な記事といえよう」と辛辣に批判し、クメール・ルージュがプノンペンの市民を村落部へ強制移住させたことも「搾取のない農村経済のもと、みんなが正しい意味で働きながら、まず自給を確立することから自立しようと考えたとしても、まことに自然なこと」と好意的に論評している(『欧米人記者のアジアを見る眼』)。

これに加えて、そのような記事(『カンボジア革命の一側面』など)で"プノンペン陥落と同時に市民への大虐殺が行われた"などという当時の怪情報を否定しているため、"本多勝一はカンボジアの大虐殺を否定していた"と誤認されたという見解もある。しかし実際にはあくまでも懐疑的立場にとどまっており、否定するものではなかった、という見方もある。また、日本国内でカンボジア大虐殺への否定的意見がまだまだ強かった時点で、いち早く『カンボジアはどうなっているのか?』などの著作によりカンボジアの異常な状況を世に知らしめたと擁護する意見もある。

一方これに対して批判派はプノンペン陥落当時の各種メディアの報道や本多勝一の著作のその後の改訂・変更を調査し、以下のような主張を挙げて、本多勝一は紛れもなく虐殺否定論者であった、しかもその後その前歴を隠蔽するべく著作を改竄しているとしている。

  1. "プノンペン陥落と同時に市民への大虐殺が行われた"(本多勝一の原文では「アメリカが宣伝した『共産主義者による大虐殺』によって全市民がただちに虐殺されたとも思われぬ」)という文言はオリジナル記事発表後10年以上も経ちポル・ポト政権が倒壊して現地調査が可能になった1990年の増刷時に書き加えられたものであり、それまで本多勝一の著作に「プノンペン全市民虐殺説」が当時あったことを示す文言がない。
  2. 本多勝一が『欧米人記者のアジアを見る眼』で一層強硬なクメール・ルージュ擁護と虐殺否定論(「もちろん、合州国のキッシンジャーら、ノーベル『平和』賞を受けた詐欺師たちは、プノンペンで解放軍による大虐殺が行なわれたというデマを言いふらした」)を展開していた。
  3. 実際には、1975年(プノンペン陥落)当時のアメリカ政府によるカンボジア情報のブリーフィング内容や同じ時期のシドニー・シャンバーグら米国ジャーナリストによるカンボジア報道がおおむね正しかったことが後日確認されている。
  4. キッシンジャー国務長官を含む米政府の代表者が、プノンペンの「全市民がただちに虐殺された」と述べた事実はないこと。
  5. 本多の改竄を知った読者有志がその真意を問い質す公開質問状を送ったのに対し、2度にわたる督促にも関わらず編集業務の多忙を理由として1年以上も回答しなかった(その間にも登山には出かけていた)。
  6. その後ようやく本多が『潮』に寄稿した弁明文には、かつて自分が「全くウソだった」と書いていたが、それを後の版で書き換えたことが記されておらず、さらに読者からの質問文そのものも掲載されていないため、事情を知らない読者には意味の通じないものになっている。

[編集] ルポルタージュ発表後に改竄をするという批判

また、『カンボジア革命の一側面』や『中国の旅』などの自著の内容を、特に注記せずに「時代の変化に合わせる」として変更していることを「改竄」として批判する向きもある。

以下はそのひとつとされる『カンボジア革命の一側面』の「改竄」の一例である。

「例によってアメリカが宣伝した『共産主義者による大虐殺』などは全くウソだったが(それを受けて宣伝した日本の反動評論家や反動ジャーナリストの姿はもっとこっけいだったが)、しかし末端にはやはり誤りもあったようだ。」
→「アメリカが宣伝した『共産主義者による大虐殺』によって全市民がただちに虐殺されたとも思われぬが、すべては鎖国状態の中にあっては事実そのものが全くわからず、噂や一方的宣伝ばかりでは軽々に論じられない。」

このような「改竄」を本多勝一が読者に明記せず行なっていることについては、『週刊金曜日』の初代編集長を務めた和多田進や、本多勝一の著作を多数刊行していることで知られるすずさわ書店の経営者・大矢みかも「フェアとはいえない」と明確に批判している。

その他、括弧の付加・除去、名詞の前に「自称」という字句を挿入、「~とされている」、「~はずである」、「少なくともタテマエとしては」などの字句の挿入、「全くウソだった」、「深い感動を覚えながら」、「驚いた」などの削除、「大問題だ」、「強く批判してゆくべきだ」などの挿入も多数行なっており、これらは一貫して、かつて本多勝一が手放しで社会主義、特に毛沢東政権を礼賛していた筆致を和らげる方向での書き換えとなっている、と批判者は見ている。

以下は『中国の旅』の書き換えの一例である。

「この宣伝隊はプロレタリア文化大革命中に各地で組織され、修正主義追放に重要な役割を果たした。」
→「プロレタリア文化大革命中に各地で組織され、『修正主義追放』に重要な役割を果たした。」

[編集] 『核戦争の危機を訴える文学者の声明』をめぐる大江健三郎批判への批判

1982年小田実小中陽太郎中野孝次が中心となって『核戦争の危機を訴える文学者の声明』(後に岩波ブックレットから公刊 ISBN 4000049410)が発表された。この声明には大江健三郎も呼びかけ人に加わっているが、それに対し本多は、反核運動に批判的であるばかりか軍備拡張に熱心な意見に賛同している文芸春秋から文学賞(芥川賞直木賞など)を貰ったりその審査委員をするなどして協力しているのは「体制・反体制の双方に『いい顔』をみせる」非論理であるばかりか利敵行為ですらあると批判。大江に公開質問状を送った(大江は何も回答せず)。

但し、この声明の呼びかけ人の中には大江以外にも井伏鱒二井上靖井上ひさし(後に「週刊金曜日」の編集委員になっている)・生島治郎堀田善衛といった芥川・直木賞の受賞者が名を連ねているし、賛同者に至っては司馬遼太郎など明らかに文春に近い文化人・文学者が大勢名を連ねている。このことから本多の批判はむしろ内ゲバに近いのではないかという批判も少なくない。

なお、本多は大江がノーベル文学賞を受賞した際にも「週刊金曜日」誌上で集中的に批判的に取り上げているし、大江が九条の会の呼びかけ人の一人になった時にも、エッセイ『貧困なる精神』で名指しこそしないものの会自体に疑問を投げかけている。

[編集] 『ペンの陰謀』収録の松本道弘論文を改変したことへの批判

本多勝一が編集した書物では、本多以外の寄稿者の著述の文面にも無断で改変が加えられていることがあきらかになっている。本多の編著『ペンの陰謀』(潮出版社 1977年9月25日初版刊)には、『人と日本』1977年1月号に掲載された松本道弘の論文「勝負あった!佐伯/七平論争」が転載されているが、そのうち山本七平に肯定的な評価を与えた末尾四段落は転載にあたり著者松本の了承を得ないまま削除されている。この措置に対し松本は後年、「私が山本七平氏に対する評価は全文が掲載されねば読者に伝わらないものです。それが、なぜ、断りなく削除されたのかは、私自身が聞きたいです。」「私の審判が曲解されたくやしさは、今もしこりとなって残っています」と述懐している。

一方、同じく同書に収録されている佐伯真光の論文「山本七平式詭弁の方法」では、松本論文の削除部分にあたる箇所から一部を引用したうえ、「松本氏の判定の一部を次に掲げる。(本書には全文が再録されている。)」と但し書きがつけられている。そのため、書籍全体を通じて整合性を欠く結果となっている。

『ペンの陰謀』初刷発行後、松本論文に加えられた改変に気づいた佐伯真光は削除箇所を復元するよう申し入れた。しかしその後も全文復元の措置はとられていない。同書第五刷(1979年11月15日発行)では松本論文の初刷時削除箇所のうち佐伯が引用した部分のみを旧に復したうえ、佐伯論文からは「(本書には全文が再録されている。)」という但し書きが削除されている。

これに対して、「初刷時の改竄を読者の目から隠蔽する目的で増刷時にさらなる改竄をおこなった」という批判がある。

[編集] その他

クメール・ルージュを最も強い言辞で擁護し、彼等の残虐ぶりを現地から伝えたシドニー・シャンバーグ記者を返す刀で攻撃した上記の『欧米人記者のアジアを見る眼』は、その後の著作集からは記事丸ごと完全に削除されている。その一方で自らの小学生時代の作文まで「時代を映す鏡」という理由づけにより著作集に収録していることに対して、ご都合主義という批判がある。

[編集] NHK受信料支払拒否

詳細は「NHK受信料支払拒否の論理」(初版は未来社、のち朝日文庫)を参照の事。

本多はNHK受信料支払い拒否を古くから行なって来た一人である。本人は「運動としてやっているわけではない」と称しているが、著作を通じて広く知られており、NHK営業担当者と非公式に対談したこともある。受信料拒否のパイオニアの一人といってもよいだろう。提言に共感した人々が「NHK視聴者会議」(NHKによる「視聴者会議」ではない)というグループを作っている。なお本人は、自宅にテレビがあることを明言している。

[編集] 本の内容

最初に、郵政省(当時)の省内誌の原稿を頼まれるところから話は始まる。その原稿に「受信料は払わなくて良い」と書き、当然の如く不採用となる。そしてNHK受信料拒否運動のシンボルのようになり、「NHK職員の奥さん」からクレームの電話がかかってきたりする。そういったエピソードがユーモラスにつづられる。

[編集] 著書

ほか多数

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

[編集] 外部リンク

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