高等専門学校
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高等専門学校(こうとうせんもんがっこう)は、「深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成することを目的とする」(学校教育法第70条の二)日本の学校である。
後期中等教育段階を包含する5年(または5年6カ月)制の高等教育機関と位置付けられている。一般には高専(こうせん)と略される。
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[編集] 概要
高等専門学校は、主に中学校卒業程度を入学資格とし、高等学校と短期大学を併せた修業年限に相当する5年(または5年6カ月)間の課程のもと、主に工学・技術系の専門教育を施すことによって、実践的な中堅技術者・中級技術者を養成することを目的にした教育機関である。根拠法令は、学校教育法第5章の2「高等専門学校」、文部科学省「高等専門学校設置基準」等である。
学年制を基本に、一般科目と専門科目をくさび形に配置し、1年次より徐々に専門教育が増えていく教育課程に特徴があり、7年間を要する高校段階の教育から大学の工学部レベルの教育を重複なく、5年間で完成する一貫教育を行うと標榜する[1]。後期中等教育機関である高校の生徒と同年代の学生(1~3年次)が在学しているも、(前期課程・後期課程等と)内部で分かたれることなく、この学齢の学生も含めて、高等教育を受けているものと法的には見なされている。卒業生は準学士と称することができる。
高専には、主に高専卒業生の進学する専攻科(2年間の課程)が設けられ、修了生は大学評価・学位授与機構の審査に合格することにより学士の学位が授与される。5年制の課程を本科あるいは準学士課程と称し、専攻科を学士課程と称する場合がある。また、高専(本科)卒業後、大学に編入学することができる。専攻科を経て大学院に進学する道もある。
高専における標準的な総授業時間数は、高校と短大を併せた時間数を大幅に上回り、かつ大学工学部において履修する専門科目の総時間数を上回っている。その一方で、一般教育・教養教育にかかわる授業時間数は、高校と短大を併せた時間数を下回る[2]。高専の教育課程は、他の教育機関と比して、専門科目に厚く、一般科目に薄いのが特徴である。
高専全64校のうち、55校は独立行政法人国立高等専門学校機構の設置する国立学校である。公立・私立を含め、ひとつの都道府県には、1校ないし複数の高専が設置されている。未設置あるいは既設校の廃止によって高専が存在していないのは埼玉県、神奈川県、山梨県、滋賀県、佐賀県のみとなる。
学校教育法上の1条校として制度が誕生したのは1961年と、すでに50年近い歴史がある。「5年一貫の技術教育を行う実践的技術者養成機関として発展し、その教育成果は産業界等から高い評価」を得る一方で、「高等教育機関の中では小規模な学校種となっており、社会的認識の面で様々な問題が指摘されている」との評価もある[3]。高専創設後、学校教育法上の新たな教育制度として中等教育学校や専門学校が誕生しているが、それらがより一般に認知されているのとは対照的である。
高専の英語表記は、単科大学ないし短期大学に相当する「college」を使用し、College of technologyとするのが一般的である[4]。
[編集] 学校数・学生数
2006年5月1日現在、高等専門学校は64校(実質62校。学生募集を行っているのは61校)あり、設置者別の内訳は、国立55校、公立6校(実質4校。学生募集を行っているのは3校)、私立3校である。学科制をとり、すべての国立高専は1学科1学級(クラス)となっている。公立・私立高専には複数の学級で構成する学科もある。文科省の高等専門学校設置基準では、学級定員40人を標準とし、現状、国公立では40人、私立では45人の定員となっている。
公立高専のうち、都立工業高専と都立航空高専は06年3月に合併し、都立産業技術高専となったが、既存の学生はそれぞれ工業高専と航空高専に籍をおく。現存する二校舎は今後も都立産業技術高専として使用される。札幌市立高専は06年度より学生募集を停止し、同年に開学した札幌市立大学のデザイン学部に移管、既存の学生が卒業した後、閉校する。
国公立全高専の在学生は2006年5月1日現在、本科(5年制の課程)、専攻科(本科を経て入学する2年制の課程)あわせて5万9380人(男子4万9768人、女子9612人)であった。本科のみでは5万6329人(男子47127人、女子9202人)である。学生募集を停止した高専を除き、本科の入学定員は1万935人(国立9680人、公立760人、私立495人)である[5]。
また、05年3月の本科卒業生数は、1万61人(男子8138人、女子1923人)、うち進学者(専攻科を含む)は4113人(40.9%)、就職者は5413人(53.8%)であった[6]。
近年、低学年次において混合クラス編成を行う高専も増えてきた[要出典]。
[編集] 歴史
[編集] 創設までの経緯
日本は、太平洋戦争に敗戦した後、アメリカ教育使節団の勧告により、6334制に一本化する単線型の民主的な教育制度を導入するなどの学制改革を行った。これにより、旧制専門学校と、旧制高等学校を経て入学する旧制大学に分化し、階層化がなされていたのを典型にする旧時代の複線型教育制度が廃止された。
だが、1950年代に入ると、吉田茂首相の私的諮問機関・政令改正諮問委員会が高校段階の課程を含む5年制ないし6年制の「専修大学」(学校法人専修大学の設置する大学を指すものではない)制度の創設を答申。旧・中央教育審議会は、これに追随する答申をまとめた。日経連や経団連などの財界・産業界も、敗戦後の急激な工業化に即応するため、戦前型の旧制工業専門学校に見合う中級技術者養成を目的にした教育機関の新設を要求する「科学技術教育振興に関する意見」(日経連、1957年12月)、「専科大学制度創設に対する要望意見」(日経連、1960年12月)などの文書を次々と発し、制度の具現化を求めた。
政府は、これらの動きに対応して、専科大学法案を1958年の第28回国会に上程。だが、日本短期大学協会は、暫定的な制度とされるも大学の一類型と見なされていた短期大学制度が専科大学に「格下げ」になるのではないかと反発。野党も戦前の複線型の教育制度を復活させるものだとして反対したことから、第30回国会、第31回国会と三度法案を上程するも審議未了廃案となった。
そのため、政府は、専科大学法案に変えて高専法案を策定。専科大学法案では「深く専門の学芸を教授研究」を目的としていたものを、高専法案では「大学」の呼称を外したうえで「研究」目的を除外。さらに、工業分野に限定するなどの手直しを行い、大学・短期大学とは異なる教育制度であることを明確にしたうえで、第38回国会に上程。その結果、与党の賛成多数により、1961年、高専法は成立することとなった。
[編集] 創設後の沿革
高専法の成立を受け、全国各地の自治体は高等専門学校の誘致合戦を展開、設置初年度の1962年には、国立12校(1期校と呼称)が開校した。以後毎年10校前後が開校し、数年のうちにほぼ現在の学校数となった。全体で1500人ほどの募集だった国立高専1期校は、平均17倍の志願倍率となり、これに刺激を受けた他の都道府県もいっそう強力に高専誘致を推し進めた結果、短期間のうちにほぼ全国に設置されるに至ったものである。また、国立高専1期校の開校と同時に、公立は東京都立の2校、私立は金沢高専、熊野高専(現・近畿大学高専)など5校が開校した。
さらに、1967年には国立商船高等学校3校が、71年には国立電波高等学校3校が高専に昇格。74年には複合学科を特色にする徳山高専、八代高専が開校して、国立高専の新設は一応の区切りを迎えた。その後、2002年に沖縄高専が誕生し、04年から学生の受け入れを開始している。
なお、商船、電波以外のほとんどの国立高専は新設校であったが、長岡高専、宇部高専、久留米高専の各校は、高専制度の創設に先行して設けられた国立工業短期大学が前身である。同時期に創設された他の工業短大は、その後大学化した。高知高専は、暫定的に私立校として設置され、開校翌年、国立に移管された。また、都立高専、聖橋高専(現・埼玉工業大学)は工業高校から昇格し、大阪高専(現・摂南工業大学)は大阪工業大学に併設された各種学校が前身になるなど、公立・私立にも既存の学校を改組したところがある。
高専制度の拡充とともに、大企業を中心にして、求人が殺到。景気の動向にさほど左右されることなくほぼ10数倍の求人倍率を維持し、就職希望者の就職率もほぼ100%の実績を残した[7]。その一方で、旧・国立高等専門学校協会(国専協)を中心にして、高専卒業生の進学意欲に応えるため、大学院への進学ルートの新設、あるいは大学への編入学枠を拡大しようとする動きが浮上。高専卒を受け入れる技術科学大学院(仮称)構想を策定したものの、実現しなかった。その後、国専協による旧文部省などへの働きかけにより、主に3年編入を受け入れ、修士課程に連なる4年間の課程を前提にした技術科学大学の創設が決まり、76年に長岡技術科学大学、豊橋技術科学大学のふたつの大学が開学した。ただし、一部の国立大学では、第1期生が卒業するのと同時に3年編入の受け入れを開始し、当時すでに大学3年編入は一般的な進学ルートになっていた。
1991年には、法改正により、高専卒に対して準学士の称号を与えることになり、設置できる学科は工業、商船分野以外にも拡大。これにより、福島高専、富山商船高専、宇部高専の各校には文系学科が誕生。芸術・デザイン分野の学科を設置する札幌市立高専も新設された。さらに、専攻科の設置が認められ、修了生は学位授与機構の審査を経て学士号を取得できることになった。2006年度現在、専攻科は国立1校、閉校予定の都立2校(統合校の産業技術高専には設置済み)、私立1校を除き全校に設置され、ストレートに大学院に進学することも可能になった。
だが、制度が整備されるのとは裏腹に、高専の志願倍率は、1960年代の高倍率を経て、70年代以降、漸減を続け、21世紀に入ってからは2倍を割り込むようになった。06年には、宮城高専と仙台電波高専、富山高専と富山商船高専が合併方向で協議を開始するなど、国立高専の再編がはじまろうとしている。公立高専の一部は規模を縮小、または大学に転換し、私立高専は8校が開校したものの、現在は3校に減少するなど、高専制度自体の先細り傾向もうかがえる状況となってきた。
[編集] 入学
中学校を卒業した者または中等教育学校の前期課程を修了した者を対象として試験が行われる。学力試験は全国の国立高専では同時に同一の問題で行われる。通常、複数の学科やコースがあり、受験時に希望を出す。学力検査や面接の結果などを考慮した上で合否が決定される。また、入学志願者は、第3(2)希望までの学科・コースなどを提出して、提出した学科・コースなどの中から順に決定される学校もある。中学校の課程や中等教育学校の前期課程を修了した者だけでなく、高等学校や中等教育学校を卒業した者を対象に、4年次への編入学制度も設けられている。 総合選抜地区では、高等専門学校は総合選抜の対象とならないため、進学校化する場合がある。
制度が開始された1960年代には、いわゆる「団塊の世代」の高校受験に重なったことと、高度経済成長時期にみられた科学技術や工業化の発展による影響から、20倍や30倍を超えた時もあった。しかしバブル景気以後は深刻な理系離れや四年制大学志向が強まった影響で、全体的に若干偏差値は落ちてはいるが、依然、都道府県内では難関校の常連になっている。
- ただ、学力の高い生徒の多くは、一般的な進学校と言われる高校から偏差値が高く難関とされる4年制大学を目指すため、一般的な6-3-3-4制ではない6-3-5制の高専を受験する人は、技術志向の進路を目指す者が多く、個性的な人が多い。あるいは、特定の学部学科に限っては高校から入学するよりも比較的入りやすいといわれる、大学への編入学を目的としている場合もある。
[編集] 高専の教育
[編集] 教育
高等専門学校の修業年限(卒業までに教育を受ける期間)は5年(ただし、商船に関する学科については、5年6月)とされ(学校教育法第70条の4)、 その学齢は高等学校の3年間と短期大学の2年間に相当する。卒業すると準学士と称することができる。
高等専門学校では、普通教育とともに、学科ごとに専門教育が行われる。
高専の教育内容は傾斜配分されており、数学や学科関連の理系科目と専門科目は、大学工学部相当のレベルまで教授される。講義だけではなく、実験・実習やゼミ輪講・卒業研究など、実践的な教育が重視されている所に特徴があり、高専生は週次のレポート提出に追われることになる。多くの場合、これらの科目の単位を落とすと進級や卒業をすることが出来ない。 「高専卒は英語が弱い」という風評があるが、低学年では、おおむね高校普通科と同程度の英語の授業時間数は確保されている。高学年では英語に加え第2外国語を学ぶ。(ドイツ語である場合が多い。) 一般教養科目には皺寄せが来ており、国語や社会などの文系教科はあまり力を入れておらず、芸術や家庭科などの実技科目はほとんどない。
学校・学科により若干異なるが、5年間で170単位以上の履修と単位取得が必要とされており、その半分以上は専門科目の単位である。就職活動や卒業研究を行うため、5年次のカリキュラムには若干の余裕があり、その分、4年次以下の学年の週次の授業時間数は、一般の大学よりも多い。 特に、専門科目が本格化する3・4学年は、ハードであると言われている。
また、商船高専の商船学科では、各年次の航海実習に加え、5学年の秋頃より、日本丸や海洋丸等の練習船による約1年間の遠洋航海実習が必修になっている。
故に、専門分野にさほど興味が無かったり目的意識を持たずに何となく入学して来た人の中には、高専の教育に適合せず、学業について行けなくなる者もいる。 また、大学受験が無く校則も緩いため(学生としての自己管理が求められているという事ではあるが)、身を持ち崩す者も居る。
原級留置(留年のこと)や進路変更(退学のこと)により、ストレートに5年間で卒業する者は、およそ3/4と言われている。
[編集] 教員
高等専門学校は、学校長以下に学生を教授するための教授・助教授・助手の教員を置かなければならず、講師・技術職員を置く事が出来る(学校教育法第七十条の七)。 また、多くの高専で、他大学の教員や企業出身の技術者が非常勤講師として講義を担当している。高専の教員が、他大学で非常勤講師として講義を行っている場合もある。
各高専の教員募集要項によれば、特に専門学科の教員に関しては、博士の学位の取得や、それに相当する研究業績を求められることが多く、多くの教員が修士や博士の学位を取得している。
また、高専の教員には教員免許は必須とされないが、一般教養科(特に人文社会系)の教員については、高等学校からの転属者も多く、その様な教員は教員免許状を持ち、若年次の学生に対する指導ノウハウも持っている。
[編集] 学生寮
多くの高等専門学校は、学校内に学生寮を設置している。以前は全寮制を敷く学校もあったが、そういったところでも1990年代以降は、自宅からの通学を広範に認める学校も多い。また、都市部の高専の中には学生寮を持たない高専もある。
[編集] 卒業後の進路
就職率の高さが特長である。各高専によって若干異なるが基本的に高校生や理工系大学生と同じように学校が学生と話し合って受験企業を一社に絞って受けさせる「一人一社制」によって就職活動を行う場合が多いが、文科系大学生と同じように企業が高専卒採用枠を設けてインターネットなどで採用情報を公開し、全国の高専生を対象とした選考をすることもある。また、少数の企業ではあるが大学卒と同一の採用枠、試験枠となる場合や、企業によっては現役生として考えると同じ年齢である短大・専門学校卒業対象となることもある。 国家公務員の場合はⅡ種採用となる。
採用後についても高専卒用のモデル昇進ルートを設計する企業は少ない。待遇は概ね短大卒~大卒程度である。 古くから高専卒業生の採用実績がある上場クラスのメーカーでは、高専卒後4年の実務経験者と大学卒業後2年の実務経験者が同待遇とされる場合が多く、主任級や係長級への登用選考でも年齢要件は同一とされる事が多い。
また、高専を卒業すると技術科学大学を始めとする大学の3年次に編入学することができ、高等専門学校に設けられた専攻科への進学とあわせて進学の幅も増えている。
高等専門学校の専攻科(2年制)を修了または修了見込みの者が、大学評価・学位授与機構に課題論文を提出し審査に合格すると、学士の学位を取得することができ、大学院修士課程への入学資格を得ることが出来る。
なお、これは卒業ではないが、高専の第3学年までに規定の単位を取得または取得見込みの者には高校卒相当の資格が生じ、大学や専門学校を受験することが出来る。文系や芸術系へ進路変更する場合など、第3学年を修了した後に高等専門学校を退学して大学に入学する人もいる。但し、高専のカリキュラム上、大学受験は全く考慮されないため、第3学年次受験は一般の高校生よりも不利である。また、第3学年終了時の退学を前提条件に退学届けを提出しないと、高卒資格取得見込証明書や調査書が発行されないため、3年次受験に失敗しても高専に戻る事は出来ず、中途退学となる。
[編集] 就職
- 大学進学率が急増する中で、技術者供給源としての高専の価値は相対的に低下している。ただし、そのことで、就職試験を受ける機会が減っているということはない。
- 工業高専卒業者は、基礎学力から大学工学部レベルの高度な工業技術を学び、若年次から実践的な専門教育を受けているため、産業界からは即戦力として高い評価をうけている。また、大学工学部卒業者よりも2歳若い。このことは、採用する側・される側の双方にとって、大きな利点と言える。
- 戦後最悪の失業率を記録した平成不況のときでも2~3倍程度の求人倍率を維持し、団塊の世代の大量退職(2007年問題)が始まる2007年度採用の求人倍率で10倍を上回る倍率を記録する工業高専もみられた。
- 平成17年度(2005年度)の本科卒業者に占める就職者の割合は53.0%であり、有効求人倍率は、本科:16.3倍、専攻科:20.8倍となっている[8]。
- 就職先は、上場クラスの企業である場合も多いが、地方の高専では地場志向も見られる。
- また、有名大学卒業者の確保が難しい中小企業やベンチャー企業からも、高専卒業者に対する引き合いは強い。
- 配属先は、メーカーであれば、製造技術や生産技術、試作や評価検証、量産設計など、特に実践的な技術者を必要とする職場が多い。商社に就職して技術営業やFAEとして働く人も居り、進路の多様性は大学工学部等と変わるところは無い。
- なお最近、上場クラスのメーカーでは、もの造りに関する機能を分社化している場合も多く、その様な企業に就職する場合は、その分社(子会社)側の採用となる場合が多い様である。
[編集] 進学
- 大学へのアクセスは、能力に応じて公平に平等にと言われてきているが実際のところ、大学側の受け入れ能力は限定されている。その範囲で、高専卒は受け入れやすい。工学部の側から見れば専門教育の立場から高専卒は扱いが楽である。
- 卒業後、進学する者が増えている。これについては、高専の設置目的と照らし合わせて、揶揄される場合もある。しかし、メーカーや研究機関の開発職や研究職を目指す場合は、大学院修了が要件とされている場合も多く、高専生でその様な職に就きたいと考える者が、大学に編入学し、大学院を目指すのは必然であるとも言える。
- 高専で進学する場合は専攻科に進学するか、大学の3学年に編入学する場合がほとんどである。(専攻分野が異なる場合など、大学のカリキュラム編成によっては2年次編入学になる場合もある。)
- 平成17年度(2005年度)の本科卒業者に占める進学者の割合は42.9%であり、進学者のうち大学へ編入学した者は65.2%、専攻科に進んだ者は34.8%となっている[9]。
- ほぼすべての国公立大学で定員を設けて高専からの編入学を実施しており、高専卒業生の受け入れを主目的の一つとして創設された国立大学である豊橋技術科学大学や長岡技術科学大学をはじめ、その他の国公立大学工学部に編入学する場合が多い。また、少子化の中、理工系に限らず編入学定員を設ける私立大学も多くなっている。 最近では工学部に限らず理学部に編入学する場合や、文系学部に編入学する場合もある。(但し、医学部への編入学は例が無く、不可能だと思われる。)
- 工学系の学部で高専に同様の専攻が有る場合は、高専卒業見込者を対象に推薦編入学制度を持つ大学も多く(最大のケースで編入学定員の50%)、一説に、通常の高校→大学(一般受験)コースよりも高専→編入学コースの方が国公立大学に入りやすいと言われる所以にもなっている。
- 推薦編入学の場合は、成績が上位であって(概ね1クラス上位の10~20%)学校長推薦を受けられる事が必要条件で、調査書及び志望論文の選考と面接試験によって合否判定される。(不合格の場合は筆記による編入学試験も受験可能である。) 学校長推薦を受けるためには、特に3・4学年次の成績が重要であると言われている。
- また、筆記による編入学試験では、選考日程さえ重ならなければ、複数の国公立大学を受験することが出来る。
[編集] 専門分野
高等専門学校のうち、工業高等専門学校(工業高専)の数が最も多く、工業高等専門学校には、機械、電気・電子、制御情報、物質(化学系)、環境都市、建築、デザイン等の学科がある。工業高等専門学校(工業高専)は、工専と略されることもあるが、旧制の工専(工業専門学校)と混同される可能性があり、一般的には高専と略す。そのほか、商船高等専門学校(商船高専)、電波工業高等専門学校(電波高専)、航空工業高等専門学校(航空高専)などがある。
商船高等専門学校、電波工業高等専門学校は国立の商船高等学校(3年制)や電波高等学校(3年制)を5年制の高等専門学校に改組したもので、大半の工業高等専門学校とは出自が異なる。以前は工業と商船(海員養成)の分野しか認められていなかったが、平成3年、高等専門学校設置基準の改正で工業と商船に限った専門分野の縛りがなくなり、北海道に芸術系の高等専門学校が創設された(札幌市立高等専門学校、但し、2006年4月に札幌市立大学へ組織変更されるため、廃校になることが決まっている。)。しかし旧制七年制高等学校のような、教養教育系の高等専門学校は、いまだに設置された事例がない。
[編集] 国立高専の独立行政法人化
国立大学の独立行政法人化に伴い、国立の高等専門学校の設置者も同様に、すべての国立の高等専門学校の設置に関しては、国の直接設置から「独立行政法人国立高等専門学校機構」に変更された。これにより、国が直接設置する学校ではなくなったが、国立高等専門学校機構もまた国が設けたものであるため、学校教育法の第2条により国立高等専門学校機構が設置する学校も国立学校とされている。
独立行政法人化したことにより、国から、文部科学大臣が定めた中期目標による指示があり、それに対して中期目標を達成するための中期計画(5年)、年度計画(1年)が機構による作成・実行が義務付けられた。達成度によっては国からの予算(運営費交付金)が減らされることもあり得るため、55の各国立高等専門学校は、日々、中期計画に沿うように、学生サービスの向上、事務の効率化など努力している。中には、地域の企業と連携して技術研究や商品開発などを行い、利益を上げる事で穴埋めしようとする学校もある。
主な中期計画は次のとおりである。
- 中学生が国立高等専門学校の学習内容を体験できるような入学説明会、体験入学、オープンキャンパス等の充実を支援する。
- 入学者の学力水準の維持に努めるとともに、入学志願者の減少率を歳人口の減少率よりも低い5%程度に抑え、中期目標の最終年度においても全体として人以上の入学志願者を維持する。
- 公私立高等専門学校と協力して、スポーツなどの全国的な競技会やロボットコンテストなどの全国的なコンテストを実施する。
- 図書館の充実や寄宿舎の改修などの計画的な整備を図る。
- 教員の研究分野や共同研究・受託研究の成果などの情報を印刷物、データベース、ホームページなど多様な媒体を用いて企業や地域社会に分かりやすく伝えられるよう各学校の広報体制を充実する。
[編集] 学生生活
[編集] クラブ活動
[編集] 運動部
高校や大学に準じるクラブ活動を行なっていて、国公立の場合は全て全国高等専門学校体育協会に所属しており、各競技の専門部により年1回に全運動部の競技種目を対象に全国高等専門学校体育大会(高専大会)としてが実施されている。
但し競技種目や学校によっては任意で、高専大会にも参加する一方で、高校の連盟である高体連や高野連,大学の連盟である学連や社会人連盟などに参加している場合もある。なお高校生向けの大会には高校相当年齢の者しか参加できない。
[編集] ロボコン
NHKの「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」の優勝目指して日夜励んでいるといわれる。これに参加するために入学する者も多く、その性質から電気・電子・機械系の独壇場である。名目上として、全学的に取り組んでいる場合が多い。高専在学中にロボコン参加した者が、卒業後に進学等をして学位取得後に再度教員として高専へ戻り、ロボコンを指導している場合もあり、近年はより高度な戦いとなっている。
[編集] プロコン
毎年、高等専門学校連合会の主催で「全国高等専門学校プログラミングコンテスト」が毎年行われる。ロボコンほどメジャーではないが、学校によっては全学的に取り組んでいるところもある。主に電気系の学生が多いが、近年は他学科でも情報化が進んでいることもあり他学科からの参加も少なからずある。
詳細は全国高等専門学校プログラミングコンテストを参照のこと。
[編集] 高専特有の諸問題
[編集] 学生生活
- ほとんどの高専は国立や公立であるため、大学に比べると学費が安く済んでしまうことや、就職・進学率の高さから「親に勧められたから」とか「就職が良いから」という安易な志望動機で特別に専門科目に興味のない学生が入学してくるケースが徐々に増えていると言われている。また、高校や大学へ進学したかつての同級生と比較して女子学生が少なく、周辺の学校との交流も少ないため、青春時代の恋愛の機会が少ない状態の高専が多いことや、授業時間数が多いことに不満を感じている学生も見られる。(※注:異性を含め他校と交流する機会が少ないのは、一般の男子高や技術系大学も同様であり、高専に特有とはいえない。地方の高専の、市街地を離れた立地や寮生活に起因する部分も多い。)
- 高等教育機関であるがゆえに教員(教授、助教授など)は大学教員と同じく教員免許状を必要としないため、年少者への教育方法など教職に関する知識自体を持っていない場合が多く、また大学の感覚で授業を行う教員もいる。そのため学校になじめず入学後すぐに不登校となり、退学に至る者もいる。
- 専門科目に特化した教育を少人数で行うため1学科1クラスで卒業までクラス替えがない場合が少なくない。一度、人間関係がこじれると(いわゆるいじめ)、当事者を引き離す、または自然に引き離されることがなく、また寮生活をしている学生も多いため、関係を修復する(いじめの解決)のが難しい場合がある。しかし、1学科1クラスでクラス替えがない学校は地方の小中学校では当たり前であり、高専ならではの問題ではないという考えもある。高専によっては共通科目の比率が多い1、2年の間は学力に応じた学科混成のクラス編成を採用しているところもあるが、これらを根本的に解決する手段とはなっていない。
[編集] 学業問題
- 専門科目に傾斜した教育が高専のメリットであるが逆に専門科目に重点を置いているため、一般科目である文系科目、特に英語を苦手にする学生も多い。しかしながら、これら科目が苦手であっても、大半の高校生が経験する大学受験での英語力では難しい難関大学へ編入学できてしまうため、高専に精通した中学校の先生は理系大学進学を目指しているが英語が苦手な生徒に対して高専を勧める場合があるという。 近年のグローバリゼーション化した社会と逆行した教育になってしまい、同年代の大学生に比べて低い英語力がネックとなって大学編入学後や就職後に苦労する場合がある。そのため、各高専とも、TOEICやTOEFLの受験を奨励すると共に、JABEEなどの外部評価も取り入れ、カリキュラムの改善に取り組んでいる。 また、資格の取得も奨励されており、危険物取扱者や情報処理技術者,無線従事者などの試験を受けるように指導している場合が多く、取得を促すために資格によっては単位認定することも認めている高専もある。
[編集] 研究活動
- 高専においても理工系大学と同様に学生が研究室(ゼミ)に所属し研究活動が行われている。学会発表などを行うこともある。しかしながら、指導する立場の教員には秘書がつかないため雑務が多く授業のコマ数も多いため、大学に比べ十分な研究活動が行えないことを不満にあげる人もいる。
[編集] 高専の存在意義
- 設立以来、実践的な技術者を多く送り出してきた高等専門学校も、依然として認知度の低さや、大学工学部の関係学科へ編入学する通過点の様になる場合も有り、時代に合わない部分も見受けられるようになってきた。特に、都心部で「専門学校」と混同される場合が見られる(高専が無くなって久しい神奈川県では、特にその傾向が強い)。 認知度に関して現実的に言えることは山口女子高専生殺害事件の報道ニュースのときにアナウンサーが「高等専門学校」という正式名称を理解していない部分があちこちに見られた(よくないことではあるが、この事件がきっかけで高等専門学校という正式名称が広まったという考えもできる)。高専関係者からは高等専門学校の改称についての意見も多く、社会的認識改善のための今後の重要な課題となっている。
- しかし、依然として専門的な技術者を育成するためには非常に恵まれた環境である学校であることは変わりなく、高等専門学校への進学を目指している中学生は「技術のスペシャリストになるぞ」という強い志を持って受験すれば、充実した学生生活が送れるはずである。
[編集] 外部リンク
- 高等専門学校のホームページ (国立高等専門学校協会 広報専門部会)
- 独立行政法人国立高等専門学校機構
[編集] 高等専門学校を題材にした映画、コミック、アニメ、ゲーム等
- ロボコン (映画)
- ふたつのスピカ (コミックおよびアニメ。話中に出てくる「国立東京宇宙学校」が高等専門学校である。)
- 野蛮の園 (コミック。西川魯介・著 白泉社ジェッツコミックス)
- BREAK-AGE (コミック。馬頭ちーめい+STUDIOねむ・著 アスキーファミ通文庫)
- ロボットボーイズ(コミック。原作七月鏡一+作画上川敦志 小学館少年サンデー。作中では高校が舞台。)
- すくらっぷ・ブック(コミック。小山田いく著 秋田書店少年チャンピオンコミックス。中学生の主要登場人物が高専を目指す。作者本人は高専出身である。)
- 星のローカス(コミック。小山田いく著 秋田書店少年チャンピオンコミックス。上記作者による、上記作品との並行連載作品。)
- 「THE ロボットつくろうぜっ!- 激闘!ロボットバトル- 」(ゲーム。ディースリー・パブリッシャー)
[編集] 関連項目
- 高等教育
- 電波高等専門学校(電波高専)
- 商船高等専門学校(商船高専)
- 日本の高等専門学校一覧
- アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト - ロボット競技
- 全国高等専門学校プログラミングコンテスト
- 日本の寮がある学校の一覧
[編集] 脚注
- ^ 出典:国立高等専門学校機構のサイト等
- ^ 出典:国立教育研究所編「日本近代教育百年史」第10巻、産業教育2、1973年、p434ほか
- ^ 出典:旧文部省・大学審議会総会への審議経過報告「短期大学及び高等専門学校の在り方について」、2000年11月22日
- ^ 注:下記の例外がある。College of Maritime Technology(商船高専全校)、Technical College(金沢高専、近畿大学高専)、College of Industrial Technology(都立産業技術高専)、College of Aeronautical Engineering(都立航空高専)、School of The Arts(札幌市立高専)、Polytechnic(サレジオ高専)
- ^ 出典:文部科学省・2006年度「学校基本調査」
- ^ 出典:文部科学省・2006年度「文部科学統計要覧」
- ^ 注:国立高等専門学校機構の資料等による
- ^ 出典:国立高等専門学校機構・今後の高専の在り方検討小委員会「今後の国立高専の整備について(中間まとめ)」H18.6.29
- ^ 出典:国立高等専門学校機構・今後の高専の在り方検討小委員会「今後の国立高専の整備について(中間まとめ)」H18.6.29
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前段階の学校 | 現学校 | 次段階の学校 |
高等専門学校 5年制 15歳以上から5年間 |
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同段階の学校 | ||
注1: 高等専門学校の専攻科は含まない。 |