1991年の日本シリーズ
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1991年のプロ野球日本シリーズは、2年連続パ・リーグを制した森祇晶監督率いる西武ライオンズと5年ぶりにセ・リーグを制した山本浩二監督率いる広島東洋カープの対決となり、10月に広島市民球場と西武ライオンズ球場で行われた。
目次 |
[編集] 戦評
試合前は西武有利と予想されていたシリーズだったが、シーズン中のチーム打率が2割5分4厘でホームランの数も88本の(チームの最多本塁打はシリーズに出場できなかった江藤智の11本)「雑草軍団」のひたむきな広島が、「エリート集団」の西武を苦しめ、後一歩まで追い詰めた。持てる力をフル活用して得意の接戦に、そして「広島ペース」に持ち込む。
川口和久や佐々岡真司を好リードする達川光男が、西武・森監督にとっては脅威の存在だった。 全員野球で「王者・西武」を追い詰めていくかに見えたが、経験豊富な西武はワザや力が渾然一体となって強さを見せたシリーズだった。
[編集] 第1戦
第1戦の先発は、広島・佐々岡真司と西武・工藤公康で開幕した。先制したのは西武。1回裏、辻発彦のレフトへの2ベースヒットを皮切りに、清原和博の2ランホームランで2点先制した。
さらにオレステス・デストラーデのソロホームランが飛び出し3点目を挙げる。広島は2回表にロデリック・アレンのソロホームランで1点を奪って2点差に詰めた。しかし3回裏、平野謙の四球を皮切りに秋山幸二の2ランホームランで5点目を挙げる。
佐々岡は降板し、2番手石貫宏臣が後続を絶つ。さらに西武は4回裏には打者一巡で6点を奪い、主導権を握った。一方の広島は、先発工藤に5安打と抑えられてしまい、反撃の糸口が着かない。9回表に、野村謙二郎のヒット、アレンのエラー、小早川毅彦のヒットで2点を返すのが精一杯だった。
西武が11-3で初戦を飾った。
[編集] 第2戦
第2戦の先発は、広島・川口和久と西武・郭泰源。先制したのは広島。1回表野村のヒットを皮切りに、小早川のセンターへの2ベースヒットで1点を奪う。
しかし4回裏、秋山のレフトへの2ベースヒットで出塁後、デストラーデの2ランホームランで2点を挙げ逆転。 その直後の5回表正田耕三、野村の四球を機に前田智徳のライトへの3塁打、西田真二のヒットで3点を挙げる。
3点を挙げた後、西武は郭を降板させた。一方、広島の先発・川口はフォアボールは出すものの、8回まで2安打に抑えていた。
9回裏、広島の2番手は大野豊が抑えとして登板。平野の代打・鈴木康友、秋山に連打を浴びるが、後続を断ち4-2と広島が1勝を挙げた。これで広島は1勝1敗のタイに追いついた。大野は1セーブ目をマーク。
[編集] 第3戦
第3戦の先発は広島・北別府学と西武・渡辺久信。この試合は息詰る投手戦だった。1回表、辻が2塁打を放つが無得点。2回裏小早川がヒットを放つものの無得点に終る。7回表裏まで、広島・北別府と西武・渡辺の行き詰る好投が続いた。
均衡が破れたのが8回表。秋山のソロホームランで1点を先制。一方広島は先発・北別府を降板させる。その後2番手・石貫、3番手・金石昭人が登板し、西武打線を無得点に抑えた。
一方西武・渡辺は広島打線を5安打9奪三振と完封勝利し、1-0と熱戦を制す。
[編集] 第4戦
第4戦の先発は広島・佐々岡と西武・渡辺智男。先制したのは広島。1回裏正田の2塁打、アレンのヒットで1点を奪う。2回裏、前田の四球と達川光男のヒット、野村のヒットで2点目を挙げ、西武・渡辺を降板させる。西武は渡辺の2番手・小田真也が登板し無得点に抑える。
さらに広島は4回裏、西武の3番手潮崎哲也から、達川の2塁打を切欠に、野村、正田、西田の4連打が飛び出し3点を奪った。一方西武は、先発・佐々岡の前に抑えられてしまい、流れは広島へ傾いた。
7回裏広島は、代打長内孝が西武の4番手・鈴木哲からソロホームランを放ち、高信二、野村のヒットで2点を奪って7点目。一方西武は、7回まで佐々岡に無安打無得点に抑えられてしまい7奪三振と沈黙だったが、8回表、石毛と森博幸の四球、鈴木健のヒット、安部理の2塁打で3点を奪い返すが時既に遅し。
9回表、広島はストッパー・大野が登板。秋山を三振、清原にヒットを打たれるが、デストラーデ、吉竹春樹を三振に仕留める。
これで広島が7-3と2勝目を挙げ2勝2敗のタイに追いついた。この試合の最大の勝因は、佐々岡が7回まで無安打無得点に抑えた事だった。
[編集] 第5戦
第5戦の先発は広島・川口と西武・工藤。1回表西武は、辻がヒットを放ち、偵察メンバー仲田秀司の代打、笘篠誠治が送りバントと秋山の四球で先制のチャンスだったが清原の併殺打で無得点。その裏広島も正田のヒット、西田の四球、アレンのヒットで先制のチャンスだったが小早川の併殺打で無得点。
先制したのは3回裏。正田のヒットを皮切りに、アレンの2ランホームランで2点を挙げる。4回裏、西山秀二のヒット、前田の送りバント、達川のヒット、川口の送りバント、野村のヒットで1点追加。3点目を挙げる。
一方西武は、打者を塁に出しながらも広島の先発・川口の前に無得点に終る。7回終了後、西武は工藤から2番手鹿取義隆が登板し、無得点に終る。一方広島・川口は中3日での強行登板だったが、8回まで無得点に抑え、5安打7奪三振と好投。
9回、2連投となる大野が登板。清原をショートゴロ、デストラーデを三振に仕留めたが、石毛が2塁打を放つ。しかし大野は次打者の平野を三振に仕留めてゲームセット。3-0と広島が7年ぶりの日本一まで王手をかけた。そして、抑えの大野には2セーブ目をマーク。
[編集] 第6戦
第6戦の先発は広島・川端順と西武・郭。1回裏、西武は辻のヒットを皮切りに、清原のヒットで1点をあげる。一方広島は、西武の先発・郭に3回まで抑えられてしまうが4回表、野村、アレンのヒットで1-1の同点に追いつく。
その裏広島は川端を降ろし石貫が2番手に登板、西武打線を抑え5回裏から金石が3番手として登板したが、これが裏目に出る。一方の西武は、走者を得点圏に進めるが後一本が出てこなかった。
6回裏金石が崩れる。石毛、伊東のヒットと森の死球で無死満塁とし、広島ベンチは今シリーズ西武打線を抑えていた川口へスイッチするが、西武ベンチも食い下がり代打・鈴木康を送る。鈴木康は川口から2点タイムリーヒットを放ち西武が3-1と均衡を破る。川口は鈴木康一人のワンポイントで降板。後に、5番手・紀藤真琴を中継ぎとして投入するが二死後、今シリーズ大活躍の秋山が3ランホームランを放ち、この回一挙5点を奪う。
6回表から石井丈裕が登板し、広島打線を抑え込み、終盤まで投げ続ける。9回表石井は打者3人で仕留め、6-1と勝ち2年連続日本一まで逆王手をかけた。一方、広島は先発投手の誤算が大きく響いた。
[編集] 第7戦
雨天で1日順延となった第7戦。第7戦の先発は広島・佐々岡と西武・渡辺久。先制したのは広島。2回表、小早川のヒットから山崎隆造、高の四球と達川の死球で押し出しで1点目を挙げた。しかし、西武は走者を塁に出すが先発・佐々岡に抑えられる。4回が終ってから西武は、渡辺から工藤へバトンタッチ。
5回裏西武は石毛、鈴木健のヒット、伊東の送りバントから平野のヒットで同点。さらに辻の四球と、田辺徳雄のヒットで3点目をあげて逆転し、この回で佐々岡が降板。打線も渡辺と工藤のリリーフに完全に抑えられる。
7回裏西武は、伊東の2ベースヒットと平野の3塁打、辻のヒット、秋山が川端から2ランホームランでこの回4点を奪い7-1とリード。途中から登板した工藤は5回を無得点に押さえた。一方広島は渡辺、工藤と4安打に抑えられた所が痛かった。
西武が4勝3敗で勝利し、2年連続10度目の日本一(西鉄時代を含む。西武では7度目)
[編集] 試合結果
[編集] 第1戦
10月19日 西武 入場者31770人
広島 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
西武 | 3 | 0 | 2 | 6 | 0 | 0 | 0 | 0 | X | 11 |
(広)●佐々岡(1敗)、石貫、紀藤、川端、金石-達川、植田
(西)○工藤(1勝)-伊東
本塁打
(広)アレン1号ソロ(2回工藤)
(西)清原1号2ラン(1回佐々岡)、デストラーデ1号ソロ(1回佐々岡)、秋山1号2ラン(3回佐々岡)、石毛1号満塁(4回紀藤)
[審判]パ前川(球)セ小林毅 パ牧野 セ井上(塁)パ藤本 セ岡田功(外)
[編集] 第2戦
10月20日 西武 入場者31903人
広島 | 1 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
西武 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
(広)○川口(1勝)、S大野(1S)-達川
(西)●郭(1敗)、小田、石井、潮崎-伊東
本塁打
(西)デストラーデ2号2ラン(4回川口)
[審判]セ岡田功(球)パ藤本 セ小林毅 パ牧野(塁)セ井野 パ橘(外)
[編集] 第3戦
10月22日 広島 入場者27713人
西武 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
広島 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
(西)○渡辺久(1勝)-伊東
(広)●北別府(1敗)、石貫、金石-達川
本塁打
(西)秋山2号ソロ(8回北別府)
[審判]パ橘(球)セ井野 パ藤本 セ小林毅(塁)パ前川 セ井上(外)
[編集] 第4戦
10月23日 広島 入場者29591人
西武 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 3 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
広島 | 1 | 1 | 0 | 3 | 0 | 0 | 2 | 0 | X | 7 |
(西)●渡辺智(1敗)、小田、潮崎、鈴木哲、鹿取-伊東、大宮
(広)○佐々岡(1勝1敗)、S大野(2S)-達川
本塁打
(広)長内1号ソロ(7回鈴木哲)
[審判]セ井上(球)パ前川 セ井野 パ藤本(塁)セ岡田功 パ牧野(外)
[編集] 第5戦
10月24日 広島 入場者28669人
西武 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
広島 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | X | 3 |
(西)●工藤(1勝1敗)、鹿取-伊東
(広)○川口(2勝)、S大野(3S)-達川
本塁打
(広)アレン2号2ラン(3回工藤)
[審判]パ牧野(球)セ岡田功 パ前川 セ井野(塁)パ橘 セ小林毅(外)
[編集] 第6戦
10月26日 西武 入場者31900人
広島 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
西武 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 0 | 0 | X | 6 |
(広)川端、石貫、●金石(1敗)、川口、紀藤-達川、植田
(西)郭、○石井(1勝)-伊東
本塁打
(西)秋山3号3ラン(6回紀藤)
[審判]セ小林毅(球)パ橘 セ岡田功 パ前川(塁)セ井上 パ藤本(外)
[編集] 第7戦
10月28日 西武 入場者32011人
広島 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
西武 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 4 | 0 | X | 7 |
(広)●佐々岡(1勝2敗)、川口、北別府、川端、足立-達川
(西)渡辺久、○工藤(2勝1敗)-伊東
本塁打
(西)秋山4号2ラン(7回川端)
[審判]パ藤本(球)セ井上 パ橘 セ岡田功(塁)パ牧野 セ井野(外)
- 最終打者は野村謙二郎で空振り三振。
[編集] 表彰選手
[編集] エピソード
- この年は日刊スポーツの企画で、「ニュースステーション」キャスター・久米宏と「NEWS23」キャスター・筑紫哲也が観戦。普段は視聴率を争うライバルであるが、この時ばかりは呉越同舟で広島を応援していた。
- 第2戦で球審をつとめた岡田功審判は、この年7年ぶりの日本シリーズ出場だが、1963年の初出場を皮切りに、日本シリーズ通算21回出場という大記録を打ち立てた。60歳での日本シリーズ出場は当時最年長記録である(1995年に久保田治審判が61歳で出場し更新)。
[編集] テレビ・ラジオ中継
[編集] テレビ中継
- 第1戦:10月19日
- 第2戦:10月20日
- 第3戦:10月22日
- 第4戦:10月23日
- 第5戦:10月24日
- 第6戦:10月26日
- 第7戦:10月28日
[編集] ラジオ中継
- 第1戦:10月19日
- 第2戦:10月20日
- 第3戦:10月22日
- 第4戦:10月23日
- 第5戦:10月24日
- 第6戦:10月26日
- 第7戦:10月28日
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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