阿波踊り
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阿波踊り(あわおどり)は、約400年の歴史があり、徳島県(旧・阿波国)内各地の市町村で開催される盆踊りである。なかでも徳島市の阿波踊りが県内最大規模で最も有名であり、四国三大祭り、日本三大盆踊りの一つに数えられる。
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[編集] 概要
三味線、太鼓、鉦(かね)、横笛などの2拍子の伴奏にのって踊り手の集団(「連」)が踊り歩く。女性は優雅に、男性は腰を落として豪快に踊る。
「偉い奴ちゃ、偉い奴ちゃ、ヨイヨイヨイヨイ、踊る阿呆に見る阿呆、同じアホなら踊らな損々・・・」と唄われるよしこので知られる。しかし、よしこのは大手の有名連以外はあまり使われず、主に「ヤットサーヤットサー」という掛け声のほうが多用されている。全国的には「偉い奴ちゃ」が有名なため、「ヤットサー」の知名度はあまり高くない。
近年は徳島以外でも、各地(特に関東地方)で夏のイベントとして阿波踊りが催されており、徳島の阿波踊り連がその指導に当たっている。有名なものとして、高円寺(東京都杉並区)の商店街の青年部が、町おこしとして夏のイベント用に阿波踊りの様なものを導入し、やがて都内在住の徳島県出身者から指導を受ける形で発展した「東京高円寺阿波踊り」がある。
[編集] 起源と名称
精霊踊りや念仏踊りが原形であるといわれるが、起源は明らかになっていない。徳島藩が成立して以後、盛んに踊られるようになったとされる(徳島市観光協会)。徳島城が竣工した際、当時の阿波守蜂須賀家政が城下に「城の完成祝いとして、好きに踊れ」という触れを出したことが発祥という説もある。
阿波踊りという名称は、徳島県内の各地で行われてきた盂蘭盆の踊りの通称であり、昭和初期からそう呼ばれるようになった。尚、徳島市や杉並区の阿波踊りでは、ポスターや看板等において専ら「阿波おどり」と表記される。
[編集] 連
阿波踊りでは一つの踊りのグループの事を「連(れん)」と言う。徳島県には有名連と呼ばれる連が多数あり、主に阿波踊り振興協会と徳島県阿波踊り協会のいずれかの協会に所属している。大抵の徳島県民には個人個人に贔屓の連があり、「あっこの連がええ」とか「ほらやっぱりここの連やろ」といった具合に、話題になることもある。
こうした有名連以外にも、踊りが好きな者同士が集まって結成した連、企業が企業名を売り込む目的で結成した企業連、大学のサークルなどで結成した大学連、気の合う仲間で結成した連、商店街で結成した連等、徳島県内には大小さまざまの数多くの連が存在する。また、徳島県外には、徳島県出身者が主体となって結成した連もあり、関西を本拠地とする阿波踊りの連の中には、徳島県出身者が始めたものが多い。基本的に「連長」「副連長」からなる幹部から結成されているが、踊りの良し悪しはあまり関係していないらしい。また、演舞場まわりは基本的に連長が決めるものであるが、殆どの場合当日までどこの演舞場で踊るのかといった詳細ルートに関しては有料の演舞場や選抜踊り以外は全く決まっていないことも多いために、当日になって移動中に踊り披露となったり、時間の空いた演舞場へ急遽飛び入りということも少なくない。
徳島の阿波踊りには、以上にみてきたような連が1千組(うち企業連が350前後)にも上るほど参加し、さらに街頭での参加者まで含めれば、総参加者数は10万人にも上るといわれている。
2006年に徳島市の阿波踊りに参加した連の数は960であった。景気の回復により、そごうや三菱東京UFJ銀行等、復活する企業連が増えた。
[編集] 徳島の有名連
- 阿波踊り振興協会
- うずき連、浮助連、阿呆連、ゑびす連、水玉連、阿波連、ささ連、天保連、阿波鳴連、扇連、天水連、若獅子連、のんき連、新ばし連、無双連、葉月連
- 徳島県阿波踊り協会
- 葵連、うきよ連、菊水連、独楽連、娯茶平、新のんき連、殿様連、蜂須賀連、平和連、ほんま連、酔狂連、まんじ連、みやび連、悠久連、藝茶楽、都連、阿波扇
[編集] 高円寺阿波おどり連協会所属連
葵新連、飛鳥連、いろは連、江戸浮連、江戸歌舞伎連、江戸っ子連、えふあいえい連、菊水会菊水連、苔作連、しのぶ連、写楽連、志留波阿連、新若連、吹鼓連、粋輦、騒連中、天狗連、天水連、のびゆく連、花菱連、花道連、ひょっとこ連、舞蝶連、美踊連、若駒連、ひさご連
[編集] 踊りの種類と衣装
[編集] 男踊り
- 半天(法被)を着て踊る半天踊りと、男物の浴衣をしりからげに着て踊る浴衣踊りがある。
- 踊りの所作の振りは大きく、時には勇猛に、時には滑稽に躍る。うちわや手ぬぐいなどを使っていることも多い。
- なお、この男踊りを女性の踊り手や少女が踊る場合もある。
[編集] 女踊り
- 女物の浴衣に網笠を深く被り、草履ではなく下駄を履くのが特徴。
- 艶っぽく、上品に踊るのが良いとされる。
- 一般の浴衣と異なり、じゅばん、裾除け、手甲を付け、黒繻子の半幅帯をお太鼓のように結ぶ場合が多い。
- なお、男性が女踊りを踊ることは暗黙の了解でタブーとされている。
[編集] その他
- 少年は男踊りを踊る。浴衣踊りより半天踊りの方が圧倒的に多い。
- 少女は男踊り・女踊りのいずれをも踊っているが、どちらかと言えば、男踊り(半天踊り)の方が多い。少女の女踊りは大人の女踊りの衣装を子供サイズに縮小しただけなので、妖艶さに可憐さを兼ね備えた印象をあたえる。
- 女性や少女は厚化粧する場合が多い。
- またこのほかにも、踊りの派生型として、凧をモチーフにした「やっこ踊り」や、阿波踊りそのもののイメージを破壊する天才バカボンのレレレのおじさんにちなんで作られた「レレレ踊り」などもある。
[編集] 囃子
[編集] 鳴り物
阿波踊りに用いられる楽器は「鳴り物」と総称される。鳴り物は、踊り子の引き立て役として阿波踊りに欠かせない存在である。演舞場を通り抜ける際は、踊り子の後方にポジションをとる。基本的には以下の6つの楽器とその演奏者で構成される。近年の大学連などの少数連では鐘と太鼓が中心となっており、難易度の高い笛や三味線のようなメロディ部分が存在しないことも多い。
- 主旋律を奏でる。通常、六本調子(Bb)か七本調子(B)を使用する。鳴り物の中では最も安価で手に入る。難易度が高く、和楽器特有の音階であるために演奏者が減りつつある。
- 鳴り物の中では最前列で演奏する。近年では最も演奏が少なく、有名連以外でで見かけることがなくなってきている。
- 裏打ちのリズムが基本である。
- 鳴り物の中では、最も難易度が高い。
[編集] リズム
阿波踊りは2拍子で、テンポが早い。これらが軽快さを演出する重要な要素となっている。もともと農耕民族の多かった日本において、阿波踊りのような騎馬民族型のリズムの舞踊は極めて珍しい。
[編集] 徳島市の阿波踊り
徳島県下に数ある阿波踊りの中でも、最大規模で開催されるのが徳島市の阿波踊りである。毎年8月12日 - 15日迄の4日間開催される。観光客の動員数でこそ高円寺の阿波踊りにはかなわないものの、この4日間だけで100万人以上の観光客が徳島を訪れる(2006年は126万人)。徳島市の人口が約26万人強である事を考えれば、この数字は決して少ないものではないだろう。そして多くの徳島県民もこの4日間が来るのを待ちわびており、1年間が阿波踊りを中心に回っているという人も少なくない。それ程県民にとっては思い入れの強い祭りなのである。なお、近年では市内藍場浜演舞場にあたる藍場浜公園でのイベントに来訪者が増えたことなどで春の「はなはるフェスタ」や秋の「狸まつり」の時にも簡易桟敷席を設けて阿波踊りを踊っていることがある。
ただし、連や演舞場によるいわゆる「見せる踊り」が確立されたのはここ20年ほどのことで、昭和30年代ぐらいから徳島市内に住む方々の話によると、昔はきちんとした演舞場などは特に設けられずに、同様の時期に現在の桟敷にあたる踊り広場のようなものを歩行者天国として開放した場所で、浴衣も統一されておらず、好きなようにばらばらの連がおのおのの踊りを披露していた、とのことである。また、踊り広場も道路や国道が舗装された関係上、当時よりも狭くなっていると言う。現在でも、路上で自然発生的に見られる「輪踊り」という、客と踊り子が円状になって勝手に踊っているさまが、往時のなごりを伝えている。
今日の「見せる踊り」としての阿波踊りは、つい最近になって、観光資源として来訪者を増やしたことで確立したといえる。
[編集] 演舞場
阿波踊り開催期間中、徳島市内には各所に演舞場が設置される。演舞場の種類には大きく分けて「有料演舞場」と「無料演舞場」があり、当然有料演舞場の方がスケールは大きい。また、踊り込んで来る連も無料演舞場では全体的に大学連や企業連などが多いのに対し、有料演舞場では全体的に有名連が踊り込んで来る場合が多い。
ちなみに有料演舞場のチケットは2004年よりコンビニやチケットぴあ、JRの窓口などで購入が出来る様になり、以前のシステムに比べて格段に購入しやすくなった。
- 有料演舞場
- 藍場浜演舞場(座席数最大)
- 市役所前演舞場
- 南内町演舞場
- 紺屋町演舞場
2006年の料金は下表のとおり。
桟敷席 | 前売券 | 当日券 |
---|---|---|
S席(指定) | 1,800円 | 2,000円 |
A席・B席(指定) | 1,500円 | 1,700円 |
C席・D席(自由) | 1,000円 | 1,200円 |
- 無料演舞場
- 新町演舞場
- 元町演舞場
- 両国本町演舞場
[編集] 選抜阿波踊り
徳島市内の教育会館や文化センター、阿波踊り会館といった中規模ホールで、主に観光客をターゲットとしたステージでの阿波踊りが行なわれている。有名連が10組前後参加し、路上での踊りとは違うステージでの阿波踊りを披露する。
一日数回の公演があり、期間中は全ての会場、全ての出演連が異なる。また、ステージでの順番などでも演目が微妙に変化するなど新たな阿波踊りの楽しみ方といえる。
[編集] 踊り広場など
駐車場などを利用した踊り広場では、演舞場よりもより一層至近距離で、阿波踊りを目にすることができる。四国電力徳島支店の駐車場が徳島駅や市街地中心部からも近く便利である。また、公園や路上、アーケード街などでは自然発生的に踊りが繰り広げられる。
これはその客と踊り子たちの位置関係から「輪踊り」と呼ばれ、主に最終日などで連の予定が特に決まっていない(元々あまり決まった場所へ行くわけではない)時に披露されることが多く、市民にとって阿波踊りがいかに身近なものであるかがよく分かる。また、この輪踊りは自然発生的に繰り広げられることから一般市民から勝手に参加するものや、通りすがりの連が途中参加して行くことも多々ある。
[編集] 参加有名人
タレント等が、連に混じって登場することがある。特に高橋英樹や野々村真らは毎年のように参加している。2006年は以下の人物が踊り込んでいた。
[編集] 課題
阿波踊り期間中には、毎年多くの観光客が徳島市を訪れる。しかし期間中の徳島市は宿泊施設が不足し、大半の観光客は22時半の演舞終了とともに徳島市を去ってしまうという(徳島県交流推進局交流企画課)。その例は以下のとおり。
- 京阪神方面からの観光客
- 香川県・愛媛県方面からの観光客
- その他の遠方からのツアー
このように「地元に金を落としていかない」観光客のあり方は、地元観光業界にとって悩みの種である。市内だけが便利すぎる交通設備を持ってしまったが故の皮肉な結果といえる。また、近年、四国の高速道路網が充実しつつあるのも、「すぐ来て、すぐ去る観光客」を生み出す遠因になっている。
[編集] 各地の阿波踊り
- 徳島県内
- 東京高円寺阿波踊り(東京都杉並区)
- 大塚阿波踊り(東京都豊島区)
- 三鷹阿波踊り(東京都三鷹市)
- 南越谷阿波踊り(埼玉県越谷市)
- 阿波踊り@高崎まつり(群馬県高崎市)
- 新座阿波踊り(埼玉県新座市)
- 大和阿波踊り(神奈川県大和市)
- 北千里阿波踊り(大阪府吹田市)
- 淡路島まつり おどり大会(兵庫県洲本市) - 3日間の淡路島まつりの開催のうち前半2日間が「おどり大会」にあてられている。公式には阿波踊りとは称していないが、実質的には阿波踊りである。
[編集] 関連文献
[編集] 関連項目
- 徳島新聞 - 徳島市観光協会と共に、徳島市の阿波踊りを主催している。
- 阿波尾鶏 - 名前が阿波踊りに由来する。
- よさこい祭り(高知市) - 毎年8月9日から12日まで開催。阿波踊りに対抗して始めた祭り。阿波踊りをモデルにしている。
- YOSAKOIソーラン祭り(札幌市) - 毎年6月上旬に開催。よさこい祭りをモデルにしている。
- おわら風の盆(富山市) - 阿波踊りと交流があった、という説がある。
- 郡上おどり(郡上市) - 阿波踊りと同じく日本を代表する盆踊り。8月13日から16日までは徹夜おどりを開催。
- 土居太鼓祭り(四国中央市)
- 新居浜太鼓祭り(新居浜市)
- 徳島ヴォルティス
- 徳島インディゴソックス
- 藤本主税 - サッカー選手。ゴールを決めたときの阿波踊りパフォーマンスで有名。
- バブルガム・ブラザーズ『WON'T BE LONG』
[編集] 外部リンク
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