日本の道州制論議
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日本の道州制論議(にっぽんのどうしゅうせいろんぎ)とは、日本における道州制の導入を取り巻く論議である。
目次 |
[編集] 定義域
道州制については様々な場所で様々な議論が行われているが、論者によって「道州制」の制度としての組立て方やそこに至る道筋などの主張は異なっている。
- 都府県を廃止して、都府県を合併して行政を広域化するという案。
- 現行の県を分割した上で、県の連合自治体として道を設置するという案。
- 外交と軍事以外の権限を全て国家から地方に移譲して、地方を国と対等な関係に押し上げるという案。
これらのように様々な主張が出ており、明確な定義がなされているのではない。但し、地方主権あるいは地方分権を主な目的としている点は共通している。
様々な団体から実現を訴える声が上がっている一方で、道州制についての認知度も低い。又、反対も根強い為、実現するかどうかは定かでない。
このページでは、「region」に当たる広域行政体の単位を「道」で統一して表記し、道庁所在地を道都ということにする。「道」の名称は五畿七道に由来した物。
[編集] 財政問題
現在は、国も地方も莫大な債務を負っている為、現在の県の財政規模では信用力が低下し、利率が上昇して更なる負担を国民は負わなくてはならなくなる。又、場合によっては「県の倒産」という事態になり、公共サービスの低下や税率の上昇が起きる。そうなると、キャピタルフライトが発生し、一方で低所得者層の底割れが起きて生活保護世帯が増え、しかも税率上昇という悪循環に陷り、住民の流出と国土の荒廃が起きる。長期的には日本経済に重大な悪影響を及ぼす可能性がある。この事態を防ぐ為に、都道府県の合併によって財政規模を拡大して信用力を上げるという方法が考えられる。つまり、都道府県合併の方法の一つとして、道州制が持ち上がっているのである。
単なる都道府県合併と道州制の大きな違いは、財源と税制である。北海道が他県との合併が行われないにも拘らず「道州制特区」に上がった理由は、(1) 中央省庁(出先機関)・北海道庁・市町村役場で別々に行っている類似事業を統一してムダを省くという目的も持っているが、(2) 道庁が事業主体となる事で、財源を道庁に集めるという目的を持っており、(2) の目的の方が大きい。現在の事業予算規模で集めれば、余った資金を道庁が主体的に多くの事項に振り分けられる。
この為、中央政府も北海道庁も道州制を推進すべしという点では意見が一致するものの、その詳細については、北海道への財政の支出を減らしたい国と、財源の移譲を要求する北海道庁とでは、意見が食い違っているのが現状である。
北海道以外でも、明治維新で中央集権体制が築かれて以降は、中央省庁の出先機関(○○地方△△局)が集中する都市(仙台市、東京都区部、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市)に、企業・知事会・経済団体の拠点が集中し、人・物・金・情報が、中央省庁の出先機関所在地を中心に循環し、中央省庁の出先機関所在地が「ミニ東京」となって過密化しているのが実状である(→七大都市圏)。
北海道以外での道州制論議も、同様の財政問題と大きく関わっており、自県の県庁所在地の財源が増えるような県の組み合わせの論議や、財源が集まる道庁を誘致する為の論議が多い(→県民経済計算#2003年度 県民総生産)。又、道州制推進団体も、中央省庁の出先機関所在地が道都という前提の論議が多い。従って、本来の「国のかたち」に関する論議や、国と地方の機能分担、財政以外の地方分権、地域問題の解決、過疎と過密の抑制などに関する論議が軽視される例も多く、住民不在の論議により、道州制が国民的議論とならない要因の一つとなっている。
[編集] 論議の推移
[編集] 第二次大戦終結まで
1927年に、田中義一政権の行政制度審議会が、全国を6個の州に分けて、官選の長を置く「州庁設置案」を提案した。
[編集] 終戦以後(昭和後期)
1955年には、関西経済連合会が、府県の廃止と、国の総合出先機関としての道州制を提案した。
第二次大戦後の高度経済成長期には、西洋の先進国が、移民によって労働力不足を補ったのに対して、日本では、地方の余剰労働力を出稼ぎや集団就職などの手法で都会に移すことによって労働力不足を補った為、過疎・過密が進んだ地域が生まれた。この時期から道州制論議は存在していた。
大都市部と地方との間では、税収や生活基盤に格差を生じ、それを県が是正できる程の税収を持ち合わせていなかった為、独自財源の拡大の為に、幾つかの県が合併する道州制が考えられた。
しかし、与党は「国土の均衡ある発展」を国是として、税収が少ない県には地方交付税や補助金を投入したり、池田勇人政権の所得倍増計画や田中角栄政権の日本列島改造論、はたまた総合保養地域整備法(リゾート法)などによる地方への財政資金フローの確保により、地方の生活基盤の整備が進んだ為、独自財源増大を目的にした道州制を導入する動機は意義を失い、道州制は議論の深まりを見せなかった。
[編集] 平成期
近年になって道州制の論議が活発になった背景には、(1) 国民の間では、交通網の発達によって交流圏が拡大した点を挙げる者が多いが、(2) 自治体関係者の間では、国家の借入金が膨大になって、地方交付税や補助金や公共事業の削減で、地方が国の失政の尻拭いをさせられている点を挙げる者が多い[1]。
道州制が施行される場合には道庁が設置される為、各県庁では、自県の県庁所在地が道都に選定されるのに有利な道の枠組みが、論議の中心となっている。これは、廃藩置県後の県の合併で、県庁を奪われた地域でも同様である。又、道庁が置かれる都市は、経済活動の中心地となって経済的恩恵を受けて、税収増や人口増が期待されている。この為、各地域が、自らの地域に道庁を誘致しようと躍起になっている。
実際に、道州制へ賛成派と反対派の特徴を見ると、県庁所在地が中央省庁の出先機関所在地である宮城県・愛知県・大阪府、同様に支社密集地の岡山県が賛成派なのに対して、県庁所在地が中央省庁の出先機関所在地ではない福島県・福井県・兵庫県・鳥取県が反対派となっている[2]。
一方で、国は「小さな政府」と称して、地方への統制の強化と合理化を進めている。これは、市町村を大量に削減し、次いで広域自治体である県を大量に削減しようという発想としての道州制で、中央集権の強化という色が濃い。しかし、実際の道州制論議や、その前段階の三位一体の改革では、国の行政機関・機能・財源を都府県や道に移譲するのを拒み、都道府県や市町村の「住民自治」の部分のみを「小さな政府」として、国は依然として統制権の強い「大きな政府」に留まろうとする意見が散見される為に、全国知事会では反発が烈しい[3][4]。2006年2月28日に、地方制度調査会が区割り案を発表した際には、石原慎太郎・東京都知事や、橋本大二郎・高知県知事が、「国と地方の役割分担をどうするのかが曖昧だ」と批判している[5]。
[編集] 構造改革特別区域
この外の政府の動きでは、構造改革特別区域制度を活用し、現在の「道」と国の出先機関の地理的範囲が同一である北海道において、権限を新たな「道」に移譲し、やがて全国へと道州制を拡大していこうとしている。道州制に向けてのビジョン策定は、安倍晋三首相が、自らの選挙区である中国地方の山陽と山陰の格差を例に挙げて、総裁選で公約しており、担当大臣も置いた。
しかし、「単なる都道府県の合併ではないか?」という見方や、県庁を失った地域が軽視されるという危惧から、国民の関心は低い。実際に、日本世論調査会が実施した全国世論調査では、道州制に「賛成」が25%に留まったのに対して、「反対」が62.5%にも上っている[6]。又、2006年2月28日に、地方制度調査会が区割り案を発表した事に対して、井戸敏三・兵庫県知事は、「ムードに流されて進めれば、単なる都道府県合併に終わる」と発言している[7]。
この為、国土交通省の国土形成計画では、地方ブロックの各圏域単位での独自の国際交流や、特色ある地域形成を目指す内容を盛り込む事により、地方ブロックを道に見立てた計画として、道州制のイメージの浸透に努めたりしている。又、議論の叩き台として、11道州案や国土形成計画を用いた具体的な調査検討に入るなど、道州制を定着させる為の様々な策を講じている。
しかし、一方では、道州制と新型交付税を組み合わせて導入すると、政府は地方への歳出の削減度合が高まり、増税も抑制できる、というような意見も多い。この為、実際に個々の国民に道州制という地方自治の方向性が実感を伴って理解されるまでには、相当の時間を要すると見られる。
[編集] 各地の論議
現在、道州制の論議が進んでいる地方としては、北海道、北東北、濃尾、近畿地方、中国地方、四国、九州、琉球などがある。
西日本では市町村合併が比較的速く進んだ事から、積極的な議論や調査が多く行われているのが特徴である。
- 北海道
- 北海道は道内総生産に対する公共投資の比率が12.5%にも及び、沖縄県に次いで高い水準である[8]。その為、公共事業が経済に与える影響は大きく、その権限を集約したい道庁が主導して道州制特区の計画が進んでいる[9]。
- 北海道庁と国の出先機関の二重行政の解消と、権限の移譲に主眼が置かれているが、二重行政の解消で、行政コストの抑制を優先したい国と、財源と権限の移譲を優先させたい道庁との間での駆け引きが続いている。
- 東北地方
- 北東北の3県(青森県・岩手県・秋田県)では、2010年を目途にした北東北3県の合併(現行法規内)や将来の道州制(将来構想)も視野に入れた議論が行われていた。1997年からは「北東北みらい債」といった、北東北3県の合同事業が行われている。
- しかし、北海道新幹線の建設の前倒しが決定されると、多額の建設費用から青森県の財政状況が将来に渡って悪化し続ける予測が判明し、3県合併で財政悪化に巻き込まれたくない岩手県と秋田県の両県知事が「道州制の際は東北6県で1つの州」と明言し、3県合併構想は棚上げ状態にされた(→東北地方の経済史)。
- 尚、東北三法、国土形成計画、北海道東北自治協議会、東北電力が主導権を握る東北経済連合会の枠組みは、新潟県を含めた7県である為、7県を以って東北道とする案も見られる(→新潟県を東北地方に編入する場合)。特に東北電力が7県の枠組みを推しており、テレビのローカル番組を7県で放送したり(→ブロックネット#東北地方(+新潟県))、新潟スタジアムの命名権を取得して「東北電力ビッグスワンスタジアム」としたりして、新潟県が東北地方の一部であると地道に主張している。しかし、地元では東北6県の枠組みを推す意見が多い。
- 濃尾
- 愛知県と岐阜県では、既に経済面では東海道沿線と中山道沿線の交流が行われており、行政面でも木曽三川や森林の管理の問題で、早くから広域行政論が浮上していた。
- 近畿地方
- 近畿ブロック知事会では、道州制を拒否している兵庫県知事以外にも、福井県知事が道州制に反対する意見を出しており、京都府知事も道州制に対して慎重な意見を出している[10]。
- 2004年6月30日には、京阪神の経済団体から、近畿2府6県(福井県・滋賀県・京都府・三重県・奈良県・和歌山県・大阪府・兵庫県)に、四国の徳島県を加えた広域行政体の設置を求める声が出されており、道庁の組織や行政運営に留まらず、道の様々な設置方法も提案されている[11]。
- 福井県では、「若狭地方を北陸道に入れるな」「福井県全域を近畿道に入れるか、若狭地方のみを近畿道に入れるかのどちらかにせよ」という、県の分割論が存在する[12][13]。
- 中国地方
- 財界では、山陰山陽5県で一組の道とする「中国州」を提唱している。従来より中国地方においては、瀬戸内海側(山陽地方)と日本海側(山陰地方)や中山間地域との間に、経済面やインフラ面での格差が生じており、これが年々拡大している。その為、中間報告[要出典]では、産業の誘致や、高速道路網の建設などでの格差是正に重点を置いて、道議会は行政との癒着を避ける事を目的として、道都のみならず道内各市も持ち回りで実施する事として、各地域の産業や文化的特性を尊重した、多極型の土地の形成を目指すとしている。
- 地元政界では、広島市や岡山市などが、道都の誘致に積極的である。広島市は中国地方、中国・四国地方のいずれの場合でも中枢拠点機能が地方内で最も高いことから、「中国州」「中四国州」に関わらず、道都に相応しい都市は広島市である主張している。
- 岡山市は、山陽と四国に渡る交通の結節点として東瀬戸経済圏の中心都市となっている点から、「中四国州」の枠を支持して道庁の誘致を目指している。又、広島県と岡山県は別々の枠組みを推しており、広島県は民意(アンケート結果)から「中国州」を、岡山県はスケールメリットから「中四国州」を支持しているが、実態は道庁の誘致を目的とした我田引水であるとして、冷ややかに見られているのが現状である。[要出典]
- 福山市では、一部の市議から、福山市を道都にせよとする主張が出ているが、現時点では大きな支持を受けていない。
- 「中四国州」は、産業や交通インフラ整備の進んでいる山陽地方が、地理的にも中心となるため、現在以上に社会資本の集中が強まって格差が拡大すると危惧されており、山陰地方や四国では反対が根強い。
- 尚、下関市では特別市の準備を進めているが、これについては「関門」を参照すること。
- 四国
- 経済界では、四国4県から構成する「四国州」構想を打ち出している。
- 又、住民の一体意識が高いのも特徴で、国土形成計画策定時の住民アンケートでは、四国4県を一つの圏域とする回答が70%を占め、全国で最も高かった[14]。
- 一方で、2004年の市町村合併で発足した「四国中央市」は、「四国道の道都にする」という思惑から決定された為、地元以外からも批判を受けている。
- 関門
- 関門海峡を挟んで隣接する下関市と北九州市、九州と中国の両経済連合会、下関市と北九州市の両商工会議所などは、2007年度に「関門特別市」の発足に向けた事務レベルの設立準備会を設ける。「特別市」を称するように、一市で単独の道であり、中国や九州などの道には所属しない。
- 従来より、関門海峡を海上物流の要として活用して来た山口県、福岡県、広島県などの経済界から、関門海峡両岸の一体的な発展を要するという意見が出されていた事から、国土形成計画の広域地方計画では、九州圏と中国圏の双方の計画策定に参画する事が決定している。
- 特別市構想の背景には、 関門海峡で線引きした地方制度調査会の区割り案に対する反対がある[15]。
- 九州
- 九州地方知事会と、地元経済団体で構成される九州地方戦略会議が、九州7県を一体とする「九州府」構想を打ち出している。従来の東京偏重の施策から脱して、東アジアの拠点として成長するという、九州の持つ地理的特性を生かした長期ビジョンを掲げているのが特徴である。
- 名称では「九州府」を掲げているが、これは、律令時代に、九州に外交拠点である大宰府が設置された歴史的経緯に鑑みた物である。
- 尚、北九州市は特別市の準備を進めている。
- 大分県では、平松守彦知事(当時。2003年4月退任)の在任中に、九州全島を治めた大宰府が外交機関でもあった歴史から、九州を東アジア諸国との人・物・金の交流拠点として経済力を高めようという「アジア九州経済圏構想」が、平松前知事を初めとする自治体関係者の間で出されていた。しかし、現職の広瀬勝貞知事が就任した2003年4月以降は使用されていない。
- 琉球
- 九州と琉球は歴史と風土が全く異なる点から、沖縄県で単独の道として、「沖縄州」或いは「琉球州」への移行を目指している。九州と一緒の枠組みに入れられると、現在のような税制を初めとする特例が廃止されたり、九州と同じ法律が適用されたりする可能性が高い。又、鹿児島県の南西諸島部分(特に奄美諸島)が、九州と琉球のどちらに入るのかも注目されている。
- 人口・経済・財政のいずれにおいても、規模が最も小さい道となるが、国と直接交渉でき、特例の積み上げも可能なのでやって行けると考えられている。[要出典]
- 倭寇後の中国の海禁政策や、日本の鎖国政策などの下で、貿易によって発展した琉球王国時代に似ており[要出典]、特例下での発展を目指す琉球州に対して、いつまで国民が寛容であり続けられるかが、琉球州の存立には重要である。地元経済界では、道都として普天間飛行場跡地への中枢拠点機能の設置と、高度医療施設、情報産業の誘致を行う予定である。
[編集] 枠組みを巡る論議
道の機構や機能といった中身の論議よりも、関心の高い問題は都府県の枠組みに関する論議である。しかし、道州制の導入は、道都への一極集中という危険を妊んでいる為、それぞれの都府県が、道の枠組みや道都において我田引水の如き主張をしており、市町村の合併や分割以上に困難な問題も抱えている。
又、枠組みの作り方も、地理的同質性や地域バランスを考慮せず、特定の大都市への一極集中を促す発想が多い。この為、佐藤栄佐久・前福島県知事は、「どこかの市にバキュームのように吸い寄せられる国土づくりではなく、地域の伝統や文化を守る手伝いをするのが国の大事な仕事だ。」と主張している[16]。同様に、西川一誠・福井県知事も、「枠組みから議論に入るのは危険だ」と主張している[17]。
特に、地理的同質性や交通的一体性で枠組みを作ると端に位置する地域では、地理的同質性を無視した枠組みを主張する事は少なくない。
例えば、愛知県尾張地方のメディアが多用する「東海3県」は、愛知県・岐阜県・三重県の組み合わせで、東海道沿線の静岡県が外されて、近畿地方の三重県が入れられている。
同じく、群馬県が提示した「大関東11都県案」は、福島県・新潟県・長野県・群馬県・栃木県・茨城県・埼玉県・東京都・神奈川県・千葉県・山梨県の組み合わせで、広域関東圏の静岡県が外されて、東北地方の福島県が入れられている。
これらの例は、道の枠組みで名古屋市(愛知県庁所在地)や前橋市(群馬県庁所在地)が端にならないようにした物で、県庁所在地近辺が道境になりそうな県が、このような案を出している。
[編集] 地方制度調査会の区割り案
2006年2月28日、内閣総理大臣の諮問機関である地方制度調査会(会長:諸井虔・太平洋セメント相談役)が、「道州制のあり方に関する答申」を発表した。この答申の中では、「区域例」として、「9道州」「11道州」「13道州」の3例を示している。なお、この「区域例」には、次の2つの註が付いている。
- 道州の区域については様々な考え方があり得る。ここで示した区域例は、各府省の地方支分部局に着目し、基本的にその管轄区域に準拠したものである。
- 東京圏に係る道州の区域については、東京都の区域のみをもって一の道州とすることも考えられる。
以下の道州の枠組みに、その構成都道府県の2003年度県民総生産の合計を付記する。東京都の都民総生産は83兆6303億円。
[編集] 9道州案
- 北海道(19兆5044億円):北海道
- 東北(32兆4200億円):青森県、岩手県、秋田県、山形県、宮城県、福島県
- 北関東(北関東信越)(43兆5586億円):茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県
- 南関東(156兆7627億円):埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県
- 中部(72兆7339億円):富山県、石川県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
- 近畿(関西)(82兆2004億円):福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
- 中国・四国(41兆5305億円):鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県
- 九州(43兆4862億円):福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
- 沖縄(琉球)(3兆5755億円):沖縄県
[編集] 11道州案
- 北海道(19兆5044億円):北海道
- 東北(32兆4200億円):青森県、岩手県、秋田県、山形県、宮城県、福島県
- 北関東(54兆6282億円):茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、長野県
- 南関東(136兆6839億円):千葉県、東京都、神奈川県、山梨県
- 北陸(21兆3242億円):新潟県、富山県、石川県、福井県
- 東海(63兆7072億円):岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
- 近畿(関西)(78兆9121億円):滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
- 中国(28兆1378億円):鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
- 四国(13兆3927億円):徳島県、香川県、愛媛県、高知県
- 九州(43兆4862億円):福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
- 沖縄(琉球)(3兆5755億円):沖縄県
[編集] 13道州案
- 北海道(19兆5044億円):北海道
- 北東北(12兆4998億円):青森県、岩手県、秋田県
- 南東北(19兆9202億円):宮城県、山形県、福島県
- 北関東(54兆6282億円):茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、長野県
- 南関東(136兆6839億円):千葉県、東京都、神奈川県、山梨県
- 北陸(21兆3242億円):新潟県、富山県、石川県、福井県
- 東海(63兆7072億円):岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
- 近畿(関西)(78兆9121億円):滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
- 中国(28兆1378億円):鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
- 四国(13兆3927億円):徳島県、香川県、愛媛県、高知県
- 北九州(28兆9496億円):福岡県、佐賀県、長崎県、大分県
- 南九州(14兆5366億円):熊本県、宮崎県、鹿児島県
- 沖縄(琉球)(3兆5755億円):沖縄県
[編集] 日本の広域行政体の変遷
日本における広域行政体の変遷は、歴史的に見ると、大雑把に以下のようになっている。
- 各地の国造を初めとして、地方王国の分立状態。
- ヤマト王権によって統一国家が形成された時代(律令制の時代)における、五畿七道と令制国。令制国は中央集権体制下の出張所。
- 戦国大名が割拠する、地方王国の分立状態。
- 江戸時代 の幕藩体制。
- 三百諸侯とあるように、約300の藩(地方王国)が分立していた。
明治維新期の廃藩置県は、当初は上記の (4) をそのまま移行した物だったが、次第に合併によって削減されて、現在のような形になった。
道州制を考える際には、「現行の都府県より広域の行政体をどう設置するか」が論議される事になる。
[編集] 長所と短所
道政府を設置する事の長所と短所には、以下の点が挙げられる。
[編集] 長所
- 広範囲な交通網の整備が、広い視野の観点で実施できる。この為、不要な空港の濫立といった浪費を節約できる。(大前研一などが主張している[18]。)
- 特に大規模な川や森林は、その地方の経済を左右する要素になる。このため、自然環境や治山治水に関する事柄は、県よりも広い広域自治体を設置して実施した方が処理しやすい。(奥野誠亮などが主張している[19]。)
- 地方分権の受け皿となる自立的な広域行政体を設置し、現行の中央集権的な国家権限を道庁に移管する事によって、東京一極集中の抑制、過密化の抑制、過疎化の抑制、二重行政の解消が可能になる。
[編集] 短所
- 道都への一極集中が起こり、第二第三の東京一極集中という「ミニ中央集権」になる。(佐藤栄佐久・前福島県知事などが主張している。)
- 県の合併によって道を設置すると、道都とその周辺の声ばかりが重視され、合併で行政権を失った地域の声が軽視される。(小池清彦・加茂市長などが主張している。)
- 財源を道政府に移譲しても、税収が増える道は南関東道といった富裕な地域だけに過ぎず、多数の道は税収が減り、財政的にも自立性が低くなる。(石井隆一・富山県知事などが主張している。)
- 県の廃止によって道を設置すると、道都から遠く離れた地域で災害が起こった時に、道庁と被災地との連絡や、被災地への支援物資の輸送が遅れる危険性が高くなる。更に、道都で災害が起こった時に、道都以外が行政的な代替機能を持たない完全な「出張所」となっている場合には、道全域が機能不全に陥る危険性も高くなる。
[編集] 反対論
「道」への移行を含む過度の地方分権は「国家分裂」へ至るのではないかという反対論がある。実際に各地域の方言を公用語として採用すべしと言う議論もあり、国家や国民の一体性を希求する者にとっては受け容れられる議論ではない。しかし、都道府県の合併だけは歳出の削減に繋がる為、地方分権と切り離した上で賛意を示す者もいる。
議論が生煮えのまま道州制を施行する事で、道都は栄えるが、道都以外の「除け者扱い」を危惧する声も根強い。
この為、交通網の整備も大幅に遅れて来た鳥取県の経済界では、道境になると見捨てられるという懸念や、特に岡山市や広島市への一極集中に対する懸念から、「鳥取県が日本のチベットになってしまう」と危惧している[20]。
特に、小池清彦・加茂市長は、県の合併による道州制について、市町村の大規模削減に対してと同様に、「全体主義的ファッショ国家になる」とまで危惧している[21]。同様に、日本共産党も、自民党が主導する道州制を、「『地方分権』の名を騙った『地方切り捨て』だ」と批判して、道州制を拒否している[22]。
又、道州制自体には賛成するものの、施行を急ぐ事によって地方分権から逆行する事を懸念して、敢えて慎重派を取る意見もある。
[編集] 廃置分合
道の設置と廃止の方法には、以下の2通りの方法がある。
- 複数の県を廃止して、1個の道を設置する方法。
- 既存の複数の県の上に、1個の道を設置する方法。
しかし、日本の道州制論議は、市町村合併の延長線上の発想で、道の設置方法も、(1) の県の廃止(合併)を前提にして論議される事が多い。具体的な動きとしても、市町村合併が進んだ地方での積極的な調査や研究が行われている。
又、日本の現行の都道府県は、地理的同質性や面積を考慮していない区割りが多いため、県を分割してから道を設置する方が望ましいという声がある。
道の合併・編入・分割・分離や、県の所属道の転属については、都道府県の合併と分割や、市町村の合併と分割と同様の方法が採られる事になる。
[編集] 導入の際の問題点
道州制を導入する際に注意せねばならない問題点には、以下の問題点が挙げられている。
[編集] 単位の統一
地方自治法には、「都」「道」「府」「県」といった「単位」の定義が明記されていない。
このため、道州制を導入する際には、「region」に当たる「単位」を統一して、単位の定義を明記すべきだという意見もある。例えば、片や「北海道」で片や「東北州」となると、「道」と「州」の違いが、具体的な行政単位として異なるのか、それとも単なる言いやすさや語調の良さから名称が異なるだけなのか、が判らなくなる。
又、「県」の集合体、或いは「道」の集合体で国家が形成されるというように、組織を運営する際に必要とされる管理階層の明瞭化という観点もあり、これは、「単位だけを統一して、その他は自由にやろう」という考え方に基づいている。
一方で、単位の統一や定義を必要としないと主張する者もいる。これは、地方ごとに名称、財政、経済状態、人口規模、人口密度等が異なることから、全国一律の単位の導入は現実的ではないという考え方である。
現在、具体的な検討を行っている政府の道州制調査会では、北海道を道州制移行後もそのまま「北海道」として、九州を「九州府」として、これら以外を全て「州」とする方針で、現時点では単位の統一には拘らないとしている。
[編集] 道と県の関係
一般的に、統治階層の単位は、「市・村<県<道<国家」の順に広くなる。従って、県を存続させた上で道州制を施行すれば、日本における統治階層の単位は、「市・町・村<県<道<国家」の順に広くなる。
ヨーロッパでは、ドイツでは郡規模の広域連合体が存在し、フランスの県も、日本の県よりも狭い範囲の物が多い。
道州制を導入している国家でも、統治階層は「基礎自治体<県<道<国家」の四層制を導入している国家が多い。日本とは面積と経済力が同規模の国家では、フランス、イタリア、スペインなどが四層制を導入している。面積が日本の4倍以上の国家でも、中国は四層制である。「基礎自治体<道<国家」の三層制の国家は、アメリカなど少数である。
「地方主権」の手段としての道州制の発想では、市町村の連合自治体として県を設置して、県の連合自治体として道を設置する、という「小から大へ」の考え方が目立つ。
広域行政体の規模を見ると、地方裁判所が県規模、高等裁判所が道規模、最高裁判所が国家規模と見る事もできる。
従って、自治の単位を見る際には、「どの規模の自治体に、どんな権限を持たせるか」という点が要点となる。県の上に道を設置する場合、道が担う権限としては、交通網(港、空港、高速道路など)や治山治水というように、自然環境や産業基盤に関する権限が主に挙げられている。
一方で、県が担う権限としては、「市町村を補完する」ために小回りを利かせるという観点から、生活基盤に関する権限(例:保健所や高等学校の運営など)が主に挙げられている。
[編集] 都府県の廃止
もしも県を廃止して道を設置する場合には、都府県は廃止される。しかし、県への愛着や誇りなどといった土地観や感情の問題、経済上(県域単位での新聞や放送局などの区域や名称なども含む)の問題などから、都府県の廃止に国民の理解が得られるかを疑問視する声もある。
このため、都府県を現在の郡と同じような形で、住所上の名称としてのみ残すという案も検討されている。
[編集] 地理的同質性
地方制度調査会の区割り案や、国土交通省の国土形成計画は、地理的同質性・歴史的類似性、交通的一体性・県の分割の4点を考慮していない。民間の道州制推進団体も、地理的同質性・歴史的類似性・交通的一体性・県の分割の4点を考慮していない案が多い。
例えば、地方制度調査会の「北関東信越道」案は、互いに全く疎遠な太平洋側の茨城県、日本海側の新潟県、天竜川流域の伊那地方が一緒にされているように、地理的同質性を全く考慮していない。
地方制度調査会の「近畿道」案を見ると、9道州案では福井県・滋賀県・京都府・奈良県・和歌山県・大阪府・兵庫県の組み合わせとなっている。又、11道州案と13道州案、国土形成計画の「近畿圏」案を見ると、滋賀県・京都府・奈良県・和歌山県・大阪府・兵庫県の組み合わせとなっている。
しかし、京阪神を経由せずに近畿地方内を迂回するには、新宮市(和歌山県南部)・亀山市(三重県)・米原市(滋賀県)・敦賀市(福井県若狭地方)・朝来市(兵庫県但馬地方)・姫路市(兵庫県播磨地方)が、一緒の枠組みに入らねばならない。更に、奈良時代に「御食国」と呼ばれた地域には、伊勢志摩・若狭地方・淡路島の3地域がある。
にも拘らず、11道州案と13道州案と国土形成計画では、若狭地方は近畿道から外され、三重県はいずれの案でも近畿道から外されているように、交通的一体性や歴史的類似性も全く考慮されていない。
平松守彦と外2名の共著「熱論・合州国国家日本」に掲載されている平松守彦の「中部道」案を見ると、山梨県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県の組み合わせとなっている。しかし、内陸側同士の山梨県から伊那地方や岐阜県へ行くのに、太平洋側(静岡県と愛知県)を経由せずに行くには、長野県の松本平を通らねばならない。にも拘らず、長野県の全域が北陸道に入れられている。
[編集] 県の分割
フランスの1982年分権法では、コミューン(市町村)の分合は県の分合とは無関係で、道の設置も県の廃止(合併)による方法ではなかった。
但し、県内の外の地域よりも、県を跨いだ市町村同士の方が親密な地域もある。これらの地域では、一方の自治体をA県から分離してB県に編入させねばならない。しかし、これにはA県の抵抗も当然予想される。日本でも、長野県の旧山口村が岐阜県の中津川市に編入される際に、当時の長野県知事に反して県議会が独自に承認した例がある。
特に、地理的同質性・歴史的類似性・交通的一体性に起因して、県の分割の必要性が挙げられている地域としては、以下の地域がある。
- 新潟県:中越地方と頚城地方が北陸道に入って、下越地方と佐渡島が東北道に入るパターン。
- 福井県:若狭地方が近畿道に入って、越前地方が北陸道に入るパターン。
- 長野県:中央自動車道沿線(松本平と伊那地方)が中部道に入って、上信越自動車道沿線(善光寺平と佐久地方)が北陸道に入るパターン。
- 静岡県:富士川以東が南関東道に入って、富士川以西が中部道に入るパターン。
- 鹿児島県:奄美諸島部分(奄美大島、沖永良部島、与論島など)が琉球道に入って、十島村以北の離島を含む本土部分が九州道に入るパターン。
[編集] 求心力や一体性
地方制度調査会が提示した区割り案では、関東地方(広域関東圏)は、特に南部が過密状態になっているため、そのまま一体的に道とすると経済力が大き過ぎるため、南北分割が前提とされている。
又、地方制度調査会は、東京都を1つの道として位置付け、隣接する道との(9道州案の場合は「東京道」「南関東道」の2道、11道州案と13道州案の場合は「北関東道」「東京道」「南関東道」の3道となる)広域連携を実施することで、一体性をある程度維持しつつも一極集中を緩和するとしている。しかし、東京都でも、区部(旧東京市)と多摩地方・島嶼部を別々にせよという分割論も一部に存在しており(→多摩地域#多摩県設置論)、区部を以って「東京市」を復活させて、東京市で単独の県、或いは単独の道とする「東京特別市」の案も存在する。ただし、神奈川県に相当する部分が飛び地になってしまうということも指摘される。
全ての道は、北海道よりも面積が小さいが、他の地方では、歴史的・文化的・経済的に見て広過ぎるという感覚を持つ者もおり、道として成り立つかという問題も妊んでいる。
これは、北海道が札幌市という島(地方)全体からの求心力を持つ都市が存在するのに対し、それ以外では、区割り案の地域全体からの求心力を持つ都市が存在しない場合に問題となっている。又、北海道は人口・人口密度が小さいのに対して、他の地方は人口・人口密度が大きく、拠点都市も多い。
「道州制が導入されれば、道都に全てが集中して、札幌や東京のような都市が各道に造られる事になるので、将来的には問題ではない。」と主張されるが、この場合、道都への一極集中が進行して、地方分権の理念から逆行するのではないかという懸念も多い。
近畿地方は、地形が「鉤状と一点」になっていて、中央から八方(北陸道・中山道・東海道・紀伊半島のうち三重県・紀伊半島のうち和歌山県・四国・山陽道・山陰道)に、地形的要素が異なる路線が延びている。この為に分割が困難になっており、京阪神の経済団体が提案する「関西州」の区割り案は、三重県と若狭地方を外す中央省庁の枠組みに反対して、三重県と若狭地方も含めている[23]。
又、現行の府県でも、(1) 京都府京都市と滋賀県大津市など、県を跨いだ地域同士の交流が多い地域や、(2) 京都府や兵庫県のように、日本海沿岸や旧飾磨県など、県庁所在地周辺とは異なる風土だが、独立した県が存在しない地域も、多く存在している。しかし、経済や行政の中枢が集まる京阪神や、独立した県が存在しない日本海沿岸や、高速道路の整備が遅れている紀伊半島南部との間には、経済格差や行政格差という問題も抱えている。
九州では、地方制度調査会が全島単独案と南北分割案の両方を提示したものの、「九州は7県で一つの道(名称は「九州府」を予定)を構成する」というのが各県の統一認識となっている。
これは、 (1) 経済の重心が北部に偏っている事、 (2) 全島単独の方が一体性を醸成しやすい事、 (3) 例えば福岡県大牟田市と熊本県荒尾市・南関町など、県内他地域よりも県を跨いだ地域同士の方が親密な地域も多く[24]、現行の県の区割りで無理やり二分しようとすると、道境での調整区域を各地に設置しなくてはならなくなる事、などが理由となっている。
一方で、東北地方や北陸地方など、拠点都市の多い地方では、面積が小さい方が小回りが利くという観点から、道の二分割を求める動きがある。
具体的な動きとして、東北地方では、青森県が「北東北道」の13道州案を支持している[25]。北陸地方では、地方制度調査会と国土形成計画では意見が異なっており、国土形成計画では親不知で分割して、親不知以西の3県(富山県・石川県・福井県)での枠組みを希望する動きがある[26][27]。
又、東北6県、北陸4県、兵庫県、鳥取県では、広域行政体を県のみとして、道州制を拒否する動きもある[28]。
これは、関東地方や九州とは逆の考え方である。この背景として:
- 道都は盛えても、経済基盤の弱い道が濫立して、南関東道のような富裕な道とは切り離されて、北海道や琉球道のような「発展途上地域」「中央政府の直轄地」の様相を呈する。
- 国が道州制を主導すると、中央省庁の出先機関が置かれている太平洋側の過密地域(仙台市、東京都区部、名古屋市)への一極集中を強いられ、日本海側は経済的にも、行政的にも軽視される。
- 「廃県置州」のムード先行で道州制を施行すると、道庁は国の出先機関になり、中央集権が一層強化されて、住民自治や木目細かな行政が不可能になる。
これらの危惧が挙げられる。
弱小な道の濫立を防ぐ為に、2006年12月に成立した道州制特区推進法では、北海道と沖縄県を除いて「3県以上からなる地方ブロックの全県で構成」という道の規模基準が、具体的に記載されている。
[編集] 道都
外国の州都(州庁所在地)を見ると、最大都市が州都になっている州も存在するが、必ずしも「州都=最大都市」とは限らず、小都市が州都になっている州も多く存在する(→道州制#州都)。又、権力者が長年居住した都市が、そのまま州都になっている州も多い。但し、州都に選定された時期が第二次大戦前である都市も多く、必ずしも民主主義的な過程を踏んで選定されたとは言えない。尚、その後の経済の変化によって、州都を最大都市から小都市に「遷都」する例も見られる。
民主主義的な手法で道都を選定する必要性を抱えているが、民主主義的な手法である「住民投票による多数決」で道都を決めるとなると、人口が多い最大都市が有利になる。従って、多数決では道都を誘致できない県や地域が、もう一つの民主主義的な手法である「話し合い」によって道都を誘致しようと躍起になっており、様々な理論武装を試みている。
最も多い意見として、「その道のほぼ中央で、幹線交通網が通っている所(特に沿岸部)とすべし」という意見がある。これは、人口の重心や経済の重心よりも、地域バランスや交通的一体性を重視した考えで、道都の位置が東西南北の内の一方に偏ると一体性を醸成できない、という理論である。実際に、東海地方・中央高地・近畿地方では、これが大きな問題となっている(→東海地方#地域間関係)。
この外に、明治維新以後の中央集権体制で、中央省庁の出先機関が置かれている七大都市(札幌市、仙台市、東京都区部、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市)以外を道都にすべきだという意見や、過密地域や政令指定都市を道都にしてはならないという意見がある。これは、経済的恩恵を受けている地域への一極集中を抑制して、経済的恩恵に与る地域を増やす事を目的としている。
[編集] 日本各地の道都を巡る動き
- 東北地方
- 南北に分割する場合と、分割しない場合の、両方のパターンがある。以下は、道州制に積極的な岩手県の主張であり、他の県では表立って道都の議論はない。
- 南北に分割する場合、岩手県では北東北道の道都に盛岡市(面積約890km2、人口約30万人、2006年11月)を推す意見が多い。これは、将来の道州制を見込んだ北東北3県の政治連合において、リーダーシップを握っていた増田寛也・岩手県知事の主張であった。盛岡市は東北新幹線沿線で、青森市・一関市・宮古市・秋田市からほぼ等距離に位置する点を挙げていた。その後の経済情勢の変化により、岩手県と秋田県の両知事が「道州制では東北6県で1つの州」と明言し、この案は廃れた。
- 南北に分割せず、東北6県で1つの道とする場合、仙台市(面積約790km2、人口約100万人、2006年11月)への一極集中を抑制する為、南東北3県の県庁所在地以外を推す声が出ている。これは「北東北道」を断念した岩手県当局の次善策である。[要出典]東北6県の枠組みでは盛岡市が道都となれる地理的根拠が薄いため、少なくとも岩手県内に道都を誘致しようと、盛岡市と仙台市との中間に位置する一関市、或いは東北自動車道・秋田自動車道・東北新幹線・北上線が交差する北上市(面積約440km2、人口約9万人、2006年12月)を道都に推している。
- ところが、北東北道の枠組みでは、青森市や秋田市などとの間の地理的な中心として盛岡市を推していたのに、東北6県の枠組みとなると、それらの都市を軽んじて盛岡市と仙台市の間の岩手県内の都市を推すという「岩手県の我田引水」的な態度により、この案は、岩手県以外では真剣に取り合っていない。[要出典]
- 北関東
- 南関東
- 東京都区部(面積約620km2、人口約850万人、2006年10月)が道都という前提で論議される事が多い。又、東京都区部を一市で単独の道とする場合には、横浜市(面積約440km2、人口約360万人、2006年1月)が道都という前提で論議される事もある。
- 一方で、東京都区部への一極集中の抑制を目的として、国道16号圏外を道都にする場合には、南関東を「富士山を基軸にして総まった地方」とする見方から、小田原市(面積約110km2、人口約20万人、2006年12月)を推す意見が出ている。そして、山梨県のみならず、静岡県を分割して少なくとも伊豆半島などを南関東道に入れよという意見が、道州制を題目とするネット掲示板で出されている。
- 北陸地方 (広義)
- 分割しないパターンもあるが、分割する場合の境界線には、親不知、米山峠、大河津分水など幾つかのパターンがある。
- 尚、2006年に国土交通省の国土審議会圏域部会が調査したアンケートでは、親不知以西に当たる富山県・石川県・福井県の3県を広域地方計画区域として望ましいと考えるという結果が41.3%となっており、これは四国に次いで全国2位の比率の高い回答率であった[29]。
- 道都については、富山市と上越市のいずれかを推す意見が多い。[要出典]
- 富山市(面積約210km2、人口約30万人、2004年9月)は、枠組みに関係無く道都に推されている。[要出典]
- 上越市(面積約970km2、人口約20万人、2006年10月)は、北陸新幹線を巡る「効果と問題」を抱えている事から推されている。[要出典]
- 富山県では、現在の北陸4県の一帯が越国という勢力圏の領土だった歴史を踏まえて、4県が連合して、日本海沿岸の北東アジア諸国との経済交流を深めて、太平洋沿岸(特に関東圏と中部圏)や京阪神からの経済的自立を目指そうという「越の国構想」が、2002年度に中沖豊知事(当時)を初めとする自治体関係者の間で練られていた。しかし、現職の石井隆一知事が就任した2004年11月以降は使用されていない。
- 中部地方
- 名古屋市(面積約325km2、人口約220万人、2006年10月)が道都という前提で論議される事が多い。
- しかし、名古屋市が近畿地方に近過ぎる点から、三遠南信の浜松市(面積約260km2、人口約60万人、2005年6月)や豊橋市(面積約260km2、人口約38万人、2006年12月)、中山道沿線の中津川市(面積約675km2、人口約8万人、2006年10月)[要出典]などを道都に推す意見が出ている。三遠南信と中津川市は、位置的に南関東(東京・鎌倉)と畿内(大阪・京都・奈良)の双方から等距離に位置する為、首都機能移転問題でも有力候補地に上がった事がある。特に豊橋市と中津川市を推す意見には、名古屋市と旧浜松市への一極集中の抑制という意図も大きい。
- 近畿地方
- 道都の有力候補には、大阪市、京都市、奈良市が上がっている。[要出典]大阪市(面積約220km2、人口約260万人、2006年10月)を一市で単独の道とする場合には、京都市(面積約825km2、人口約145万人、2006年9月) が道都という前提で論議される事もある。[要出典]
- 大阪市と京都市を道都にしない場合には、奈良市(面積約275km2、人口約35万人、2006年9月)を道都に推す案が多い。[要出典]
- 中国地方
- 瀬戸大橋線の分岐点に当たる岡山市(面積約650km2、人口約65万人、2006年10月)や、経済の中心地である広島市(面積約900km2、人口約115万人、2006年12月)の外にも、三次市、萩市、尾道市などを道都に推す意見が出されている。[要出典]
- 鳥取県や広島県からは、三次市(面積約780km2、人口約6万人、2005年10月)や萩市(面積約700km2、人口約55000人、2006年11月)を推す意見が出されている。[要出典]これらの都市は、小規模でありながらも、交通網も比較的充実している上、歴史的な景観や伝統文化を当時のまま残し、本来は多極型で個性的な地域形成を得意とする中国地方の特徴を打ち出せるとして検討されている。
- 尾道市(面積約280km2、人口約15万人、2006年12月)は、特に四国との関係を重視する際に、道都に推されている。[要出典]
- 四国
- いずれも国道11号沿線の、高松市、松山市(面積約430km2、人口約50万人、2006年11月)、四国中央市(旧川之江市)が、道都の誘致に名乗りを上げている。
- 四国中央市(面積約420km2、人口約95000人、2006年8月)は、高速道路でも徳島市と松山市のほぼ中間に位置し、高知方面に至るジャンクションが設置され、位置的には四国のほぼ中央に位置しているが、道庁を受け容れるだけの施設や受け皿を持っているのかが疑問視されている。[要出典]
- 高松市(面積約375km2、人口約40万人、2006年12月)は、四国を管轄する国の出先機関の大半が集中しており、既に市内に散在する国の出先機関を1ヶ所の合同庁舎(高松サンポート合同庁舎)に集めて、四国地方内の中核管理・統轄機能の強化を行うなど、道都を見据えた基盤整備が早くから、最も具体的な形で進んでいる。
- 九州
- いずれも国道3号沿線の福岡市(面積約340km2、人口140万人、2006年10月)、鳥栖市、熊本市が、候補に上がっている。
- 福岡市以外には、九州自動車道・大分自動車道・長崎自動車道が交差する鳥栖市(面積約70km2、人口約6万人、2005年10月)や、鹿児島本線と豊肥本線が交差する熊本市(面積約270km2、人口約65万人、2006年12月)を道都に推す意見が出ている。特に熊本市は、福岡市への一極集中の抑制と、南部への距離の近さという点から推されており、「経済は福岡市、行政は熊本市」という二極体制を採った方がよいという意見も多い。
[編集] 飛地に関する問題
対岸の飛地のような状況を呈している地域を抱えている場合、「全島単独」で一体性を醸成するか、対岸に割譲するかが問題になっている。具体的には、以下の2地域が考えられる。
- 徳島県沿岸部(徳島市とその周辺):四国道か近畿道か。四国に位置するが、四国島内の他の地域と比較して、近畿への傾斜が大きい。
- 山口県の防府市以西:山陰山陽道か九州道か。本州(山陰山陽)に位置するが、本州内の他の地域と比較して、九州への傾斜が大きい。この場合、防府市以西が九州の飛地になって、周南市以東が山陰山陽道に入るという案もある。
[編集] 名称
道を設置する際に、方角(東西南北中)を付けた名称を極力避けて、雅称を用いるべきだという意見がある。これは、「平成の大合併」などで見られた安易な方角の濫用や、安易なネーミングによる「安っぽさ」の防止を目的としている。
例えば、「中国」という名称を付けると、「China」(中華人民共和国)と混同される可能性が高い。この場合には、「China」との混同を避ける為に、「山陰山陽」などの名称を付けるべきだという意見もある。
この外にも、「近畿」と「関西」、「九州」と「鎮西」、「東北」と「奥羽」と「みちのく」など、各地方が様々な別名を持っている。
又、「region」に当たる単位を「道」にすると、「region」ではなく、「道路」と混同される可能性も高い(例:山陽道=国道2号、山陽自動車道)。この場合、道庁が発注・管理する道路は「道道」となって混乱する可能性も高い。
更に、日本での「州」の用法も、「region」規模の広域行政体を指す場合(例:バイエルン州)と、歴史的な県規模の広域行政体を指す場合(例:遠州)がある。更に、単位で「州」を用いると、九州は「九州州」になって混乱する可能性も妊んでいる。
この為、九州では、「道」や「州」に代わる単位の名称として、「府」が提案されている。これは、九州に対東アジアへの外交拠点として大宰府が置かれた歴史を反映した物である。
[編集] 財源
三位一体の改革で国との折衝の際に、全国知事会は、道州制を施行する際に、8兆円を自主財源として移譲し、9兆円の補助金を削減する案を出している。
しかし、「移譲財源による税収増額-補助金削減額」の差額について、石井隆一・富山県知事は、南関東(1都2県+山梨県)が5200億円増なのに対して、北陸4県は1500億円減、九州7県は4600億円減になるという試算を出している[30][31]。
この為、財源に関しては、税収格差を是正するために、税収の多い道から多めに国税を取って、それを税収の少ない道に回すと同時に、使途を特定したいわゆる「紐付き」の補助金を、「紐抜き」の一般財源に転化する事が必要となる。これらを総称して「財政調整制度」と言い、財源の確保において重要な検討課題の一つとなっている。
この財政調整制度については、一県で単独の道に移行すると思われる沖縄を中心に要望が上がっている。
主な制度には、 (1) 徴収と配分を、各道の状況を見て国が主体となって行う「垂直型財政調整制度」と、 (2) 全道の協議を基にして道が主体となって行う「水平型財政調整制度」の2種類がある。
又、「ふるさと納税制度」という案も、最近の議論の中では登場している。これは、他の道の出身者が、現在居住する道へ全額納税するのではなく、個人自らの出身道や過去に居住していた道に対して一部(3~4割程度と、あくまでも現居住地への納税分を超えない範囲)を選択して納税できるという制度であり、採用される見通しである。[要出典]
[編集] 移譲される権限
道に移譲される権限については、現在の所、以下のような、国及び国の地方支部局が担う事務の一部と、現行の都道府県が担う事務のうち市町村へ移行しないものとする、との論議がある。
(基本的に国の地方支部局は道に統合され、地方支部局職員は道職員に、また都道府県職員のうち、一部は市町村職員となる)
これらの事務のうち、国から移譲される以下のような権限について、地方を中心に移譲項目が少ないという意見や、逆に中央省庁を中心に移譲する項目が多過ぎるといった意見など様々で、意見が一致していない問題を抱えている。それ故に、道州制先行特区法案では、権限については、4~8項目のかなり限定的な移譲に留まる見通しである。
- 社会資本整備:国道の管理、地方道の管理(広域)、一級河川の管理、二級河川の管理(広域)、特定重要港湾の管理、第二種空港の管理、第三種空港の管理、砂防設備の管理、保安林の指定
- 環境:有害化学物質対策、大気汚染防止対策、水質汚濁防止対策、産業廃棄物処理対策、国定公園の管理、野生動物の保護と狩猟監視(希少・広域)
- 産業・経済:中小企業対策、地域産業対策、観光振興政策、農業振興政策、農地転用の許可、指定漁業の許可と漁業権免許
- 交通・通信:自動車運送や内航海運業等の許可、自動車登録検査、旅行業やホテル・旅館の登録
- 雇用・労働:職業紹介、職業訓練、労働相談
- 安全・防災:危険物規制、大規模災害対策、広域防災計画の作成、武力攻撃事態等における避難指示等
- 福祉・健康:介護事業者の指定、重度障害者福祉施設の設置、高度医療、医療法人の設立認可、感染症対策
- 教育・文化:学校法人の認可、高校の設置認可、文化財の保護
- 市町村間の調整:市町村間の調整
(※上記のうち、太字の21項目が国から道へ移譲する権限)
[編集] 首都機能移転問題との関係
東京都区部を、ソウル特別市やベルリン特別市と同様に一市単独の道とするか否かという議論の中で、関連して浮上する問題が、首都機能移転問題である。
東京都区部を外の地域と組み合わせて南関東道に入れたり、南関東道の道都を東京都区部に置くと、地方出身の議員を中心に、「東京一極集中の緩和」「地方への機能分散」などの意見から、国会や省庁などの中枢機能を外の地域へ遷すべきだという議論が再燃する可能性が高くなる。
この為、東京都区部を一つの区域として、「東京首都特別市」といった呼称など、「首都」を付けて日本の首都として明確な定義を与えるべきだという意見もある。
[編集] 関連項目
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[編集] 参考図書
[編集] 外部リンク
[編集] 脚注・出典
- ^ 長周新聞 2002年7月6日付記事
- ^ 日本海新聞 2006年7月14日付記事
- ^ 山陽新聞 2006年10月18日付記事
- ^ 山陽新聞 2007年1月18日付記事
- ^ 茨城新聞 2006年3月5日付2頁
- ^ <!--記事名またはページの提示を-->中日新聞 2007年1月1日付記事より。
当記事では、日本世論調査会の調査で、市町村数が5/9も削減(3240→1800)された「平成の大合併」に対しても、賛成が20%、反対が17.5%とほぼ半々なのに対して、「どちらとも言えない」が62.5%に上った事も掲載されている。 - ^ 茨城新聞 2006年3月5日付2頁
- ^ 北海道開発局 産業連関表による公共投資のフロー効果分析
- ^ 北海道は道州制が施行されても「北海道」が無くなるわけではなく、単に権限が大きくなるだけなので、内地よりも道州制反対運動が少ない。
- ^ 福井新聞 2007年1月19日付記事
- ^ 関西経済連合会「関西州(産業再生)特区構想」2004年6月30日。参加団体:関西経済連合会、関西経済同友会、関西経営者協会、京都商工会議所、大阪商工会議所、神戸商工会議所。
- ^ 福井新聞 2006年3月2日付記事
- ^ 福井新聞 2006年3月6日付記事
- ^ 国土交通省国土審議会 第4回圏域部会資料 2006年1月18日2頁
- ^ 読売新聞 2007年1月5日付記事より。
「関門特別市」を創設する意義について、「道州制の話もあり、新たな枠組みを議論する時期に来ている」と、末吉興一・北九州市長(当時)が発言し、「道州制で両市が分断されることに危機感を持っている」と、江島潔・下関市長も発言している。しかし、「下関が小倉に呑み込まれてしまう」と危惧する声も、とりわけ下関市に存在する。これらの詳細は関門通信 2007年2月28日付記事も参照すること。 - ^ 日本海新聞 2006年2月28日付記事
- ^ 福井新聞 2007年1月19日付記事
- ^ 大前研一と平松守彦の共著「熱論・合州国国家日本」より。
- ^ 奥野誠亮著「都道府県合併促進論」より。
- ^ 日本海新聞 2006年2月28日付記事
- ^ 加茂市役所市報別冊 2002年12月10日
- ^ しんぶん赤旗 2006年9月29日付記事
- ^ 関西経済連合会 関西州(産業再生)特区構想 2004年6月30日
- ^ 熊本県内から大牟田市への通勤・通学人口は、福岡県内他市町村からの通勤・通学人口を上回る(2000年国勢調査結果[1]より)。
- ^ 茨城新聞 2006年3月5日付2頁
- ^ 国土交通省国土審議会 第4回圏域部会資料 2006年1月18日2頁
- ^ 国土審議会第7回圏域部会配付資料-地方公共団体、経済団体からの意見聴取結果まとめ 2006年4月19日 1頁、10頁、20頁、27頁
- ^ 福島県では、佐藤栄佐久前知事が道州制を拒否したが、現職の佐藤雄平知事も否定的な姿勢を示している。詳細は福島県知事会見録 2006年11月15日を参照すること。
加茂市(新潟県下越地方)の小池清彦市長は、道州制を「全体主義ファッショ」として拒否している。
富山県の石井隆一知事は、道州制施行後の税収問題を挙げて、道州制に否定的な姿勢を示している。
兵庫県の井戸敏三知事と、福井県の西川一誠知事は、「(道州制の)導入を前提にした議論を行うべきではない」と発言して、道州制を拒否している。
鳥取県の片山善博知事は、「規模の拡大は住民自治の否定に繋がる」と発言しており、北海道特区も批判している。詳細は日本海新聞 2006年7月14日付記事を参照すること。 - ^ 国土交通省国土審議会第4回圏域部会資料 2006年1月18日2頁
- ^ 北日本新聞 2006年7月16日付記事
- ^ 北日本新聞 2007年1月21日付記事