呉線
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呉線(くれせん)は、広島県三原市の三原駅から広島県安芸郡海田町の海田市駅に至る西日本旅客鉄道(JR西日本)の鉄道路線(幹線)である。
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[編集] 路線データ
- 管轄(事業種別):西日本旅客鉄道(第一種鉄道事業者)
- 路線距離(営業キロ):87.0km
- 軌間:1067mm
- 駅数:28駅(起終点駅含む)
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化区間:全線(直流1500V)
- 閉塞方式:単線自動閉塞式
- 最高速度:95km/h
- 運転指令所:広島総合指令所
※全区間、西日本旅客鉄道広島支社の管轄である(うち、三原~広間は広駅構内を除き三原地域鉄道部が管轄。広~海田市間は支社直轄)。広島支社独自で与えられているラインカラーは緑。
[編集] 概要
かつての軍港呉市を通り、瀬戸内海沿いに三原市と県都広島市を結んでいる。山陽本線のこの区間は瀬野八と呼ばれる線内最大の連続急勾配区間を挟むため、呉線は同線のバイパスとして機能してきたが、山陽新幹線開業後は、沿線の急速な都市化と併せて、通勤・通学輸送が主体となっている。
三原駅~広駅間は、観光路線としての側面も持ち、公募により瀬戸内さざなみ線という愛称が付けられた。海のすぐ近くまで山が迫る区間も多く、安芸幸崎駅~忠海駅間の瀬戸内海を眺望できるところでは20km/h程度の低速で走行する。これは、沿線に道路が並行しないことに伴う保守コスト削減のためでもある。同様の理由で安芸津~須波間には計7箇所の低速走行区間がある。これら低速走行区間の設定は比較的最近のことであり、広~三原間の所要時間は以前より延びた。しかし同区間は日中はワンマン列車導入、減便なども行われており、海田市~広間に比較してローカル線色が濃いものとなっている。かつて頻繁にみられた115系電車や103系電車の運用も朝夕のみとなった。
また、戦前・戦中は沿線に軍事施設が多く存在することから要塞地帯に指定され、列車の鎧窓を下ろして軍艦が見えないようにするように乗客が命じられていたこともあった。
全線単線であるが、輸送量が多いことから、途中駅のほとんどが行き違い駅となっている。2006年現在、利用者や経済界からの所要時間短縮の要望を受けて、呉市による複線化に向けた調査が行われている。
駅ののりば番号は、駅本屋があるほうから1番線、2番線…と付けていくのが通例だが、呉線内各駅ののりば番号の付け方は、駅本屋の場所に関係なく上り本線から1番線、2番線…の順となっている。
歴史的な経緯から、山陽本線との間に経路特定区間が設定されている。1978年に呉線を経由する優等列車は消滅しているが、それ以降も今日に至るまでこの制度の対象区間である。
[編集] 運行形態
全通以来1978年まで山陽本線の優等列車の一部や1986年まで荷物列車の一部が呉線を経由していたが、現在は快速・普通列車のみの運転となっている。海田市側では全ての列車が広島駅(一部はさらに岩国・可部方面)まで乗り入れる。全線を通して運転される列車は朝夕が中心で、データイムは広駅で運転系統が分かれており、三原側は糸崎・三原~広間、海田市側は広~広島・岩国間の運転が多い。また、呉~広島間に快速列車快速「安芸路ライナー」・「通勤ライナー」が設定されている。
※広島シティネットワークも参照されたい。
[編集] 使用車両
現在、呉線では以下の形式の車両が使われている。なお、臨時列車については後述する。
[編集] 快速「安芸路ライナー」・「通勤ライナー」
呉~広島間に快速列車が設定されている。その内、日中には「安芸路ライナー」が日中30分に1本程度、また通勤時間帯には快速「通勤ライナー」が計12本運行される。
使用車両としては103系3両編成(ワンマン列車)、115系4両編成が使用される。なお、土曜・休日で利用の多い時間帯は、103系4両編成が使用されることがよくある。
なお、「安芸路ライナー」の愛称は、1999年2月7日から現在の通勤ライナーに該当する列車も含め使用している。当初は、広島支社発行の無料の時刻表のみ愛称が併記され、全国版の時刻表には併記されていなかった。
呉駅~広島駅を約30分で結ぶ。普通列車との所要時間差は15分程度。
[編集] 停車駅
※広島シティネットワークも参照されたい。
[編集] 臨時列車
2005年には、広島県の大型観光キャンペーンにより、3月~8月の土曜休日中心に「スーパーサルーンゆめじ」で快速「瀬戸内おさんぽ号」が運転された。そして同年10月1日からキハ47形気動車改造車を使用し、観光列車として快速「瀬戸内マリンビュー号」が運転されている。
全線電化の路線を全区間で気動車が走行するのは全国でも珍しい。自由席車両があるため地元客の利用も多く、特に上り4号の広~広島間は通勤通学客で満員になる。 なお、2005年の新設時は広~三原間は安芸川尻駅、安浦駅、安芸津駅、竹原駅、忠海駅にのみ停車していたが(1・2号が安登駅に運転停車)、2006年3月18日のダイヤ改正で広~三原間は各駅停車になった。
[編集] 沿革
- 2005年(平成17年)3月19日 211系・スーパーサルーン「ゆめじ」編成(3両)を用い「瀬戸内おさんぽ号」として運行開始。
- 2005年(平成17年)10月1日 「瀬戸内マリンビュー」として運行開始。
- 2006年(平成18年)3月18日 種別は快速のまま広~三原間が各駅停車に。
[編集] 運行概況
2006年3月18日改正時点で、1日あたり4本の運行で1・4号が広島~三原間、2・3号が呉~三原間を往復する。広島~広間は、定期列車の合間を縫って運行するため、運転停車が多い。列車愛称の号数は通常下り列車は奇数号、上り列車が偶数号になるが、この列車は広島駅基準のため、下りが偶数号、上りが奇数号と逆になっている。
[編集] 停車駅
- ●:停車。
- ←・→:通過(矢印方向に運行)。
- 運:運転停車。
-
号数\駅名 広島駅 海田市駅 坂駅 水尻駅 小屋浦駅 かるが浜駅 呉駅 安芸阿賀駅 広駅 1 ● 運 → 運 運 運 ● → ● 2 ● ← ● 3 ● 運 ● 4 ● ← 運 ← 運 運 ● 運 ●
- 広~三原間は各駅に停車。
[編集] 使用車両
[編集] 歴史
軍都広島と軍港呉を結ぶ必要から呉~海田市間は官設(呉線)で1903年に開業している。
三原~呉間が開業したのは遅く、三呉線(さんごせん)として三原~須波間が1930年に開業、全通したのは1935年のことである。かつて当線を経由した優等列車としては急行安芸、出島、音戸など、寝台特急安芸などがあげられる。列車の沿革の詳細は山陽本線優等列車沿革および臨時列車の項目を参照のこと。このため、かつては線路規格が高く設定されており、C59形やC62形といった大型の旅客用蒸気機関車が電化まで運用されていた。
[編集] 呉線
- 1903年(明治36年)12月27日 【開業】海田市~呉 【駅新設】矢野、坂、天応、吉浦、呉
- 1904年(明治37年)7月28日 【仮停車場新設】+浜崎
- 1904年(明治37年)12月1日 【貸渡】海田市~呉(山陽鉄道)
- 1906年(明治39年)12月1日 【国有化】海田市~呉
- 1909年(明治42年)10月12日 【国有鉄道線路名称制定】呉線 海田市~呉
- 1914年(大正3年)5月1日 【駅新設】+小屋浦 【仮乗降場廃止】浜崎(小屋浦駅新設により)
- 1926年(大正15年)7月21日 【仮停車場新設】+安芸浜崎
- 1928年(昭和3年)7月7日 【仮停車場新設】+狩留賀浜
- 1935年(昭和10年)3月24日 【延伸開業】呉~広 【駅新設】安芸阿賀、広
[編集] 三呉線
- 1930年(昭和5年)3月19日 【開業】三呉線 三原~須波(5.1km) 【駅新設】須波
- 1931年(昭和6年)4月28日 【延伸開業】須波~安芸幸崎(6.7km) 【駅新設】安芸幸崎
- 1932年(昭和7年)7月10日 【延伸開業】安芸幸崎~竹原(13.5km) 【駅新設】忠海、大乗、竹原
- 1935年(昭和10年)2月17日 【延伸開業】竹原~三津内海(18.9km) 【駅新設】吉名、安芸三津、風早、三津内海
[編集] 全通以後
- 1935年(昭和10年)11月24日 【延伸開業・全通】三津内海~広。三呉線が新規開業区間・呉線(初代)を編入し呉線(2代目)に改称。【駅新設】安登、安芸川尻、仁方、+川原石
- 1940年(昭和15年)11月1日 【駅営業停止】川原石
- 1946年(昭和21年)5月1日 【駅名改称】三津内海→安浦
- 1949年(昭和24年)11月20日 【駅名改称】安芸三津→安芸津
- 1958年(昭和33年)8月1日 【駅営業再開】川原石
- 1967年(昭和42年)8月1日 【仮停車場廃止】狩留賀浜、安芸浜崎
- 1970年(昭和45年)9月15日 【電化】全線(直流1500V)
- 1986年(昭和61年)11月1日 【貨物営業廃止】全線
- 1987年(昭和62年)4月1日 【承継】西日本旅客鉄道
- 1992年(平成4年)3月19日 【駅新設】+呉ポートピア
- 1994年(平成6年)10月1日 【駅新設】+安芸長浜
- 1999年(平成11年)2月7日 【駅新設】+かるが浜、+水尻 【駅移転】川原石
- 2002年(平成14年)3月23日 【駅新設】+新広
- ※駅名の前に付した+は、既設線への新駅設置を表す。
[編集] 駅一覧
三原駅 - 須波駅 - 安芸幸崎駅 - 忠海駅 - 安芸長浜駅 - 大乗駅 - 竹原駅 - 吉名駅 - 安芸津駅 - 風早駅 - 安浦駅 - 安登駅 - 安芸川尻駅 - 仁方駅 - 広駅 - 新広駅 - 安芸阿賀駅 - 呉駅 - 川原石駅 - 吉浦駅 - かるが浜駅 - 天応駅 - 呉ポートピア駅 - 小屋浦駅 - 水尻駅 - 坂駅 - 矢野駅 - 海田市駅
- 快速列車の停車駅等は快速「安芸路ライナー」・「通勤ライナー」および広島シティネットワークを参照。
[編集] 接続路線
- 三原駅:山陽本線
- 海田市駅:山陽本線