相鉄10000系電車
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相鉄10000系電車 | |
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二俣川駅にて2004年8月25日撮影 | |
起動加速度 | 3.0km/h/s |
営業最高速度 | 120km/h |
減速度 | 4.0km/h/s(常用最大)
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軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 直流1,500V(架空電車線方式) |
制御装置 | VVVFインバータ制御 |
ブレーキ方式 | 回生制動併用電気指令式電磁直通空気制動 |
保安装置 | 相鉄型ATS |
相模鉄道の10000系電車(10000けいでんしゃ)は、2002年(平成14年)2月24日に営業運転を開始した相模鉄道の通勤形電車である。
目次 |
[編集] 概要
老朽化した2100系、5000系および新6000系の置き換えのために、東日本旅客鉄道(JR東日本)のE231系をベースに設計・製造された。
1992年(平成4年)度以降、8000系(日立製作所製)や9000系(東急車輛製造製)が新規製造されていたが、製造コストの節減が強く求められたためか、あるいはJR線乗り入れによる東京方面への直通運転構想への布石かは不明であるが、大手私鉄では初めて同業他社車両の設計を流用して製造された車両となった。以後、東京急行電鉄の新5000系列や東京都交通局(都営地下鉄)新宿線の10-300形など、E231系の設計を流用した他社局の車両が登場することとなる。
第4編成 (10704F) 以降は、車両メーカーからの直接購入ではなくJLL(日本型レバレッジドリース)によるリース方式が採用され、車両導入のコストを軽減している(詳細は下記「リース会社」へ)。
車両の製作は東急車輛製造の他、一部の車両はJR東日本の新津車両製作所が担当しており、これは同所としては初の他事業者向けの車両でもある。編成の中で両社製の車両が混在している場合、車内の製造所表記は両社連名となっている。
[編集] 構造など
基本的にはE231系通勤タイプの図面や内装、主要な機器類をほとんどそのまま流用しているが、相鉄線の車両限界に合わせ、オリジナルのものより車体幅が20mm狭くなっている他、連結器が密着自動式のものに変更されている。ロット的には初期車は中央・総武緩行線用(0番台)、後期車は山手線用(500番台)のものに近い。
- 台車はE231系のボルスタレス台車と同一仕様で、相鉄を意味する「ST」を頭に付与しただけの形式であり、駆動装置も長らく使われてきた直角カルダン式から脱却し、TDカルダン式とされた。
- 相鉄電車の特徴であった、車軸外側に露出したディスクブレーキが内側に入り、目立たなくなってしまった。
- 相鉄では初めてモーター点検蓋が廃止された。
- 相鉄では初めてのオールステンレス車体になった他、初めて種別・行先表示器に英文・ローマ字表記を付加した。カラーは緑やオレンジの新6000系のイメージを引き継いだものである。
- VVVFインバータ装置は、E231系通勤タイプで使われる三菱電機製IPM-IGBT素子を採用したが、後に純電気ブレーキ対応に改造された。
- ドアエンジンは電気スクリュー軸駆動式を使用している。これも中央・総武緩行線通勤タイプと同じである。
- 10703F以降の編成はドアチャイムの音色が山手線用のE231系500番台と同一とされ、若干音量が低減されている。またドアエンジンも500番台と同一とされ、中央・総武緩行線タイプと比べて動作が静かである。
- 集電装置として、シングルアーム式パンタグラフを使用している。
- TIMS (Train Information Management System) と称される列車情報管理システムを搭載している。
- ドア上部のLED式案内表示器は中央・総武緩行線用のE231系などと同一の1段表示である。中央・総武緩行線E231系では次駅の案内のみだが、10000系では乗り換え案内もされる仕様になっている。
- E231系の常磐快速・成田線仕様、500番台、800番台および近郊タイプで導入されている車内自動放送は、当系列では採用されていない。
- 8000系や9000系の一部車両にあったドア間のセミクロスシートは取りやめられ、すべてE231系通勤タイプの片持ち式のバケット式ロングシートになった。2-3-2の仕切り兼用の握り棒もあり、E231系図面をそのまま流用している。
- 窓もE231系図面が流用され、通勤タイプと同じ巻き上げカーテンを廃した、濃色のUV(紫外線)カットガラスで、2/3が開閉できるもの。8000系や9000系までの1枚窓に採用されていた、押しボタン操作によるパワーウィンドウも取りやめた。
- 電動車 (M) と付随車 (T) の比率(MT比)は1:1に強化(E231系では2:3)して加速力を高め、起動加速度は従来の9000系などと同様の3.0km/h/sを確保している。このため10両編成には、E231系には見られない単独電動車(1M車)が存在する(5号車)。
- 10705F以降の編成は火災対策強化のため、天井の冷房吹き出し口の素材を繊維強化プラスチック (FRP) からアルミ合金に変更したり、全連結部にドアチェック付の貫通扉を設置するなどの設計変更がある。
[編集] 基本性能
- MT比 5M5T(10両)、4M4T(8両)
- 起動加速度 3.0km/h/s
- 減速度 4.0km/h/s(常用最大)4.5km/h/s(非常)
- 主電動機 ST-MT73、出力95kW
- 制御方式 IPM-IGBT素子によるVVVFインバータ制御
- 制動方式 回生制動併用電気指令式電磁直通空気制動(滑走再粘着付き)・直通予備ブレーキ・耐雪ブレーキ
- 設計最高速度 120km/h
- 保安装置 相鉄形ATS、誘導無線装置、EB装置、TE装置
使用電力量は、7000系の約半分とアナウンスしている。
[編集] 編成
- 10両編成(10701F・10702F・10708F)
- クハ10700(Tc2)-モハ10200(M2)-モハ10100(M1)-サハ10600(T1)-モハ10300(M3)-サハ10600(T2)-サハ10600(T1)-モハ10200(M2)-モハ10100(M1)-クハ10500(Tc1)
- 8両編成(10703F~10707F)
- クハ10700(Tc2)-モハ10200(M2)-モハ10100(M1)-サハ10600(T2)-サハ10600(T1)-モハ10200(M2)-モハ10100(M1)-クハ10500(Tc1)
[編集] 在籍数
2001年(平成13年)度から2004年度まで毎年増備が続けられ、2007年(平成19年)3月現在、10両編成3本(30両)と8両編成5本(40両)の計70両が在籍する。2005年(平成17年)度は増備がなかったが、2006年(平成18年)度は5年ぶりに10両編成が1本(10両)製造され、2007年3月20日から営業運転を開始した。
[編集] 運用
他系列と共通の運用に就いている。8両編成(10703F~10707F)は主に運行番号が10番台・20番台の運用に充てられている。8両編成で運転される列車はその旨が駅の時刻表にも記載されており、各停には当系列が多く使われている。10両編成(10701F・10702F)は主に運行番号が60番台の運用に充てられ、急行・快速を中心に使用されている。
[編集] リース会社
- 10701F~10703F・10708F:車両メーカーより直接購入
- 10704F:エスエムエルシー・エリダヌス有限会社
- 10705F:エスエムエルシー・パヴォ有限会社
- 10706F・10707F:エスエムエルシー・グルス有限会社
[編集] その他
- 車体広告車に起用されることがあり、これまでにボーダフォン日本法人(現・ソフトバンクモバイル)、日立グループ、横浜ケーブルビジョンの広告がラッピングされた。2007年4月現在は10701Fが日立の広告車としてドアの両脇にラッピングが施されており、車内も日立関連の広告が掲出されている。
- 2006年5月に横浜港開港150周年記念事業の一環として10702Fが「横濱はじめて物語号」のラッピング車となった。上記の車体広告車とは異なり扉間全体にラッピングが施されている。運行開始当初、車内では網棚上の広告枠などに横浜開港記念のポスターが掲示された。このラッピングで2007年3月31日まで運行する予定だったが、同年4月に入ってからも運行を継続している。
- 趣味者の間では、相模鉄道のこれまでの車両における技術的な特徴などがなくなってしまったことについての意見もあるが、逆に相模鉄道の車両限界はJR以外の鉄道事業者では最も広い(車体幅2,930mmに合わせたものとなっていた)からこそ、E231系をベースにした車両がそのまま導入できた。
- 先頭車の前面には当初、現在のCIロゴとは異なるデザインの「SOTETSU」、側面の運転台側には、「SOTETSU 10000」と表記したエンブレムがそれぞれ貼付されていたが、2006年秋から前面、側面ともに順次相鉄グループのCIロゴに貼り替えられている。先述した「横濱はじめて物語」ラッピング車である10702Fについては一時的に前面のみ新CIロゴに貼り替えられた。
- 2006年度まで、相鉄の車両は各系列別に車体の塗装が異なっていたが、2007年4月より全車両とも相鉄の新コーポレートカラーの相鉄ブルーと相鉄オレンジの新デザインに順次変更されることが発表された。これは、当系列のカラーリングが基となっている。相鉄公式サイトのニュースリリース(PDF)、地元新聞社の記事1、地元新聞社の記事2
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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