戦国自衛隊
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『戦国自衛隊』(せんごくじえいたい)は、半村良の小説、及びそれを原作として角川映画が1979年に制作した日本映画。2005年6月に、半村良原案、福井晴敏原作の『戦国自衛隊1549』として内容を全く変えリメイクされた。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 小説版
「近代兵器で武装した現代の軍隊」と「弓矢や刀で武装した戦国時代の鎧武者軍団」が戦ったらどうなるのか? という疑問に対して、あくまで現実的な回答を用意したSF小説の金字塔であり、架空戦記の元祖的作品。
かつての自衛隊ものの作品の場合、そこでは自衛隊という「組織」の存在意義などが問われるだけで、そこに所属する隊員という、個人の「生き方」が問題にされることはほとんどないと言ってよかった。
このように個人としての顔を奪われ、自分達のスタンスを宙吊りにされた自衛隊員達を集団ではなく一個の人間として捉え、自衛隊に活躍の場を与えようとした小説だった。
その意味では、主人公である伊庭三尉が第一師団より派遣された輸送隊長(旧軍でいう輜重兵)である事をはじめ、海上自衛隊の哨戒艇、(所属は明記されていない)航空自衛隊のヘリコプターといった、自衛隊の中においてすら地味な支援職種にスポットライトが当てられている事に留意したい。
初め「SFマガジン」の1971年9・10月号に掲載された同作は、その後1974年の中短編集『わがふるさとは黄泉の国』に収録され、翌1975年のハヤカワ文庫化の際に初めて独立して刊行された。
本作では自衛隊が送り込まれた戦国の世は、正史とは微妙なズレがあり、斎藤道三も織田信長もいない。そんな中、長尾景虎(後の上杉謙信)と手を組んだ伊庭義明を中心とする自衛隊は現代兵器と戦術を戦国の世に持ち込み、戦に勝ち続け、川中島の後もまだ物語は続き、天下統一を間近にする。
伊庭三尉らは装甲車やトラックをむやみやたらに使おうとせず慎重だが、それでいて、戦略的な兵力展開を視野に、経済波及効果も考慮しながら機動力の発揮できる広い道路を、過去の人々を利用して整備したりするなど、かなりリアルでシミュレーション的要素は強い。
「我々が知る歴史と異なる歴史を持つこの世界における自らの役割は何か?」と伊庭は問い続けるが、結局京の妙蓮寺に宿泊しているところを細川藤孝に叛乱を起こされ自害してしまう。その際、燃えさかる寺で伊庭が戦国の日々を回想し「この世界は我々が知る世界とは異なる歴史を持とうとしていたが、自らがこの世界へ来て、(織田信長らの代役として)タイムパラドックスを修正してしまった」という皮肉な事実に気付かされるという、驚くべきクライマックスで幕を閉じる。
[編集] ストーリー
近代兵器を装備した自衛隊が裏日本一帯で大演習を展開していた。新潟と富山の県境に第十二師団、第一師団、海上自衛隊が集結したが、そのうちの30名余りを、突如、「時震」が襲った。竜巻に巻き込まれ、激しく歪む大地に、彼等の姿は装甲車、哨戒艇、補給トラック、物資、弾薬と共に跡形もなく消えていった……。伊庭三尉を中心とするその一団は、いつの間にか群雄が割拠する戦国時代にタイムスリップしていた。そこで後に上杉謙信となる武将とめぐり逢い……
[編集] 登場兵器
- 60式装甲車 ただし、情報不足からか、原作では60式自走無反動砲と混同された節がある。漫画版では60式装甲車とジープ搭載型60式106mm無反動砲各一台に修正されている。
- 川崎重工KV107IIバートル
- GMCカーゴトラック
- 哨19号型哨戒艇
- ジープ
- 64式7.62mm小銃
- 64式対戦車誘導弾(MAT)
[編集] 映画版
戦国自衛隊 | |
監督 | 斎藤光正 |
---|---|
製作 | 角川春樹 |
脚本 | 鎌田敏夫 |
出演者 | 千葉真一 渡瀬恒彦 夏木勲 |
音楽 | 羽田健太郎 |
撮影 | 伊佐山巌 |
編集 | 井上親弥 |
配給 | 東宝 |
公開 | ![]() |
上映時間 | 139分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
allcinema | |
キネマ旬報DB | |
All Movie Guide | |
IMDb | |
[編集] 戦国自衛隊
映画版の『戦国自衛隊』は、角川春樹事務所製作のいわゆる角川映画として制作された。1979年12月5日より東宝の配給で公開された1980年の正月映画である。ハヤカワ文庫から出されていた原作は、角川文庫にも収められ、角川商法とも言われたメディアミックス商法が行なわれた。『スター・ウォーズ』『宇宙戦艦ヤマト』などによるヒットでSFブームの渦中という時代背景において本作は制作され、角川は本作の半年後には小松左京原作のSF大作『復活の日』を映画化している。
伊庭三尉(千葉真一)率いる陸自の一個小隊が戦国時代にタイムスリップという基本設定自体は同じであるが、戦の数や車両など原作と映画ではストーリーを含めてかなり異なっている。
監督には斎藤光正、脚本には鎌田敏夫を起用。テレビドラマ「俺たちの旅」シリーズを代表作とし、青春ものを得意としたコンビはSFものというよりは運命に翻弄される自衛隊員の青春群像を描いている。これはプロデューサーの角川春樹の意図でもあったという。
撮影においては、戦国時代とはいえ、同じ日本人に銃口を向けたり、女性を強姦する自衛隊員がいたりする設定に難色を示した自衛隊からは協力が一切得ることが出来なかった。この映画のために61式戦車を制作し、この戦車は後に映画『ぼくらの七日間戦争』やテレビ番組『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』でも使用された。TBSドラマ『さとうきび畑の唄』では米軍戦車として登場している。
補給を受けられない部隊の燃料、弾薬等の問題、何故彼らがタイムスリップすることになったのか等、原作の魅力の一つだった綿密に設定された思考実験的要素や戦術性が映画版では重視されなかったことで、それらの要素にこだわりのある原作ファンからも不満が出たものの、奇想天外なストーリーと千葉真一の演出による迫力あるアクションシーンは一般からはまあまあ楽しめる娯楽作品として迎えられ、配給収入13億円のヒットを記録した。
一般映画ではあったが倫理的に問題のある描写が多く、他者と一緒には鑑賞しにくい作品であった。
[編集] ストーリー
伊庭三尉を隊長とする近代武器で武装した21名の陸上自衛隊員達は、演習に参加する為の移動の際、偶然補給地ごと戦国時代にタイムスリップしてしまった。
成行きから彼等は、後の上杉謙信となる長尾平三景虎に加担する事になり、天下を取ることを決意するが……。
[編集] スタッフ
- 監督:斎藤光正
- 製作:角川春樹
- プロデューサー:元村武
- 原作:半村良 『戦国自衛隊』より
- 脚本:鎌田敏夫
- 撮影:伊佐山巌
- 特撮監督:鈴木清
- 音楽:羽田健太郎
- 主題歌:松村とおる 『戦国自衛隊のテーマ』
- エンディングテーマ:ジョー山中 『ララバイ・オブ・ユー』
- 音楽監督:角川春樹
- 音楽プロデューサー:鈴木清司、高桑忠男
- 美術:植田寛、筒井増男
- 照明:遠藤克己
- 編集:井上親弥
- 録音:橋本文雄
- 助監督:山下稔
- アクション監督:千葉真一
- スタント・コーディネーター:菅原俊夫、斉藤一之
[編集] キャスト
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伊庭役のアクション俳優・千葉真一はスタントマン無しのアクションを披露している。伊庭と対立する隊員役は渡瀬恒彦が演じている。渡瀬は前年の映画『皇帝のいない八月』でもクーデターを起こす自衛隊員役を演じている。千葉真一率いるジャパン・アクション・クラブ(JAC)のメンバーも多く出演しており、真田広之はヘリコプターから飛び降りるアクションを見せた。自衛隊員役には高橋研、にしきのあきら、鈴木ヒロミツ、かまやつひろしら、音楽分野の人間も起用された。
前年『野生の証明』でデビューしたばかりの薬師丸ひろ子は自衛隊員を槍で刺し殺す「子供のような武士」役で、草刈正雄は翌年公開の主演映画『復活の日』の宣伝ポスターを彷彿とさせるような姿で近くを通り過ぎるだけの農民役で、それぞれワンシーンのみ出演している。 他にもこの映画には角川春樹、岸田森、宇崎竜童など、何人かの俳優・タレントがカメオ出演している。
小野みゆき、岡田奈々ら女優陣にはあえて台詞を割り当てない演出が施されている。
[編集] 登場兵器
[編集] 戦国自衛隊1549
2005年6月11日公開。原案:半村良、原作:福井晴敏、監督:手塚昌明。1979年公開版のリメイク作品であるが、旧作と設定・ストーリー上の直接の繋がりはない。
- この作品の詳細は『戦国自衛隊1549』の項目で。
[編集] 劇画版
[編集] 戦国自衛隊
1975年6月から1976年2月まで、秋田書店の雑誌「プレイコミック」に原作に忠実な劇画版が発表された。作画は、望月三起也のアシスタントであった田辺節雄。師匠譲りの迫力ある画面を展開した。
[編集] 続・戦国自衛隊
2000年から書き下ろしで世界文化社から発表された。作画は同じ田辺節雄。ストーリーはオリジナル(半村良は原案としてクレジットされる)で、現代の自衛隊が関ヶ原の戦いに再び投入される形で前作の完全な続編。
自衛隊だけでなく米海兵隊もタイムスリップし、自衛隊が豊臣方、米海兵隊が徳川方に参加している形態をとっている。現代・過去ともに20数年を経過しており、前作の登場人物やその子孫も登場し、また武器および兵器の性能が上がっている分、さらに過酷な戦いが展開される。〔むしろ内容はほぼ戦国米軍と言い切ってしまいたくなる。〕
単行本全8巻+外伝(廉価版全10巻)で双方のタイムスリップと戦いを描いた第1部(関が原の戦い)ならびに自衛隊と米軍との最終決戦を描いた第2部(大坂の陣)で構成され、後日談として、島原の乱を舞台とした自衛隊員の闘いの終焉を描いた第3部が、番外編として第1部を米軍側から見た作品が発表されている。
小説もコミックとストーリーが多少異なるが4巻出版されている。
なお、この劇画の前半部分のノベライズが同じ世界文化社から発売されている。冒頭のシーン(北朝鮮からミサイルが発射された事に対する総理の対応)や、隊員達がMREを食べているときのシーンなど、その時の世相を反映して単行本と廉価版では内容が異なる。
[編集] 登場兵器
[編集] 自衛隊
- おおすみ型輸送艦
- 90式戦車
- 89式装甲戦闘車
- 96式装輪装甲車
- 82式指揮通信車
- 87式偵察警戒車
- 高機動車
- 73式大型トラック
- 73式中型トラック
- 73式小型トラック(新)
- 偵察用オートバイ
- UH-60JA多用途ヘリ
[編集] 米海兵隊
[編集] ドラマ版
[編集] 戦国自衛隊・関ケ原の戦い
東映製作のテレビドラマ。2006年1月31日に前編、2月7日に後編が日本テレビ系列「ドラマ・コンプレックス」枠で放送。
作品は、歴史に干渉せずに全員無事に現代に帰りたい伊庭と、残り少ない命を戦乱の世で完全燃焼させたい嶋村との対立がドラマの軸足になっている。後編では番組後半の戦闘シーンで、映画版の「戦国自衛隊のテーマ」が使われた。
しかし、公式サイトの掲示板で、
- 最後のシーンで、深見(佐藤江梨子)が何故あのようなポーズをとったのか。
- 胡坐(あぐら)をかいて大仏像のようなポーズをとった事に対して。
- 嶋村(渡部篤郎)が処刑されるシーンから物語がおかしくなった。
- このシーンからいきなり伊庭隊の8人の生存者が徳川家康の兵によって殺され、生存者が深見1人だけになってしまったシーンだと思われる。
といった議論が起こった。
[編集] スタッフ
- 原案:半村良
- 原作:田辺節雄、宇治谷順
- 脚本:石原武龍
- 前編「さらば友よ」監督:猪崎宣昭
- 後編「愛する者のために」監督:斎藤光正
- プロデュース:佐藤敦、前田伸一郎、小嶋雄嗣、河瀬光
- 音楽:千住明
- 主題歌:「Yesterday」
- 唄:SATOMI'
- CG:ポリゴン・ピクチュアズ
- ガンエフェクト:BIGSHOT
- 技術協力:映広
- 協力:陸上自衛隊東部方面隊第1師団、中部方面隊第3師団、富士学校富士教導団
- 製作協力:東映京都撮影所
- 製作著作:日本テレビ
[編集] キャスト
役柄名の横に(所属小隊)
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- ナレーター:神谷明
[編集] 登場兵器
- 74式戦車 1両
- 96式装輪装甲車 1両
- 73式大型トラック 1台
- 73式中型トラック 1台
- 73式小型トラック 3台
- 軽装甲機動車 1両
- UH-1J多用途ヘリ 1機
- 偵察用オートバイ 2台
- 高機動車 1台
[編集] 似た世界観を持つ作品
- 映画『ファイナル・カウントダウン』(1980年・米) - 米海軍の空母「ニミッツ」が第二次世界大戦中にタイムスリップし、 F-14 とゼロ戦が戦う。どうタイムパラドックスを防ぐのか試行錯誤する点で『戦国自衛隊1549』に近い。前年に戦国自衛隊の公開があり、盗作ではないかと言われたが、『戦国自衛隊』の原作の連載が1975年からであった為に大きな問題にならず終息した。この事については、コンビニコミック版『戦国自衛隊』のあとがきでも触れられている。
- 漫画『ジパング』 - かわぐちかいじ作。海上自衛隊のイージス艦が第二次世界大戦中にタイムスリップする。歴史を意図的に変えようとする点で上記の『ファイナル・カウントダウン』よりは旧『戦国自衛隊』に近い。
- 映画『天軍』(2005年・韓国) - 韓国軍・朝鮮人民軍の兵士が李舜臣が存在する時代にタイムスリップ。両軍は李舜臣を守りながら、現代に帰る方法を探そうとする。映画公開時、ポスターがパイレーツ・オブ・カリビアンのポスターに良く似ていたり、内容も戦国自衛隊に似ていることから一時的に騒動となった。
- 小説『地球から来た傭兵たち』ジェリー・パーネル アンゴラ内戦に参加し、キューバ軍に追い詰められたアメリカ人の傭兵たちが、異星人に救われ、ローマ帝国や中世騎士道文化、ギリシア都市国家やスコットランド高地人が混在する中世レベルの文明の惑星に連れて行かれ、ある仕事を請け負わされる。補給に限りがある現代兵器の使用をなるべく避け、先進的な戦術を用いて敵を撃破するという所で原作に近い。
- 小説『戦国の長嶋巨人軍』 - 志茂田景樹 - 長嶋巨人軍が戦国にタイムスリップし、織田信長と共闘する。
- 小説『PKO軍 関ヶ原合戦に突入す』 - 志茂田景樹 - カンボジアPKO活動派遣途中、関ヶ原合戦直前にタイムスリップ。佐々木小次郎らを配下に、自衛隊員は生き残りを賭けて戦い抜いていく。
- 漫画『スーパー戦国記』 - 中島徳博作。1976年に月刊少年ジャンプに連載。ジェット機に乗っていた高校生3人がジェット機ごと戦国時代にタイムスリップ。そこでは先にタイムスリップしていたアメリカ兵が今川に味方をして桶狭間で信長を殺害していた。高校生3人は信長、秀吉、家康の役割を担うことになってゆく。
- ゲーム『無双OROCHI』 - こちらは戦国時代と三国志の時代が突如として併合され、信長や曹丕と石田三成、孫策と家康、趙雲と真田幸村が組して時代を併合させた敵を倒すという内容になっている。
- その他、1990年代には架空戦記の小説や漫画が多く刊行された。
[編集] 外部リンク
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