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国鉄419系・715系電車 - Wikipedia

国鉄419系・715系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

国鉄419系・715系電車 (共通事項)
営業最高速度 100km/h
減速度 3.5km/h/s(通常)
5.0km/h/s(非常)
最大寸法
(長・幅・高)
20,000×2,956×4,235
軌間 1,067mm
電気方式 直流1,500V*1
交流20,000V(50/60Hz)*2
出力 120kw/基 (MT54)
編成出力 120×8基 = 960kW
歯車比 1:5.60
駆動装置 中空軸平行カルダン撓み板継手方式
制御装置 抵抗制御
ブレーキ方式 発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ
備考 *1 - 419系のみ
*2 - 715系0番台は60Hzのみ
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国鉄419系・715系電車(こくてつ419けい・715けいでんしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)が581・583系寝台特急形電車の改造により製造した近郊形電車である。

581・583系電車は交直流電車であるが、近郊形への改造に際して使用線区の事情により、交直流切替機能を交流側に固定し交流専用とした715系電車と交直流切替機能を存置した419系電車の2系列が用意された。

目次

[編集] 登場の背景

国鉄では1970年代に至るまで、地方交流電化区間では他の電化路線と接続していない北海道を除き、車両製作コストの面から新造電車による運行が行われるのは特急急行などの優等列車と首都圏に隣接する常磐線及び福岡・北九州地区の鹿児島本線日豊本線のみに限られていた。地方都市圏の輸送を担う普通列車は、電気機関車牽引の客車によるか、電化前に使用されていた気動車をそのまま使用する事が通例で都市圏に比べ不便な状態にあった。

これを改善すべく、国鉄は1982年広島地区を嚆矢として、地方都市圏における運行形態を従来の長大編成不等時隔のいわゆる「列車型ダイヤ」から、短編成による等時隔頻繁運転のいわゆる「電車型ダイヤ」への転換を進めた。これは利用者から好評をもって迎えられ、国鉄はこれを全国に拡大していく事になった(1982年11月15日国鉄ダイヤ改正及び1984年2月1日国鉄ダイヤ改正も参照)。

広島地区を始めとする直流電化区間では、従来から使用されていた電車に改造や新造で先頭車をまかない、編成本数の増加を図って対応した。しかし、交流電化区間においては前述のような事情から速度の遅い客車や気動車が使用されており、これでは「電車型ダイヤ」に応えられない事から、これらを置換えるための新たな交流用および交流・直流両用の近郊形電車が大量に必要となった。

1978年には、417系が開発されていた。性能・設備面では地方路線に適した車両であり、本来であれば増備されるべき系列であったが、先行量産的に15両が製造されたのみで増備は頓挫した。1970年代末期~1980年代前期は国鉄の累積債務問題が論議され、国鉄改革が急務とされた時期であり、新規の設備投資が十分に行えない状況下で高価な交直流近郊形電車の新造は困難であったのである。

この様な情勢下で窮余の策として浮上したのが、当時新幹線の延伸により夜行列車としての運用が減少し、余剰となりつつあった寝台座席両用特急形電車581・583系を近郊形に改造転用するという奇策であった。両系列は昼夜兼用で大量に乗客を輸送するというコンセプトから、昼間使用時の座席は急行用と同形態の向い合せ固定式ボックスクロスシートで、昼行専用の485系などの特急用簡易リクライニングシートに比較すると見劣りする設備であった。

581・583系改造近郊形電車は、1984年に交流専用の715系として長崎本線佐世保線用に、続いて1985年に寒冷地対応形の715系1000番台として東北本線仙台地区)に、交流直流両用の419系として北陸本線に投入された。

[編集] 改造の概要

改造経費の節減のため、また、車両余命も考慮して種車となる581・583系電車の基本構造を活かし、近郊形電車として使用するための最小限度の改造内容となっている。そのため、419系・715系は近郊形電車としては極めて奇異な外観を呈する車両となっている。

主な改造内容は以下のとおり。

  • 中間車の先頭車化改造
特急時代は10~12両編成で使用されていた車両を、導入線区の輸送量に合わせて3~4両編成で使用する事情から、不足する先頭車を補うための改造である。改造は、中間車の端部を切断し、あらかじめ工場で製造しておいた運転台ブロックを接合する方式で施工された。新設された運転台は、クモニ143形の構造に類似した非貫通切妻構造であるが、寝台兼用である種車の特徴である深い屋根構造をそのまま残した関係で六角形の特徴的な断面となり、「食パン」、「ひょうきん電車」とも称される事となった。また、偶数東海道本線基準で神戸方)向制御車への改造車には、編成中の補助電源と圧縮空気供給用に電動発電機(MG)と空気圧縮機(CP)を新設した。MGは急行形電車廃車発生品である110kVAのものに脈流対策等を施工して取付けている。クハネ581形改造車のMGは150kVAであるため容量が若干小さいが、4両給電であり、冷房装置の容量も小さいので問題はない。
  • 扉の増設
種車が特急形車両であり、乗降扉が1両あたり片側1ヶ所しかないため、1ヶ所増設して片側2ヶ所配置とした。既設の扉は幅700mmの折戸のまま手を加えず、増設扉も既設扉と同じ構造とされたため、近郊形電車では前例の無い扉の狭さとなった。デッキと客室との仕切は、配電盤部分を除いて撤去した。戸閉回路は種車から変更し、どの運転台からも開閉できる方式とした。
  • 窓の開閉可能化
種車が空調完備の特急形である事から側窓は固定式であったが、近郊形として使用する際、混雑時等の換気のため、1両につき片側3ヶ所が開閉可能な四分割ユニット窓(1ヶ所あたり上段下降・下段上昇×2)に交換された。この窓の日除けは巻上カーテンを採用している。
  • 座席の改造
近郊形としての使用のため、座席の寝台への転換機能を封印し、扉付近はボックスクロスシートからロングシートに変更されている。荷棚はクロスシート部分は中・上段寝台の寝台舟に取付けられている物をそのまま使用し、ロングシート部分は中・上段寝台を撤去して新造の荷棚が設置された。ロングシート・クロスシート部分とも荷棚の先端には立客のために吊手が取付けられている。
  • トイレの撤去
種車の581・583系電車は、1両に2ヶ所のトイレと洗面所を有していたが、トイレを偶数向先頭車1両1ヶ所車端側のみ残し、その他の車両では撤去して扉の増設スペースとされた。一部扉と干渉しないトイレも存在するが、業務用室(物置)扱として閉鎖している。洗面所は洗面器・冷水機等を外し、洗面台部にカバーを被せて使用できないようにされた。
  • 走行性能の変更
種車が特急形であるため、電動車の歯車比は高速向きの1:3,50であったが、近郊形としては起動加速力を欠いて運用し難いため、歯車を101系の廃車発生品に交換して1:5,60とし、普通列車運用に必要な加速力を確保した。これに伴い最高速度は100km/hに抑えられた。
  • 第2パンタグラフの撤去
種車はM'車(モハネ580形・582形)パンタグラフを1両あたり2基装備していたが、このうちユニット外側の第2パンタグラフは元々交流区間では使用していない上、直流区間も走行する交直両用の419系についても運用面で1基でも十分だと判断された事から撤去された。

[編集] 715系0番台

[編集] 改造と投入

1984年2月ダイヤ改正に合せて長崎本線佐世保線用に48両が改造された交流専用車である。ただ、これだけでは不足するため、同時期に713系が新造された。モハネ581形・580形、クハネ581形およびサハネ581形の改造により4両編成12本(NM101~112編成)が組成され、全車南福岡電車区に配置された。塗装は713系と共にクリーム1号地に緑14号帯が新規に設定された。

編成は上り方(鳥栖佐世保寄り)の先頭に制御車としてサハネ581形改造のクハ715形100番台を配し、続いてモハネ581・580形改造のモハ715・714形電動車を中間に、下り方(長崎早岐寄り)の先頭に電動発電機(MG)や空気圧縮機(CP)といった補機類を搭載した制御車として、クハネ581形改造のクハ715形0番台またはサハネ581形改造のクハ714形0番台(NM111・112編成に連結)が連結されるという構成となっている。このため、クハ715形0番台を連結したNM101~110編成では編成前後の運転台の形状が全く異なるものとなった。この改造により交流電源周波数60Hz専用の581系電動車が形式消滅した。

改造当初は車体側面上部に残されていた明り取り用の小窓は改造によって不要となった後も存置されていたが、水の浸入を防ぐなどの理由で1986年1990年にかけて埋込工事が施工されている。同時期に塗装も白地(白3号)に青(青23号)帯の「九州色」に変更された。

一部は腐食防止のため、側面行先表示器の撤去や使用されなくなった前面貫通扉の埋込、閉鎖されたトイレ部分の窓の封鎖が行われた車両もある。

[編集] 運用および廃車までの経緯

クハネ581-8として保存されるクハ715-1
クハネ581-8として保存されるクハ715-1
車内
車内

1987年国鉄分割民営化時には48両全車が九州旅客鉄道(JR九州)に承継された。この時点では転属や運用の変化は無かった。この頃の繁忙期には、「ホリデー佐世保」(博多駅佐世保駅間)など臨時急行列車で運用されたこともあった。

登場当初は予定されていた長崎本線と佐世保線の他に鹿児島本線福間八代間)でも運用されていたが、各車2扉の狭幅折戸でラッシュ時に対応できない事もあり徐々に数を減らし、営業運転からの離脱直前は回送で南福岡に入庫するのみとなっていた。また、本系列を用いて荒木~鳥栖~長崎間の直通普通列車も運転されていたが、1996年から1998年にかけて813系に置換えられ、順次廃車・解体された。

クハ715-1は廃車後、解体されずにJR九州小倉工場に留置され、2000年に581系に復元の上、2003年8月9日より北九州市九州鉄道記念館に移されて静態保存されている。復元工事の内容は塗装の特急時代のクリーム4号+青15号に塗替・車両番号表記をクハネ581-8へ・側面の中・上段寝台用の小窓と特急エンブレムの再設置で、増設扉・セミクロスシート・開閉窓・中吊広告枠は存置された。

[編集] 改造元車両一覧

  • モハネ581/580-11・3・12・7・8・4・5・2・9・10・1・6→モハ715/714-1~12
  • クハネ581-8・1・7・2・4・5・6・32・3・17→クハ715-1~10
  • サハネ581-38・32・6・47・11・27・2・8・4・1・23・13→クハ715-101~112
  • サハネ581-54・31→クハ714-1・2

[編集] 715系1000番台

クハ715形1100番台を先頭とした編成
クハ715形1100番台を先頭とした編成

[編集] 改造と投入

1985年3月ダイヤ改正に合せて東北本線(仙台地区)用に改造されたものである。編成内容は0番台と同様であるが、50Hz電化区間で使用される事から、電動車は50・60Hz両用のモハネ583・582形が種車とされ、1000番台に区分された。下り方(一ノ関寄り)の制御車は全車がサハネ581形改造のクハ715形1100番台で、上り方(黒磯寄り)は全車がクハネ581形から改造されたクハ715形1000番台である。4両編成15本の計60両が改造され、仙台運転所(→仙台電車区~仙台車両センター)に配置された。塗装は0番台同様クリーム1号地に緑14号帯としたが、前面の塗分が0番台とは異なる。455系がこの塗色を採用した際、地色はより白みがかったクリーム10号を採用して登場し、これに併せて本系列も地色のクリーム10号に変更された。

寒冷地で使用される事から、客用扉の半自動化や、車内ロングシートの扉隣接部に防風板が設置されるなどの防寒・防雪対策が実施されている。0番台では床下に装備されていた増設運転台のタイフォン(空気笛)が車体前照灯横に装備され、中・上段寝台用小窓が当初から埋込まれるなどの変化が見られる。

[編集] JR移行後と廃車

1987年の国鉄分割民営化時には60両全車が東日本旅客鉄道(JR東日本)に承継された。この後、特別保全工事を受けた車両も存在し、屋根の補修や寝台舟の完全撤去、横引カーテンへの改造が行われた。しかし、これは一部車両への施工にとどまり、末期には工事施工車と未施工車が混在する編成も存在した。

東北本線(黒磯~一ノ関間)のほか、仙山線仙台愛子間)や奥羽本線福島庭坂間)でも運用されていたが、1995年から1998年にかけて701系に置換えられ、1998年に全廃された。

[編集] 改造元車両一覧

  • モハネ583/582-17・20・21・33~35・37・39・43・48・52・67・77・86・90→モハ715/714-1001~1015
  • クハネ581-31・40・39・9・34・41・16・19・38・20・14・10・23・18・26→クハ715-1001~1015
  • サハネ581-39・42・41・30・21・26・24・3・29・40・33・44・43・5・7→クハ715-1101~1115

[編集] 419系

419系(クハ418形 近江塩津駅 2006年3月撮影)
419系(クハ418形 近江塩津駅 2006年3月撮影)
419系(クハ419形 近江塩津駅 2006年3月撮影)
419系(クハ419形 近江塩津駅 2006年3月撮影)

[編集] 改造と投入

419系電車は、北陸地区向けの交直流電車である。1985年3月のダイヤ改正に合わせ、北陸本線用に45両が改造された。715系1000番台とほぼ同じ時期に当たる。車体の基本的仕様は同じであるが、直江津方向の先頭車を制御電動車のクモハ419形とし、編成を715系の4両から3両に短縮した。3両編成15本が改造され、うち9編成は米原方向の制御車が運転台取り付け改造車のクハ418形、残る6編成はクハネ581形改造のクハ419形である。

改造当初は全車が金沢運転所(現在の金沢総合車両所)に配置され、北陸本線全線で使用されていた。1987年の国鉄分割民営化時にも全車が金沢運転所に残ったが、扉が狭く乗降に時間がかかるため、次第に乗客の少ない区間の運用を主とするようになった。1996年3月には新設の福井地域鉄道部敦賀運転派出に転属した。

塗装は改造当初、赤2号にクリーム10号の帯を入れたものだったが、1988年から1991年にかけ、オイスターホワイトにライトコバルトブルーの帯を入れた現行塗装に変更された。

JR化後に全車に「延命N工事」が施工された。座席モケットや化粧板、ガラス支持用Hゴムの交換、ブラインドの横引カーテンへの変更、吊手の増設などが行われている。さらに、一部車両は洗面台が完全撤去され、2005年からはクハ419形の前面貫通扉・種別幕を閉鎖する工事も始まっている。

車両前面の方向幕は改造当初は使用されていたが、つららによる破損を防ぐために装置自体がない413系471/475/457系に合わせてか、ほとんど使用されていない。また、前面には五角形の「TOWNトレイン」ヘッドマークを掲出していたが、2003年3月小浜線電化記念ヘッドマークに変更された後、掲出が中止されている。

[編集] 現状と運用

北陸本線敦賀駅直江津駅の普通列車で使用されているが、2006年富山港線(本系列は運用されていない)分離や敦賀駅以南の直流化、521系の投入によって交直流電車が余剰となったことから、クハ419形の前面貫通扉閉鎖工事を行っていない車両を含む編成に廃車が始まっている。2007年4月現在、2編成6両が廃車となっており、廃車車両は他の419系や京キトの583系の部品確保用に残されている模様である。

[編集] 改造元車両

  • モハネ583/582-19・36・41・42・54・55・69・72・76・22・32・40・44・49・51→クモハ419/モハ418-1~15
  • クハネ581-13・12・27・15・21・11~クハ419-1~6
  • サハネ581-51・28・34・18・35・9・45・12・22→クハ418-1~9

[編集] 本系列の問題点

419系の車内。天井の高さに注目。写真左側の覆いがかぶせられた部分や右側の業務用室などデッドスペースが多い
419系の車内。天井の高さに注目。写真左側の覆いがかぶせられた部分や右側の業務用室などデッドスペースが多い

運行当初は電車化による列車の頻発化に貢献したが、極度に改造経費の節減を図ったため、以下のような不十分な点や不合理な点が残り、結果的には使いにくい車両となった。そのため、JR発足後は新形車両の増備に伴い、早期に置換え対象となった。2006年現在でも使用されているのはJR西日本に承継された419系のみである。

  • 片側2扉であるが、増設扉も含めて種車の幅700mm折戸を踏襲したため、乗客の乗降に時間がかかり、列車の遅延が生じやすい。
  • 特急設計のクロスシートのままであったため、クロスシートの座席間隔や座席幅が広い反面、座席定員が少なく、また通路が狭く乗客の詰込みには向かなかった。
  • 床置式冷房装置の設置スペースによる客室分断(モハ714形・モハ418形)を始め、運転台直後の機器スペース、カバーされたのみの洗面台部分、撤去されなかったトイレスペースなど、無駄な区画が多く、収容力が削がれた。
  • 電動車の駆動歯車は改造時に101系からの発生品に交換され、最高速度100km/hとなったが、同様に普通列車格下げとなって併用される急行形電車(主に455・475系)は最高速度110km/hのままであり、共通運用が組めなかった。
  • 側窓が475系などに比べて小さく、採光が十分でないため、車内が比較的暗い。
  • 特急時代の昼夜兼行運用による走行距離過多で、元々種車自体の老朽化が進んでいた。
  • 動力車配分の関係で最低でも3両編成で編成を組まなければならなかったことから、ワンマン運転は事実上不可能であった。

[編集] 参考文献

  • 佐藤哲也・福原俊一『715系・419系寝台電車改造近郊形電車』(車両史編さん会、2001年)
  • イカロスMOOK『国鉄型車両の系譜シリーズ02 形式583系』(イカロス出版、2005年)

[編集] 関連項目

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