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世界ラリー選手権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

世界ラリー選手権 (World Rally Championship, 通称:WRC) は、世界各国で行われるラリーの世界選手権。 1973年、それまで世界各地で別開催されていたラリーを組織化し、世界選手権としてスタートした。

現在、国際自動車連盟 (FIA) が主催する四輪モータースポーツで世界選手権がかけられているのはF1とこのWRC、そして世界ツーリングカー選手権 (WTCC) の3つである。

2006年のドライバーズタイトルは3年連続でセバスティアン・ローブ(フランス)が獲得した。ローブはキプロス・ラリー優勝後のオフにマウンテンバイクで転倒、腕を骨折して以後全戦を欠場したが、ラリー・オーストラリア終了時点で彼のポイントを超える可能性のある者はいなくなり、タイトルが決定した。マニュファクチャラーズタイトルは、ラリー・ニュージーランド終了時点で、1979年以来、27年振りにフォードが獲得した。

目次

[編集] 概要

ラリー・オーストラリアで走行中のフォード・フォーカスWRC(2006年)
ラリー・オーストラリアで走行中のフォード・フォーカスWRC2006年

市販車をベースに改造した競技用車両を用い、一般公道を閉鎖してつくられたコースを走り、合計タイムを競う。

競技車両にはドライバー(運転者)とコ・ドライバー(ナビゲーター)の2名が乗車し、ドライバーはコ・ドライバーが読み上げるペースノート(道路のカーブ状況などを記載したノート)に従い運転操作を行う。

[編集] 競技概要

競技は通常金曜日から日曜日までの三日間で行われ、初日を第一レグ(Leg 1)、二日目を第二レグ(Leg 2)、最終日を第三レグ(Leg 3)と呼ぶ。また、その週の水曜日からレッキと呼ばれる「下見走行」を行う。コースは実際に競技で使われるコースを走れるが、使用する車は競技車両ではなく、一般車両を使用する。このレッキでドライバーとコ・ドライバーはコース状況を把握し、ペースノートの制作を行う。水曜日の夕方から翌日木曜日にかけてはシェイクダウンと呼ばれる車両の最終チェックを行う。この時はシェイクダウン専用のコースを使い、実際に競技車両を使っての最終チェックを行う。その後車検を受け、規定外のパーツの装着がないか確認が取れると、競技車両はパルクフェルメと呼ばれる車両保管所に置かれる。パルクフェルメに保管された車両はドライバーを含め全ての関係者は競技開始まで触れることが出来ない。

1つのレグをさらに細かく分けるとSS(スペシャルステージ)TC(タイムコントロール)、そしてロードセクション(もしくはリエゾン)に分けられる。一般のレースと異なりラリーは合計タイムで競うため、コース上での抜きつ抜かれつは生じない。競技はアイテナリーと呼ばれるタイムスケジュール表に沿って進められ、スタート間隔は2分置きである。

スタートした車両はまずロードセクションを通りTCへ向かう。ロードセクションは閉鎖されていない一般公道なので、現地の交通法規に則り一般車両に混じって走行する。ロードセクションを走行することももちろん競技の一部であり、主催者から示されるコマ図に従って走行するという、ラリー競技当初の姿は現在も残っている。現代でも優勝を争うような選手がコマ図を読み違え、道に迷いガス欠で棄権する、などということが起こる。また、スピード違反や一時停止義務違反で現地の警察に検挙されることもある(交通法規の厳しいイングランドで行われるラリー・グレートブリテンでは「お約束」ですらある)

TCはロードセクションで生じた誤差(交通渋滞などで遅くなった、もしくは早く着いてしまった)を正すのが目的で、TCに入る時間は各々決まっており、遅くても早くてもペナルティ(タイム加算)が発生する。

このTC内にSSのスタートが設置されている。SSというのが一般公道を閉鎖して作られたタイムトライアル区間で、テレビ中継などが行われるのもだいたいこの区間である。この区間内は速ければ速いほど良いわけで各ドライバーは持てる力の全てを出し切って全開アタックで挑む。このSS区間での合計タイムがそのラリーの結果となり一番速かったドライバーが優勝ということになる。1つのSSの距離はSSによりばらつきがあるが(短いSSだと2km前後、長いと40kmを越えるSSも存在する)SS数は各イベントでおよそ20前後で、イベント毎のSS区間の合計距離は400km程(ただしロードセクションなどの距離はこれ以上あるため、実際の競技中の走行距離はこの限りではない)

また、一般公道を閉鎖して使用するSSとは異なり、完全に閉鎖されたサーキットのような特設会場で行われるスーパースペシャルステージ(スーパーSS)も存在する。一般公道での競技ゆえにSS内で観戦する観客は競技車両が走り去る一瞬しか見ることが出来ないが、このスーパーSSは観客席を設け、同じコースを2台の競技車両が同時にスタートしタイムを争う形式になる(2台が走るコースは交わることが無く、仕切られているため厳密には同じコースではない)スーパーSSは人工的に作られたコースで、いわば観客やテレビ放送向けの「お祭り」的なSSであるが、実際の競技に組み込まれておりタイムも加算される。

その日の最後のSSが終わったらまたTCに入り、ロードセクションを通り、サービスパークと呼ばれる本部に戻る(サービスパークへは、SSとSSの間(例えばお昼時)などに戻ることもある。またリモートサービスというサービスパーク以外での簡単な整備を行える場所を設けたイベントもある)競技中の整備や給油などはこのサービスパークに戻っている時のみ許さるが、制限時間もある。この制限時間内にいかに早くSSにおいて受けたダメージを修理し、コースにフィットするタイヤを選ぶかが競技を左右する。なお制限時間をオーバーしたときもペナルティとしてタイムが加算される。その後車両は再びパルクフェルメに保管され、次の日の競技開始を待つ。

[編集] 様変わりする競技環境

開催地ごとに使用されるSSは千差万別であり、ターマック(舗装路)・グラベル(未舗装路)・スノー(積雪路)・アイス(凍結路)など、ヨーロッパを中心としたあらゆる路面状況で競技が行われる。そして、それぞれの環境や路面にあった仕様にマシンが改造される点も見所の1つである。例えばターマックでは地上高を低くし、ホイールも大径に、タイヤもスリックに近い状態になる。対してグラベルでは、地上高を高くし、ホイールは小径、タイヤも厚く、ゴツゴツとしたラジアルタイヤ(WRカーのみ、少しのパンクに対応出来るようムース仕様となっている)を装着するといった点が見受けられる。また夜間に行われるラリーでは補助灯を装着したり、アフリカケニアで行われていたサファリラリーでは過酷な環境下に適応できる特殊な装備を施した車両で競技を行う。

[編集] 選手権のポイントシステム

第三レグ終了後には表彰式が行われ、順位に応じてポイント(現在では1位から8位まで順に10-8-6-5-4-3-2-1)が与えられる。シーズンを通じて最も多くのポイントを獲得した者がドライバーズチャンピオンとなる。

マニュファクチャラー(製造者、ワークスとも呼ばれる)としてエントリーできるのは自動車メーカーごとに1チームとなっており、現在では各イベント毎に、マニュファクチャラーズ選手権対象として1チームから2台までのエントリーが認められている。マニュファクチャラーズタイトルは最も多くのポイントを獲得したメーカーに対して与えられる。

F1のコンストラクターズタイトルがシャシーの製造者に対して与えられるのに対し、WRCのマニュファクチャラーズタイトルはメーカー自身に対して与えられるため、タイトル獲得時の宣伝効果を期待して各メーカーとも力を入れている。

[編集] F1との違い

プジョー307をベースにしたプジョー・307WRC
プジョー307をベースにしたプジョー・307WRC

WRCはサーキットレースに比べ身近に感じられることが人気の理由と言える。中身は別物といえどワークスチームが使う競技車両は市販車をベースに作られる点は専用マシンを用いるF1との決定的な違いである。右の画像を見ればわかるが、競技車両はスポンサーの広告などで派手になってはいるが外観はほとんどベースモデルと大差ない。

また、F1が一人乗りなのに対し、WRCは二人乗りを原則としている。コ・ドライバーはただ隣に乗っている人ではなく、ドライバーと同等の重要な役割を果たす。そのため近年の競技車両ではリアウィンドウにドライバー名しか表示されていない事を嘆くコ・ドライバーも少なくない(2000年代前半まではドライバーとコ・ドライバー名が二段表示されていた)コ・ドライバーが読み上げるペースノートの指示に従って走行するのがWRCの特徴だが、コ・ドライバーがペースノートを間違えて読み上げたり、ページを多くめくってしまい実際の路面状況と違う指示を出してしまったりなどのミスが生じる事もある。また走行中にボンネットが開いてしまいフロントウィンドウを覆い隠してしまってもペースノートの指示だけで走りきったドライバーもいる。

比較的簡単に取れる競技ライセンスを取得し、規定に合致した車両を用意し、抽選に通れば実際にプライベーターとして出場することもできる。もちろんこのときはワークスの車両と同じコースを走り、ワークスの車両とタイムを争う。時にはプライベーターがワークスドライバー達のひしめくランキングの上位に食い込む、ということもあるのがラリーの面白いところである。日本のプライベーターは、古くはRACラリーと呼ばれたラリー・グレートブリテン、最近ではラリー・ニュージーランドやオーストラリアラリーなど、英語が通じ、日本と同じ左側通行の国でのラリーに参加することが多い。2004年に日本で初めて行われたラリージャパンには、全国から多数のプライベーターが参戦した。

サーキットで行われる競技と違い、観客席もないWRCでは観戦者はコースを間近で見られるので非常にエキサイトし、熱心なファンは足繁く絶好の観戦ポイントに出向く。しかし、車両がコースオフし客席に突っ込んでくる恐れもあるために観戦に危険も伴うが、それもまた観客を興奮させる要素である。大きくコースオフした車両を観客たちがコースに戻したりすることも多々あるが、本来ドライバー、コ・ドライバー以外の人間が競技車両に触れることはNGなため、ドライバーはペナルティを受けてしまうこともある。例として2004年のメキシコ・ラリーにおいて第一レグの最終SS終了後、ロードセクションのゴール間際でスバルペター・ソルベルグインプレッサがエンストした際、周りにいたメディアや観客がペターと一緒に車を押してしまい、これを受けペターはペナルティを課せられている。また、これとは逆にエキサイトしすぎた観客が競技の妨害を行うこともしばしばある。ラリー・モンテカルロなどでは観客がひいきのチーム以外の競技車両に雪を投げつけたり(時には雪玉の中に石が混じっていることも)運営側が観客をコントロールできなくなり、SSがキャンセルになることも起こる。また、広大なステージでは観客も時折プロに取って代わって「カメラマン」として活躍することもあり、たとえば2005年前半期の衝撃的な出来事である、キプロス・ラリーにおいてフランソワ・デュバルのコースオフ、車両炎上のシーンは観客が撮影したもので、このような観客が撮影したクラッシュシーンが国際的に放映されることもしばしある。

[編集] イベント概要

主要記事:World Rally Championship results

各国を転戦するWRCだが、各々の国で行われる競技をイベントと呼ぶ。1990年代中頃まで、年間の開催イベント数は8~10戦程度であったが、イベント数の増加を望むFIAの意向により、各ラリーの開催日数・走行距離の短縮やサービス(車両整備)回数の制限等、イベントの簡素化が進められ、それに対応するように開催イベント数が増やされてきた。

2004年シーズンからは全16戦となっているが、F1のオフシーズン(ストーブリーグ)が4〜5ヶ月近く(例えば2006年最終戦は10月21日のブラジルグランプリで、2007年の開幕戦であるオーストラリアグランプリは3月18日と5ヶ月ある)あるのに対し、WRCは1ヶ月前後しかない(例えば2006年最終戦のグレートブリテンラリーが12月3日に最終日を迎えたのに対し、2007年開幕戦であるモンテカルロ・ラリーは1月19日と1ヶ月強程度しかオフシーズンがない)などから、ドライバーからは年間イベント数の縮小を求めるなど、不満の声が出ている。

映画の題材となるなど、日本でよく知られているサファリラリーケニア)は、イベント自体の特殊性や開催地の遠さが敬遠され、2002年の開催を最後にWRCからは外されている。

なお、2007年シーズンは8~9戦の開催とし、翌2008年シーズンを2007年8月から2008年5月の期間で開催するウインターリーグ制の導入を検討していたが、2006年7月にこの案を白紙撤回、2007年はこれまでどおり1月スタートの全16戦で行われることになった。

[編集] クラス

主要記事:World Rally Car

2007年現在、WRCは3つのクラスで構成されている。

  1. 世界ラリー選手権(WRC)
    グループA・クラス8、広義の意味でのWRCの頂点に位置するクラス。使用車両であるWRカーはベース車両からの大幅な変更が認められている。エンジンにはグループB時代のハイパワー競争とそれに伴う悲劇(後述)を教訓とし、最大出力は抑えられてしまっているが、最大トルクでは技術の進歩によりグループB時代を超えてしまっている。
  2. ジュニアラリー選手権 (JRC)
    グループA・クラス6、スーパー1600と呼ばれる1600cc自然吸気エンジンのFF車をベースに車幅拡大などが施されている、いわば「WRCの下位クラス」。このクラスには出場制限として年齢の上限が存在し、28歳以上のドライバーは出場できない。そのためドライバーの平均年齢は低く「WRCへの登竜門」的な存在となっている。なお2006年までは「JWRC(世界ジュニアラリー選手権)」であったが、2007年ヨーロッパ圏内のみでの開催となり「W」が取れて「JRC」となった。若いドライバーが多いためイベント毎の完走率は低いが、ここから上位カテゴリーに進出したドライバーも少なくない(とは言えWRカーの出場台数が絶対的に少ないため非常に狭き門ではある)
  3. プロダクションカー世界ラリー選手権(PWRC)
    市販車をベースとしているという点では上記2クラスと同様であるが、より改造範囲の狭いグループNという規定車両で戦う。ベース車両となる市販車の性能そのものの高さが要求され、現在はスバル・インプレッサ三菱・ランサーエボリューションの2台を使用するドライバーがほとんどであり、互角の戦いを展開している。なお、日本人ドライバーである新井敏弘奴田原文雄、鎌田卓麻はこのクラスに参戦している。2005年頃までは「PCWRC」と表記されていたが、現在は「PWRC」と表記するのが通例である。

JRC、PWRCはWRCと併設されたイベントであるが、必ずしも一致しない。つまりWRCのみしか行われないイベント、WRCとJRCが併設されるイベント、WRCとPWRCが併設されるイベントの3種が存在する(3カテゴリーを同時開催するイベントは2007年シーズンは組まれていない)


[編集] ラリー車両の変遷

[編集] WRC草創期からグループB時代(1973年 - 1986年

1973年のWRC創設から1980年代初頭までは、グループ2やグループ4といった規定で競技が行われていた。 各メーカーは、市販車を強化した特別仕様車を販売し、その車両をベースに競技用車両を開発していた。グループ4の当時の生産義務が「連続する24ヶ月間に500台」と少ないことを利用し、ラリーのためだけに開発したスーパーカー、ランチア・ストラトスは例外的存在である。

当時のラリー車はほとんどが二輪駆動であったが、1981年、フルタイム4WDとターボエンジンを採用したアウディ・クワトロが登場してラリーを席巻し、その後のラリーカーの方向性を決定づけた。

それまでのグループ規定を廃止し、1983年シーズンから新規定に移行することが発表される。1982年は新旧両規定に基づいた車両が使える移行期間であった。

グループ1~6と複雑になっていた規定がグループN、A、B、Cに簡素化され、このうちラリーの世界選手権はグループBにかけられることとなった。グループBは、連続した12ヶ月間に20台の競技用車両を含む200台を生産すればよいというもので、名目上はより幅広いメーカーの参戦をうながすものだったが、実際はより高性能なラリー専用車の製作が可能となった。

グループBマシンのほとんどは外見こそベースとされた量販車の面影を残すものの、鋼管スペースフレームにFRP製のカウルをかぶせ、高出力の過給エンジンをミッドシップに搭載してフルタイム4WDで駆動するといった全くの別物であり、(NASCARと同様、外側は市販車に似せている)メーカー各社は先鋭化したモンスターマシンを競って生み出していく。

グループBによりラリー車のスピードは劇的に向上したが、安全面がその進化に追いつかず、多くの事故と犠牲者を生み出すこととなった。

1985年ツール・ド・コルスでのランチアのアッティリオ・ベッテガの事故死、同年アルゼンチンラリーでのプジョーのアリ・バタネンの大事故、1986年ポルトガルラリーでフォードからワークスエントリーしていたヨアキム・サントスが多数の観客を死傷させるなど、ワークスドライバーが絡む事故が多発。そして決定打となったのは1986年のツール・ド・コルスで発生したランチアのヘンリ・トイボネン / セルジオ・クレスト組の事故死だった。FIAは事故の翌日には以後のグループB車両のホモロゲーション申請の却下を声明し、その後1986年シーズンをもってグループBを廃止することを決定、翌年から世界選手権は下位クラスであったグループA規定で行われることを発表した。また、その結果としてグループS構想も空中分解した。

ただし、グループB車両の全てが出場できなくなったわけではなく、300馬力以下のB車両は1987年以降も出走は可能だった。実際、小排気量のグループB車両はポイント対象外ながら、ホモロゲーションの切れる1990年代までプライベートチームが走らせる姿を見ることができた。

[編集] この時代の主なラリーカー

三菱・スタリオンやトヨタ・222D(トヨタ・MR2がベース)などもグループB参加車両として開発されていたが、莫大な費料、予算がかかるなどの会社のさまざまな事情やグループBの廃止の煽りを受けてこれらの車が実際の競技に参加することはなかった。

ちなみに、中止になったグループS車両としてのちに開発されていたのが明らかになったのは次のとおり。

[編集] グループA時代(1987年 - 2001年)

1987年に世界選手権はグループA規定に移行し、ベース車両は継続した12ヶ月間に5000台(後に2500台に変更)以上の生産を義務づけられたほか、さまざまな改造規制が加えられ、ラリー車は市販車に近いものとなった。 ラリーで勝利するためにはフルタイム4WDと2000ccのターボエンジンはもはや必須の装備であったが、そのような高性能なスポーツ車両を生産し販売できるメーカーは少なく、参戦メーカー数は非常に少なくなった。 ランチアはいち早く小型車デルタをベースにラリー車を製作してグループAに対応し、グループA時代を牽引していくことになる。

しかしそのランチアに対し真っ向から勝負を挑んだのが日本車勢である。日本の自動車市場は4WDスポーツ車が順調に売れる世界的に見て珍しい市場であり、日本車メーカーはこぞって高性能な4WDスポーツ車を販売し、WRCに参戦していった。特にトヨタセリカでランチアの厚い壁に挑み続け、1990年にはドライバーズタイトルを奪取。1992年シーズン終了とともにランチアがワークス活動を休止し、競争力が次第に低下したこともあり、1993年には念願のマニュファクチャラーズタイトルを獲得した。ところが1995年、シーズン中にレギュレーション違反が発覚しトヨタは1年間の出場停止処分を受けてしまう。1990年代中盤には、それまでWRCの中心を担ってきたヨーロッパの自動車メーカーに代わり、トヨタをはじめ、スバル三菱日産マツダといった日本車メーカーがWRCを席巻したが、一方ではグループAの2500台という最低生産台数がネックとなり、参戦メーカー数は減少の一途を辿っていた。

そこで、より参戦の門戸を広げるため、新たにワールドラリーカー(WRカー)の規定が1997年より導入されることとなる。1997年シーズンは多くのメーカーがWRカーに移行する中、三菱のみが「市販車による参戦・フィードバック」を目的にグループAに留まり2001年までグループAにて参戦。1998年シーズンはドライバーズタイトルの3連覇とともに初のマニュファクチュアラーズタイトルを獲得した。1999年シーズン以降も引き続きグループA規定で参戦したものの、WRカー規定で戦う他メーカーからの指摘もありグループAでありながら空力的付加物などにWRカー規定を受け入れざるを得ないなど、徐々に不利を被るようになった。2001年はじめ、三菱チームは同年シーズン中のWRカー移行を宣言。シーズン終盤のサンレモラリーでグループAにこだわり続けた三菱もWRカーへ移行し、14年弱の長きに渡るグループA時代は終わりを迎えた。

[編集] この時代の主なラリーカー

[編集] WRカー時代(1997年 - 現在)

2006年キプロス・ラリーを走行中のペター・ソルベルグ。
2006年キプロス・ラリーを走行中のペター・ソルベルグ

グループAの特例として1997年シーズンから導入されたWRカーは、継続した12ヶ月間に25,000台以上生産された車種の「ファミリー」をベースに、ワイドボディ化、四輪駆動への改造、サスペンション形状の変更、同一メーカー車に搭載されているエンジンへの換装やターボの付加など、大幅な改造を認められたものである。

このWRカー規定により、グループAの生産台数規定に参戦を妨げられていたヨーロッパの自動車メーカーが相次いでWRCに参戦し、メーカー数が増加してラリーは活況を呈することとなる。

1999年にはフォード・フォーカスWRCプジョー・206WRCといったヨーロッパ車メーカーによる第二世代のWRカーが登場し、2000年からはプジョーがマニュファクチャラーズタイトルを3連覇、2003年には本格参戦1年目にしてシトロエンがマニュファクチャラーズタイトルを奪取するなど、最近ではWRCの中心は日本車メーカーからフランスの自動車メーカーへと移っている。

日本車メーカーにおいても、スバルはいち早くインプレッサをベースとしたWRカーへと移行、1年間の活動休止を余儀なくされていたトヨタもカローラ(ただしヨーロッパで販売されていたモデルをベースとしていたため、日本のカローラとは別物である)をベースにしたWRカーを投入、ヨーロッパ勢と選手権を争った。三菱は頑なにグループAにこだわり続けるが、上記の通り2001年にはWRカーへと移行した。なおこの際ベースモデルはランサーエボリューションからランサーへと変更されている。

日本車以外のアジア勢としてヒュンダイアクセントで参戦していたが、慢性的な資金難から競技車両の開発が進まず、競争力が向上せずに2003年、ついに活動休止となった。なおこの時ヒュンダイはシーズン途中での撤退を行っており、これは当時のルールである「WRカーは全戦出場義務がある」に抵触した。このためFIAはヒュンダイに対し100万USドルの罰金を課しているが、2006年現在もまだ納められていない。


[編集] この時代の主なラリーカー

[編集] WRCを取り巻くメディア

[編集] 海外におけるテレビ放送

ヨーロッパ圏内では絶大な人気を誇るWRCはテレビ放送も盛んに行われている。またFIAとしてもテレビ放送から得られる収入は無視できないものとなり、スーパーSSなどテレビ放送向けにイベントを組んでいる。またラジオ放送も行われており、日本でもインターネット経由で聞くことが出来る。

[編集] 日本におけるテレビ放送

2007年現在、CS放送J SPORTS ESPNが全クラス完全放送を行っている。またBSデジタル放送BS日テレやインターネット放送GyaOでも放送中。地上波ではテレビ東京系列や日本テレビ系列でダイジェスト放送が行われていたが、2007年3月現在放送予定がない。

その他のテレビ局に関してはWRCの報道は消極的であり、日本で開催されるラリージャパンも例外でない。2004年の初開催以来、ラリージャパン開催時期でも地上波テレビ局ではニュース番組でもほとんど触れられることがない(過去にWRCを放送経験があるテレビ東京系列と日本テレビ系列、NHKで多少触れられる程度である)

[編集] 2007年シーズン

シトロエン・C4 WRCは2007年シーズンに使用中のシトロエンのワークス車である。
シトロエン・C4 WRCは2007年シーズンに使用中のシトロエンのワークス車である。
現在の順位表:2007年の世界ラリー選手権

2007年シーズンを通してタイトル争いするマニュファクチャラー(自動車メーカー)は、2つのグループに分かれる。

まず、マニュファクチャラーはフランスシトロエンアメリカフォード、そして日本スバル、OMVクロノス・シトロエンWRT、フォードのサテライトチームであるストバート・VK・Mスポーツ・フォードの以上5チーム。

そして、マニュファクチャラーチーム(MT)は、ミュンヒス・フォード・ワールドラリーチームがエントリーしている。

これ以外に三菱シュコダプジョー(ワークス活動はしないがプライベーターを支援)などが参戦する。

因みにタイヤピレリの撤退に伴い、スバルがミシュラン系のBFグッドリッチにスイッチしたことにより、実質BFグッドリッチのワンメイクになった。

[編集] 2007年の主な参戦ドライバー(カッコ内は使用車両名)

シトロエン・トタルWRT(シトロエンC4 WRC
セバスティアン・ローブダニエル・ソルド
BPフォード・ワールドラリーチーム(フォード・フォーカスRS WRC06
マーカス・グロンホルムミッコ・ヒルボネン
OMVクロノス・シトロエンWRT(シトロエン・クサラWRC)
マンフレッド・ストール、ダニエル・カールソン
スバル・ワールドラリーチーム(スバル・インプレッサWRC2007
ペター・ソルベルグクリス・アトキンソン
ストバートMスポーツ・フォード・ラリーチーム(フォード・フォーカスRS WRC06
ヤリ-マティ・ラトバラ、ヘニング・ソルベルグペター・ソルベルグの実兄)、マシュー・ウィルソン
ミュンヒス・フォード・ワールドラリーチーム(フォード・フォーカスRS WRC06
ルイス-ペレス・コンパンク、ファン-パブロ・ライアス
その他、参戦ドライバー
トニ・ガルデマイスター(三菱)、フランソワ・デュバル(シュコダ)ジジ・ガリ、新井敏弘(スバル)、奴田原文雄(三菱)
(各コ・ドライバー及び、JWRC・その他PCWRCの参戦ドライバーは省略)

また、スズキ2008年からの本格参戦を前に3戦(フィンランド、ツール・ド・コルス、グレートブリテン)に新型車SX4 WRCのテスト走行として参加する予定である。

[編集] 世界ラリー選手権記録

主要記事:List of World Rally Championship Drivers' Champions及びList of World Rally Championship Constructors' Champions
2006年のオーストラリア・ラリー表彰台での一コマ。
2006年のオーストラリア・ラリー表彰台での一コマ。
シーズン ドライバー部門優勝(車) マニファクチャラーズ部門優勝
2006年 フランスの旗 セバスティアン・ローブシトロエン アメリカ合衆国の旗 フォード
2005年 フランスの旗 セバスティアン・ローブ(シトロエン) フランスの旗 シトロエン
2004年 フランスの旗 セバスティアン・ローブ(シトロエン) フランスの旗 シトロエン
2003年 ノルウェーの旗 ペター・ソルベルグスバル フランスの旗 シトロエン
2002年 フィンランドの旗 マーカス・グロンホルムプジョー フランスの旗 プジョー
2001年 イングランドの旗 リチャード・バーンズ(スバル) フランスの旗 プジョー
2000年 フィンランドの旗 マーカス・グロンホルム(プジョー) フランスの旗 プジョー
1999年 フィンランドの旗 トミ・マキネン三菱 日本の旗 トヨタ
1998年 フィンランドの旗 トミ・マキネン(三菱) 日本の旗 三菱
1997年 フィンランドの旗 トミ・マキネン(三菱) 日本の旗 スバル
1996年 フィンランドの旗 トミ・マキネン(三菱) 日本の旗 スバル
1995年 スコットランドの旗 コリン・マクレー(スバル) 日本の旗 スバル
1994年 フランスの旗 ディディエ・オリオール(トヨタ) 日本の旗 トヨタ
1993年 フィンランドの旗 ユハ・カンクネン(トヨタ) 日本の旗 トヨタ
1992年 スペインの旗 カルロス・サインツ(トヨタ) イタリアの旗 ランチア
1991年 フィンランドの旗 ユハ・カンクネン(ランチア) イタリアの旗 ランチア
1990年 スペインの旗 カルロス・サインツ(トヨタ) イタリアの旗 ランチア
1989年 イタリアの旗 ミキ・ビアシオン(ランチア) イタリアの旗 ランチア
1988年 イタリアの旗 ミキ・ビアシオン(ランチア) イタリアの旗 ランチア
1987年 フィンランドの旗 ユハ・カンクネン(ランチア) イタリアの旗 ランチア
1986年 フィンランドの旗 ユハ・カンクネン(プジョー) フランスの旗 プジョー
1985年 フィンランドの旗 ティモ・サロネン(プジョー) フランスの旗 プジョー
1984年 スウェーデンの旗 スティグ・ブロンクヴィスト(アウディ ドイツの旗 アウディ
1983年 フィンランドの旗 ハンヌ・ミッコラ(アウディ) イタリアの旗 ランチア
1982年 ドイツの旗 ワルター・ロール(オペル ドイツの旗 アウディ
1981年 フィンランドの旗 アリ・バタネン(フォード) フランスの旗 タルボ
1980年 ドイツの旗 ワルター・ロール(フィアット イタリアの旗 フィアット
1979年 スウェーデンの旗 ビヨン・ワルデガルド(フォード/メルセデス・ベンツ) アメリカ合衆国の旗 フォード
1978年 FIA Cup for Driversフィンランドの旗 Markku Alén(フィアット/ランチア) イタリアの旗 フィアット
1977年 FIA Cup for Driversイタリアの旗 Sandro Munari(ランチア) イタリアの旗 フィアット
1976年 イタリアの旗 ランチア
1975年 イタリアの旗 ランチア
1974年 イタリアの旗 ランチア
1973年 フランスの旗 アルピーヌ

[編集] 通算優勝者

主要記事:List of World Rally Championship records
ドライバー 総計
1 フランスの旗 セバスティアン・ローブ 31回
2 フィンランドの旗 マーカス・グロンホルム 26回
スペインの旗 カルロス・サインツ 26回
4 スコットランドの旗 コリン・マクレー 25回
5 フィンランドの旗 トミ・マキネン 24回
6 フィンランドの旗 ユハ・カンクネン 23回
7 フランスの旗 ディディエ・オリオール 20回
8 フィンランドの旗 マルク・アレン 19回
9 フィンランドの旗 ハンヌ・ミッコラ 18回
10 イタリアの旗 ミキ・ビアシオン 17回

[編集] コ・ドライバー

  1. 31 – ダニエル・エレナ withローブ
  2. 26 – ティモ・ラウティアイネン withグロンホルム
  3. 24 – ルイス・モヤ withサインツ
  4. 21 – ニッキー・グリスト withマクレー・withカンクネン
  5. 20 – イルッカ・キビマキ withアレン / セッポ・ハルヤンヌ withマキネン・withサロネン
  6. 18 – アーネ・ハーツ withミッコラ etc...
  7. 17 – ティジアーノ・シビエロ withビアシオン
  8. 16 – ベルナール・オチェッリ withオリオール
  9. 14 – ユハ・ピロネン withカンクネン
  10. 13 – フィル・ミルズ withペター/ リスト・マニセンマキ withマキネン
  11. 10 – ロバート・レイド withバーンズ
  12. 8 – デレック・リンガー withマクレー
  13. 7 – エルベ・パニッツィ withジル
  14. 5 – ステファン・パーマンダー withエリクソン
(太字は2006年参戦コ・ドライバー)

[編集] マニュファクチャラー

  1. 73 – ランチア
  2. 56 – フォード
  3. 48 – プジョー
  4. 47 – スバル
  5. 43 – トヨタ
  6. 35 – シトロエン
  7. 34 – 三菱
  8. 24 – アウディ
  9. 21 – フィアット
(太字は2007年参戦マニュファクチャラー)

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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