日田彦山線
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日田彦山線(ひたひこさんせん)は、福岡県北九州市小倉南区の城野駅から大分県日田市の夜明駅に至る九州旅客鉄道(JR九州)の鉄道路線(地方交通線)である。城野~今山間が福岡近郊区間に含まれる。
平尾台・香春などから産出される石灰石や添田地区の石炭を運ぶために敷設された。筑豊東部の田川市を経て九州の小京都といわれる日田市と北九州市を直結している。
目次 |
[編集] 路線データ
- 管轄(事業種別):九州旅客鉄道(第一種鉄道事業者)
- 路線距離(営業キロ):68.7km
- 軌間:1067mm
- 駅数:23駅(起終点駅含む)
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化区間:なし(全線非電化)
- 閉塞方式:特殊自動閉塞式(軌道回路検知式)
[編集] 運行形態
現在は朝の一部の列車を除きワンマン運転の普通列車である。全線を通して運転される列車もあるが、概ね田川後藤寺駅で運転系統が分かれていて、1~2時間に1本程度が運行されている。起点は城野駅だが、全ての列車が小倉駅を始発・終着駅としている。終点も夜明駅だが全ての列車が久大本線の日田駅まで運転され、さらに大分駅まで直通する列車もある。小倉~日田間、田川伊田→大分間の列車のほか、田川後藤寺駅・添田駅などを始発・終着駅とする区間運転列車が運転されている。なお、2007年3月18日のダイヤ改正より朝通勤時間帯の添田~小倉間に上り快速が運行される。
[編集] 使用車両
- キハ40形・キハ147形気動車
- キハ125形気動車
- キハ31(2006年8月17日から田川後藤寺~添田間)
など
旧型車両(キハ40形・147形)は釈迦岳トンネル前後の急勾配に対し出力不足で、30km/h程度の運転速度となる。
[編集] 歴史
城野~香春間は、小倉鉄道(こくらてつどう)が1915年に開業した区間である。小倉鉄道は、東小倉~上香春(現在の香春)~大任~上添田(現在の添田)間を開業していたが、この路線は1943年に戦時買収により国有化され添田線(初代)となった。なお、小倉鉄道は機械メーカーとして現存している。
田川伊田~田川後藤寺~西添田間は、豊州鉄道および同社を合併した九州鉄道が1903年までに開業させた。1907年の国有化後は、田川線の一部となった。
西添田~夜明間は1937年から1956年にかけて延伸開業した区間である。西添田側は田川線の延伸、日田側からは彦山線(ひこさんせん)として開業し、全通後は東小倉~大任~夜明間が日田線(ひたせん)となった。
1956年11月には、起点側(城野付近)で線路の付け替えが行なわれた。小倉鉄道が敷設した線路は、日豊本線の城野~曽根間を乗り越し、東小倉へ直行する形であったが、石田~城野間に短絡線を敷設し、日田線列車は城野から日豊本線に乗入れ、小倉に向かうようになった。同時に東小倉~石田間は貨物線となり、1962年に廃止された。
1957年10月には、香春~伊田(現在の田川伊田)間の支線が開業し、現在のルートが完成した。1960年に田川線の伊田~後藤寺~添田間を編入すると同時に香春~大任~添田間を添田線(2代)として分離し、城野・東小倉~伊田~夜明間が日田彦山線となった。この時、分離された添田線は、第1次特定地方交通線に指定され、1985年に廃止された。
なお、この路線は門司港駅・小倉駅から久大本線由布院駅方面への短絡線となっていたことから、1960年代より1980年代まで、「あさぎり」・「あきよし」・「はんだ」・「日田」・「ひこさん」といった準急列車・急行列車が運行されていた。
[編集] 小倉鉄道→添田線(初代)(東小倉~香春~大任~添田間)
- 1915年4月1日 【開業】小倉鉄道 東小倉~上香春~今任~上添田(24.5M) 【駅開業】東小倉、石田、石原町、呼野、採銅所、上香春、上伊田(停留場)、今任、梅田、伊原、上添田
- 1916年4月1日 【駅新設】湯川(仮停留場。安部山観桜時期に開設)
- 1918年4月21日 【マイル設定】富野連絡所~東小倉(0.4M)
- 1922年4月1日 【連絡所→信号場】富野
- 1922年12月1日 【停留場→駅】上伊田
- 1931年~1934年頃 【駅名改称】上添田→彦山口
- 1933年4月23日 【駅廃止】湯川(仮停留場)
- 1933年10月23日 【駅新設】妙見(停留場)、東城野(停留場)、志井(停留場)、母原(停留場)、木下(停留場)、下呼野(停留場)、五反田(停留場)、宮原(停留場)、鏡山(停留場)、*上今任(停留場)、*柿原(停留場)
- 1934年5月2日 【駅新設】湯川(仮停留場。5月4日まで招魂祭参拝客取扱のため開設)
- 1935年4月1日 【駅新設】*一本松(停留場)
- 1936年12月30日 【駅新設】豆塚(停留場)
- 1937年4月25日 【駅新設】上呼野(停留場)
- 1940年2月6日 【信号場新設】丸山
- 1942年6月10日 【駅廃止】東城野(停留場)、志井(停留場)、母原(停留場)、木下(停留場)、下呼野(停留場)、上呼野(停留場)、五反田(停留場)、宮原(停留場)、鏡山(停留場)、*一本松(停留場)、*上今任(停留場)、*柿原(停留場)、*豆塚(停留場)
- 1942年8月25日 【駅名改称】彦山口→添田(2代)
- 1943年2月25日 【駅新設】志井
- 1943年5月1日 【買収・国有化】添田線 東小倉~添田(27.3km) 【駅名改称】上香春→香春、*梅田→大任 【停留場→駅】妙見 【信号場廃止】富野(東小倉駅構内に併合)
- 1945年5月1日 【駅名改称】川崎→豊前川崎
- 1948年7月1日 【信号場廃止】丸山
- (注) *は、後の添田線(2代)に関する記述
[編集] 豊州鉄道→九州鉄道→田川線(香春~後藤寺~添田)
- 1896年2月5日 【延伸開業】豊州鉄道 伊田~後藤寺(1M70C) 【駅新設】(貨)西身内谷、後藤寺
- 1899年7月10日 【延伸開業】後藤寺~川崎(2M67C) 【駅新設】(貨)後藤寺原、池尻、川崎 【貨物支線開業】川崎~第一大任(マイル設定なし) 【駅新設】第一大任
- 1901年9月3日 【合併】九州鉄道
- 1903年12月21日 【延伸開業】川崎~添田(2.2M) 【駅新設】添田(初代)
- 1904年10月25日 【貨物支線開業】西添田~庄(0.6M)
- 1906年1月12日 【貨物支線開業】川崎~第二大任(1.2M)
- 1907年7月1日 【買収・国有化】
- 1908年3月28日 【マイル設定】川崎~第一大任(0.5M)
- 1909年1月1日 【貨物支線開業】後藤寺~東身内谷、後藤寺~南 【駅新設】(貨)東身内谷、(貨)南
- 1909年10月12日 【国有鉄道線路名称設定】田川線 行橋~添田
- 1913年3月1日 【駅廃止】(貨)後藤寺原
- 1914年9月3日 【貨物支線廃止】後藤寺~東身内谷 【駅廃止】(貨)東身内谷
- 1942年8月1日 【駅名改称】添田(初代)→西添田
- 1942年8月25日 【延伸開業】西添田~彦山 【駅新設】添田(小倉鉄道既設駅)、豊前桝田、彦山
- 1943年7月1日 【貨物支線休止】西添田~庄(-1.0km) 【駅廃止】(貨)庄
- 1945年6月10日 【貨物支線廃止】後藤寺~南(-0.4km。後藤寺駅構内に併合) 【駅廃止】(貨)南
[編集] 彦山線(夜明~大行司)
[編集] 日田線
- 1956年3月15日 【延伸開業】彦山~大行司(12.1km) 【駅新設】筑前岩屋 【路線統合】日田線 東小倉~大任~夜明(68.5km。添田線に田川線添田~彦山間及び彦山線を編入し改称)
- 1956年11月19日 【開業】城野~石田(3.3km。旅客営業のみ。新線は城野~水町信号場間(1.2km)。日田線の旅客列車が小倉駅へ乗り入れを開始) 【信号場新設】水町 【旅客営業廃止】東小倉~石田 【一般駅→貨物駅】東小倉、妙見
- 1957年10月1日 【開業】香春~伊田(4.0km。現在のルートが完成) 【貨物営業開始】城野~石田(3.3km)
- 1959年5月1日 【優等列車運行開始】門司~天ヶ瀬間を運行する準急列車「あさぎり」運行開始。
[編集] 日田彦山線
- 1960年4月1日 【区間統合・分離】日田彦山線 城野~後藤寺~夜明(68.7km。日田線から香春~大任~添田間を添田線(2代)に分離、伊田~添田間を田川線から編入して改称)、東小倉~石田(6.5km。貨物支線)、豊前川崎~第一大任(0.9km。貨物支線)、豊前川崎~第二大任(1.9km。貨物支線)
- 1960年8月1日 由布院→小倉→博多間を運行する準急列車「ひこさん」運行開始。また、「あさぎり」の運行区間を門司港~由布院間とする。
- 1960年9月20日 【信号場新設】小森
- 1962年10月1日 【貨物支線廃止】 東小倉~石田(-6.5km) 【駅廃止】(貨)妙見、水町(信号場)
- 1963年10月1日 臨時列車として門司港・直方~由布院間を運行する準急列車「はんだ」、門司港・直方~豊後中村間を運行する「日田」運行開始。
- 運行区間としては「はんだ」は門司港→由布院→小倉→直方、「日田」は直方→小倉→豊後中村→門司港という形態を採用した。
- 1964年3月20日 「はんだ」、「日田」定期列車化。
- 1964年10月1日 「日田」運行区間を門司港・直方~由布院間に変更。
- 1965年10月1日 「はんだ」・「日田」の運行区間を変更し、それぞれ以下の通りとなる。また、山陰本線浜田~博多間を運行していた準急列車「あきよし」の一部を小倉で分割し本線経由で天ヶ瀬まで乗り入れる。
- 「はんだ」:門司港~黒崎~直方~由布院間
- 「日田」:直方~黒崎~小倉~由布院間
- 1966年3月5日 準急制度廃止に伴い、「あさぎり」・「あきよし」・「はんだ」・「日田」・「ひこさん」急行列車に格上げ。
- 1970年2月1日 【貨物支線廃止】豊前川崎~第二大任(-1.9km) 【駅廃止】(貨)第二大任
- 1971年10月 【信号場廃止】小森
- 1974年12月10日 【貨物支線廃止】豊前川崎~第一大任(-0.9km) 【駅廃止】(貨)第一大任
- 1980年10月1日 ダイヤ改正に伴い、「ひこさん」廃止。「あさぎり」・「はんだ」・「日田」については快速列車に格下げ。「あきよし」については下関以西普通列車化。
- 1982年11月3日 【駅名改称】伊田→田川伊田、後藤寺→田川後藤寺
- 1984年2月15日 【CTC化】全線
- 1985年3月14日 【列車廃止】「あきよし」廃止。「ひこさん」名称復活。
- 1985年4月1日 添田線 香春~今任~添田間が廃止
- 1986年11月1日 【貨物営業廃止】田川後藤寺~夜明(-38.7km) 【列車廃止】「あさぎり」・「はんだ」・「ひこさん」名称廃止。
- 1987年4月1日 【承継】九州旅客鉄道(第1種・全線)、日本貨物鉄道(第2種・城野~石原町) 【貨物営業廃止】石原町~田川後藤寺(-21.0km)
- 1989年3月11日 【駅新設】志井公園
- 1997年3月22日 【駅新設】一本松
- 1999年4月1日 【第二種鉄道事業廃止】城野~石原町(-9.0km)
- 2001年3月1日 【列車廃止】「日田」
[編集] 駅一覧
- ●:停車、▲:日豊本線快速は停車、|:通過
駅名 | 城野からの営業キロ | 快速 | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|
日豊本線 | |||||
小倉駅 | 6.1 | ● | 西日本旅客鉄道:山陽新幹線 九州旅客鉄道:鹿児島本線 北九州高速鉄道:小倉線 |
福岡県 | 北九州市小倉北区 |
西小倉駅 | 5.3 | ● | 九州旅客鉄道:鹿児島本線 | ||
南小倉駅 | 2.6 | ▲ | |||
日田彦山線 | |||||
城野駅 | 0.0 | ● | 九州旅客鉄道:日豊本線 | 福岡県 | 北九州市小倉南区 |
石田駅 | 3.3 | | | |||
志井公園駅 | 5.1 | | | 北九州高速鉄道:小倉線(企救丘駅) - 400mほど離れている。 | ||
志井駅 | 6.8 | | | |||
石原町駅 | 9.0 | ● | |||
呼野駅 | 12.3 | | | |||
採銅所駅 | 18.1 | | | 田川郡香春町 | ||
香春駅 | 23.4 | ● | |||
一本松駅 | 25.0 | | | |||
田川伊田駅 | 27.4 | ● | 平成筑豊鉄道:伊田線・田川線 | 田川市 | |
田川後藤寺駅 | 30.0 | ● | 九州旅客鉄道:後藤寺線 平成筑豊鉄道:糸田線 |
||
池尻駅 | 32.2 | | | 田川郡川崎町 | ||
豊前川崎駅 | 34.7 | ● | |||
西添田駅 | 38.3 | | | 田川郡添田町 | ||
添田駅 | 39.5 | ● | |||
豊前桝田駅 | 43.2 | ||||
彦山駅 | 47.2 | ||||
筑前岩屋駅 | 55.1 | 朝倉郡東峰村 | |||
大行司駅 | 59.3 | ||||
宝珠山駅 | 61.3 | ||||
大鶴駅 | 62.9 | 大分県 | 日田市 | ||
今山駅 | 65.4 | ||||
夜明駅 | 68.7 | 九州旅客鉄道:久大本線 |
[編集] 廃止区間
※取り消し線を引いた停車場・信号場は路線廃止前に廃止されたもの。
富野信号場 - (貨)東小倉駅 - (貨)妙見駅 - 東城野停留場 - 湯川仮停留場 - 水町信号場 - 石田駅
田川線貨物支線:後藤寺駅 - (貨)東身内谷駅
田川線貨物支線:後藤寺駅 - (貨)南駅
日田彦山線貨物支線:豊前川崎駅 - (貨)第一大任駅
日田彦山線貨物支線:豊前川崎駅 - (貨)第二大任駅
田川線貨物支線:西添田駅 - (貨)庄駅
[編集] 廃止された停車場・信号場
- 水町信号場(城野~石田間)
- 母原停留場(志井~石原町間)
- 木下停留場(石原~呼野間)
- 小森信号場(同上)
- 下呼野停留場(同上)
- 上呼野停留場(呼野~採銅所間)
- 丸山信号場(同上)
- 宮原停留場(採銅所~香春間)
- 鏡山停留場(同上)
- (貨)西身内谷駅(田川伊田~田川後藤寺間)
- (貨)後藤寺原駅(田川後藤寺~池尻間)