大都市近郊区間
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大都市近郊区間(だいとしきんこうくかん)とは、JRの旅客営業規則(旅規)第156条第2号に規定する区間である。東京(首都圏)・大阪(京阪神圏)・福岡・新潟の近郊に設定されており、それぞれ東京近郊区間(とうきょうきんこうくかん)・大阪近郊区間(おおさかきんこうくかん)・福岡近郊区間(ふくおかきんこうくかん)・新潟近郊区間(にいがたきんこうくかん)という。
運賃計算の合理化が目的であり、大都市であっても、札幌・仙台・名古屋・広島は、中心駅から放射状に広がる路線構造となっているため、同一区間に複数の経路が生じるケースが少ない。また、静岡は路線が市内を東西に縦貫する一本しかないため、同一区間に複数の経路は生じない。さらに、浜松は路線が2つあるが、それらは県境をまたいで大きく離れている。このためこの6地区は大都市近郊区間としての設定はされていない。
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[編集] 概要
大都市近郊区間内に係わる旅規の規定は、以下のとおりである。
- 大都市近郊区間内相互発着の片道乗車券の有効期間は、距離にかかわらず1日である(旅規第154条)。
- 大都市近郊区間内の駅相互発着の普通乗車券を使用する場合は、その区間内の駅で途中下車ができない(旅規第156条第2号)。
- 大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券及び回数乗車券を所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、同区間内の他の経路を選択して乗車することができる(旅規第157条第2項)。
- 必ずしも最短経路で運賃計算するという制度ではないが、ICOCA、Suica、Jスルーカード等ストアードフェアカードを用いる場合、自動改札口では最短経路の運賃を引き落としている。
- 駅に掲出されている運賃表等(=最も運賃の安い経路)は大抵の場合最短経路と一致するが、例外もある。例えば、南船橋駅~千葉駅間の最短経路は蘇我駅経由の20.8kmであり、この場合の運賃は400円であるが、西船橋経由の場合は24.0kmであるものの電車特定区間内であるため運賃は380円である。この場合は、後者が同区間相互発着の運賃として適用される。こうした事例は、同様の形状になっている箇所に数例見られる。
- 上記に基づき他の経路を乗車中に途中駅で下車したときは、区間変更として取り扱う(旅規第157条第3項)。
- 実際に乗車した区間の運賃と比較して不足している場合はその差額を支払う必要があるが、多かった場合の払い戻しはない(旅規第249条)。
- 旅規には「大都市近郊区間内(の駅)相互発着…」と記載されているが、大都市近郊区間を出たあと再び大都市近郊区間内に戻ってくる経路の乗車券については大都市近郊区間の規定は適用されない。乗車経路全区間が大都市近郊区間に含まれている場合にのみ適用される。
[編集] 大回り乗車
大都市近郊区間の相互発着の乗車券では、「その区間内においては、乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、同区間内の他の経路を選択して乗車すること」が認められているため、最低運賃の乗車券を購入し、その発着駅間を片道乗車券の発売要件(環状線一周を超えない、同じ駅・同じ路線を二度通らない)を満たす一筆書きの大回りルートで乗車することができる。これを「大都市近郊区間大回り乗車」と称し、鉄道ファンなどによって広く行われてきた。また、テレビやラジオでも紹介されることがある(2003年11月29日の「ごめんやす馬場章夫のボラボラわーるど」(毎日放送ラジオ)や2006年11月17日の「Voice」(毎日放送テレビ)等で紹介された)。
なお、大都市近郊区間内相互発着であっても実際の乗車経路通りの乗車券を発券することは可能で、大都市近郊区間内のみの最長片道切符も存在するが、先述のように乗車距離にかかわらず有効期間は1日であり、途中下車をすることができない。また、定期券では経由地が指定されるため、これをすることはできない。
[編集] 現状
ストアードフェアシステムを使用する場合は、乗車カードの性質上、乗車経路を特定することができないので、ストアードフェアシステムの導入にあわせて大都市近郊区間を拡大する動きがある。
[編集] 近郊区間一覧
[編集] 東京近郊区間
- 東海道本線: 東京駅~熱海駅、品川駅~新川崎駅~鶴見駅(路線案内上は横須賀線)
- 山手線: 品川駅~新宿駅~田端駅(全線)
- 南武線: 川崎駅~立川駅、尻手駅~浜川崎駅(全線)
- 鶴見線: 鶴見駅~扇町駅、浅野駅~海芝浦駅、武蔵白石駅~大川駅(全線)
- 武蔵野線: 府中本町駅~南浦和駅~新松戸駅~西船橋駅(全線)
- 横浜線: 東神奈川駅~八王子駅(全線)
- 根岸線:横浜駅~磯子駅~大船駅(全線)
- 横須賀線: 大船駅~久里浜駅(全線)
- 相模線: 茅ヶ崎駅~橋本駅(全線)
- 中央本線: 神田駅~代々木駅、新宿駅~韮崎駅
- 青梅線: 立川駅~奥多摩駅(全線)
- 五日市線: 拝島駅~武蔵五日市駅(全線)
- 八高線: 八王子駅~倉賀野駅(全線)
- 東北本線: 東京駅~黒磯駅、日暮里駅~尾久駅~赤羽駅、赤羽駅~武蔵浦和駅~大宮駅(路線案内上は埼京線)
- 赤羽線: 池袋駅~赤羽駅(全線、路線案内上は埼京線)
- 常磐線: 日暮里駅~日立駅
- 川越線: 大宮駅~高麗川駅(全線)
- 高崎線: 大宮駅~高崎駅(全線)
- 上越線: 高崎駅~渋川駅
- 両毛線: 新前橋駅~小山駅(全線)
- 水戸線: 小山駅~友部駅(全線)
- 総武本線: 東京駅~成東駅、御茶ノ水駅~錦糸町駅
- 京葉線: 東京駅~蘇我駅、市川塩浜駅~西船橋駅、西船橋駅~南船橋駅(全線)
- 外房線: 千葉駅~大原駅
- 内房線: 蘇我駅~君津駅
- 成田線: 佐倉駅~成田駅、成田駅~我孫子駅、成田駅~成田空港駅
- 東金線: 大網駅~成東駅(全線)
- 伊東線: 熱海駅~伊東駅(全線)
[編集] 大阪近郊区間
- 東海道本線: 米原駅~神戸駅
- 東海道新幹線: 米原駅~新大阪駅
- 北陸本線: 米原駅~近江塩津駅
- 湖西線: 山科駅~近江塩津駅(全線)
- 大阪環状線: 天王寺駅~大阪駅~新今宮駅(全線)
- 桜島線: 西九条駅~桜島駅(全線)
- JR東西線: 京橋駅~尼崎駅(全線)
- 福知山線: 尼崎駅~谷川駅
- 山陽本線: 神戸駅~相生駅、兵庫駅~和田岬駅
- 山陽新幹線: 西明石駅~相生駅
- 加古川線: 加古川駅~谷川駅(全線)
- 赤穂線: 相生駅~播州赤穂駅
- 山陰本線: 京都駅~園部駅
- 関西本線: 柘植駅~JR難波駅
- 草津線: 柘植駅~草津駅(全線)
- 奈良線: 京都駅~木津駅(全線)
- 桜井線: 奈良駅~高田駅(全線)
- 片町線: 木津駅~京橋駅(全線)
- 和歌山線: 王寺駅~五条駅~和歌山駅(全線)
- 阪和線: 天王寺駅~和歌山駅、鳳駅~東羽衣駅(全線)
- 関西空港線: 日根野駅~関西空港駅(全線)
[編集] 福岡近郊区間
- 鹿児島本線: 門司港駅~門司駅~博多駅~鳥栖駅
- 香椎線: 西戸崎駅~宇美駅(全線)
- 篠栗線: 吉塚駅~桂川駅(全線)
- 博多南線: 博多駅~博多南駅
- 日豊本線: 小倉駅~行橋駅
- 日田彦山線: 城野駅~今山駅
- 筑豊本線: 若松駅~原田駅(全線)
- 後藤寺線: 新飯塚駅~田川後藤寺駅(全線)
[編集] 新潟近郊区間
- 信越本線:東三条駅~新潟駅
- 弥彦線:弥彦駅~東三条駅(全線)(弥彦駅・矢作駅と西燕駅~北三条駅間ではSuica利用不可)
- 越後線:吉田駅~新潟駅
- 羽越本線:新津駅~新発田駅(京ヶ瀬駅~中浦駅間ではSuica利用不可)
- 白新線:新潟駅~新発田駅(全線)
- これらの区間の比較的大きい駅には自動改札機が設置されている。なお、現在Suicaが利用できない弥彦線と羽越本線の上記区間各駅は、2008年春からサービスが開始される予定である。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- JR東日本:旅客営業規則第156条(他のJRでも同文)
- JR旅客制度特例の変遷