国鉄121系電車
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国鉄121系電車 | |
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快速「サンポート」に使用中の121系 | |
起動加速度 | 2.0km/h/s |
営業最高速度 | 100km/h |
設計最高速度 | 100km/h |
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大)
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全長 | 20,000mm |
全幅 | 2,832mm |
全高 | 3,935mm |
軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 直流1,500V(架空電車線方式) |
モーター出力 | 110kW |
編成出力 | 110kW(MT55A形)×4=440kW |
歯車比 | 15:91=1:6.07 |
駆動装置 | 中空軸平行カルダン撓み継手方式 |
制御装置 | 永久直列抵抗制御・弱め界磁制御(CS51A形) |
ブレーキ方式 | 発電ブレーキ・電気指令式空気ブレーキ(応荷重付)・ハンドブレーキ |
保安装置 | ATS-SS |
メーカ | 川崎重工業・日立製作所・近畿車輛・東急車輛製造 |
国鉄121系電車(こくてつ121けいでんしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)が設計・製造した直流近郊形電車の形式である。
目次 |
[編集] 製造の経緯
国鉄分割民営化直前の1987年(昭和62年)3月23日のダイヤ改正により、香川県内の予讃本線高松~坂出間、多度津~観音寺間および土讃本線多度津~琴平間が四国の国鉄路線として初めて電化されるのに備えて、2両編成19本の38両が製造された。民営化にあたっては全車両が四国旅客鉄道(JR四国)に引継がれた。
経営基盤が脆弱とされた北海道旅客鉄道(JR北海道)、四国旅客鉄道(JR四国)、九州旅客鉄道(JR九州)の3社に対する将来の布石といった意味合いで国鉄が残した車両の一つである。
[編集] 編成・形式
高松方からクモハ121形 (Mc) - クハ120形 (Tc') の2両固定編成で、電動車と付随車の構成(MT比)は1M1Tであり、2両編成19本(38両)が在籍する。全車両が国鉄時代に製造され、JR発足後の追加製造は行われていない。四国島内の検修施設の関係で、編成全体が逆向きとされている。
- クモハ121形 高松寄りの制御電動車。パンタグラフと走行機器を搭載する。空気圧縮機 (CP) などの重要機器がすべて搭載されており、当形式単独でも走行することが可能である。
- クハ120形 琴平寄りの制御車。台車は101系のものが再利用されている。
[編集] 構造
[編集] 車体
車体はステンレス製で、前面中央には貫通扉を備え、側面には片側3か所の両開き扉とドア間4枚、車端部2枚の窓が配されている。扉は半自動(停車時に手動で開閉できる)の設定が可能な構造であるため、取手が取付けられている他、ホーム有効長の短い駅での客扱に備えて選択開閉ができるようになっている。窓は1段上昇式を採用し、良好な視界を保ちつつ製造コスト削減を図っている。車体幅は2,800mmとし、裾を絞らない箱型の車体とされた。前面スタイルは前年に登場した207系900番台に準じており、前面窓周りは黒色処理とされた。
窓を1段上昇式とした関係で側面に行先表示器は設置せず、方向板を使用していた。また前面の行先表示器も手動式である。
塗装は基本的に無塗装であるが、ややピンクに近い赤色である赤14号の帯[1]を配している。この帯色は、四国旅客鉄道に承継されて間もなく同社のコーポレートカラーである水色(青色26号)に変更された。
[編集] 台車・機器
台車および主幹制御器などの各種機器については、当時の国鉄の財政状況が極限的状況に陥っていたことから、新製費用を抑えるために可能な限り廃車車両の発生品を流用している。制御電動車(クモハ121形)の台車は103系で採用されているDT33形をベースにブレーキシリンダやばねなどを改良したDT33A形台車を使用しているが、一部はDT33形の発生品である。制御車(クハ120形)の台車は101系電車から流用したDT21T形である。主電動機 (MT55A形)と主制御器 (CS51A形) は105系と同一品を使用しており、性能的には105系と同等である。
補助電源装置は485系サシ481形などの食堂車の廃車発生品である70kVAの電動発電機 (MG) を当初装備していたが、トラブルが多発したため、1998年(平成10年)から2001年(平成13年)にかけて静止形インバータ (SIV) に交換された。車両番号の末尾18,19の編成は111系の廃車発生品 (S-SIV90/90kVA) をクハ120形の床下(クモハ121形のMGは撤去)に、その他の編成はクモハ121形のMGを撤去し、その位置にSIV (S-SIV70/70kVA) を設置した。
ブレーキ装置は、205系や211系と同一の電気指令式が採用されたが、気動車などに操作方法を合わせるため、運転台は縦軸2ハンドル式である。先頭車前面の連結器には、解結作業の迅速化、効率化を図るため電気連結器と自動解結装置が装備された。
集電装置は発生品のPS16形パンタグラフが搭載されたが、のちの1992年(平成4年)に予讃線の観音寺~新居浜間が電化された際に、狭小トンネルがある箕浦駅以西に入線できないため、7000系と同じS-PS58形に交換された。
[編集] 車内設備
他の近郊形電車にならって、座席は扉間に対面式固定クロスシート(ボックスシート)を配し、客用扉付近の戸袋部と車端部にロングシートを配したいわゆるセミクロスシートである。クロスシートの背もたれの通路側がやや斜めにカットされ、大形の手摺が取付けられている。新製当初から冷房装置 (AU79A/33,000kcal/h) も搭載された。天井部は平天井構造とされ、冷風の吹出しはラインフロー式である。
高松近郊の短距離区間での運用を想定していたため、灰皿は落成時点から省略されており、トイレも設置されていない。
ドア横に半自動扱時の操作ボタンは無く、半自動扱の際は115系のようにドアを手で開けることになるが、一部の車両にはのちに操作ボタンが設置された。
[編集] 運用
JR発足までに全編成が高松運転所に配置され、当初は本州から転入した111系とともに使用され、その後同所には7000系・6000系・113系も加わった。
2両編成を基本としていて、ワンマン運転には対応していない。そのため、高松近郊の予讃線(伊予西条駅以東)や土讃線で主に普通電車や快速「サンポート」に使用されている。また、トイレが無いことと、側窓が上昇式になっていることから、本四備讃線(瀬戸大橋線)で営業運転することはできない。
[編集] 関連商品
マイクロエースから、赤14号をまとった国鉄時代の塗色と、現在の四国色が発売された。
[編集] 脚注
[編集] 関連項目
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