国鉄185系電車
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国鉄185系電車(こくてつ185けいでんしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)が設計・製造した直流特急形電車である。1987年(昭和62年)の国鉄の分割・民営化時には、全車両が東日本旅客鉄道(JR東日本)に承継された。
1981年(昭和56年)から1982年(昭和57年)にかけて227両が製造された。
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[編集] 概要
投入された線区の事情によって、仕様の異なる0番台と200番台の2種類がある。
老朽化した急行形電車の置換え用に製造されたものであるが、置換え対象車両は急行列車だけでなく普通列車にも運用され、置換えと同時に特急列車への格上げを実施するため、従来の「特急用車両は特急専用」という慣例を打ち破り、国鉄史上初めて普通列車と特急列車の両方で運用することを前提に設計された。
そのため、車体の断面形状は急行形電車と同等であり、幅1,000mmの片開扉を片側2か所(グリーン車は1か所)に設け、客室側窓を開閉可能としている点も急行形電車と同様である。性能面においても歯車比が近郊形電車と同等の4.82とされ、同時期に京阪神地区用に設計・製造された117系電車と同等である。普通車の座席は、特急での運用を考慮して転換クロスシートとされたが、当時の特急形車両の標準であった簡易リクライニングシートと比べても見劣りのするものであった。国鉄時代に長期使用を考慮して設計されており、特に腐食対策については、ポリエチレン樹脂による「塗屋根」、車体腰板部全部とドアをステンレス鋼板とするなど、従来の国鉄車両の弱かった部分を補強してある。また、当時の現業部門からの要望により乗務員室は広く確保され、乗務員の業務環境は改善された。
ハードウェアとしてのサービス内容としては劣ってはいたものの、151系から延々と続いたデザインから久々に脱却し、明るいカラーリングを採用して新鮮なイメージを与え、一般の利用客には好印象を与えた。
普通列車用としての使用は、185系が登場した時点で既に2扉クローズデッキの車両では東京駅近郊でのローカル運用は事実上不可能になっており、各特急列車の回送を目的とした列車の客扱にとどまった。東海道線には現在も185系による普通列車運用が残存し、かつては朝上り普通列車熱海発東京行きとして定期運用され着席客には人気を博したものの、当然立ち客にとっては立つ場所が狭く車内混雑も一段と醜かったこともあり、現在は一般の近郊電車に置き換えられている。ただし、都心部と比較して輸送量が少ない地方都市圏(185系では高崎地区)においては輸送力列車としての運用の場もあり、高崎地区では朝の通勤列車に運用されることもあった。
台車は制御車・付随車(クハ・サハ・サロ)がTR69K形、電動車(モハ)がDT32H形を装着している。2007年現在置き換えの予定はない。
また、そのスタイルや性能、引継いだ列車にかつて充当されていたことや、貴賓車クロ157形の牽引役を引き継いだことから、「157系の後継車両」とも評される。
[編集] 番台区分
[編集] 0番台
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東海道本線東京口で運用されていた153系の置換え用に製造されたグループである。基本の10両編成8本80両と付属の5両編成7本35両の計115両が1981年に田町電車区(現・田町車両センター)に配置され、10月から従来の急行「伊豆」を格上げして特急「あまぎ」と統合したL特急「踊り子」で使用を開始した。置き換えは徐々に行われたため、一時的に153系と併結して急行「伊豆」に使用された。
車体外板塗装は、白地(クリーム10号)に緑14号の斜めストライプを3本配した、今までの車両にはない非常に斬新なデザインが採用された。これは運用される伊豆の山々をイメージしたものとされる。また、「踊り子」という運用列車の愛称と同様に、川端康成の小説『伊豆の踊子』の冒頭部分を意識していたともされている。
1999年(平成11年)からは田町配置車のリニューアルが開始され、2002年(平成14年)までに後述の200番台車も含めて対象全車のリニューアルが完了している。普通車座席のリクライニングシートへの交換などグレードアップが図られており、その一方でトイレ・洗面所は未施工となっている。クハ185形・サロ185形は洋式トイレに改造されているが、これはリニューアル前に単独で施工されたものである。同時に車体塗装も白地にオレンジと緑のブロックパターンを配した湘南色のものに改められている。
2007年(平成19年)現在は、特急「踊り子」、東京・品川発着の「湘南ライナー」、「ホームライナー」古河・鴻巣の一部、および7時24分東京発伊東行の普通列車(列車番号521M)[1]に運用されている。
[編集] 形式別概説
[編集] モハ185形
中間電動車でモハ184形とユニットを組む。定員72名。主抵抗器、主制御器、パンタグラフを搭載する。従来の直流特急形と違い、本形式はパンタグラフを1基搭載としている。
[編集] モハ184形
中間電動車でモハ185形とユニットを組む。定員68名。電動発電機(MG)、空気圧縮機(CP)などを搭載する。
[編集] クハ185形
制御車で、0番台が偶数向(神戸方)、100番台が奇数向(東京方)である。定員56名。分割併合の機会の多い本形式だが、電気連結器および自動連解装置は装備されていない。
[編集] サロ185形
中間付随車でグリーン車。車販準備室を備える。定員48名。
[編集] サハ185形
中間付随車。編成中の空気容量を補うため、CPを搭載する。0番台のみ存在し、付属編成に連結される。定員72名。車体はモハ185形とほぼ同一で、トイレと洗面所は設置されていない。
[編集] 200番台
1982年の東北・上越新幹線暫定開業時のアクセス輸送のため、東北本線・上野駅~大宮駅間で運転された「新幹線リレー号」用並びに165系で運転されていた急行列車の特急列車格上げ用に製造されたグループで、7両編成16本計112両が1981年~1982年に新前橋電車区(現・高崎車両センター)に配置された。
寒冷地での使用を考慮して耐寒・耐雪装備が強化されており、信越本線横川駅~軽井沢駅間(碓氷峠)の急勾配区間への入線対策として、台枠・連結器の強化(EF63形電気機関車との連結を考慮)などが施工されている。編成は上り横川方に重い車両、下り軽井沢方に軽い車両が来るように組まれている。このため、グリーン車であるサロ185形は軽井沢方の6号車とした。また、横川~軽井沢間をEF63形と連結して走行可能である事を示す●(Gマーク)が車両番号の左側に表記されていたが、当該区間の廃止後に全般検査を受けた車両から順次外され(塗りつぶされ)た。その他、暫定的に165系との併結運用への対応が実施されていることが前述の0番台と異なる点である。7両編成であることからサハ185形はない。
車体塗装は白地に緑の帯を1本巻いたおとなしいものとなった。これは東北・上越新幹線の200系とイメージを統一するためである。田町電車区に転属した編成は転属後(一部は転属直前)に0番台に準じた斜めストライプに変更したが、側面の車両番号の表記位置[2]の関係で車両番号表記とストライプが重なることとなった。特に、モハ185形は車両番号表記が完全にストライプにかかっていた。
1985年(昭和60年)に東北・上越新幹線が上野まで開業すると、「新幹線リレー号」で使用されていた185系(200番台)は、4編成28両が「踊り子」用として田町電車区に転出し、それまで0番台と併用されていた183系1000番台を置換えた。その際に編成全体の方向転換とサロ185形の連結位置の変更(編成の中央へ)を実施している。さらに1988年(昭和63年)に1本、1990年(平成2年)に2本と合計7編成49両が転出している。1999年からは0番台と同様のリニューアル工事を施工し、対象全車が完了している。また、1996年(平成8年)には横浜~甲府間を横浜線経由で運転される臨時特急「はまかいじ」の運転のために3編成に対して京浜東北線・根岸線への入線に対応したATCの設置工事[3]、および低断面トンネル対応パンタグラフPS24A形への交換が実施されている。
一方、新前橋電車区に残った9編成63両は、上越線・吾妻線・両毛線・東北本線系統の急行列車を本格的に置換え、新特急「谷川」「草津」「あかぎ」「なすの」で使用を開始した。ただし「なすの」については1990年に田町配置の200番台に運用変更した。1995年(平成7年)からリニューアル工事を開始し、翌1996年には対象全車への施工が完了している。工事内容は、普通車座席のリクライニングシートへの交換、内装材の交換などである。塗装は上毛三山をモチーフとした白い車体に赤・グレー・黄色のブロックパターンを配するとともに、「EXPRESS 185」のロゴを標記している他、列車種別・愛称表示器の字幕も交換された[4]。
2006年(平成18年)3月18日に高崎車両センター所属編成はすべて大宮総合車両センター車両検査科東大宮センターに転属した。
1994年(平成6年)から1995年に、2編成を「シュプール号」用の特別塗装「フルフル色」に変更したことがあった。当時の新前橋電車区の受持である「シュプール号」はグリーン車を抜いた6両編成で、抜かれていたサロ185形についてもこの塗装に変更されたが、サロ185-201だけは従来色のままであった。
田町所属車・新前橋所属車の双方とも、一時期は旧塗装車と新塗装車の連結もみられた。
[編集] 形式別概説
[編集] モハ185形
中間電動車でモハ184形とユニットを組む。主抵抗器、主制御器、パンタグラフを搭載する。200番台ではこの形式のみトイレを設置していない。
[編集] モハ184形
中間電動車でモハ185形とユニットを組む。MG、CPなどを搭載する。
[編集] クハ185形
制御車で、200番台が偶数向き、300番台が奇数向きである。
[編集] サロ185形
中間付随車でグリーン車。大宮車と田町車では座席形状が異なる。大宮車が従来品を背面テーブル付のバケットタイプに改造したタイプであるのに対し、田町車は肘掛収納テーブル付の座席に交換している。
大宮総合車両センター所属車の組成は以下の通りである。
クハ185-200+モハ185-200+モハ184-200+モハ185-200+モハ184-200+サロ185-200+クハ185-300
[編集] 使用列車
2007年3月18日より全列車全席禁煙となる。
※運転終了・廃止列車も含む
- 急行「伊豆」→エル特急「踊り子」、特急「モントレー踊り子」
- 「はまかいじ」
- 「そよかぜ」
- 「日光」
- 急行「なすの」→新特急「なすの」→特急「おはようとちぎ」・「ホームタウンとちぎ」
- 「あかぎ」・「ウイークエンドあかぎ」・「ホームタウン高崎」
- 急行「ゆけむり」→特急・新特急「谷川」→特急「水上」
- 急行「草津」・特急「白根」→新特急「草津」、特急「草津白根」・「リゾート草津」・「効能温泉吾妻」
- 「ホリデー特急おくたま」・「ホリデー特急かまくら」
- 「シュプール上越」
- 「湘南ライナー」・「湘南新宿ライナー」→「おはようライナー新宿」・「ホームライナー小田原」
- 「ホームライナー鴻巣」・「ホームライナー古河」
- 快速「信州リレー号」(高崎~長野間)
- 「軽井沢リレー号」(高崎~中軽井沢間)
[編集] 脚注
- ^ 基本編成の運用は日曜日のみで、それ以外は200番台となる。185系を使用した東海道本線の普通列車はこの521Mのみである。
- ^ 0番台がストライプを避けて中央より左側にずらしているのに対し、モハ184形を除く200番台では中央に表記される。また余談だが、0番台の車両番号表記位置は現行塗色に変更後も変わっていない。
- ^ これにより定員が4名減少している。
- ^ 「谷川」の列車愛称が「水上」へ変更された1997年(平成9年)にも字幕が再度変更された。