国鉄ED42形電気機関車
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ED42形電気機関車(ED42がたでんききかんしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)の前身である鉄道省(のちの運輸通信省)が製造した直流用電気機関車である。
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[編集] 概要
信越本線横川~軽井沢間(碓氷峠)の急勾配区間用アプト式電気機関車で、ED40形の置き換え用として導入された。基本設計はスイスから輸入したED41形を参考とし、1934年(昭和9年)から1948年(昭和23年)までの間に、日立製作所、東芝、川崎重工業、三菱重工業、汽車製造で28両が製造された。
車体は前後とも切妻の箱形車体で、車体前後端にデッキが設けられている。運転台は坂下の横川寄りにのみ設けられた片運転台型である。前位側の屋根上に停車場構内で使用するパンタグラフを1基搭載する。本線上では第三軌条から集電するため、集電靴が片側2か所に設備されている。
形態的には、1~22の戦前形と23~28の戦時形に分類される。戦時形は材料、機器の代用化や車体工作の簡易化が行なわれ、外観上は外板の薄板化や窓隅の角形化が目立っている。
走行部のシステムは、モデルとしたED41形と基本的に同一である。電動機は、動輪用に2基、アプト式軌条のラックレールに噛み合わせる歯車駆動用1基の計3基が搭載されている。ラック台車(歯車用台車)は車体中央部に設けられ、動輪の第2軸、第3軸に荷重を分担して負担させるようになっている。走行用台車はボギー式となり、各台車のホイールベース間に電動機1基ずつが装架され、動力は側面のジャック軸から連結棒で各動輪に伝達される。
その用途から一貫して横川機関区に配置され、信越本線横川~軽井沢間において運用された。1963年(昭和38年)9月30日に横川~軽井沢間が全面的に粘着運転の新線に切替えられ、アプト式ラックレール区間を廃止したことで本形式は役目を終え、同年12月9日に全機が廃車、除籍されている。
この間の1961年(昭和36年)10月1日からは、信越本線に初めて設定された特急列車「白鳥」の牽引も行なっている。
[編集] 保存
横軽間のアプト式廃止後、1号機が横川駅構内に、2号機が軽井沢町の東部小学校に静態保存された。私鉄への譲渡機はない。
横川駅の1号機は、機関区の庫内に保存されていたが、1967年(昭和42年)10月14日に準鉄道記念物に指定された。また、1987年(昭和62年)に碓氷線電化75年を記念して、横川運輸区と大宮工場(現在の大宮総合車両センター)の手により動態復元され、運輸区内で走行を行なっている(架線電圧が違うため、降圧用の機器を搭載したヨ3961(ヨ3500形車掌車)を連結した)。その後、1999年(平成11年)4月に開館した碓氷峠鉄道文化むらに移されたが、現在は静態保存となっている。
[編集] 主要諸元
※カッコ内はラックレール使用時のデータ。
- 全長:12810mm
- 全幅:2950mm(集電靴を含めた全幅)
- 全高:3940mm
- 運転整備重量:62.52t
- 電気方式:直流600V(第三軌条方式、架空電車線方式併用)
- 軸配置:B-b-B
- 台車形式:―
- 主電動機:MT27形×3基
- 歯車比(動輪):20:93(1:4.65)
- 歯車比(歯輪):63:105×26:58(1:3.72)
- 1時間定格出力:510kW
- 1時間定格引張力:9300kg(14000kg)
- 動力伝達方式:歯車1段減速、連結棒式(2段減速歯車式)
- 制御方式:非重連、抵抗制御(2段組み合わせ制御)
- 制御装置:電磁空気単位スイッチ式
- ブレーキ方式:EL14A空気ブレーキ、電気ブレーキ、手用動輪用ブレーキ、手用ラック歯車用帯ブレーキ、空気式ラック電動機用帯ブレーキ
- 最高運転速度:
[編集] 関連項目
- 国鉄キハ57系気動車
- 国鉄キハ80系気動車
- 日本国有鉄道の旧型電気機関車 ■Template ■ノート
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