国鉄EF67形電気機関車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
国鉄EF67形電気機関車(こくてついーえふ67かたでんききかんしゃ)とは、1982年に登場した旧・日本国有鉄道(国鉄)の直流電気機関車である。
目次 |
[編集] 概要
山陽本線の瀬野駅-八本松駅間に連続する勾配、大山峠(通称瀬野八)を走行する貨物列車の後部に連結する補助機関車(補機)として使用することを目的として開発された機関車である。
同区間の補機としてはこれまでEF59形が使用されていたが、戦前製であり老朽化が問題視されていた。当初、置き換えのためEF60形の初期型およびEF61形を改造したEF61形100番台・200番台が計画され、1977年から投入された。しかし、同機は走行特性上重連使用ができないことが判明したため投入は200番台の8両で中止、1000t以下の列車のみに限定運用とされたため、EF59形を全面的に置き換える計画は実現しなかった。
このため、1200t級列車の補機用として、1982年に本形式が開発された。機関車需給の事情から新製とはならず、すべてEF60形・EF65形からの改造によっている。
[編集] 構造
EF59形2両重連によって行われていた1200t列車の補機仕業を1両で行えるよう、制御方式が電機子チョッパ制御に改造され、回生ブレーキを持つ。台車や電動機はそのまま利用されているが、チョッパ制御化とあわせて主電動機が6個永久並列接続となったため、端子電圧が上げられ、電動機1基あたりの出力が50kW増加して475kWとなった。
補機として使用されるのは上り列車(瀬野駅→八本松駅)のみで、復路は機関車のみで回送される。このため、回送運転では両端台車の4個の主電動機を走行に使い、中間台車の2個は回生ブレーキ専用とする回路構成になっている。
塗装は広島県の県花であるモミジにちなみ、「もみじ色」と呼ばれる塗装が施されている。当時の国鉄では、一般に直流機関車には青色、交流機関車は赤色、交直流機関車はピンク色の塗装を施す規定になっていたが、本形式にはキハ58系などの急行型気動車に使われる赤11号が採用された。赤色とは異なるが赤色に近い色であり、直流機関車としては異色の塗装である。車体色から広島の銘菓に因み、「もみじまんじゅう」と呼ばれる。
0番台と100番台で異なる部分は、それぞれの番台別の解説で記す。
[編集] 番台別解説
- 基本番台(1~3)
- 1982年より、EF59形の置き換えのために投入された。EF60形の3次グループを改造した。上り側には貫通路・デッキが付けられ、走行中に連結器のロックを自動解除し、列車から切り離す自動解放機能も付けられている。100番台には自動解放機能は取り付けられなかったので、走行中に自動解放する列車は本区分が限定で運用されていた。
- 100番台は更新を受けているが、基本番台には現在のところ更新工事は予定されていない。改造元は以下の通りである。
- 「EF67 1」<「EF60 104」
- 「EF67 2」<「EF60 129」
- 「EF67 3」<「EF60 88」
- 100番台(101~105)
- 1990年より、貨物列車増発 および EF61形200番台の置き換えのために投入された。EF65形の一般型最終生産グループを改造した。上り側にはデッキが付けられたが、基本番台よりも小さい。貫通路・走行中の自動解放機能は省略された。2003年より更新工事を受け、パンタグラフがシングルアーム式に、テールランプが四角になり、窓回りが黒く塗られるなど、外観が変化している。改造元は以下の通りである。
- 「EF67 101」<「EF65 134」
- 「EF67 102」<「EF65 131」
- 「EF67 103」<「EF65 133」
- 「EF67 104」<「EF65 132」
- 「EF67 105」<「EF65 135」
[編集] 運用
広島車両所に配置され、専ら瀬野~八本松間の急勾配を越える貨物列車に使用されている。かつては八本松駅で走行中の解放が行われていたが、2002年3月で全面的に廃止された。現在は全列車とも広島貨物ターミナル駅で連結されて、西条駅に停車して解放される。現在では番台区分による運用の区別はなく、全機共通で運用される。
本形式の投入時点で既に旅客列車については全面的に補機を要しなくなっており、旅客列車に使用されることはない。そのため国鉄分割民営化後はすべてJR貨物に承継された。
[編集] 主要諸元
(カッコ内は100番台)
- 全長:17050mm(16875mm)
- 全幅:2800mm(2949mm)
- 全高:3974mm(4210mm)
- 軸配置:Bo-Bo-Bo
- 1時間定格出力:2850kW
- 最高運転速度:100km/h
[編集] 参考文献
- 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』2005年5月号 No.463 特集:鉄道貨物輸送の現状
- 鉄道ジャーナル社 鉄道ジャーナル別冊 No.4 『国鉄現役車両1983』 1982年
[編集] 関連項目
- 旧型機関車
- B・D型機(貨物用) - EB10 / AB10 - ED10 - ED11 - ED12 - ED13 - ED14 - ED15 - ED16 - ED17 - ED18 - ED19 - ED23 - ED24
- D型機(旅客用)- ED50 - ED51 - ED52 - ED53 - ED54 - ED55(計画のみ) - ED56 - ED57
- F型機(貨物用)- EF10 - EF11 - EF12 - EF13 - EF14 - EF15 - EF16 - EF18
- F型機(旅客用)- EF50 - EF51 - EF52 - EF53 - EF54 - EF55 - EF56 - EF57 - EF58 - EF59
- H型機 - EH10
- アプト式 - EC40 - ED40 - ED41 - ED42
- 私鉄買収機
- ED20 - ED21 - ED22 - ED25 - ED26 - ED27 - ED28 - ED29 - ED30 / ED25II - ED31 - ED32- ED33 / ED26II - ED34 / ED27II - ED35 / ED28II - ED36 - ED37 / ED29II - ED38 - ケED10 - デキ1(旧宇部) - ロコ1(旧富山地鉄) - デキ501(旧三信) - ロコ1100(旧南海)
- 開発史 - 日本の電気機関車史
カテゴリ: 日本の電気機関車 | 日本国有鉄道 | 日本貨物鉄道 | 鉄道関連のスタブ項目