国鉄EF57形電気機関車
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EF57形は、日本国有鉄道(国鉄)の前身である鉄道省が旅客列車牽引用に製造した直流用電気機関車である。
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[編集] 概要
鉄道省が太平洋戦争前に製造した最後の旅客用電気機関車であり、東海道本線における優等列車牽引用途を企図したものである。戦時体制下で開発・製造された機関車ではあったが、良質な材質・工作によって製造され、当時における優秀機として完成された。基本的な外観は、長大な2C+C2配置の台車枠上に箱形車体と両端のデッキを備える古典的形態である。
1940年(昭和15年)10月に登場した1号機は、既存の旅客列車用電気機関車EF56形の13号機として出場する予定であったが、275kWを発生する新開発の強力型モーター「MT38」を新たに搭載することになり、定格出力が1350kWから1650kWに強化された事で、新形式に改められた。外観はEF56後期形(8~12)に準じ、パンタグラフが中央に寄っていることで区別できる。
EF56形は、日本で初めて客車の暖房用蒸気発生装置を車載した電気機関車であるが、EF57形も基本仕様は踏襲し、煙管式のボイラーと水および重油タンクを車載している。これによって、暖房用ボイラーを搭載した「暖房車」を冬期に連結することを不要とした。
1941年(昭和16年)に量産型の2号機以降が登場。1943年(昭和18年)までに前述の1号機を含めて15両が日立製作所、川崎重工業・川崎車両で製造された。1号機と量産型の最大の相違点として、屋上のパンタグラフ2基を車体両端一杯に寄せて運転台屋上に前方に突出させ、可能な限り2基の間隔を採るように改められた点が挙げられる。抵抗器容量の変更から屋上通風器の増設が図られてスペース確保の必要が生じたこと、パンタグラフ2基が接近していることによる架線押上げ力の増大への対策などが原因である。他にも車体の側面形状が変更されるなど、外見は1号機と大きく異なったものとなっている。
戦後の東海道本線浜松電化(1949年(昭和24年))に際し、量産型についてはパンタグラフ高さを抑制する必要が生じ、パンタグラフを前方に450mm移動させて屋上車端部からアウトリガを張り出し、ここにオーバーハングしてパンタグラフを設置する形態に改められた(これにより、パンタグラフ取付け高さが100mm低められた)。パンタグラフがますます極端に突き出した武骨きわまりない形態は、他にほとんど類例が無く、EF57形の外見的特徴としてカブトムシという愛称とともに広く記憶されることになった。
[編集] 運用
当初は東海道本線で使われ、戦前戦中における最強力の旅客列車用機関車として、特急・急行列車の牽引にも盛んに用いられた。
戦後、1946年(昭和21年)開発の旅客列車用後続形式であるEF58形は登場当初、簡略設計や粗悪工作によって性能的に難があり、これに比して安定した性能のEF57形は、1950年代まで東海道本線の優等列車牽引機として第一線で運用された。この間、1948年(昭和23年)11月に12号機が事故廃車となっている。
しかし、1952年(昭和27年)以降EF58形が大改良を受けて1900kW級[1]・自動式暖房ボイラー搭載の流線型機関車となり、大量増備されるようになると、EF57形も旧式化は免れず、東海道本線での旅客列車仕業を改良型EF58形に譲るに至った。1956年(昭和31年)以降、高崎や長岡に転じ高崎・上越線で用いられたが、こちらもほどなくEF58形に置き換えられ、東北本線の電化に伴って順次宇都宮に転属する。1960年代以降は14両全車が上野-黒磯間で東北本線旅客列車の牽引に従事することになった。
東北本線系統の客車については、黒磯以北が交流電化されたこともあって早くから電気暖房装置取り付けが進んでおり、必ずしも蒸気暖房の使用にこだわる必要はなかった。そこでEF57形についても、1970年頃から暖房用ボイラー機器を撤去し、代わりに電気暖房用交流電源を供給するための電動発電機を装備するという改造が全車に対して行われた。改造車は運転席側面に電気暖房表示灯が取り付けられ、車端部の連結器両脇に客車への暖房電源供給用電気配線(ジャンパ連結器)が増設されている。
末期まで夜行急行列車の牽引にも充てられていたが、老朽化の進行とEF58形の東北本線転用に伴って1970年代に入ると廃車が始まり、1978年(昭和53年)10月までに全機が廃車された。
[編集] 保存機
7号機が宇都宮市の宇都宮駅東口公園で静態保存されている。また、1号機の動輪が宇都宮運転所に保存されている。
[編集] 主要諸元
2~15号機の諸元を示す。
- 全長:19920mm
- 全幅:2810mm
- 全高:4091mm
- 運転整備重量:110.82t
- 動輪上重量:83.70t
- 電気方式:直流1500V
- 軸配置:2C+C2
- 台車形式:HT59(主台車)、LT218A(先台車)
- 主電動機:MT38形×6基
- 歯車比:27:71=1:2.63
- 1時間定格出力:1650kW
- 1時間定格引張力:9500kg
- 1時間定格速度:
- 最高運転速度:95km/h
- 動力伝達方式:歯車1段減速、吊り掛け式
- 制御方式:非重連、抵抗制御、3段組合せ制御、弱め界磁制御
- 制御装置:電磁空気単位スイッチ式
- ブレーキ方式:EL14AS空気ブレーキ、手ブレーキ
[編集] 脚注
- ^ 戦後になって開発された、国鉄制式の吊り掛け式主電動機は一般に端子電圧が架線電圧1350Vを前提(送り出し時には1500Vであっても、実際に集電する際には電圧降下で10%程度電圧が低下することを見込んでこのような設定となっていた)とする675V定格ではなく架線電圧1500Vを前提とする750V定格で設計されているため、そのまま比較は出来ない。端子電圧750V換算での本形式の定格出力は約1833kWであり、出力面での格差は5%に満たない。
[編集] 関連項目
- 日本国有鉄道の旧型電気機関車 ■Template ■ノート
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- D型機(旅客用)- ED50 - ED51 - ED52 - ED53 - ED54 - ED55(計画のみ) - ED56 - ED57
- F型機(貨物用)- EF10 - EF11 - EF12 - EF13 - EF14 - EF15 - EF16 - EF18
- F型機(旅客用)- EF50 - EF51 - EF52 - EF53 - EF54 - EF55 - EF56 - EF57 - EF58 - EF59
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