有明 (列車)
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有明(ありあけ)とは、九州旅客鉄道(JR九州)が門司港駅・小倉駅・博多駅~熊本駅・水前寺駅・武蔵塚駅・光の森駅・肥後大津駅間を鹿児島本線・豊肥本線経由で運行するエル特急。
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[編集] 運行概況
基本的には山陽新幹線に接続するダイヤを組んでいる。また、豊肥本線水前寺駅・武蔵塚駅・光の森駅・肥後大津駅へ乗り入れも行っている。
最終の「有明29号」は博多駅24時以降に出発する(2007年3月18日時点では博多0:06発→熊本1:30着)が、これは九州新幹線開業前には夜行列車「ドリームつばめ」として運行されていた列車の名残である。そのため、この列車は特例として、前日博多着の山陽新幹線から乗り換える場合、乗り継ぎ特急券制度の適用を受けることが可能である。
博多~熊本間は高速バスとの競合が非常に激しい区間である。スピード面、定時性には優れているものの、運賃面(最近では割引切符を出しているので差が縮まりつつある)や本数、さらには高速バスが都心(熊本交通センター、天神)への直結することなど劣っている面もある。「リレーつばめ」と合わせて1時間あたり3本運転されているが本列車のほうは4両という短い編成で運転されることが多く、混雑が激しいことがある。
九州新幹線全線開業後についてはまだ公式発表がないが、博多~鳥栖間が超過密ダイヤで線路容量も限界となっているため、動向は予断を許さない状況である。
- 本数
15往復の運転であるが、「リレーつばめ」の博多駅~熊本駅間での補完的な列車としての意味合いが強く、時間帯によって本数に偏りがある(下り最終は24時を過ぎてから博多駅を発車するが、上り最終の熊本駅発車は19時10分である。始発では上りは熊本駅を5時前に発車するが、下りの博多駅発は10時近い)。運行区間は下記の通り9パターンに及ぶが、朝の上りと夕方以降の下りは博多駅~熊本駅間、日中は小倉駅~光の森駅間の運行が多い(この2パターンだけで全本数の半分を占める)
- 博多駅~熊本駅:下り4本・上り2本
- 博多駅~武蔵塚駅:下り1本
- 博多駅~光の森駅:下り1本・上り2本(上り1本は熊本駅まで普通列車扱い)
- 小倉駅~熊本駅:下り3本・上り1本
- 小倉駅~水前寺駅:下り1本・上り2本
- 小倉駅~武蔵塚駅:上り1本
- 小倉駅~光の森駅:下り4本・上り5本
- 小倉駅~肥後大津駅:1往復
- 門司港駅~水前寺駅:上り1本
- 停車駅
全列車を以下の4パターンに分け、その4パターンについて記す。
- 小倉駅発着で、豊肥本線に乗り入れる列車
- 小倉駅~熊本駅間を走る列車
- 博多駅発着で、豊肥本線に乗り入れる列車
- 博多駅~熊本駅間を走る列車
駅名/ パターン |
1 | 2 | 3 | 4 |
---|---|---|---|---|
門司港駅 | 28 | |||
門司駅 | 28 | |||
小倉駅 | ● | ● | ||
戸畑駅 | ● | ● | ||
黒崎駅 | ● | ● | ||
折尾駅 | ● | ● | ||
赤間駅 | ● | ● | ||
香椎駅 | | | 29 | ||
博多駅 | ● | ● | ● | ● |
二日市駅 | ● | ● | ○ | ▽ |
鳥栖駅 | ● | ● | ● | ● |
久留米駅 | ● | ● | ● | ● |
羽犬塚駅 | ● | ● | ● | ○ |
瀬高駅 | ● | ● | ● | ○ |
大牟田駅 | ● | ● | ● | ● |
荒尾駅 | ○ | ○ | ● | ○ |
長洲駅 | ● | ● | ● | ○ |
玉名駅 | ● | ● | ● | ○ |
上熊本駅 | ● | ● | ● | ○ |
熊本駅 | ● | ● | ● | ● |
平成駅 | | | 6 | ||
南熊本駅 | | | 6 | ||
新水前寺駅 | ● | ● | ||
水前寺駅 | ● | ● | ||
東海学園前駅 | | | 6 | ||
竜田口駅 | | | 6 | ||
武蔵塚駅 | ○ | ● | ||
光の森駅 | ○ | ○ | ||
肥後大津駅 | 19・10 |
※ ●→全列車停車 ○→一部列車が停車 ▽→下りのみ一部列車が停車 数字→その数字の号数の列車のみが停車 |:通過
※6号は光の森駅~熊本駅間普通列車扱い、各駅に停車。
- 使用車両
- 787系
- 「リレーつばめ」と異なる点は編成数が短く、専用の4両編成で走ることが多いこと。列車によっては6・7・8・11両編成を組むこともある。この4両編成は同系列の他編成と異なり、全車禁煙。
- グリーン車
- 一般席の他に個室・デラックスグリーン席が設定されている(4両編成以外)。また、いわゆる半室グリーン席も列車により存在する。なお、デラックスグリーン席については2005年10月1日より順次設定の関係で列車により設置されていない場合がある。
- 普通車
[編集] 鹿児島本線優等列車沿革
[編集] 戦後の展開
- 1950年、門司港駅~熊本駅間を運行する準急列車として「有明」(ありあけ)の運行を開始。
- 1958年、門司港駅~鹿児島駅間を運行する夜行急行列車として「さつま」が運行される。
- 1959年、「有明」気動車化。同時に博多駅発着とする。また、博多駅~西鹿児島駅間を運行する準急列車として「かいもん」が運行される。
- 1960年、「かいもん」1往復増発し、指宿枕崎線山川駅まで運行される。但し、指宿枕崎線内は普通列車扱いであった。
- 1961年、博多駅~西鹿児島駅間を運行する急行列車「フェニックス」の運行を開始。また、「さつま」名古屋駅発着に変更。
- 但し、「さつま」については、従来通り鹿児島本線内は夜行列車としていた。
- 1962年、「フェニックス」、運行区間を日豊本線宮崎駅まで延長。九州島内をほぼ循環する急行列車となる。
- 1965年、熊本駅まで電化工事伸長に伴い、運行形態を変更。以下の通りとなる。
- 「有明」は、米子駅~博多駅間を結んでいた準急列車「やくも」と統合されて「やえがき」と改称。「有明」は岡山駅~熊本駅間を結ぶ電車急行の名となる。(山陽本線優等列車沿革の項も参照)
- 新たに博多駅~熊本駅間を運行する電車準急列車として「ぎんなん」を設定する。
- 「さつま」の鹿児島本線内を分離し、「はやと」の名称を与えられる。
- 1966年、急行料金制度の改変に伴い、従来準急列車として運行されていた「ぎんなん」・「かいもん」が急行列車に格上げされる。
[編集] 特急列車「有明」の登場
- 1967年10月1日、門司港駅~西鹿児島駅間を運行する特別急行列車として「有明」運行を開始。それまでの「有明」は「しらぬい」と改称。また、「かいもん」1往復を熊本駅以南の運転とし、「なぎさ」の名称が与えられる。なお、「なぎさ」自体は新規の1往復を加え2往復が設定される。
- 1968年、「よん・さん・とお」と称されるダイヤ改正に伴い、以下の列車名を変更。
- 「なぎさ」→「そてつ」
- 「なぎさ」の名称はすでに紀勢本線で運行されていた急行列車で使用されていた関係で案内上紛らわしいという理由であったとされる。
- 「はやと」→「かいもん」
- 同一種別で同一行程列車の愛称の統合であるが、これにより「かいもん」は昼行列車1往復増発分も合わせて3往復に増強される。
- 「なぎさ」→「そてつ」
- 1970年、鹿児島本線全線電化に伴い「有明」を581系・583系電車化し1往復増発。新たに博多駅発着列車を設定。また、夜行「かいもん」を除き定期急行列車は全て電車化し、気動車による運転列車は季節列車化される。
- 1972年、「有明」電車化し1往復増発し、3往復での運行となる。
- 1973年、「ぎんなん」・「そてつ」を統合し、「かいもん」1往復増発。「ぎんなん」このとき名目上一時廃止。また、「フェニックス」の宮崎駅始発列車を博多駅止まりとし、博多駅~熊本駅~西鹿児島駅間を分離。「かいもん」に編入。
- 1975年3月10日、山陽新幹線博多駅乗り入れに伴い、以下のようにダイヤグラフを改編する。
- 鹿児島本線線内昼行特急は全て「有明」とし10往復体制に、博多駅での新幹線接続列車とする(門司港駅・小倉駅発着列車もそれぞれ1・3往復設定)。同時に「有明」をエル特急に指定。
- 西鹿児島駅発着の急行列車として「かいもん」の名称を総称とし、熊本駅発着の「そてつ」、「フェニックス」の博多駅以西を吸収する。
- 博多駅~熊本駅間運行の急行列車として「ぎんなん」が名称上復活する。
- 大幅増発に伴い山陽新幹線博多開業に伴う山陽特急廃止で捻出した481系・485系の使用が開始される。先頭車両は転配の都合から、殆どがボンネット形の初期車両であり、1985年頃まで後期形車両(200番台・300番台等)を先頭とした編成は殆ど見られなかった。
- 1978年、夜行列車であった「かいもん」の使用車両を20系客車を寝台車とし、12系客車を座席車とする編成に変更されている。
- 1978年10月から581系・583系のヘッドマークをイラスト入りのマークに変更したが、481系・485系は先頭車が殆どがボンネット形の初期車両であったため文字マークのまま使用され、一時的な編成替えで200番台が先頭に立たない限り485系のイラストマークは1985年頃まで殆ど見られなかった。
[編集] 全特急化とその後
- 1980年10月1日、山陽新幹線に接続する鹿児島本線系統の昼行優等列車を特急列車に統一、「有明」18往復体制とする。但し1往復は季節列車。これに伴い、鹿児島本線内の急行列車は夜行列車の「かいもん」のみとなる。また、小倉駅発着列車についてはすべて博多駅発着とし、博多以北の乗り入れは門司港駅発着列車の1往復のみとなる。
- 1982年11月15日、国鉄の減量ダイヤに伴い「有明」季節列車1往復を含む17往復に減少。581系・583系は1往復のみに。
- 1984年2月、国鉄の減量ダイヤに伴い「有明」15往復に減少。これに伴い581系・583系撤退。全列車9両編成から7両編成に短縮。
- 1985年、夜行列車「かいもん」の臨時増発列車として博多駅~西鹿児島駅を運行する寝台特急「桜島」(さくらじま)が運行される。
- 1985年、「有明」一部編成を5両編成に短縮。先頭車両は中間車に運転台を取り付けたクモハ485とクロ480が主力となり、485系編成のイラストマークが本格的に見られるようになる。一方従来のボンネット形先頭車の多くは、「ひたち」増発のため、勝田電車区へ転出。
- 1986年11月1日、「有明」熊本駅発着列車を中心に25往復に増発。西鹿児島駅発着列車は基本5両に、熊本駅発着列車は3両(一部5両)に短縮。「かいもん」の寝台車を24系客車に変更。
- 1987年、「有明」豊肥本線水前寺駅乗り入れ開始。豊肥本線乗り入れに際しては、普通列車扱いでDE10形ディーゼル機関車で牽引する形をとっていた。また、豊肥本線内は毎日運転の臨時列車扱いとした。
- 1988年3月13日、「有明」28往復に増発。同時に一部列車にハイパーサルーン投入開始。このうち博多駅~西鹿児島駅間を最少の停車駅で運行する列車を「スーパー有明」とする。また、豊肥本線内も正式に定期列車とする。
- 1989年3月11日、「有明」31往復に増発。同時にハイパーサルーン使用列車について「ハイパー有明」の愛称使用開始(ただし、「スーパー有明」の名称はそのままとした)。また、八代駅始発列車及び、熊本駅~西鹿児島駅間列車を設定。
- 1989年4月29日、「有明11号」において、「オランダ村特急」を門司港駅~博多駅間で併結開始(史上初の電車・気動車動力協調運転)。
- 「桜島」はこの年で設定終了。
- 1990年3月10日、「有明11号」・「オランダ村特急」の併結を鳥栖駅まで延長。「スーパー有明」は「ハイパー有明」に吸収。
- 1991年3月16日、「有明」、「ハイパー有明」と合わせて32往復となる(「有明」の本数の最多記録)。水俣駅発着列車を設定。
- 1992年3月14日、「有明11号」の「オランダ村特急」の併結、終了。
- 1992年7月15日、「有明」の西鹿児島駅発着列車(14往復)を「つばめ」として分離。「有明」は残りの18往復での運転となる。「有明」の一部に「つばめ」用の787系電車を投入。「ハイパー有明」の呼称は廃止。
- 門司港駅発着の「有明」は「つばめ」となったため、「有明」は博多駅発着に統一された。
- 1993年3月18日、「有明」に八代駅行き列車を設定。「かいもん」は特急「ドリームつばめ」に昇格し、運行区間を博多駅~西鹿児島駅間とする。
- 1994年7月1日、「有明」はハイパーサルーンに車種統一の上、水前寺駅乗り入れを中止。「有明」が抜ける分の熊本駅~水前寺駅間の列車に関しては普通列車を増発して対応した。
- 1995年4月20日、787系の使用再開。
- 1997年3月22日、「有明」の1往復を「つばめ」に変更。
- 1999年3月13日、「有明」、下り25本・上り27本に増強。同時に「有明」用の787系4両編成が誕生する。「つばめ」と合わせて博多駅~熊本駅間では20分ヘッドでの運転となる。在来線特急で1時間3本の運転は全国初であった。
- この787系4両編成は後に全席禁煙化された。
- 1999年10月1日、豊肥本線熊本駅~肥後大津駅間電化完成に伴い、豊肥本線乗り入れ再開。熊本駅発着列車の一部が水前寺駅・肥後大津駅発着に変更になる。
- この時点では豊肥本線に乗り入れる列車は783系に限られていた。
- 以前は豊肥本線内は普通列車扱いであったが、「有明」が乗り入れない間に普通列車の本数が十分確保されたことから、乗り入れ再開にあたっては豊肥本線内も特急扱いとした。
- 2000年3月11日、「有明」27往復に増強。同時に787系に統一される。「有明」から撤退した783系は主に「かもめ」に回された。
- 2001年3月3日、「有明」の一部を小倉駅発着とし、「有明」からの「つばめ」独立以来8年8ヶ月ぶりに博多駅以北を走る「有明」が復活する。なお、この改正で完全に1時間2本運転となった「ソニック」と合わせて、小倉駅~博多駅間では特急が1時間3本運転されるようになる。
- 2002年3月23日、小倉駅行きの「有明」の一部を土曜・休日に限り(2003年からは毎日)門司港駅まで延長。
[編集] 九州新幹線部分開業後の「有明」
- 2004年3月13日、九州新幹線部分開業に伴い、「有明」水俣駅・八代駅発着列車を廃止。熊本駅発着列車及び豊肥本線乗り入れ列車のみとなる。九州新幹線に接続する「リレーつばめ」が1時間2本運転となった関係で「有明」は下り16本・上り15本に減少。一部列車の豊肥本線乗り入れ区間が武蔵塚駅まで延長される。また、「ドリームつばめ」を短縮し「有明」に編入する。なお、「下りのみ」と公式には案内されているが、これは「ドリームつばめ」の乗り継ぎ割引制度の兼ね合いからとされる。
- 2006年3月18日、「有明」の豊肥本線乗り入れ列車の大半を光の森駅発着に変更。
- 2007年3月18日、以下のように変更を行う。
- JR九州管内全列車全車禁煙となる。これに伴い、「有明」で4両編成の車両に設置されている喫煙ルームも使えなくなる。
- 「有明23号」の「リレーつばめ」としての臨時延長運転を毎日行う。これに伴い「有明」は15往復に減少。
- 熊本始発の「有明6号」について、豊肥本線内は普通列車扱いで光の森駅始発とし、1994年以来JR九州では行われなかった「特急列車末端区間の普通列車扱い」が復活する。
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