最優秀新人 (野球)
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最優秀新人(さいゆうしゅうしんじん)は、日本プロ野球の選手表彰の一つ。その年の最も優秀な新人選手を表彰するもので、記者投票によって選ばれる。新人王(しんじんおう)ともいう。
[編集] 概要
1950年に新設。新人王の有資格規定は以下のように2回変更されている。
- 1950年~1965年:プロ入り初年度の日本人選手(ただし1951年に限り、1950年に入団した選手にも資格を与えた)
- 1966年~1975年:その年度に初めてペナントレースに出場した選手
- 1976年~:海外のプロ野球リーグに参加した経験のない選手のうち、支配下選手に初めて登録されてから5年以内で、前年までの出場が投手は30イニング以内、野手は60打席以内の選手
現行の制度では外国籍選手でも海外のプロリーグに在籍経験がなければ、最優秀新人の資格を与えることになっている(例:2003年に読売ジャイアンツに入団したマシュー・ランデルは海外プロリーグの経験がなく、以前福岡ダイエーホークスに所属した際も1軍出場は1イニングだったことから、新人王の資格を与えられた)。しかし、2007年3月現在で新人王を獲得した外国籍選手はまだ誕生していない。なお、2003年にオリックス・ブルーウェーブに入団したマック鈴木は、ドラフト会議で指名されての入団であったがメジャーリーグの経験があるため、新人王の資格を与えるかどうかが協議されたが、特例で認められた(ただし、鈴木本人がこれを辞退している)。
投票資格を持つ記者は、全国の新聞、通信、放送各社に所属しており5年以上プロ野球を担当している者。選考資格を持つ選手1名の名前を記入し投票する。最多得票の選手が最優秀新人に選出される。発表は2004年までは日本シリーズ終了の翌々日に行っていたが、2005年は表彰式(プロ野球コンベンション)の会場で行った。
野手の成績は、投手に比べると過小評価される傾向があり、野手は投手にめぼしい候補がいない場合か、タイトル争いをするほどの好成績を残した場合で無い限り、新人王に選ばれる可能性は低い(しかし、近年は投高打低という状況から打者はホームランを25本打てば打率が悪くない限り新人王は確実という声もある)。また、投手のなかでも先発投手が比較的有利であり、二桁勝利を挙げるとよほど防御率が悪くない限りはほぼ当確に近い。抑え投手は野手同様にタイトル争いをするほどの好成績で無い限りは厳しく、中継ぎ投手に至ってはたとえ防御率1~2点台であっても他に候補がいないか先発投手に匹敵する勝ち星を挙げない限りは不可能に近い。
ちなみに、これらのポジションや数字の他、在籍年数(1年目の選手が有利とされている)や規定投球回または規定打席に達しているかどうかも受賞に少なからず影響する。その例として、2006年のセントラル・リーグにおける広島東洋カープの梵英心、横浜ベイスターズの吉村裕基による争いが挙げられる。数字面では3割25本をクリアした吉村(4年目)が有利であったが、結局受賞したのは1年目で規定打席に到達し、遊撃手でコンスタントに数字を残し、好守に活躍した梵であった。吉村はシーズン途中に骨折で約1ヶ月間戦線離脱したのが響いて規定打席に達しなかったのが結果的に痛かったといえる(なお、シーズン中盤までは先発で順調に白星を重ねていた中日ドラゴンズの佐藤充(3年目)で決まりという声もあったが、その後の失速で二桁勝利も規定投球回到達も逃したことから、シーズン終了時には新人王争いからは脱落のムードが強かった)。
投手・野手ともにめぼしい候補が見当たらない場合や、得票数が最も多くても「該当者無し」票が上回っていたり、票が割れて規定の得票数(投票総数の26%)に達しない場合は、「該当者無し」になる。1963年にいたっては両リーグとも該当者無しであった。
また有資格規定が変わった影響で、過去には1974年の藤波行雄(90試合出場、114打数33安打、.289 1本塁打 15打点 1盗塁)のように極めて低い成績で新人王となり、「該当者無しを出したくないために無理やり新人王を選出したのでは?」という疑惑の残ったケースがある(藤波行雄のケースがあったために、2000年パ・リーグで1年目の鷹野史寿が86試合出場、186打数55安打 .296 6本塁打 31打点 2盗塁、新人新記録の13打席連続出塁を達成という成績で新人王に選ばれないのはおかしいのでは?という議論が一部のファンの間で起こった)。
[編集] 新人王歴代受賞者
年 | セ・リーグ | 所属チーム | パ・リーグ | 所属チーム |
---|---|---|---|---|
1950年 | 大島信雄 | 松竹ロビンス | 荒巻淳 | 毎日オリオンズ |
1951年 | 松田清(2年目) | 読売ジャイアンツ | 蔭山和夫(2年目) | 南海ホークス |
1952年 | 佐藤孝夫 | 国鉄スワローズ | 中西太 | 西鉄ライオンズ |
1953年 | 権藤正利 | 大洋松竹ロビンス | 豊田泰光 | 西鉄ライオンズ |
1954年 | 広岡達朗 | 読売ジャイアンツ | 宅和本司 | 南海ホークス |
1955年 | 西村一孔 | 大阪タイガース | 榎本喜八 | 毎日オリオンズ |
1956年 | 秋山登 | 大洋ホエールズ | 稲尾和久 | 西鉄ライオンズ |
1957年 | 藤田元司 | 読売ジャイアンツ | 木村保 | 南海ホークス |
1958年 | 長嶋茂雄 | 読売ジャイアンツ | 杉浦忠 | 南海ホークス |
1959年 | 桑田武 | 大洋ホエールズ | 張本勲 | 東映フライヤーズ |
1960年 | 堀本律雄 | 読売ジャイアンツ | 該当者無し | |
1961年 | 権藤博 | 中日ドラゴンズ | 徳久利明 | 近鉄バファローズ |
1962年 | 城之内邦雄 | 読売ジャイアンツ | 尾崎行雄 | 東映フライヤーズ |
1963年 | 該当者無し | 該当者無し | ||
1964年 | 高橋重行(3年目) | 大洋ホエールズ | 該当者無し | |
1965年 | 該当者無し | 池永正明 | 西鉄ライオンズ | |
1966年 | 堀内恒夫 | 読売ジャイアンツ | 該当者無し | |
1967年 | 武上四郎 | サンケイアトムズ | 高橋善正 | 東映フライヤーズ |
1968年 | 高田繁 | 読売ジャイアンツ | 該当者無し | |
1969年 | 田淵幸一 | 阪神タイガース | 有藤道世 | ロッテオリオンズ |
1970年 | 谷沢健一 | 中日ドラゴンズ | 佐藤道郎 | 南海ホークス |
1971年 | 関本四十四(4年目) | 読売ジャイアンツ | 皆川康夫 | 東映フライヤーズ |
1972年 | 安田猛 | ヤクルトアトムズ | 加藤初 | 西鉄ライオンズ |
1973年 | 該当者無し | 新美敏 | 日拓ホームフライヤーズ | |
1974年 | 藤波行雄 | 中日ドラゴンズ | 三井雅晴(2年目) | ロッテオリオンズ |
1975年 | 該当者無し | 山口高志 | 阪急ブレーブス | |
1976年 | 田尾安志 | 中日ドラゴンズ | 藤田学(3年目) | 南海ホークス |
1977年 | 斉藤明雄 | 大洋ホエールズ | 佐藤義則 | 阪急ブレーブス |
1978年 | 角盈男 | 読売ジャイアンツ | 村上之宏 | 南海ホークス |
1979年 | 藤沢公也 | 中日ドラゴンズ | 松沼博久 | 西武ライオンズ |
1980年 | 岡田彰布 | 阪神タイガース | 木田勇 | 日本ハムファイターズ |
1981年 | 原辰徳 | 読売ジャイアンツ | 石毛宏典 | 西武ライオンズ |
1982年 | 津田恒美 | 広島東洋カープ | 大石大二郎(2年目) | 近鉄バファローズ |
1983年 | 槙原寛己(2年目) | 読売ジャイアンツ | 二村忠美 | 日本ハムファイターズ |
1984年 | 小早川毅彦 | 広島東洋カープ | 藤田浩雅(2年目) | 阪急ブレーブス |
1985年 | 川端順(2年目) | 広島東洋カープ | 熊野輝光 | 阪急ブレーブス |
1986年 | 長冨浩志 | 広島東洋カープ | 清原和博 | 西武ライオンズ |
1987年 | 荒井幸雄(2年目) | ヤクルトスワローズ | 阿波野秀幸 | 近鉄バファローズ |
1988年 | 立浪和義 | 中日ドラゴンズ | 森山良二(2年目) | 西武ライオンズ |
1989年 | 笘篠賢治 | ヤクルトスワローズ | 酒井勉 | オリックス・ブレーブス |
1990年 | 与田剛 | 中日ドラゴンズ | 野茂英雄 | 近鉄バファローズ |
1991年 | 森田幸一 | 中日ドラゴンズ | 長谷川滋利 | オリックス・ブルーウェーブ |
1992年 | 久慈照嘉 | 阪神タイガース | 高村祐 | 近鉄バファローズ |
1993年 | 伊藤智仁 | ヤクルトスワローズ | 杉山賢人 | 西武ライオンズ |
1994年 | 藪恵壹 | 阪神タイガース | 渡辺秀一 | 福岡ダイエーホークス |
1995年 | 山内泰幸 | 広島東洋カープ | 平井正史(2年目) | オリックス・ブルーウェーブ |
1996年 | 仁志敏久 | 読売ジャイアンツ | 金子誠(3年目) | 日本ハムファイターズ |
1997年 | 澤崎俊和 | 広島東洋カープ | 小坂誠 | 千葉ロッテマリーンズ |
1998年 | 川上憲伸 | 中日ドラゴンズ | 小関竜也(4年目) | 西武ライオンズ |
1999年 | 上原浩治 | 読売ジャイアンツ | 松坂大輔 | 西武ライオンズ |
2000年 | 金城龍彦(2年目) | 横浜ベイスターズ | 該当者無し | |
2001年 | 赤星憲広 | 阪神タイガース | 大久保勝信 | オリックス・ブルーウェーブ |
2002年 | 石川雅規 | ヤクルトスワローズ | 正田樹(3年目) | 日本ハムファイターズ |
2003年 | 木佐貫洋 | 読売ジャイアンツ | 和田毅 | 福岡ダイエーホークス |
2004年 | 川島亮 | ヤクルトスワローズ | 三瀬幸司 | 福岡ダイエーホークス |
2005年 | 青木宣親(2年目) | ヤクルトスワローズ | 久保康友 | 千葉ロッテマリーンズ |
2006年 | 梵英心 | 広島東洋カープ | 八木智哉 | 北海道日本ハムファイターズ |
※1951年はリーグ発足から間もなかったため1950年入団の選手も選考対象とされ、セ・パともに入団2年目の選手が選出されている。
[編集] 関連項目
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