宇野線
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宇野線(うのせん)は、岡山県岡山市の岡山駅から岡山県玉野市の宇野駅に至る西日本旅客鉄道(JR西日本)の鉄道路線(幹線)である。
かつて四国と本州を行き来していた宇高連絡船との接続路線として賑わった。瀬戸大橋開通後も、岡山~茶屋町間は瀬戸大橋を渡る本四備讃線のアプローチ線として引き続き本四連絡の使命を担っており、本四備讃線・予讃線を含めた岡山~高松間に瀬戸大橋線という愛称がつけられている。茶屋町~宇野間は玉野市との都市間輸送中心の路線となった。
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[編集] 路線データ
- 管轄・路線距離(営業キロ):
- 軌間:1067mm
- 駅数:15駅(起終点駅含む)
- 複線区間:なし(大元駅・妹尾駅周辺の複線部分はあくまで駅の交換設備扱い)
- 電化区間:全線(直流1500V)
- 閉塞方式:単線自動閉塞式
- 最高速度:岡山~茶屋町間は100km/h、茶屋町~宇野間は95km/h
- 運転指令所:岡山輸送指令室
※全区間、西日本旅客鉄道岡山支社の直轄である。岡山支社管内で独自に設定されているラインカラーは青(本四備讃線と共通)。
[編集] 運行形態
岡山~茶屋町間には本四連絡列車として以下の列車が走る。(定期列車のみ掲げる)
- 特急「しおかぜ」:岡山~伊予西条・松山・宇和島間
- 特急「南風」:岡山~高知・中村・宿毛間
- 特急「うずしお」:岡山~徳島間
- 寝台特急「サンライズ瀬戸」:東京~高松間
- 快速「マリンライナー」:岡山~高松間
このほか岡山~児島・観音寺・琴平間に普通列車が運転されている。
茶屋町~宇野間には、朝晩を中心に岡山~宇野間直通列車のほか、日中は1時間に1本の割合で茶屋町~宇野間折り返しのワンマン列車が運転されている。また、同区間は年2回実施される日中運休の対象路線でもある。
瀬戸大橋線は風速規制値を超えると瀬戸大橋を渡る区間である児島~坂出・宇多津間が不通となるため、振替輸送で宇高国道フェリーまたは四国フェリーと接続して本四連絡の使命を担うことがあり、その場合には通常運転がない岡山~宇野間の臨時快速「マリンライナー」が運転される。
貨物列車は岡山駅~茶屋町駅~高松貨物ターミナル駅間で運行されている。同区間には1日4往復の高速貨物列車が設定されており、牽引機はEF65形電気機関車またはEF210形電気機関車である。
[編集] 歴史
鉄道院が山陽鉄道から引き継いだ岡山~高松航路に代わり宇高航路を開設した日と同日に開業した。
- 1910年(明治43年)6月12日 - 宇野線 岡山~宇野間が宇高連絡船と同時に開業。鹿田駅(現在の大元駅)、妹尾駅、早島駅、茶屋町駅、味野駅(現在の彦崎駅)、由加駅(現在の迫川駅)、八浜駅、宇野駅開業。
- 1914年(大正3年)7月1日 - 味野駅を彦崎駅に改称。
- 1925年(大正14年)3月6日 - 岡山~備前西市間の経路変更。鹿田駅を移転し大元駅に改称。
- 1939年(昭和14年)1月1日 - 備前西市駅、備中箕島駅、備前片岡駅、常山駅、備前田井駅開業。
- 1940年(昭和15年)11月1日 - 備前西市駅、備中箕島駅、備前片岡駅、備前田井駅が営業休止
- 1947年(昭和22年)5月1日 - 岡山~大元間に岡操口信号場開設。岡山操車場~岡操口信号場間の短絡線開業。
- 1950年(昭和25年)11月15日 - 備前西市駅、備中箕島駅、備前片岡駅、備前田井駅の営業再開。
- 1952年(昭和27年)3月20日 - 久々原駅開業。
- 11月15日 - 由加駅を迫川駅に改称。
- 1956年(昭和31年)2月1日 - 岡操口信号場廃止。
- 1960年(昭和35年)6月 - 宇野線開業五十周年記念式典が宇野駅で行われ、岡山~宇野間に記念列車を運行。
- 1961年(昭和36年)9月1日 - 単線自動化完成。
- 1970年(昭和45年)4月5日 - CTC導入。
- 1980年(昭和55年)6月 - 宇野線開業七十周年記念式典が宇野駅で行われ、岡山~宇野間に記念列車が走る。
- 1984年(昭和59年)12月30日 - 大元駅~岡山操車場間の短絡線が廃止。
- 1987年(昭和62年)3月22日 - 岡山~宇野間に213系電車を使用した快速を運転開始。3月28日から「備讃ライナー」として運転。
- 1988年(昭和63年)4月10日 - 瀬戸大橋開通。本四備讃線が開業し快速「マリンライナー」などが運転開始。同時に岡山~宇野間の快速「備讃ライナー」、宇高連絡船やホバークラフトは廃止され、高速艇のみ存続する。
- 1990年(平成2年)4月1日 - 高速艇が運航休止。翌年廃止。
- 1991年 妹尾駅付近の複線化工事(扱い上は、駅構内の複線部分延長工事)が開始され仮線の使用開始。
- 10月22日 妹尾駅の橋上駅舎使用開始。同時に妹尾駅付近の複線化。
- 1992年 - 岡山~茶屋町間で高速化にあわせて路盤を一部改良。早島駅、備前西市駅、大元駅構内の行き違い部分の配線改良。
- 1994年(平成6年)12月3日 - 宇野駅の移転により営業キロ0.1km短縮。
- 2000年(平成12年) - 大元駅付近の高架化及び複線化工事(扱い上は、駅構内の複線部分延長工事と高架化)が開始され仮線の使用開始。
- 2001年(平成13年)12月16日 - 大元駅付近が高架化。同時に大元駅付近の複線化。
- 2002年(平成14年)4月1日 - 日本貨物鉄道 茶屋町~宇野間の第二種鉄道事業が廃止。
- 2004年(平成16年)8月30日 - 台風16号の高潮の被害で、宇野駅も冠水し駅施設や電車も被害を受ける。この影響で車両のやりくりがつかなくなったため、岡山電車区に滞泊していた223系2000番台(6両編成)が急遽代走として運用に就く(9月30日まで。詳細は宇野駅#2004年8月台風での冠水を参照)。
- 2006年(平成18年)4月21日 - 強風のため、瀬戸大橋線が始発から運休し、宇高国道フェリーや四国フェリーの宇高航路での振替輸送を実施。これに対応するために、223系臨時「マリンライナー」が岡山~宇野間で終日運転される(宇野~茶屋町間ノンストップ、一部列車は宇野~茶屋町間が各停)。
- 5月 備中箕島駅~久々原駅間の複線化事業にあわせた測量などの作業が開始。
- 10月末 備中箕島~茶屋町間の複線化工事を開始。
- 列車の沿革についてはマリンライナー (列車)の項目を参照。
- 宇高連絡船の沿革については宇高連絡船の項目を参照。
[編集] 短絡線計画
当線は大元駅を出ると西に大きくカーブし茶屋町駅付近から東に転じて宇野駅を目指している。明らかに西へ大きく迂回しているが、これは建設当時の海岸線に沿ったものである(当線より東側の多くは後世の干拓によって陸地化された土地である)。この迂回を解消するため戦後国鉄では短絡線の建設を計画していた。具体的には大元駅から分かれている岡山臨港鉄道を国有化の上で活用し、児島湾締切堤防を渡って再び合流するもので、優等列車専用とする案であった。しかしながら諸般の事情によりこの計画は中止となり岡山臨港鉄道の国有化も行われなかった。児島湾締切堤防にはその計画の名残として線路用のスペースが残されており、現在は水道管が通されている。その後本四備讃線を茶屋町駅から分岐させることとなり、結果的には明治時代に建設された西への大きな迂回ルートは、後の四国連絡には有利なルートとなったのである。
[編集] 複線化事業
四国との列車が走る岡山~茶屋町間は、2001年までに一部の区間(大元駅、妹尾駅付近)が複線化されただけであり、しかも交換可能な駅の配線は茶屋町駅を除いてどこも2線しかないため岡山から児島までの間で列車を追い抜くことは事実上困難である(1線スルー配線になっている備前西市駅での追い抜きは物理上可能であるが、現状では臨時列車の運転時や列車の大幅な遅れが出た場合などを除いて行われていない)。これらの理由によって運転本数増加や速度向上は大きく制限されている。それゆえマリンライナーでは香川県方面への乗客と近距離の通勤通学客を一緒に乗せざるを得ず、実質4両(1両が指定席なので)という編成の短さもあって混雑が首都圏の中距離電車並み(ラッシュ時の混雑率は200%を軽く超えている。特に妹尾までの区間は全国でもワーストレベル)に酷くなっている。そのため、西日本旅客鉄道と香川県・愛媛県などが出資して第三セクター会社の瀬戸大橋高速鉄道保有が2003年に設立され、一部区間の複線化工事が進められている。
当初、岡山~茶屋町間の全区間を複線化する計画であったため、事業費が100億円以上もかかることから予算化・事業着手が見送られてきた。また、複線化に関しては香川県と岡山県で温度差があり、当の岡山県や岡山市は不熱心どころか露骨に不快感を示している。これは「スピードアップによるマリンライナーの停車駅が減らされる事に対する警戒感があるのでは」とも言われている(特に妹尾地区を抱える岡山市にその傾向が強い)。物理的にも備前西市駅~笹ヶ瀬川橋梁間、妹尾~備中箕島間には線路の両脇に建物が迫っている部分があり(久々原~茶屋町間は高架化の際の旧線跡地が残っている)、備中箕島駅の岡山方には複線化構想が持ち上がる以前に完成したため複線化を考慮した構造となっていない岡山県道21号岡山児島線の跨線橋があるため、全区間の複線化は現状では不可能となっている。しかし、駅の行き違い設備の整備が進み、部分複線化でも効果があげられることから、備中箕島~久々原間だけを複線化する計画とした。これにより事業費が30億円までに削減されたためようやく事業が動き出した。2007年春までに完成させる予定であったが、環境アセスメントを盛り込まず計画したミスが発見され計画修正などがあった為に、完成は2008年度以降になる模様である。ただ、この複線化で列車増発・速度アップは行わないため、マリンライナーの混雑緩和は期待できない。[1]
なお、瀬戸大橋高速鉄道保有は、鉄道施設の改良・保有および貸付けを行うが、第三種鉄道事業者ではない。
[編集] 往年の名残
瀬戸大橋線全通以後、茶屋町-宇野間は普通電車のみの運転となっているが、宇高連絡船が現役だった頃には優等列車や四国への貨物列車が運転されていた名残で、各駅にある行き違い設備の線路有効長が長くなっているうえ、いずれの駅でもホームの長さは(少なくとも)6両分ある。そのため、通勤通学輸送を兼ねて朝の1往復のみ岡山~宇野間(宇野発は山陽本線和気まで直通運転)で213系の6両(休日は4両)編成の普通列車が運行されている。
岡山~茶屋町間に関しては、複線化や高速化工事などの線路改良により昔の名残も少なくなってきている。
[編集] 駅一覧
岡山~茶屋町間の各駅は瀬戸大橋線を参照。
駅名 | 岡山からの営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|
茶屋町駅 | 14.9 | 西日本旅客鉄道:本四備讃線(瀬戸大橋線) | 岡山県 | 倉敷市 |
彦崎駅 | 18.1 | 岡山市 | ||
備前片岡駅 | 20.9 | |||
迫川駅 | 22.8 | |||
常山駅 | 24.1 | 玉野市 | ||
八浜駅 | 26.6 | |||
備前田井駅 | 30.3 | |||
宇野駅 | 32.8 |
[編集] 過去の接続路線
事業者名は廃止時点のもの。