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国鉄C57形蒸気機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

C57形蒸気機関車(C57がたじょうききかんしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)の旅客用テンダー式蒸気機関車である。ほっそりとしたスマートで綺麗な車体であることから、「貴婦人」という愛称を持っている。D51形に並ぶ日本を代表する蒸気機関車である。

漆黒に輝く姿で力走するC571、まさに貴婦人の名に恥じない姿だった。2006年11月23日:山口線にて
漆黒に輝く姿で力走するC571、まさに貴婦人の名に恥じない姿だった。2006年11月23日:山口線にて

目次

[編集] 誕生の経緯

1937年昭和12年)、C55形の63号機として製造が始められた機関車が、その加えられた改良箇所があまりにも多岐に及んだため、検討の末に新形式とすることが決定され、C57形蒸気機関車として誕生をしている。

1947年(昭和22年)までの間に201両もの大量生産が行われ、本形式への信頼の高さが立証され、C51形に始まるライトパシフィックの決定版となった。

[編集] 構造

C55形との主な相違点はボイラー使用圧力の上昇(14kg/cm²→16kg/cm²)、シリンダ直径の縮小(510mm→500mm)、スポーク動輪からボックス動輪への変更などである。ボイラー使用圧力が上昇したことにより、C55形よりも石炭・水消費量の減少や出力上昇など性能が向上し、これが新形式を与える決め手になったとも言われる(C55形とC57形は混運用されている場合も多かったが、列車条件によっては混運用が出来ない事も有った)。

形態的な変化は、動輪の変更以外に煙室前端部の曲面化、蒸気ドーム後端部の傾斜化、エプロンの傾斜角変更が目立つところである。なお、C57形でも110号機のように事故や腐食などの修理工事で煙室前端部がC55形のように平面化されたものが数両存在する。

製造時期により、形態が若干異なっている(詳細後述)。戦後に製造されたもののうち、第4次形と呼ばれるタイプは運転室が密閉型となるなど、C59形に準ずるスタイルになっており、戦前から戦中に製造されたものとは、寸法や重量が上記と若干異なる。

戦後に製造された3次形と4次形の中には技術力、品質管理の低下によりボイラーの性能が悪いものがあった(該当車両は、一時期使用圧力を下げて運用されていたこともある)ため、1957年(昭和32年)から1959年(昭和34年)にかけて本形式のうち57両のボイラーが新製品に載せかえられている。なお、ボイラー取替え対象車両の中にはX線検査の結果、不備が見つかった戦前製のものも含まれている。現在動態保存中の1号機も1958年(昭和33年)にボイラーの載せ替えが実施されている。これは戦時中に空襲で受けた損傷が原因であったと云われている。

[編集] 製造メーカー

川崎車輛汽車製造会社三菱重工業日立製作所の4社により製造された。後述する1号機は川崎車輛(1937年、昭和12年)、180号機は三菱重工業(1946年、昭和21年)の製造である。

[編集] 製造期による違い

1次形(1~138)
1937年から1940年の間に製造された基本形である。鋳鋼式従台車、鋳鋼式テンダー台車により高速運転にも対応した。
2次形(139~169)
1941年~1942年製造。第二次世界大戦の開戦により、若干物資を削減して作られた。組み立て式従台車を使用し、テンダー台車枠が板枠に変更され、若干高速運転には不向きな装備となった。基本的には1次形のままで性能に大きな差はない。この形式の別名でもある貴婦人とは1次形と2次形を指している。
3次形(170~189)
1946年製造。終戦直後の旅客用機関車の不足を補うために製造された。設計期間が無かったことから2次形からの大幅な改設計は見送られた。それでも先輪がD52用からの流用であるディスク形となったり、コンプレッサーからの空気放熱管がランボード下に収められるなどの相違点が見られる。また蒸気ドーム前端部が1次形や2次形と比べ傾斜している。
4次形(190~201)
1947年製造。3次形が2次形の基本形をそのまま踏襲したのに対して、本グループではC59形の設計を取り入れた大幅な改良が施されている。キャブ(運転室)が密閉式となり、デフレクターは45度に切り取られ、炭水車は船底形となり、ボイラーも板厚を厚くするなど改良され(ただし燃焼室の採用は見送られている)、C59形によく似た外観となった。また、動力式逆転機も装備された。従来のものより性能が向上したがバランスのとれた貴婦人のスタイルを悪くしたなどの意見もあった。

[編集] 運用

四国を除く全国各地で優等旅客列車の牽引を中心に使用された。特に大型機関車の入線できなかった鹿児島本線長崎本線では戦前の特急富士」や戦後の特急「かもめ」「さくら」の牽引にも大活躍した。また、羽越本線北陸本線などの全国各地の地方幹線(亜幹線)でも、急行などの優等列車を牽引した。北海道でも、戦後、1960年代中期までは、小樽築港機関区所属機や釧路機関区所属機が、小樽-札幌-滝川-富良野-帯広-釧路間を、函館本線根室本線経由でロングラン運用されるなどして活躍した。

性能の良さを買われて長く活躍し、国鉄の旅客用蒸気機関車の代名詞となった。全長に比べてボイラが細く見え、スタイルが美しいので「貴婦人」の愛称で親しまれた。昭和40年代に入り特急・急行が無煙化され始めた後は普通列車の牽引(ディーゼル機関車の不調や両数不足などによる急行への臨時登板もあった)に回ったが、大半が蒸気機関車の最終期まで残り活躍した。なお、C57 73・74・99・162が1949年(昭和24年)3月29日付けで戦災廃車となっている。

1972年(昭和47年)10月14・15日に鉄道開通100年を記念して汐留駅~高島貨物駅間で運行された記念列車は、当時紀勢本線で稼働していた7号機が上京して牽引している。同機は和歌山県で現在も静態保存されている。

1973年(昭和48年)4月9日10日12日、宮崎植樹祭が開催された際に日豊本線でC57 117が牽引するお召し列車が運行された。これは蒸気機関車が牽引するお召し列車としては最後のものとなった。ちなみに12日に運行された正真正銘の最後の蒸気機関車牽引のお召し列車の運行区間は宮崎駅延岡駅間であった。

1973年10月から、日豊本線の急行列車、下り「日南3号」の宮崎駅~都城駅間の牽引に使用された。この列車はすでにDF50形ディーゼル機関車に置き換えられていたのだが、車両運用の都合上、C57形が使用されたのであった。この運用は翌年1974年(昭和49年)3月まで続き、これが国鉄で蒸気機関車が牽引する優等列車としては最後のものとなった。

1975年(昭和50年)、NHKは当時の人気アイドルであった山口百恵が出演する蒸気機関車を扱った特別番組を制作した。このロケのため運行された列車には岩見沢第一機関区に所属していたC57 135が使用された。そしてその年の12月14日、そのC57 135が室蘭本線室蘭駅岩見沢駅間で国鉄最後の蒸機牽引旅客列車となる225列車を牽引した。同列車は本来はD51形を使用することになっており、特別措置であった。

[編集] 外地向けのC57形

日本が領有していた台湾の台湾総督府鉄道部においては1942~1943年に6両が製造され(川崎と日立製)、同じくC57形C57 1~C57 6)として使用された。太平洋戦争後は台湾鉄路管理局が引継ぎ、CT270形CT271~CT276)と改称され1984年ごろまで使用された。また1953年にアメリカの援助で8両が日立で製造され、追加輸出された。その8両(CT277~CT284)は整備の関係で戦前に台湾に渡っていた物と揃えるため2次形を生産、これが最後に製造された国鉄形蒸気機関車である。

[編集] 主要諸元

  • 全長 20,280mm
  • 全高 3,945mm
  • 軸配置 2C1(パシフィック
  • 動輪直径 1750mm
  • シリンダー(直径×行程) 500mm×600mm
  • ボイラー圧力 16kg/cm²
  • 火格子面積 2.53m²
  • 全伝熱面積 168.8m²
    • 過熱伝熱面積 41.4m²
    • 全蒸発伝熱面積 127.4m²
      • 煙管蒸発伝熱面積 115.0m²
      • 火室蒸発伝熱面積 11.4m²
  • ボイラー水容量 6.0m³
  • 大煙管(直径×長サ×数) 140mm×5500mm×18
  • 小煙管(直径×長サ×数) 57mm×5500mm×84
  • 機関車運転重量 67.50t
  • 動輪軸重(最大) 13.96t
  • 炭水車重量 48.00t
  • 機関車性能:
    • シリンダ引張力 12820kg
    • 粘着引張力 10330kg
    • 動輪周馬力 1,040PS

[編集] 動態保存機

[編集] JR西日本 1号機

[編集] 現役時代

1937年(昭和12年)3月22日、川崎車輛にて落成。後から発注された車両が先に完成したが、発注順に従いそれぞれC57 1とC57 2とされた。同年4月4日に水戸機関区に配属されたが、1939年(昭和14年)11月に宇都宮機関区に転属。以後戦後にかけて東北本線で使用(戦時中に宇都宮機関区の空襲に遭遇し、機銃掃射を受け損傷している)され、1949年(昭和24年)10月に千葉機関区に転属して普通列車の牽引に使用されたが、1954年(昭和29年)10月に新津機関区に転属して羽越本線などで使用された。キャブの屋根が延長されたのはこの新津に移ったときである。同時にランボードにも、新津機関区の伝統でもある白線が入れられた。1958年(昭和33年)にボイラーを載せ替えを実施。1961年(昭和36年)2月9日に羽越本線:村上~間島にて急行「日本海」を牽引中、土砂崩壊事故現場に突入してしまったことで脱線転覆大破した。破損した車体は2ヶ月以上にわたり事故現場に放置されていたが、4月27日に事故現場から運び出され、国鉄長野工場で5ヶ月にも及ぶ修復を受け、9月末に完了、運用への復帰を果たした[1]。修復が決定された理由として、トップナンバー機であることの他に、当時は輸送力が不足気味で機関車が足りなかったこと、事故の3年前にボイラーを載せ替えていたこと、台枠に損傷を負わなかったことなどがあるが、当時の新津機関区長の英断がその最大の理由である。

事故から復旧後の同機は好・不調の時期が入れ替わっており、当時の乗務員の感想は「乗務割りをもらうと憂鬱になるカマ」や「トップナンバーに恥じない優秀なカマ」など、評価が分かれている。

1972年(昭和47年)5月の新潟県村上植樹祭開催の際に、羽越本線の新津-村上間でお召し列車牽引機に指定された。その直前に土崎工場(現:JR東日本秋田総合車両センター)での全般検査も兼ねて特別整備を受けた。この際に各種ケーシングバンドの材質変更(鉄→真鍮)、煙室扉ハンドルの新製、手摺類の交換(ステンレス製)、ナンバープレート位置の下げ、蒸気ドーム前方の手摺の小型化、キャブ窓枠への化粧板取付、炭水車縁部への化粧板取付などの改装を実施している。現在の1号機は、この名残を受け継いでいて、運転窓枠の金枠などがその証である。お召し列車牽引後の1号機は、日出谷~新津間で数回特別運転を行った後に9月23日に佐倉機関区へ異動、千葉局管内でも特別運転を行なった後に10月3日に梅小路機関区へと異動し、10月10日の梅小路蒸気機関車館開館を他の保存機と共に迎えている。その後、一度も車籍を抹消されることなく、現在に至っている。

[編集] SL復活運転のはじまり

蒸気機関車が国鉄線上から消えても、人々の蒸気機関車への熱意は冷めることなく、SL現役時代末期の頃から、SL復活への運動が起こった。このため国鉄は、梅小路蒸気機関車館動態保存されていた1号機を使って、1976年(昭和51年)9月にイベント列車「京阪100年号」を牽引機として運転した。12系8両編成を東海道本線:京都-大阪を往復運行した。しかしその時、沿線は大変な騒ぎとなっており、帰りの運転中に人身事故を起こしてしまった[2]。この事態を見兼ねた国鉄は、様々な検討結果から、1979年(昭和54年)8月1日、都心部から遠い山口線で復活運転が実現することになり、その牽引機として1号機が抜擢された。これが現在SL列車を代表する「SLやまぐち号」である。その際に労働組合からの要求により、煙突に集煙装置と、テンダー車に重油タンクが搭載された。集煙装置の搭載に際し煙突の切除が必要となったが、他の集煙装置搭載の姉妹機と異なり切除量を少なめにしたため、高い位置に同装置が載ることとなった。その点がそれ以前との外観上の大きな違いである。近年は同装置を外した状態での運行が多く行われているが、その際は切除した煙突長を補うためにスペーサーを介して回転火の粉止めが装備されている。

SLやまぐち号として華麗に走り抜けるC57 1。2006年8月20日:徳佐~船平山にて
SLやまぐち号として華麗に走り抜けるC57 1。2006年8月20日:徳佐~船平山にて

牽引される客車は12系であるが、現在はそれを改造した「レトロ客車」5両編成となっている。(新山口側1号車から 展望車風-欧風-昭和風-明治風-展望室付き大正風)7月等夏季の運転にはC56 160号機と重連運転が実施されている。また1号機はC56 160の検査時に「SL北びわこ号」として走行している。その他にも、これまでに1号機は、七尾線:金沢~七尾「SLときめき号」や山陽本線:下関~小郡(現:新山口)「SLみらい号」などでも活躍。2004年(平成16年)から2006年(平成18年)夏までの間は集煙装置が常時取り外され、原型に近い姿で運行された。同年の鉄道の日には、ヘッドマークを装着せず、汽笛の音調も昔に戻すという計らいが行われ、定期運転最後の3日間は装飾部を黒く塗り潰し、より原型に近い姿を披露した。

なお、「SLやまぐち号」として復活して以降の1985年(昭和60年)には、鷹取工場で国鉄時代最後の解体修理が行われた。鷹取工場に残っていない、もしくは新造できない部品は、全国の国鉄工場に残されていた物をかき集めたり、静態保存されている機関車の物を使用するなどした。新造となった車軸については、動輪に差し込む専用の機械が鷹取工場には無く、全国の工場を探し回った結果、北海道札幌市苗穂工場に動輪の転削装置と共に残っていることが判明。動輪・車軸を現地に送り、車軸の取り付け・動輪の切削が行われた。1995年(平成7年)には、検査のため鷹取工場に入場中阪神淡路大震災に遭い、ジャッキ上にいた同機は転落しボイラーをはじめとしたいたる箇所が大きく損傷したが奇跡的に復帰した。また2005年(平成17年)末から2006年(平成18年)4月まで梅小路運転区において全般検査が再度行われ、動輪の切削、ボイラー、台枠の補修など様々な修繕が行われた。これに先立ち、2005年のやまぐち号での運転中に、致命的な不具合を起こしてしまい、10月ついにはDD51型による牽引運転が起きる事態にまで至った。この全般検査ではその不具合を起こした部品を全て修繕し、寿命を今後25年にまで延ばす尽力がなされた。検査後の試運転の際に、動輪の一部の異常な発熱に悩まされたが、検修陣の尽力により、1ヶ月遅れで無事、やまぐち号の先頭に立つ姿が見られるようになった。なお、その際、緊急的にC56 160の山口貸出が1ヶ月延長され、1号機は本来C56 160が充当予定だった「SL北びわこ」として、C56に代わって牽引となった。

2007年(平成19年)3月22日、1号機は竣工70周年を迎えた。同年度の「SLやまぐち号」運転はその前日となる3月21日より開始となり、同日には同年度の運行開始と1号機製造70周年を記念して、公募により選考された特別ヘッドマークを掲げて運行された。

[編集] JR東日本 180号機

SLばんえつ物語号のC57 180。2006年10月22日:徳沢~上野尻にて
SLばんえつ物語号のC57 180。2006年10月22日:徳沢~上野尻にて

1999年(平成11年)には、新津市(現在は新潟市)立新津第一小学校の前庭に保存されていたC57 180が復活し、磐越西線で「SLばんえつ物語号」として運転されている。復活したSL列車の中では最長距離(片道約125キロ)を走行する。また、「SLばんえつ物語号」は月に一度、「SL磐梯会津路号SL郡山会津路号」として同線会津若松~郡山間を2日1往復する。

[編集] 現役時代・保存

1946年(昭和21年)に三菱重工業三原製作所にて製造。新製時には新潟機関区に配置され、1963年(昭和38年)に新津機関区に移り1969年(昭和44年)11月8日に廃車となった。製造から一貫して新潟県内の機関区に配置され、北は秋田、南は直江津、東は会津若松までを行動範囲としていた。新潟機関区に新製配置直後は戦後混乱期の工作不良がたたってトラブルが続出していたが、1958年(昭和33年)のボイラー交換後は安定した性能を発揮し、急行日本海や佐渡などの長距離優等列車牽引に重用されていた。

1969年(昭和44年)に無煙化の促進によって羽越本線での運用が大幅に削減、磐越西線の旅客列車からの運用撤退によって新津機関区のC57は大幅に減ずることになった。全般検査後1年だった同機は転属候補とされていた。しかし、鉄道の街・新津に蒸機を1両だけでも残したいとの声が新津機関区で上がり、それに新津市も賛同、保存機として同機が選ばれることとなった。新津機関区生え抜きの他機を差し置いて同機が選ばれた理由は、番号の語呂が良かった事(新津機関区にはD51 180号機やC51 180号機も長年在籍しており、180という数字に特別な思い入れがあった)や、癖や故障が少なく乗務員から人気を集めていた機関車だったからである[3]

同年9月30日に磐越西線での蒸機牽引による最終定期旅客列車[4]を日出谷~新津間で牽引後、10月12日に新津市立新津第一小学校に静態保存された。保存に際し、新津駅の引き上げ線を延長した仮設線路を校庭に敷設し保存場所まで自力で走行、市民や児童らの歓待を受け、同機自らによるくす玉割りや神事の後、惜別の長緩汽笛を何度も吹鳴した。その後蒸気圧も下がり、汽笛の音も次第に小さくなり、最後は眠りにつくようだった、とのことである[5]。最終総走行距離は1,691,096.3kmだった。この保存の様子は新潟市新津鉄道資料館に展示されている。また、同館には1号機に関する資料も展示されており、1961年(昭和36年)の羽越線事故の模様や1972年(昭和47年)のお召し列車牽引時の装飾品など、貴重な展示品も多い。静態保存から2年後には屋根が掛けられ、新津機関区(現:新津運輸区)職員やOB、新津市民らによる「新津市蒸気機関車保存協力会」や第一小学校児童の手により手厚く整備清掃を受け保存されていた。

[編集] 動態復元

時が流れて1990年(平成2年)4月、高崎支社が保有するD51形498号機による「SLうるおいの新潟号」を臨時運行。その後、1996年(平成8年)から1998年(平成10年)までの3年間、磐越西線:新津~津川にて同機やC58形363号機を使用した「SLえちご阿賀野号」を運行した。これらの運行に刺激され、新津市では180号機を動態復元しようという機運が高まることとなり、1997年(平成9年)に新津市において「C57 180号を走らせる会」が結成された。復元に必要と見込まれた費用である2億円の半分を、市民らがオレンジカードを購入するなどして負担することとした。

同年、動態への復元が決定し、翌1998年(平成10年)3月に復元作業を開始、JR東日本大宮工場や大阪府のサッパボイラでの作業も1年後に完了、1999年(平成11年)3月に30年ぶりに車籍が復活した。なお、良好な状態で保存されていた事により、同機の復元作業は予定していた予算の約半分で済んでいる。復活後の形態はほぼ最終時の状態とされており、前照灯は前後ともLP403型、運転台屋根は東北・信越地区に多く見られた延長型、蒸気ドーム前方には大型手摺が取付られているのが特徴である。当然ながらランボードには新津機関区伝統の白線が入れられている。新たに搭載された重油タンクや列車無線アンテナは上方から見ない限り分からないように配慮されている[6]。また、全車軸には温度センサーが取り付けられ、運行中は客車乗務員室から管理を行っている。テンダーには第一小学校の児童から贈られた記念のプレートが掲げられている。晩秋から早春にかけてスノープロウが装備されるが、これは復元後に新製されたものである。復元後にもわずかながら形態の変化が見られ、2003年(平成15年)の要部検査は煙突飾帯の撤去、非公式側(助士席側)ランボード上に搭載されていた罐水清浄装置(清罐剤送入装置)の撤去、先輪の一体圧延型車輪への交換などとなっている。

現役時代、故障の少なかった同機であったが、2003年(平成15年)定期運行を終えた12月の検査で、一部の煙管に亀裂が入っていたことが判明し、止むを得ずこの年の「SL X'masトレイン号」の牽引をD51形498号機に託すこととなった。なお、現役時代の基準では問題のない範囲ではあったが、労働基準監督局からボイラー使用の許可が下りないため、亀裂の発見された煙管を含む大部分の煙管の交換を新津運輸区内で実施した。煙管に亀裂が発生したのは重油併燃装置のバーナー取付位置の不具合が原因で、2004年(平成16年)の定期運行開始後は同装置の使用を控えるなど予防策をとっていた(ボイラー使用圧の降下は行われていない)。定期運行中、同機の不具合で運休となったのは担バネ折損による逆転器作動不能による復路の運転取り止めがある(他にも空気圧縮機の不具合によりDE10形を補助機関車として連結したことが1回あった)。

2006年(平成18年)には新製後60年を迎えているが、車籍上の通算年数は30年であった為、他の復活蒸機と異なり還暦祝いの赤ナンバープレート化などの装飾は行われなかった。実質的な運転日数がほぼ4年を迎えた2006年10月22日で定期運行を一時的に終了した。2006年11月から2007年4月にかけて、復活後初めての全般検査が大宮総合車両センターで実施された。復活運転からの累計走行キロ数は17万8949キロメートルに達した。形態の変化はないが、ATS-SN型の置き換えとしてATS-Ps型を新たに搭載している。

SLばんえつ物語号」を筆頭に、JR新潟支社管内にて様々な臨時列車の牽引として運行されている。客車を含めた編成は、全て「ばんえつ物語」と同じスタイルでの運転となっている。オリジナルヘッドマークを取り付けての運転がほとんどである。

支社管内以外での出張は以下のとおり。

上記の運転履歴から分かるように、支社管内以外での貸し出し運転では、旧型客車牽引やD51形498号機との重連運転といった普段見ることの出来ない仕業をこなしている。特にD51形498号機との共演は多彩で、2000年(平成12年)7月には会津若松駅の配線を活かした同時発車・並走、翌月には津川駅において両機牽引による列車の交換を行っている。会津若松駅での同時発車・併走は毎年恒例のイベントとして年1・2回程度実施されている(ただし、2006年は両機の検査工程の関係のため実施せず)。

ちなみに新津駅2・4番線の列車接近警報やFMにいつの時報、品川駅限定の東海道本線用発車メロディーには、同機の汽笛が使用されている。

[編集] 静態保存機

[編集] 日本

交通博物館の135号機をはじめ、日本各地で静態保存されているものが多数ある。名古屋市のJR東海社員研修センターで静態保存される139号機は、1971年(昭和46年)4月17日準鉄道記念物に指定されている。東京都大田区大森北4丁目27番地の公園には66号機が露天で展示されている。これは、圧縮空気でシリンダーを動かし、動輪が回転するように設置されている点が注目される。

[編集] 台湾

[編集] 注記

  1. ^ 修復に際し2号機の部品を用いたという説もあるが、2号機は昭和40年代前半まで新津機関区にて運用に就いており、同機の部品が1号機をはじめとする他機へ提供されたのは廃車後の事である。
  2. ^ 詳しくは京阪100年号事故を参照。
  3. ^ 転属取り止めとなった後、他機との間で動輪を振り替えており、現在同機は「C57 179」と刻印された動輪を使用している。
  4. ^ 1225列車、本来は同区のD51の仕業である。なお、この前運用である224列車はC57とD51による重連が定期で見られ、この180号機と現在動態保存されているD51 498号機の重連も見られた。
  5. ^ 履歴簿では11月8日に廃車、それまでは第一小学校に保管とされている
  6. ^ 現役時代の煙室扉ハンドルは丸ハンドルに1本取っ手であったが、最終列車牽引前に装飾が施された際に現在の十文字の物を他機から流用している。

[編集] 参考文献

  • 池口英司・梅原淳『国鉄形車両 事故の謎とゆくえ』(東洋堂出版、2005年) ISBN 4490205635
  • 交友社『鉄道ファン』1997年10月号、1999年7月号
  • 西日本旅客鉄道会社『梅小路90年史』(ネコ・パブリッシング)
  • C57 180号機履歴簿
  • 『C57 180 復活への軌跡』(ネコ・パブリッシング)
  • 『新津市史』(新津市)
  • 瀬古龍雄・小桧山六郎『磐越西線の100年』(郷土出版社)

[編集] 外部リンク

日本国有鉄道鉄道院・鉄道省)の制式蒸気機関車
タンク機関車
9601000II・1070・1150B10B202700II・2900・3500C10C11C124100・4110E10
テンダー機関車
6700・67506760B50
86208700880088508900C50C51C52C53C54C55C56C57C58C59C60C61C62C63(計画のみ)
90209550・958096009750・9800・9850D50D51D52D60D61D62
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