核武装論
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核武装論(かくぶそうろん)とは、広義においては、国防において核武装をおこなうべきだ、という主張。狭義においては、日本が核武装すべきだ、と言う主張である。いずれにせよ「まだ核兵器を保有していない」国家における主張であり、核兵器保有国においてはすでに保有する核兵器をどのように運用整備するのかという核戦略として語られる。
目次 |
[編集] 1945年8月以前の核武装計画
日本において原爆が具体的に語られたのは、1940年に仁科芳雄博士が安田武雄陸軍航空技術研究所長にウラン爆弾の研究を進言したのが始まりと言われる。以後、陸軍は1941年に理化学研究所に原子爆弾の研究を委託(ニ号研究)、海軍は1942年に核物理応用研究委員会を設けて原爆の可能性を検討した。しかし当時は人形峠(岡山県・鳥取県境)のウラン鉱脈の存在も知られておらず、ウラン鉱石の入手はもっぱらナチス・ドイツとの連絡潜水艦に頼る状況であり、ウラン爆弾1個に必要な2トンのウラン鉱石の確保は絶望的であった。1945年6月には陸軍が、7月には海軍が研究を打ち切り、日本は敗戦を待たずして原爆研究から撤退した。詳しくは日本の原子爆弾開発を参照。
[編集] 核武装賛成論の主張
[編集] 核安全保障論の種類
1.単独核保有論
単独核保有を目指そうと言う考え方である。シンプルで判りやすく、純軍事的観点から言えば強力な防衛力となりえることから反米保守派議員(中川昭一議員など)の支持が多い。ただ、核武装をした場合に起こりうるデメリットを鑑みて石破茂元防衛庁長官、前原誠司議員等は批判的である。尚、アメリカ政府関係者は、日本が国防・外交政策においてアメリカの意向に従わなくなることを危惧する者が多く、日本の核武装論を否定する立場をとる者がほとんどである。そのため中川昭一議員が訪米した際のディック・チェイニー副大統領との面会を遅刻を口実に拒否されている。知日派として有名なリチャード・アーミテージも日本単独核武装には不賛成であり、まして容共左派で日本再武装に日本国内左派と同じ反応を示す米民主党も日本核武装論に反対している。
- 利点
- 「軍事力の裏づけのない外交はない」という考え方から外交・交渉力の強化が期待される。
- 核武装は通常兵力よりも費用対効果にきわめて優れる。
- 米国の核の傘に依存しなくてすむ。(シャルル・ド・ゴールが、フランスの核武装を行ったのと同じ論理)
- 問題点(詳細は核武装反対論者主張参照)
- 米議会議員の極めて少数しか支持が見込めない。
- 日米原子力協定により米国から燃料返還を求められ原子力発電不能に陥り、経済が大混乱に陥る。
- 豪・カナダは単独核兵器開発国にウランを輸出しない方針。
- 米国が金融制裁に踏み切れば、日本の経済は大打撃を被る。
- 外務省が日本の長期的安保を考えず、今までNPTの守護者として広島を振りかざして核実験国を非難し、印パ朝には米国と並んで経済制裁をしてきたので、単独核保有に方針転換すればこれまでの外交方針を大転換しなければならなくなる。
2. 米国の核兵器配備要請論
欧州では欧州を射程に収めるソ連のSS20配備に対して米国がパーシングII配備で対抗し、結局中距離核戦力全廃条約によってSS20とパーシングIIが両方撤去された歴史があるので、これと同じように米国に中距離核ミサイルの配備を求めて北朝鮮や中国に対抗しようとするもの。単独核武装論に次いで判りやすいので広く見かける意見である。
- 利点
- 欧州で一度成功実績があり、米国の同意が得られやすい。
- 問題点
- 中距離核戦力全廃条約で全地球的に米露の中距離核配備を禁止してしまっている。
- 恒久保有目的ではなく中国との核相互廃棄の便法として米国に日本の中距離核一時保有を認めてもらうと言う考え方なら、米国と交渉の余地はあるかもしれない。
3. 日米共同核保有論
最近、一部では核兵器シェアリング(Nuclear Sharing)はどうかという意見もある。アメリカがNATO加盟国のいくつかに提供する核武装オプションである。 平時はアメリカ軍が核兵器を保持・管理しつつ相手国と核兵器の使用と管理の訓練を行う。戦時になったとき、アメリカ軍が相手国に核兵器を提供し、相手国は核武装する。
- 利点
- この方法には開戦後に核兵器が提供されるという点で開戦前までNPT条約に抵触しないという特徴がある。
- NPT改革のような多国間交渉が必要なく簡易・現実的で判りやすい。
- 米国の警戒心を買いにくい
- 問題点
- 果たしてアメリカが日本とそうした関係を結ぶか?
- 9条改訂か解釈変更が必要。(現解釈では周辺国領土を対象としない対艦核兵器のみ合憲)
- 簡易・現実的な代わりに日本は軍縮主導に必要な発言権を取れず、中印の核武装膨張や、中国の軍事覇権確立を防げない。
- 地上配備なら受け入れ自治体を探すのが困難。潜水艦配備なら開発費・建造費がかかる。
[編集] 核武装主張の理由
- 核抑止力の強化が期待できる。日本が核武装することによって、近隣諸国に核を発射させることをためらわせることが出来る。
- 現状の核の傘への疑念を払拭することが出来る。「実際に日本が核攻撃を受けた際に米国が本当に核で反撃する保障がない」とする考え。英仏が膨大な予算で独自核戦力を維持しているのは、「ロシアがロンドン・パリを核攻撃しても米国はNY報復を覚悟してまでモスクワを核攻撃しない」と、核の傘がフィクションであることを認めているためである。
- 国防費の費用対効果を極限まで高められる。核武装が強力な抑止力になり相対的に通常兵力を削減することが出来、防衛予算を削減できる。
- 国際的影響力の大幅な増加が期待されうる。
- 米国の被保護国からの脱却を目指すために必要である。核武装を行っている・または進めている周辺国(中、露、インド、北朝鮮)への抑止力を米国に依存(核の傘)する現状が、日本の自主外交力を低下させている。
- 国連常任理事国になるための最低条件
- 複数国家間のパワーバランス維持に必要。勢力の均衡が平和をもたらす。一方に強大な力があることは一方を誘惑する。中国、ロシア、インド、パキスタン、北朝鮮は既に核武装済であり、日本も核武装を行うことが国家間でのパワーバランスを均衡させ結果として平和につながる。
- 国威発揚の為に核武装が必要。しかし、現実的な政策としての核武装は、本来、外交・軍事両面からの将来予測や戦略に基づく慎重な判断が必要な政策だという観点から、防衛白書や中曽根康弘などは安保体制下において不要だと主張している。
[編集] 2007年現在の日本周辺の軍事情勢
日本の近くには南北朝鮮/中国台湾という分断国家が存在し、北朝鮮/中国両政府の一部の軍人は、公式非公式に「統一のためには核戦争すら厭わない」と発言している。
[編集] 北朝鮮
- 北朝鮮の核保有は自衛目的ではなく赤化統一目的であり、半島武力統一に関して米国の介入を排除するために日本に核を突きつけて人質にとるつもりではないかと思われる節が見受けられる。軍事的にはある目的を達するためにある兵器をどれほど用意せねばならないかという所要数という概念があり、他国の軍事的資源配分を見れば軍事的意図についてある程度推測可能とされている。
- 日本に北朝鮮を狙う核ミサイルはないが、周囲の米中露は北朝鮮に対して核攻撃する能力を持つ。このため、北朝鮮のノドンが単なる抑止用かどうかは意見が分かれるところである。北朝鮮自身は、核兵器の保有を自衛目的だと主張している。
[編集] 中国
- 現在のところ中国は、日本向けに使用できる能力を持つDF-21 (ミサイル)を推定10-40基保有している。中国は現在のところ核戦力を近代化し、生残性を高める事には熱心であるものの、量的には核より通常兵器への予算配分が圧倒的であり、「基本的には核を使わずに通常戦力で目的を達する事を嗜好している」と観測される。これは、軍事費がロシアを抜いて旧ソ連に迫る世界2位(国際戦略研究所によれば、中国の2006年軍事費は購買力平価で約14兆円と言われる)であり、北朝鮮より遥かに潤沢な資金に恵まれているためである。
- 抑止論的には中国の現ICBMは液体燃料固定式であり、先制核攻撃に対して脆弱である。また、中国の現核ミサイル原潜の夏型原子力潜水艦は1隻しかない上に、搭載しているJL1ミサイルは改良型でも射程4000km以下であり、事実上有効な核戦力として機能していない。このため例えば対米を考えると、核抑止力は非常に限定的なものである。
- 今後、2007年から固体燃料移動式(三弾頭?)のDF31Aが就役する。ICBM/SLBMは発射してから着弾するまで12-30分かかり、着弾点が変更不能なため、移動式弾道弾は核弾頭の威力圏外に逃避可能であるほか、そもそも擬装されていると発見自体が困難であるため固定式とは比較にならない生残性があるとされている。
- 2007年から2010年に掛けて新型晋型原子力潜水艦が5隻配備される予定であり、核戦力の向上が見込まれている。
[編集] 冷戦中・冷戦後の核武装賛成論
[編集] 冷戦中
ソビエトからの核攻撃の脅威を回避するためには、日本も核武装し抑止力を持つべきだと言う主張が行われた。しかし、日本が冷戦期に核武装しなかったことで、ソ連が日本に対して軍事的行動に出られなかったという主張も存在する。(ただし、西ドイツが米軍供与の戦術核200発を戦時に運用する計画を立てていてもソビエトが欧州正面での戦争の可能性を否定することは無かった以上、日本の核武装の有無が軍事的影響を与えたという主張の妥当性は低く、ソ連が欧州戦争の可能性を否定しなかった事と実際の抑止力との評価の関連性が不明である。)
尚、NPT条約の締結以前、非核三原則以前であれば日本政府は「防衛用核兵器は憲法上保有しうる」という見解で核武装の完全な否定はしていない。しかし日米安保体制にある限り、やはり戦略核抑止について論じられることはなく、戦術核に言及されるのみである。当時、核弾頭の運用が可能な兵器としては航空自衛隊のナイキJ、海上自衛隊の対潜爆雷、アスロック、陸上自衛隊の155ミリ榴弾砲、核地雷が考えられた。いずれも精密誘導兵器の発達によって必要性が無くなった分野である。
[編集] 冷戦後
冷戦後は目立った核武装論は無かったが、近年の北朝鮮核武装権保留宣言や中国脅威論の台頭で、再び核武装論が政策論の範囲内で話し合われている。(日本政府が公式に核武装を検討した事は一度も無い。) 日本が北朝鮮の核兵器保有宣言・核実験宣言に対して過敏になる原因として、極東のパワーバランスに変化が生じるとの不安があるとともに、果たして日本が核攻撃を受けた場合に米軍が核報復を実施する事が保障されるのだろうか(特に北朝鮮と軍事同盟を結ぶ中国との関係により)との疑問が改めて生じたからだ、との意見もある。
- 米国のアジアへの関与の後退に対する安全保障として。
- 日米同盟に限らず、永遠に続いた同盟関係は歴史上存在しない。そのため、そもそも米国にいつまでも守ってもらえるはずがなく、いずれ核武装が必要だという意見もある。
[編集] 核武装反対論の主張
- 核武装は電力産業の崩壊を招く。(東京電力は原子力発電への依存度40%以上)
- 日本は核武装しないという前提で米国と日米原子力協力協定を結んでおり、核武装はその二国間協定の破棄となる。これを破棄すれば協定の破棄条項によって原子燃料は全て米国に引渡し原子力発電所は操業を停止しなければならない。これにより日本の原子力産業ひいては日本経済は崩壊する。よって核武装はするべきではない(石破茂:共同通信のインタビューへの返答)。
- 日本の年間ウラン消費は7500tだが人形峠の総埋蔵量は2500t前後で1年分にも満たない。豪州・カナダは核開発国にウランを輸出しない政策である。仮にナミビアと同盟してウランを入手するか、海水からのウラン採取が実用化できても、六ヶ所村濃縮施設の能力は1500t前後で年間7500t-9000tの燃料棒を国産するには濃縮設備増設が必要。
- 被爆国としてNPTを擁護して核開発国を非難してきたため今までの外交方針をすべて大転換しなければならない。日本は、経済大国でありながら珍しく核を持たないと宣言している国であり、核武装すれば非核三原則として今まで世界に主張してきた論拠を大きく破壊することになる。
- 日本が核保有すれば「核保有ドミノ」が起こってNPT崩壊の引き金を引いた共犯国として非難される可能性がある。六カ国協議で核開発放棄を要求している北朝鮮への非難する論拠が薄まる。
- 韓国、台湾など、周辺諸国と緊張関係を抱えていて原発を保有する国に核保有の口実を与えてしまう。核拡散防止条約・包括的核実験禁止条約からの脱退、IAEAの査察除外要求をも要する可能性がある。
- 「核の傘」理論が崩壊し米国による経済・金融制裁の可能性がある。米国市場から日本の自動車、家電、鉄鋼が締め出されたり、兵器売却を断られる可能性がある。軍事的措置も含めて日本の核武装を全力で潰そうとするであろう。
- 現在保有する軍備の大々的な削減のないままに核武装の費用は捻出できないため、現在の通常戦力をある程度維持した状況で核武装をおこなえば、必然的に軍事費は増大する。
- 核武装するためには核実験をおこなわなければならないが、核実験を実施すれば国際的な非難と甚大な環境破壊を免れない。爆発実験をするなら硫黄島やその他離島であろう。現在の核兵器国は環境に対する基準が緩い時代に自国領内の無人地域か、もしくは海外領土で核実験をおこなった。日本を例にとった場合、無人の砂漠も海外領土も無い。ネバダ核実験場級で北海道の四分の一の広さを要する。離島は存在するがムルロアやビキニのような地盤堅固な環礁はない。地下核実験をおこなえば島が水深2,000メートルの海底に向かって崩落する可能性のほうが高いうえ、海域が汚染される可能性もある。それは日本の排他的経済水域(EEZ)の喪失を意味する。日本の技術水準をもってすれば、核実験自体は不要であり、臨界前核実験の実施だけで足りるとも言う主張もあるが、実際にはシミュレーターがあってもデーターがないとシミュレートできないし、万一外国からデータが買えても、入手できる核物質と言うのは基本的に国産であり、使用した原子炉や処理工程によって性状は全く異なるため「外国のデータ」など役には立たない。これらが計算したとおりに爆発するかはやって見なければ判らず、それを繰り返し、材料としての核物質の質を安定させるノウハウがあるからこそ、初めてコンピュータシミュレーションが可能となるので、規模の大小に関わらず核実験を日本の国土内で行う場合、歴史的物理的な障害が数多く存在し、国民や住民の反発も大変強いことは、原発関連施設からも十分分かることから、実現の可能性は極めて低いと考えられている。
- 核武装すれば、核保有国との核戦争下において真っ先に攻撃対象になりうる。
- 逆に北朝鮮に対しては「核抑止は効かない」ので真剣に国民保護を考えるなら核武装より核施設先制攻撃すべきという意見もある
- 詳細は(核抑止・核抑止不成立ケース参照)
[編集] 核兵器を戦力化させる手段
核兵器の配備方法については、弾道弾、巡航ミサイル、爆撃機、戦略原潜の選択肢が考えられる。
- 弾道弾については静止衛星打ち上げ能力のある国産ロケットが開発されたことから、あたかも国内開発が可能であると誤解を招くような紹介例があるが、少ない予算を打ち上げロケットや商業衛星、宇宙観測に割り当てている現状で、それらよりも高度かつ特殊な技術が必要な弾道弾や再突入体の要求を満たすことは無い。そもそも商業ロケットは(スペースシャトルの打ち上げ延期の報道などで知られるように)非常にデリケートな、工業製品とは言いがたい一品ものの工芸品とでも言うべき製品で、まず性能としてペイロードが求められる。一方、弾道弾は即応体制を維持する為の稼働率が重視され、ペイロードも極端な話450キロの小型核弾頭が積めれば最低限の仕事ができる。再突入体についてもペイロードを小型化するためにはCEPの向上が不可欠だが、商業分野では宇宙から何かを回収すること自体が稀であり、再突入体に100メートルの精度をもたせるよりも回収船を100キロ移動させた方が早くて安い。戦車トランスポーターとスポーツカーを比べているようなもので、求められる性能、満たさねばならない技術に隔たりがありすぎる。片方があるからともう片方の要求を満たせるとは限らない。ただしこの主張は旧NASDA系のロケットを前提に行われている。ISASのM-Vロケットは性能・規模共に米ロのICBMをしのいでおり、コスト的には若干高価だが、H-IIAロケットに比べると遥かに現実的となっている。また、再突入技術自体、第二次世界大戦に遡るもので、現代日本の技術をもってすれば取るに足らないと言う主張もある。固体燃料潜水艦発射弾道弾の開発、搭載する核弾頭の開発、再突入体(RV)の開発、MIRVの命中精度向上、地球規模での地磁気の観測、敵性地域の重力分布図が必要である。
- 爆撃機については日本が兵器として開発した経験は大戦以降なく、そもそも軍用国産ジェットエンジンですら開発途上であるという現実がある。アメリカ保有するような、敵の防空網を潜り抜けて核弾頭を目標に確実に命中できるような戦略爆撃機(もしくはそのような戦略用途に使用できる航空機)の開発には数十年の時間が必要である。それだけ戦略爆撃機と言う兵器体系は高度高価であり、それは効果的に運用できているのがアメリカだけであるということからも判る。ただし対北朝鮮程度であればB-52やB-2程の長距離戦略爆撃機は必要なく、日本が現有するF-4やF-2でも充分ともされる(F-4戦闘機のペイロード搭載力はB-29爆撃機を凌ぐ)。
- 戦略原潜についてだが、現在自衛隊の保有する潜水艦の3倍から5倍の大きさを持つ戦略原潜を建造する施設は日本に無く、また原子力船むつの経験があるとはいえ、それと米英仏ソの建造する艦艇用原子炉では求められる技術が違いすぎるため、建造、修理設備を始め研究開発を一からやる必要がある。また、戦略原潜が単独で活動することはありえない。通常、1隻あたり2隻の攻撃原潜が護衛に付く。つまり少数の戦略原潜を配備するだけでも、全体で20隻近い原潜艦隊を整備する必要があるとの意見がある。ただし、運搬手段としての潜水艦であるのなら、動力が原子力である必要性は薄い。また軍用船舶用原子炉の事実上の新規開発、軍用原子炉のミリタリーグレードの核燃料供給プラントの開発と設置、原子力潜水艦を建造できる造船所の整備、確立した原潜建造能力の維持に関する見積もりが必要である。さらに早期警戒衛星網の整備、随伴ハンターキラーとしての攻撃原潜の建造、深深度用海図の整備、極超長波(ELF)通信施設の建設と確実性の向上、根拠地、防空司令部の耐核施設化も必要である。
- 巡航ミサイルについてだが、核弾頭を搭載しなければ戦略兵器の要件を満たさない巡航ミサイルであるが、トマホーク巡航ミサイルを米国から輸入した場合、現にトマホーク米国から輸入したイギリスにおいては運用についての厳しい制限が設けられている(事実上、アメリカの同意がないと発射できない)。ただし巡航ミサイルを純国産開発した場合はこの限りではない。純国産巡航ミサイル開発の場合、現配備中、又は開発中の地対艦ミサイルをベースに射程延長、誘導装置改良等を行い開発すると推測される。核保有を仮定した場合の費用は巡航ミサイルが最も安価と推測される。非核ミサイルも核同様に「大量破壊兵器の運搬手段」として国際的な監視と制限の下に置かれている為、戦略原潜が売却される事や濃縮率90パーセントの軍用グレードのウラニウムで動く艦艇用原子炉が購入できるというのは現実性に欠ける。また、万が一それらが手に入っても兵器の入手と、兵器の運用と、そして高度な運用によって可能な核パトロールは別物であり、有効な核抑止体系の構築まで数年から十数年の時間が必要な可能性が高いと考えられている。
[編集] その他
「攻撃に使える兵器」と言う意味でなら、核でなく青森県で貯蔵されている使用済み核燃料やプルトニウムを兵器に積み込み、報復攻撃対象国上空で爆発させるだけで核と同等の効果を持つ上に長期的に敵国の土地資源や人的資源に汚染を引き起こせる為、費用対効果が高く多大な費用を掛けて核兵器を開発する必要は無いと指摘されているが、軍事的にはナンセンスである。
核爆発という速やかかつ対処不能の破壊力があるが故に抑止力として機能する。効果が出るのに年の単位がかかったり、住民の避難誘導や疎開、都市そのものの放棄で対応可能であったり、気候天候で影響範囲や期間が変化し、報復行動である弾道弾の発射を阻害しえないダーティボムは戦争での損害の増加は図れても、抑止力として機能し得ない。
弾道弾も大量破壊兵器(WMD)の運搬手段として国際的な監視と規制がおこなわれている。拡散安全保障イニシアティブ(PSI)
[編集] 核武装を巡る検討と発言の歴史
[編集] 日本政府の公式見解
- 「日本が核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずとの非核三原則を堅持することについては、これまで歴代の内閣により累次にわたり明確に表明されている。政府としては、今後ともこれを堅持していく立場に変わりはない。日本は、核拡散防止条約(NPT)上の非核兵器国として核兵器の製造や取得等をおこなわない義務を負っている。さらに、法律上も原子力基本法により、日本の原子力活動は平和目的に厳しく限定されている。このような点から見ても、日本が核兵器を保有することはない」非核三原則について
- 「核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まないというこの核に対する三原則のもと、その平和憲法のもと、この核に対する三原則のもと、そのもとにおいて日本の安全はどうしたらいいのか、これが私に課せられた責任でございます」(1967年12月11日 佐藤栄作内閣総理大臣 衆議院予算委員会)
- 「たとえば万一核不拡散条約、これを日本が脱退をするということになった場合には、条約上の遵守義務というものはありませんから、先ほど申し上げましたような間接的意味における憲法に由来する九十八条の問題というものは消えちゃうんです。第九条の問題だけが残るということなんです。憲法全体の思想といたしましては、私は、第九条だと思うのです。第九条によって、わが国は専守防衛的意味における核兵器はこれを持てる。ただ、別の法理によりまして、また別の政策によりまして、そういうふうになっておらぬというだけのことである」(1978年3月11日 福田赳夫内閣総理大臣 参議院予算委員会)
以後の日本政府は憲法98条2項「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」に基づきNPT条約を履行するため、非核三原則を「一貫して堅持する」と代々の政府は繰り返し明言している。
- 「大体いま世界戦略的に、また世界歴史的に見ますと、核武装というのは第二次世界大戦の戦勝国の業になってきている。ああいうものをつくってしまいましたからなくすわけにいかぬ、相手が持っている以上は少し優越したものを持っていないと不安である、そういう世界に入り込んでいって、やむを得ず苦悶してSALTをやるというような形になってきておる。それで、私は戦勝国の業であろうと思っております。戦敗国である日本がそんな業にのこのこ入っていく必要はない、そんな考えを私は持っているわけです」中曽根康弘防衛庁長官(昭和46年衆議院内閣委員会)
- 「私は非核武装論者でありまして、核武装をしなければいかぬなんということは一回もありません」中曽根康弘科学技術庁長官(昭和47年衆議院科学技術振興対策特別委員会)
- 「国会におけるその非核三原則を堅持しろというような御決議があって、それでその核は持たないという選択をしなさいという御決議があるわけでございますから、それで政府はその政策の選択として非核三原則を堅持しておる、そのことと法律の解釈というのは、それは政策とは別なんですよ、それは」(1978年3月11日 真田秀夫内閣法制局長官 参議院予算委員会)
- 「我が国の核保有という選択肢は全く持たない。非核三原則は一切変更がないということをはっきり申し上げたい」(2006年10月10日 安倍晋三内閣総理大臣 衆議院予算委員会)
- 「隣の国が持つとなった時に、一つの考え方としていろいろな議論をしておくことは大事だ」「非核三原則を政府として堅持する立場に変わりはないが、日本は言論統制された国ではない。言論の自由を封殺するということに与しない(=核武装の論議容認)という以上に明確な答えはない」(麻生太郎外務大臣 2006年10月18・19日 衆議院テロ対策特別委員会にて)
- 2006年12月25日 産経新聞によると、「日本が小型核弾頭を試作するまでには少なくとも3~5年かかる」とする政府の内部文書が12月24日明らかになった。
[編集] 日本の政治家の非公式発言
- 岸信介首相がアメリカ政府宛てに「防衛上、核武装の必要が迫られれば日本は核武装する」と非公式に伝達し、アメリカは大きな衝撃を受け、日米安全保障の強化に乗り出したといわれる。
- 「閣内に核武装論者がいる」
- 「他人が核を持てば、自分も持つのは常識だ」
- 中曽根康弘が自著において防衛庁長官だった1970年に「現実の必要性を離れた試論」として核武装について「日本の能力を試算」し「当時の金で2,000億円、5年以内で核武装できるが、実験場を確保できないために現実には不可能」との結論に達したことを明かした。「自省録-歴史法廷の被告として-」
- 70年当時の防衛費は4,800億円で一般会計の7パーセントを占めた。現在の貨幣価値に直すなら、消費者物価指数で言えば約3倍の6,000億円、防衛費の伸びで言えば10倍の2兆円といった金額になる。弾頭1発1億円とも述べており、これは当時の主力戦闘機F-104の価格、5億円の1/5という高額なものであった。
- 「(核武装について)これまでも一貫して否定してきていますし、今でも変わりません」(2004年、インタヴューに対して)
- 中曽根康弘は「日米安保の続く限りにおいて」という条件つきでの一貫した非核武装論者である。
- 2001年、内閣府高官が、雑誌インタビューに対して「3年で核武装可能」と回答。
- 「あまりいい気になると日本人はヒステリーを起こす。核弾頭をつくるのは簡単なんだ。原発でプルトニウムは何千発分もある。本気になれば軍備では負けない。そうなったらどうするんだ」(2002年4月6日 小沢一郎 福岡での講演において、中国共産党情報部の人間に語った内容として自身が紹介 )
- 「自衛のための必要最小限度を超えない限り、核兵器であると、通常兵器であるとを問わず、これを保有することは、憲法の禁ずるところではない」「核兵器は用いることができる、できないという解釈は憲法の解釈としては適当ではない」(2002年5月13日 安倍晋三官房副長官 早稲田大学の講演において)「北朝鮮なんか核爆弾ぶち込んで、ぺんぺん草も生えないようにしてやるぜぇ」(同、講演会終了後、主催者側との懇談の席での発言)
- 「非核三原則は憲法に近いもの。しかし、今は憲法改正の話も出てくるようになったから、何か起こったら国際情勢や国民が『(核兵器を)持つべきだ』ということになるかもしれない」「法理論的には持てる。持っていけないとの理屈にはならない」(2002年5月31日 福田康夫内閣官房長官)。記者団とのオフレコでの発言であったため発言者は「政府首脳」とぼかされていたが6月4日に自身であることを認める。
- 「欧米の核保有と違って、どうみても頭の回路が理解できない国が持ったと発表したことに対し、どうしても撲滅しないといけないのだから、その選択肢として核という……」(中川昭一・自由民主党政務調査会会長 2006年10月15日、テレビ朝日「サンデープロジェクト」にて)「攻められそうになった時にどう防ぐか。万が一のことが起きた時にどうなるかを考えるのは、政治家として当然のことだ」(10月20日、自民党静岡県連合会の集会で)
※この中川発言は日本のみならず、海外にまで議論が及ぶこととなり与野党からこの核武装とも取れかねない発言の撤回を求める意見が多数出ることとなり、この発言の後に安倍晋三総理大臣や塩崎恭久官房長官が非核三原則は厳守すると念を押す発言をし、ジョージ・W・ブッシュアメリカ大統領もこの発言に対し「中国が懸念する」と述べた。
[編集] その他の見解
- 2003年に発表されたアメリカの未来予測を記した国防白書において、日本は 2050年までに核武装すると異例の記述。
- 「その可能性は大きい。日本はその気になれば90日以内に核爆弾を製造し、ミサイルに搭載できる技術的能力を持っている。われわれはすでに大陸間弾道弾(ICBM)水準のミサイル(ロケット)を保有しており、50トン以上のプルトニウムを備蓄している。核爆弾2,000基を製造できる分量だ。日本はすでに30~40年前、原爆製造に必要なあらゆる実験を終えた。日本が核武装をしないのは国民情緒のためだ。9割の日本人が核兵器の開発に反対している。広島と長崎の悪夢のためだ。しかしわれわれが北朝鮮核兵器の実質的脅威を受ける状況になれば、世論は急変するはずだ」 (2005年2月25日 大前研一 経済評論家 韓国マスコミの「北朝鮮の核保有が最終確認された場合、日本も核武装に動くのか」という質問に対して)
- しかし大前本人は雑誌サピオにおいて「北が核をつくると日本の核武装論者を勢いつかせるから北に核を持たせないようにしなさい」と答えたと述べている。「向こうは言ってもいないのに『大前は核を開発すると言った』と勝手に報道する。核武装は90日でできると言ったと。『大前は右翼だ』と。そこで韓国の別の評論家を連れてきて韓国だったらどうかと聞く『韓国は60日でできる』言っていないことを言ったように前提として世論を誘導してる。はっきり言ってバカじゃないかと」。本人は早稲田大学理工学部応用化学科卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で工学博士号を得て日立で高速増殖炉の設計に携わっているが、3年目の72年には退職してコンサルティング業界に転進した人物であり、現在となっては原子力の専門家とまでは言い難い。
- 2005年12月28日に公開されたイギリス政府の機密公文書によると、1975年、日本の科学技術庁(当時)の原子力担当課長が在京の英国大使館に「日本は3か月以内に核兵器の製造が可能」と語った。この情報を基に一時イギリス政府は大騒ぎになった。
[編集] 関連項目
- 東風21号(DF-21)
- テポドン(白頭山1号)
- 中西輝政
- 福田和也
- 古森義久
- 西村眞悟
- 小林よしのり
- 『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』では、アメリカによる原爆投下を『人類の不条理として常に何かを産み出してきた「人間の戦争」の可能性すら奪った罪は大きい』と批判していたが、2006年の北朝鮮の核実験を受けて、現在では日本の核武装を主張している。
[編集] 外部リンク
- SAFETY JAPAN(日経BP社)
- 古森義久「 外交弱小国 日本の安全保障を考える ~ワシントンからの報告~ 」
カテゴリ: 出典を必要とする記事 | 核兵器