新語・流行語大賞
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新語・流行語大賞(しんご・りゅうこうごたいしょう)とは、その年1年間に発生した「ことば」の中から、世相を軽妙に映し、多くの人々の話題に上った新語・流行語を選び、その「ことば」に関わった人物、団体を顕彰する賞。
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[編集] 概要
1984年に創始され、毎年12月1日(土曜日・日曜日の場合は次の平日)に発表される。『現代用語の基礎知識』(自由国民社・刊)の読者アンケートによりノミネートされ、新語・流行語大賞選考委員会(藤本義一審査委員長)によってトップテンと年間大賞が選定される。当初は、新語部門と流行語部門に分かれて、それぞれ金賞を筆頭として各賞が選ばれていたが、8回目の1991年からは年間大賞が設けられ、11回目の1994年からは両部門を合わせて選定されるようになり、20回目となる2003年から株式会社日本通信教育連盟と提携し、現代用語の基礎知識選『生涯学習のユーキャン 新語・流行語大賞』と名称を改め、更に2004年より現代用語の基礎知識選『ユーキャン流行語大賞』に改称された。
2005年からは「現代用語の基礎知識」にネット発の新語・流行語を提供した「はてなキーワード」を運営する「はてな」、IT系ニュースサイト「ITmedia News」と共に「はてな2005ネット流行語大賞」を開始、新語・流行語大賞の候補語と、さらにITmedia Newsが選出したネットで流行した候補語も加え、大賞もはてなダイアリーユーザーが選出するという、新たな試みも始まっている。
日本漢字能力検定協会の今年の漢字、第一生命のサラリーマン川柳、住友生命の創作四字熟語、東洋大学の現代学生百人一首と並んで、現代の世相を反映する一つの指標として使われることが多い。
[編集] 問題点
現実に選定される「流行語」が、新語・流行語大賞で取り上げられて初めて世間に認知されるようなケースも多い。賞そのものは新語・流行語大賞であるから、強引に解釈すれば、新語でありさえすれば必ずしも流行していなくてもよいということも一応は可能である。しかし、マスコミが多く使った事実はあっても、世間で使われたり、流行したりした言葉でなければ「広く大衆の目・口・耳をにぎわせた」とは言えないことも事実である。そのため、選考の結果が世間一般での流行と大きく乖離していると指摘されることがある。また、不透明な選考過程に対して疑問が投げ掛けられることもある。
- 2003年の「毒まんじゅう」や2005年の「小泉劇場」など政治関係の言葉の多くは、マスコミ報道でこそ多く取り上げられるものの、世間一般で流行したとは言い難い。そのため、新語・流行語大賞に選ばれて初めて一般市民が知るような場合もある。1999年の「ブッチホン」に至っては、マスコミ関係者ですら流行語大賞受賞に疑問を投げかける声があった。
- 対照的に、「ちょいワル」「メタボリックシンドローム」(いずれも2006年)など、受賞してもおかしくないはずの言葉が選出されないケースもある。
- ウェブサイト上での投票が2005年から始められた。しかし、オンラインでの投票には組織票・大量投票により結果が世間の流行と乖離することがあるという問題がつきまとう。このときには「さっさと引越し」(奈良騒音傷害事件の容疑者が連呼した)や「嫌韓流」(漫画の題名)、「こんにちワンツー」(ラジオ番組「レコメン!」で関ジャニ∞が生み出した)などといったキーワードが複数月に亘って上位ランキングされる結果となったが、選考には採用されていない。
- 一般的に流行した用語がノミネート候補から削除される例として代表的なものには、1995年の「ポア」や「ああ言えば上祐」などがある。これはオウム真理教関連用語であり、現代用語の基礎知識の読者アンケートでも上位に入った。しかし「同教団関連用語の選出はオウムによるテロの容認につながる」という理由ですべて選考対象外となった。また、羽賀研二の「誠意(大将軍)」「バカップル」(1994年)、石田純一の「不倫は文化だ」(1996年)など、マイナスイメージが先行している有名人に関する言葉もノミネートから外されるケースがある。
- 近年では「流行語」を最初に広めた人物・団体が顕彰されず、その言葉を象徴する(と「判断」された)人物・団体が表彰されるケースが多く見られるようになってきた。なかにはこじ付けとしか思えない受賞者もおり、受賞者の選定に異議を唱える声もある。以下にその例を挙げる。
- 2002年の「ベッカム様」はW杯報道で頻繁に使われた用語だが、「ウェスティンホテル淡路(W杯期間中ベッカムが泊まったホテル)」の総支配人が「関係者」として表彰された。
- 2005年の「萌え」もメイド喫茶がブームになる遙か以前から様々な対象に対して用いられている一般的な流行語だが、「宣伝に関わった団体」という名目で「完全メイド宣言(秋葉原のメイド喫茶「@home cafe」従業員によるアイドルユニット)」が受賞した。
- 「ワイドショー内閣(2001年 受賞者:内閣総理大臣(当時)・小泉純一郎)」及び「マニフェスト(2003年 受賞者:早稲田大学教授・北川正恭)」は本来は別政党や別の人物が最初に言及した言葉である。
- 2000年の「IT革命」では、森首相(当時)が提唱したにもかかわらず、ネットビジネスを起業した高校生(当時)が表彰された。
- 2000年の「おっはー」(受賞者:慎吾ママ)はテレビ東京系列の番組であるおはスタですでに用いられていた挨拶であり(正確には「おーはー」)、香取慎吾がそれを気に入り使うようになった。経緯については「おっはー」の逸話を参照のこと。
- 2001年の「やだねったら、やだね」は、元になった氷川きよしの「箱根八里の半次郎」が前年(2000年)のヒット曲であることから、受賞は遅きに失したとの指摘がある。
- 最近は、お笑い芸人については新語・流行語大賞に選出されると翌年に人気が急落すると言うジンクスがあり(パイレーツ、ダンディ坂野、テツandトモが代表的)、2006年の新語・流行語大賞は、お笑い芸人はすべて受賞を拒否している。
[編集] 歴代の受賞用語
[編集] 年間大賞選定以前
回 | 年度 | 部門 | 金賞 | 受賞者 |
---|---|---|---|---|
1 | 1984年 | 新語 | オシンドローム | ジェーン・コンドン(『タイム』記者) |
流行語 | まるきん まるび | 渡辺和博 | ||
2 | 1985年 | 新語 | 分衆 | 近藤道生(博報堂生活総研社長) |
流行語 | イッキ!イッキ! | 慶應義塾大学体育会 | ||
3 | 1986年 | 新語 | 究極 | 雁屋哲 |
流行語 | 新人類 | 清原和博、工藤公康、渡辺久信 | ||
4 | 1987年 | 新語 | マルサ | 伊丹十三、宮本信子 |
流行語 | 懲りない○○ | 安部譲二 | ||
5 | 1988年 | 新語 | ペレストロイカ | ソロビエフ・ニコラエビッチ(駐日ソビエト連邦大使) |
流行語 | 今宵はここまでに(いたしとうござりまする) | 若尾文子 | ||
6 | 1989年 | 新語 | セクシャル・ハラスメント | 河本和子(弁護士) |
流行語 | オバタリアン | 堀田かつひこ、土井たか子 | ||
7 | 1990年 | 新語 | ファジィ | 三上遵太郎(松下電器産業電化研究所所長) |
流行語 | ちびまる子ちゃん現象 | トーマス・リード(『ワシントン・ポスト』記者) |
[編集] 年間大賞選定以後
回 | 年度 | 年間大賞 | 受賞者 |
---|---|---|---|
8 | 1991年 | ・・・じゃあ~りませんか | チャーリー浜 |
9 | 1992年 | 「うれしいような、かなしいような」 「はだかのおつきあい」 |
きんさんぎんさん |
10 | 1993年 | Jリーグ | 川淵三郎 |
11 | 1994年 | すったもんだがありました | 宮沢りえ |
イチロー(効果) | イチロー | ||
同情するなら金をくれ | 安達祐実 | ||
12 | 1995年 | 無党派 | 青島幸男 |
NOMO | 野茂英雄 | ||
がんばろうKOBE | 仰木彬 | ||
13 | 1996年 | 自分で自分をほめたい | 有森裕子 |
友愛/排除の論理 | 鳩山由紀夫 | ||
メークドラマ | 長嶋茂雄 | ||
14 | 1997年 | 失楽園 | 渡辺淳一、黒木瞳 |
15 | 1998年 | ハマの大魔神 | 佐々木主浩 |
だっちゅーの | パイレーツ | ||
16 | 1999年 | ブッチホン | 小渕恵三(内閣総理大臣) |
リベンジ | 松坂大輔 | ||
雑草魂 | 上原浩治 | ||
17 | 2000年 | おっはー | 慎吾ママ(香取慎吾) |
IT革命 | 木下斉(商店街ネットワーク社長・ 早稲田大学高等学院三年(当時)) |
||
18 | 2001年 | 「小泉語録」 (米百俵・聖域なき改革・恐れず怯まず捉われず ・骨太の方針・ワイドショー内閣・改革の「痛み」) |
小泉純一郎(内閣総理大臣) |
19 | 2002年 | タマちゃん | 佐々木裕司(川崎市民)、 黒住祐子(フジテレビジョン・レポーター) |
W杯(中津江村(現日田市中津江村)) | 坂本休(中津江村・村長) | ||
20 | 2003年 | 毒まんじゅう | 野中広務 |
なんでだろ~ | テツandトモ | ||
マニフェスト | 北川正恭 | ||
21 | 2004年 | チョー気持ちいい | 北島康介 |
22 | 2005年 | 小泉劇場 | 武部勤他 |
想定内 (外) | 堀江貴文 | ||
23 | 2006年 | イナバウアー | 荒川静香 |
品格 | 藤原正彦 |
[編集] ネット流行語大賞
回 | 年度 | 現代用語の基礎知識選 | ITmedia News選 |
---|---|---|---|
1 | 2005年 | 想定内 (外) | ツンデレ |
のまネコ | |||
フォーーー! |
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 新語・流行語大賞(公式サイト)