世界貿易機関
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
世界貿易機関(せかいぼうえききかん、World Trade Organization、略称WTO)は、自由貿易促進を主たる目的として作られた国際機関。GATT(ガット)ウルグアイ・ラウンドにおける合意に基づき、マラケシュ宣言により1995年1月1日にGATTを発展解消させて成立した。
WTOはGATTを継承したものであるが、GATTが協定(Agreement)に留まったのに対し、WTOは機関(Organization)であるのが根本的な違いである。
- (1) 自由(関税の低減、数量制限の原則禁止)、(2)無差別(最恵国待遇、内国民待遇)、(3) 多角的通商体制、を基本原則としている。物品貿易だけでなく金融、情報通信、知的財産権やサービス貿易も含めた包括的な国際通商ルールを協議する場となっている。現在行われている新多角的貿易交渉(新ラウンド)は、2001年11月にカタールのドーハで行われた第4回WTO閣僚会議で開始を決定し、ドーハ・ラウンドと呼ばれている。2002年2月1日の貿易交渉委員会で新ラウンドがスタートした。
- 対抗処置の発動では、紛争処理機関(パネル)の提訴に対し全加盟国が反対しなければ採択されるという逆コンセンサス方式を採用した強力な紛争処理能力を持つ。これは国際組織としては稀な例であり、コンセンサス方式を採っていたGATTとの大きな違いで、WTOの特徴の一つといえる。
なお、かつてのワルシャワ条約機構も、略称をWTOとしていた。また、世界観光機関(World Tourism Organization。日本を含む139国が加盟)も略称をWTOとしていた(世界貿易機関設立時には、同じ略称になる"World Trade Organization"という名称が採用されることに反対したという逸話がある。なお、世界観光機関は2003年に国際連合の専門機関となった後はUNWTOという略称を使用している。)。このため、世界貿易機関を明確に区別する必要があるときはWTO-OMC(OMCは、世界貿易機関のフランス語のL'Organisation mondiale du commerceの略称)と略する。
目次 |
[編集] WTO協定
世界貿易機関を設立するための国際協定は、通常WTO協定と呼ばれている。WTO協定は「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定」(WTO設立協定)および附属書に含まれる各種協定の総称である。
附属書は1から4まである。うち附属書1〜3はWTO設立協定と一括受諾の対象とされており、WTO加盟国となるためには附属書1〜3の全てにも受諾しなければならない。附属書4は一括受諾の対象ではなく、受諾国間でのみ効力を有する。
- 附属書1
- 附属書1A 物品の貿易に関する多角的協定
- (A) 1994年の関税及び貿易に関する一般協定(通称 1994年のGATT)
- (B) 農業に関する協定
- (C) 衛生植物検疫措置の適用に関する協定(通称 SPS協定)
- (D) 繊維及び繊維製品(衣類を含む。)に関する協定(通称 繊維協定)
- (E) 貿易の技術的障害に関する協定(通称 TBT協定)
- (F) 貿易に関連する投資措置に関する協定(通称 TRIMs協定)
- (G) 1994年の関税及び貿易に関する一般協定第6条の実施に関する協定(通称 アンチダンピング協定)
- (H) 1994年の関税及び貿易に関する一般協定第7条の実施に関する協定(通称 関税評価協定)
- (I) 船積み前検査に関する協定
- (J) 原産地規則に関する協定
- (K) 輸入許可手続に関する協定
- (L) 補助金及び相殺措置に関する協定
- (M) セーフガードに関する協定
- 附属書1B サービスの貿易に関する一般協定(略称 GATS)
- 附属書1C 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(通称 TRIPS協定)
- 附属書1A 物品の貿易に関する多角的協定
- 附属書2 紛争解決に係る規則及び手続に関する了解(通称 紛争解決了解)
- 附属書3 貿易政策審査制度
- 附属書4 複数国間貿易協定
- (A) 民間航空機貿易に関する協定
- (B) 政府調達に関する協定
- (C) 国際酪農品協定(1997年末に終了)
- (D) 国際牛肉協定(1997年末に終了)
[編集] 加盟国
原加盟国(地域、関税同盟など関税領域を含む)の数は76。現在の加盟国数は150。下記一覧の日付は加盟年月日。 加入交渉中の国は30ある。このうち、トンガは、2005年12月15日にWTO閣僚会議で加盟を承認されたが、国内事情で手続きが未だ終了していない。今後、トンガは、国内手続きを終了して加盟通知を行ってから30日後に加盟国になることになる。なお、ロシアの加盟は、難航していた米国との交渉が妥結し、2007年半ばに加入するものと見込まれている。(2007年1月11日現在)
- アイスランド
- アイルランド
- アメリカ合衆国
- アルゼンチン
- アンティグア・バーブーダ
- イギリス
- イタリア
- インド
- インドネシア
- ウガンダ
- ウルグアイ
- オーストラリア
- オーストリア
- オランダ
- オランダ領アンティルを含む
- カナダ
- ガーナ
- ガイアナ
- ガボン
- 大韓民国
- ギリシャ
- クウェート
- クロアチア
- ケニア
- コートジボワール
- コスタリカ
- ザンビア
- シンガポール
- スウェーデン
- スペイン
- スリナム
- スリランカ
- スロバキア
- スワジランド
- セネガル
- セントビンセント・グレナディーン
- セントルシア
- タイ
- タンザニア
- チェコ
- チリ
- デンマーク
- ドイツ
- ドミニカ国
- ナイジェリア
- ナミビア
- 日本
- ニュージーランド
- ノルウェー
- ハンガリー
- バーレーン
- バルバドス
- バングラデシュ
- パキスタン
- パラグアイ
- フィリピン
- フィンランド
- フランス
- ブラジル
- ブルネイ
- ベネズエラ
- ベリーズ
- ベルギー
- ペルー
- ホンジュラス
- ポルトガル
- 中国香港(中国領の関税領域)
- 中国マカオ(中国領の関税領域)
- マルタ
- マレーシア
- 南アフリカ
- ミャンマー
- メキシコ
- モーリシャス
- モロッコ
- ヨーロッパ共同体 (関税同盟)
- ルーマニア
- ルクセンブルク
- トリニダード・トバゴ (1995年3月1日)
- ジンバブエ (1995年3月5日)
- ジャマイカ (1995年3月9日)
- ドミニカ共和国 (1995年3月9日)
- トルコ (1995年3月26日)
- チュニジア (1995年3月29日)
- キューバ (1995年4月20日)
- イスラエル (1995年4月21日)
- コロンビア (1995年4月30日)
- エルサルバドル (1995年5月7日)
- ギニアビサウ (1995年5月31日)
- ジブチ (1995年5月31日)
- 中央アフリカ (1995年5月31日)
- トーゴ (1995年5月31日)
- ボツワナ (1995年5月31日)
- マラウイ (1995年5月31日)
- マリ (1995年5月31日)
- モーリタニア (1995年5月31日)
- モルディブ (1995年5月31日)
- レソト (1995年5月31日)
- ブルキナファソ (1995年6月3日)
- エジプト (1995年6月30日)
- スイス (1995年7月1日)
- ポーランド (1995年7月1日)
- シエラレオネ (1995年7月23日)
- ブルンジ (1995年7月23日)
- グアテマラ (1995年7月21日)
- キプロス (1995年7月30日)
- スロベニア (1995年7月30日)
- モザンビーク (1995年8月26日)
- リヒテンシュタイン (1995年9月1日)
- ニカラグア (1995年9月3日)
- ボリビア (1995年9月12日)
- ギニア (1995年10月25日)
- マダガスカル (1995年11月17日)
- カメルーン (1995年12月13日)
- カタール (1996年1月13日)
- フィジー (1996年1月14日)
- エクアドル (1996年1月21日)
- ハイチ (1996年1月30日)
- セントクリストファー・ネイビス (1996年2月21日)
- グレナダ (1996年2月22日)
- ベナン (1996年2月22日)
- アラブ首長国連邦 (1996年4月10日)
- ルワンダ (1996年5月22日)
- パプアニューギニア (1996年6月9日)
- ソロモン諸島 (1996年7月26日)
- チャド (1996年10月19日)
- ガンビア (1996年10月23日)
- アンゴラ (1996年11月23日)
- ブルガリア (1996年12月1日)
- ニジェール (1996年12月13日)
- コンゴ民主共和国 (1997年1月1日)
- モンゴル (1997年1月29日)
- コンゴ共和国 (1997年3月27日)
- パナマ (1997年9月6日)
- キルギス (1998年12月20日)
- ラトビア (1999年2月10日)
- エストニア (1999年11月13日)
- ヨルダン (2000年4月11日)
- グルジア (2000年6月14日)
- アルバニア (2000年9月8日)
- オマーン (2000年11月9日)
- リトアニア (2001年5月31日)
- モルドバ (2001年7月26日)
- 中華人民共和国 (2001年12月11日)
- 中華民国(台湾) (2002年1月1日)
(「台湾、澎湖、金門、馬祖」関税領域) - アルメニア (2003年2月5日)
- マケドニア (2003年4月4日)
- ネパール (2004年4月23日)
- カンボジア(2004年10月13日)
- サウジアラビア(2005年12月11日)
- ベトナム(2007年1月11日)