希望の轍
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『希望の轍』(きぼうのわだち)は、サザンオールスターズ(正確には「稲村オーケストラ」)の楽曲。作詞・作曲は桑田佳祐、編曲は桑田佳祐&小林武史。
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[編集] 解説
1990年に公開された映画『稲村ジェーン』のサウンドトラックアルバム『稲村ジェーン』(1990年9月発売)の2曲目に収録された。爽快なポップス曲で、シングルカットはされていないものの当時から人気度が高く、現在ではサザンの代表曲の1つとして数えられている。ファンのみならずライトファンへの認知度も高く、桑田自身も完成度に満足している楽曲であるため、サザンのコンサートでは定番の1曲である。小林武史によるアレンジも完成度が高い。希望に向かって進む前向きな歌詞と、胸の高鳴りや昂揚を表現しているかのようなメロディ・バックアレンジも人気の1つである。
フジテレビ系列の番組で、番組内で流れる応援歌のような形で流されていたが、同局のニュース番組『めざましテレビ』の1コーナー「ワールドキャラバン」の初代テーマソングとして使用されたことにより一般のお茶の間にも曲が浸透し、めざまし以降も頻繁にテレビの挿入歌としても使われるようになり、21世紀最初の年の2001年に放送した『FNSオールスターズ 27時間笑いの夢列島』のテーマソングとしてもこの曲が使用された。ちなみにめざましテレビ内の「ワールドキャラバン」では、現在でもサザンオールスターズ名義のクレジット表記で放送されている。幾度かワールドキャラバンのコーナーはテーマソングが変わっているが、4回も使用されているのはこの曲だけであり、いかにワールドキャラバンのテーマに希望の轍が合っているかが伺える。
後に桑田自身もラジオ番組内でサザンオールスターズ名義の曲だと公表した。公式サイトやレーベルでも特に深入りした説明はされておらず、当時の収録状況などを把握していないファン以外には、完全にサザンの楽曲と認識されていると言える。
2000年8月の『茅ヶ崎ライブ』では初めてオープニング曲として、2000年~2001年の年越しライブ『ゴン太くんのつどい』では年跨ぎ曲として演奏された。ちなみにサザンのライブやコンサートで演奏される場合、アレンジはCDに収録されているものとほぼ同じであるが、テンポはかなり速くなっている。なお、レコーディングこそ参加していないものの、ライブなどで披露する際には原由子がオープニングのピアノを担当しており、コンサート時の彼女の見事なピアノプレイを確認できる1曲ともなっている。
サザンの楽曲をメドレー化した「江ノ島 ~Southern All Stars Golden Hits Medley」(Z団名義)やサザンオールスターズ名義のベストアルバム数作(バラッド3など)に収録されているが、これは“サザンオールスターズ”として再録したものではなく、音源はすべてオリジナルにレコーディングしたものがそのまま使われている。
近年ではカバーされることも多く、2001年にはザ・ベンチャーズが、2003年には東京スカパラダイスオーケストラをはじめとするBig Shot All Starsが、2005年にはBEAT CRUSADERSがカヴァーアルバム『MUSICRUSADERS』内で唯一の日本語楽曲として取り上げている。
FM802のOSAKAN HOT 100で2000年に『バラッド3 ~the album of LOVE~』の収録曲としてチャートインした。そのほかにもテレビ番組で「後世に伝えたい名曲」の特集や「カラオケランキング」の特別番組が放送されているときには数多いサザンの作品の中でもほぼ必ずといっていいほどランクインされており、1度もシングル化されていない楽曲としては異例と言えるほど幅広い世代から支持を得続けている。
“稲村オーケストラ”としてアーティスト名が表記されているようにサザンのオリジナルメンバーは桑田佳祐のみしか参加していないが、サザンの楽曲として定着していることもあり2001年にベースの関口和之が関口和之&砂山オールスターズ名義で発売したカバーアルバム『World Hits!? of Southern All Stars』の中ではサザンの楽曲としてカバーされている。関口を含め、松田弘と原由子を除くメンバー3人はアルバム(サウンドトラック)自体にも参加していない。ちなみにこのサウンドトラックにはサザン名義での既発曲も収録されているため、形式上は参加していることになっている。
一般にはあまり知られていないが、この曲では桑田のボーカルトラックの速度を僅かに上げて収録されている。そのため、歌い方やエフェクトに関係なく桑田の普段の声とは少し違った印象を受ける。現在では桑田1人での多重コーラスやボーカルの重ね録りも多く使われているため、それほど桑田の歌声との大きなギャップを感じることはないのも、知られていない理由だといえる。
桑田の声かけで開催されたTHE 夢人島 Fes.2006では、ライブの最後の曲として出演ボーカリスト全員による「希望の轍」が歌われた。桑田のほか、BEGINの比嘉栄昇、GLAYのTERU、ポルノグラフィティの岡野昭仁、Mr.Childrenの桜井和寿、福山雅治という豪華メンバーであった。
[編集] エピソード
- サビの歌詞中に登場する"エボシライン"とは桑田の造語だが、茅ヶ崎市の烏帽子岩を望む国道134号を指しているというのが定説である。
- 本曲の歌詞及び映画『稲村ジェーン』の舞台に程近い茅ヶ崎駅の電車発着音にサザンの曲を使おうという試みが以前あり、その際ファン投票で1位を争ったのがこの曲だったが、企画は取り止めとなり曲が使用されることはなかった。
- 「轍」と言う言葉・読み方をこの作品で知った人も多い。轍の本来の意味は、車が走ったことによって残ったタイヤの跡であり、希望に向かって突き進む前向きな感情を、車に乗って走る様子に准えて歌っている歌詞であることが分かる。
- 2000年の『茅ヶ崎ライブ』で1曲目の演奏曲になることが決まった際、それまでのサザンのライブにあったような、松田弘のドラムから入るライブオリジナルの前奏や、桑田の煽りなども一切なく、完全に原のピアノからのライブスタートとなる為、リハーサルの段階では原はプレッシャーのあまり桑田に、「希望の轍を1曲目にするのはやめてほしい」と泣いて頼んだらしいが、桑田の説得もあり、同ライブでは見事1曲目で演奏しきった。
- 漫画家の臼井儀人がこの曲のファンであり、自身の漫画『クレヨンしんちゃん』内で楽曲の歌詞を載せている回が一度ある(クレヨンしんちゃん24巻)。後日この回がアニメ化されたときにはBGMとしてこの曲が使用されていた。
- 福岡ソフトバンクホークスの小久保裕紀が読売ジャイアンツ所属時、打席に立つ時の入場曲としても使用していた。
- 巨額詐欺事件を起こしたジェスティオン・プリヴェ・ジャポンの投資家向けプロモーションビデオのテーマソングにまで勝手に使われていたほどであり、このビデオの内容はFNNスーパーニュースの中で何度か紹介された。
[編集] 参加ミュージシャン (オリジナルの記載に従順)
[編集] 収録アルバム
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